著者
伊藤 研一 大場 崇旦 家里 明日美 岡田 敏宏 花村 徹 渡邉 隆之 伊藤 勅子 小山 洋 金井 敏晴 前野 一真 望月 靖弘
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.168-174, 2013 (Released:2013-10-31)
参考文献数
55

甲状腺未分化癌は発生頻度の少ないorphan diseaseであるが,甲状腺癌死に占める割合は高くその予後は極めて不良である。甲状腺未分化癌のほとんどは,分化癌から脱分化のステップを経て発症してくると考えられているが,未分化転化の機序も解明されていない。現在のTNM分類では,原発巣の状況と遠隔転移の有無でⅣA,ⅣBとⅣCに分類されているが,多くは診断時ⅣB以上である。本邦と海外で共通に報告されている予後因子としては,診断時の年齢,原発巣の広がり,遠隔転移の有無がある。本邦で設立された甲状腺未分化癌研究コンソーシアムでの世界に類をみない多数例の解析では,急性増悪症状,5cmを越える腫瘍径,遠隔転移あり,白血球10,000mm2以上,T4b,70歳以上が有意な予後不良因子であった。今後,新規治療戦略の開発とともに,未分化癌においても治療戦略に有用なバイオマーカーが同定されることが期待される。
著者
岡田 敏朗 長瀬 敏郎 今井 裕之 上原 誠一郎
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
pp.170618, (Released:2017-12-07)

Sakura quartz, which shows cherry blossom-like texture on the (0001) cross-section, occurs from Obira mine in Oita prefecture, Japan. The unique texture was analyzed by using CL, EBSD, EPMA, BSE, and OPM. The texture includes numerous solid and liquid inclusions, and is composed of Brazil twin lamellae and Dauphine twin domains. The texture would be named as sakura texture after sakura-ishi (cerasite), which was a variety of cordierite. The quartz crystal with the sakura texture grew by two growth stages. At the first stage, numerous inclusions were incorporated into the milky part and the growth bands are indistinct. In contrast, growth bands were clearly observed at the second stage. The sakura texture developed at the first stage. Almost all quartz crystals from Obira mine have the sakura texture, and the texture formed on replacement process at late greisenization. The sakura texture is a characteristic feature of quartz from skarn deposit.
著者
河田 正仁 岡田 敏男 清水 雅俊 高田 幸浩 下川 泰史 五十嵐 宣明 岡嶋 克則 宮武 博明 水谷 哲郎 中村 哲也
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.337-343, 1999-05-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
9

くも膜下出血や手術後などのストレス状態におかれると急性心筋梗塞類似の病態となり,冠動脈に器質的狭窄がなくても広範な左室壁運動障害を引き起こすことが知られている.症例は81歳の女性で,当初は右下肺野の陰影で入院した.次第に陰影が広がり,呼吸困難を呈した.第10病日に突然呼吸困難が増悪し,心電図上胸部誘導で高度のST上昇をきたし,ショック状態となった.挿管の上,緊急冠動脈造影を施行した.冠動脈の器質的狭窄はなかったが,左室造影上前壁,心尖部,下壁にわたり広範な無収縮を認め,心基部のみ正常収縮をしていた.患者はその2日後に肺炎陰影が両肺に広がり呼吸不全で死亡したが,血清の最大CKは296U/lであった.病理解剖における心筋組織には壊死,炎症細胞浸潤などを認めなかった.本症例は重症肺炎を契機にstunned myocardiumが疑われる病態が引き起こされ,原因として冠攣縮やカテコールアミン心筋障害などが推定された.まれではあるが,ストレスを伴った低酸素血症がstunned myocardium様の心機能低下の誘因となった重要な病態であると考えられ報告する.
著者
足立 雄一 五十嵐 隆夫 吉住 昭 萱原 昌子 足立 陽子 松野 正知 村上 巧啓 岡田 敏夫
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.40-45, 1991
被引用文献数
2

4例の食物依存性運動誘発性アナフィラキシーを経験した. それぞれの臨床症状について検討し, さらに全員に運動負荷を行い, その前後でCom48/80を用いた皮膚テストを実施した. 症例は男児1名, 女児3名. 13-16歳に発症し, 誘因はエビなどの甲殼類が2名, 小麦およびポテトが1名, 小麦が1名であった. いずれもRASTにて特異的IgE抗体を証明し得た. 運動はランニング, バレーボール, 早足歩行であり, 食後10分から2時間に運動することで発症している. 全員に蕁麻疹を認め, それ以外に意識消失や呼吸困難を認めた. 運動負荷のみでは全員無症状であったが, Com48/80に対する皮膚反応は3例において運動前に比して運動後に増大傾向を認めた. 以上より, 本疾患の発生機序としてアレルギー反応の関与が示唆されたが, 運動による皮膚肥満細胞の活性化の可能性については今後の課題である.
著者
杉本 貴昭 王 孔志 岡田 敏弘 佐竹 真 岡本 共弘 藤元 治朗
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.2076-2080, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

先端巨大症は下垂体腺腫より成長ホルモンが過剰分泌される比較的稀な疾患である.大腸や乳腺,前立腺などの悪性腫瘍を合併することが近年報告されている.症例は71歳の女性で,12年前に先端巨大症,下垂体腺腫に対してHardyの手術を施行された.術後通院は自己にて中断していた.排便時出血を認めたため,近医受診.痔疾を指摘され加療を受けたが,症状が続くため消化管を精査されたところ,S状結腸に1型腫瘍を認め,加療目的にて当科紹介となった.全身精査にてびまん性甲状腺腫大を認めるのみで転移所見はなかった.S状結腸切除を行い,良好に経過した.内分泌機能検査では成長ホルモンおよびIGF-1が高値であり,下垂体腺腫切除後,成長ホルモン過剰分泌抑制が不十分であった先端巨大症に合併したS状結腸癌と考えられた.ブリモクリプチンの投与を開始し,外来にて経過観察を行っている.
著者
岡田 敏朗 長瀬 敏郎 今井 裕之 上原 誠一郎
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.117-123, 2017 (Released:2018-01-12)
参考文献数
17

Sakura quartz, which shows cherry blossom-like texture on the (0001) cross-section, occurs from Obira mine in Oita prefecture, Japan. The unique texture was analyzed by using CL, EBSD, EPMA, BSE, and OPM. The texture includes numerous solid and liquid inclusions, and is composed of Brazil twin lamellae and Dauphine twin domains. The texture would be named as sakura texture after sakura-ishi (cerasite), which was a variety of cordierite. The quartz crystal with the sakura texture grew by two growth stages. At the first stage, numerous inclusions were incorporated into the milky part and the growth bands are indistinct. In contrast, growth bands were clearly observed at the second stage. The sakura texture developed at the first stage. Almost all quartz crystals from Obira mine have the sakura texture, and the texture formed on replacement process at late greisenization. The sakura texture is a characteristic feature of quartz from skarn deposit.
著者
上本 健治 甲斐 博文 金岡 泰保 富田 真吾 岡田 敏彦
出版者
山口大学工学部
雑誌
山口大学工学部研究報告 (ISSN:03727661)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.p315-317, 1982-03

In syntactic pattern recognition, the grammatical inference is the process that characterizes a pattern class by a grammar. So establishment of grammatical inference procedure is very important. In this paper, for the purpose of the recognition of hand-written Katakana characters, we suggest a grammatical inference algorithm for context free grammar. Our inference is developed by selecting sample patterns from original set of sample patterns according to a criterion, and classifying the production rules previously.
著者
浅田 峯夫 岡田 敏美
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J89-B, no.7, pp.1318-1324, 2006-07-01

山岳遭難者の探索システムとして,登山者が携帯する400 MHz帯小型発信器(ビーコン)から発信される電波を利用して捜索する方法が提案されている.そこで,遭難時を想定してビーコンを大地付近に設置あるいは積雪中に埋設した場合の伝搬距離と電波の減衰の関係について理論的な検討及び実証実験を行った.その結果,無雪時において400 MHz帯ビーコンを地上高約1.7 λあるいは0.4 λ付近に設置した場合は,大地反射の影響によって電界強度は12 dB/octで減衰し,一方,やや湿った均質な積雪中にビーコンを埋設した場合は約16 dB/octで減衰することを実証し,更に,雪の誘電率,ビーコンの埋設深さなどによって周期的に変動することを見出した.
著者
酒井 英男 小林 剛 岡田 敏美 芳野 赳夫 早川 正士 富沢 一郎 中山 武 太田 健次
出版者
独立行政法人防災科学技術研究所
雑誌
防災科学技術研究所研究資料 (ISSN:0917057X)
巻号頁・発行日
vol.157, pp.287-317, 1993-03-29

Electromagnetic properties were measured at the joint observation of the explosion seismic experiment at Ooyama, Toyama Prefecture on Oct. 17, 1991. The explosion was induced by 450 kg gun powder placed at a depth of 75 m. This paper represents the preliminary results of the experiments. (1) Electric self-potential : The measurement of the electric self-potential (S.P.) was made at two stations. One station was set up around the explosion point, and the other station about 1.5 km apart from the explosion point. At the station about 1.5 km apart from the explosion area, we observed no distinct change in S.P. before the arrival of seismic wave. At the station around the explosion point, four electrodes were arranged in the line of east-west direction crossing the explosion point. The distance of the each electrode from the explosion point ranges from 10 m to 100 m. The seismograph sensor was arranged at the distance of 130 m for the comparion with the change of the S.P. Up to 150 mV changes in S.P. were observed by the electrode couples before the arrival of seismic wave. The detailed analsis revealed that the induced changes in the S.P. consist of two portions : the fluctuation with shorter period (〜0.001 second) and with the frequency of the longer period (〜0.05 second). The propagation speed of the fluctuation with the shorter period was much higher than that of the fluctuation with the longer period. The fluctuation of the shorter period might have been related to the explosion process of gun powder. About the fluctuation with the frequency of the longer period, the following properties were elucidated. The amplitude of the fluctuation in S.P. is in proportion to the span length of the electrode couples. The fluctuation in S.P. arrived faster at the electrode couples situated nearer to the explosion point. (2) Magnetic field The magnetic field was measured by the fluxgate magnetometer at the site 35m north from the explosion point. The apparentchanges of magnetic vertical component and of horizontal component were observed at the time of 0.25 seconds after the explosion. Increase of total magnetic field of 2〜3nT after the explosion was found. This increment was confirmed by the total magnetic field survey around the fluxgate sensor. (3) VLF electromagnetic radiation No clear radiation of VLF electromagnetic wave was seen because of the possible contamination of the other natural radio noises. However, a possibility of VLF radiation connot be denied. Further study of the VLF data should be carried out.
著者
大家 寛 森岡 昭 小林 香 飯島 雅英 小野 高幸 宮岡 宏 岡田 敏美 小原 隆博
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.19-49, 1990-01

科学衛星あけぼの(EXOS-D)衛星に塔載されたプラズマ波動及び波動励起観測実験(PWS)装置は, アンテナ伸展が行なわれた1989年3月以来, 順調に観測を開始した。自然プラズマ波動の観測では, 全軌道領域において20kHzから5MHzの周波数帯域のダイナミックスペクトラム観測を行っている。その主要な結果は以下のとおりである。i)高域混成共鳴放射(UHR放射)があけぼの衛星の全軌道域において観測され, この放射の空間分布からプラズマ圏の構造が明らかにされた。ii)オーロラ粒子加速域領域に関連してオーロラキロメータ放射(AKR)が観測されている。このAKRの偏波とポィンティングフラックスの計測も同時に行なわれている。これ等の観測データからAKRの放射メカニズム及びオーロラ粒子加速域の構造を研究することが可能となる。観測データは加速域においてAKR波動の成分として静電的プラズマ波動とZ-モード波動が共存していることを示している。iii)プラズマ圏の赤道域において, 高域混成共鳴(UHR)放射が強い強度をもって出現することが発見された。この放射の強度増大は2つの種類の擾乱を示唆している。即ち, 第1は, EPWAT (Equatorial Enhancement of the Plasma Wave Turbulence)と名付けられた現象に対応し, 高域混成共鳴放射の強度を増大させるミクロナなプラズマ不安定であり, 第2は, EPDET (Equatorial Plasma Density Turbulence)と名付けられた現象に対応し, プラズマ密度の乱れに起因する高域混成共鳴放射時の不規則変化である。EPWAT現象は高度1,000kmから9,000kmの磁気赤道域をdisc状にとりかこむものであり, 一方EPDETは高度1,000kmから9,000kmの領域の地理的赤道をもう1つ別のdiscを形成して存在する。iv) PWSのサウンダー実験も順調に成果を出しており, 基本的なプラズマ共鳴である周波数f_<UHR>における高域混成共鳴, 周波数nf_C (n=1,2,3,…)における電子サイクロトロン高調波共鳴, 及びプラズマ共鳴(f=f_P)が観測されている。拡散型プラズマ共鳴系列であるf_<Dn>もまた静電的プラズマ共鳴であるf_<Qn>と伴に観測されている。この現象が観測される高度は3,000km以上にも及んでいる。非常に長い継続時間をもつダクトエコーが, 6,000kmの高度においても観測された。これらすべての結果は, PWSデータが, オーロラ粒子加速域に加えて, プラズマ圏, 電離圏のすべての領域におけるプラズマ及びプラズマ波動の研究に極めて重要な貢献をするであろうことを約束している。
著者
風戸 広史 林 晋平 岡田 敏 宮田 俊介 星野 隆 佐伯 元司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. KBSE, 知能ソフトウェア工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.165, pp.91-96, 2012-07-20

プログラムを変更する前に,開発者はまずFeature Locationにより機能に対応するソースコード上の実装箇所を特定し,続いてその箇所に関する静的構造や振る舞いを理解する.本稿では,実行トレースに系列マイニング,形式概念分析を組み合わせて適用することによって,機能の実装箇所を特定するだけではなく,その箇所の構造を半自動的に特定する手法を提案する.提案手法の支援ツールを試作し,Webアプリケーションの例題に適用した結果,提案手法が実現可能であり,また単に機能の実装箇所を特定するよりも理解に役立つことを確認した.
著者
満保 正喜 深見 哲男 岡田 敏美 長野 勇 木村 磐根
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.416-423, 1997-05-25
被引用文献数
8

夜間, ロケットを用いて地上にあるVLF局と中波放送局のそれぞれの磁界強度を観測すると共にラングミュアプローブ(DCプローブ)電流を計測し, 合わせて中波のドップラー観測も行った. E層中にVLF波磁界強度の定在波分布や中波の正常波, 異常波成分が観測された. そしてDCプローブ電流を参照して, これらVLF波や中波の観測値とフルウェーブ計算による理論計算値が合うよう電子密度ならびに電子の衝突回数の高度分布を修正・推定した. このようにしてVLF波の磁界強度分布から電子密度をE層下部から上部にかけて推定し, 弱いEs層が数層あることがわかった. また, 中波のドップラー観測によりE層上部にわたる電子密度の推定に成功すると共に異常波の上昇波の強度成分から地上110 km前後における電子の実効衝突回数の値も推定できた.
著者
上田 義勝 小嶋 浩嗣 橋本 弘藏 松本 紘 長野 勇 岡田 敏美 向井 利典 岩井 宏徳 藤原 亮介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.366, pp.1-6, 2001-10-11

2000年12月4日にノルウェーのSvalbard諸島, Ny-Alesundにおいて, 文部科学省宇宙科学研究所の観測ロケットSS-520-2号機を用いた, 極域カスプ領域におけるイオンの加速, 加熱機構を調査するための実験が行われた.本稿ではプラズマ波動の観測を目的として搭載された, プラズマ波動受信機「PWA」(Plasma Wave Analyzer)について述べる.PWAは従来のプラズマ波動観測機の利点を取り入れつつ, 波形圧縮技術やデジタル周波数掃引技術などを新たに搭載した高機能かつ軽量な観測装置であり, ロケット実験においては非常に高精度の観測データを得ることが出来た.本稿ではこれまでに判明している解析結果についてまとめる.
著者
松本 紘 BOUGERET Jea ANDERSON Rog 小嶋 浩嗣 GURNETT Dona 村田 健史 笠原 禎也 八木谷 聡 臼井 英之 大村 善治 岡田 敏美 筒井 稔 橋本 弘蔵 長野 勇 木村 磐根 BOUGRET Jean-Louis ANDERSON Roger r. GURNETT D.A. BOUGERET J.L ANDERSON R.R
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

平成7年度には、GEOTAIL衛星は、地球から30Re付近の近地球軌道にあり、WIND衛星も主に、昼間側の太陽風の定常観測状態にあった。一方、同年度8月には、ロシアの衛星INTERBALLが、3月には、米国の衛星POLARが打ち上げられ、ISTP衛星による磁気圏の総合観測体制がほぼ整ったといえる。これらの衛星のうち、INTERBALL、POLAR衛星は、打ち上げ後、まもないということで、具体的な共同観測については、来年度に行われる予定であり、本年度は、主に、WIND衛星との共同観測を昨年度までのAKEBONO、Freja,ULYSSES衛星との共同観測に加えて重点的に行った。以下に、交付申請書の調査研究実施計画の項目に従って研究成果を列挙する。1.まず、惑星間衝撃波の観測でGEOTAILとWIND衛星で同時に観測を行った例において、WIND衛星で観測された磁場やプラズマの変化とそのGEOTAILでのある時間遅れでの観測、そしてそれに対応するプラズマ波動の強度の変化について解析を行った。その中には、衝撃波の到来とともにGEOTAILがバウショックを何度もよぎる現象がみられるものがあり、惑星間衝撃波の影響によりバウショックの位置が変化している様子を観測することができた。2.磁気圏昼間側のショック領域全面で発生しているといわれている2fpエミッションの観測をWIND、GEOTAIL両衛星を用いて行い、その発生時間や周波数変化の時間差から、その発生領域がやはりショック全面にあることが確認された。現在その位置的な偏りについても、より多くのデータを集めて解析を行っている。3.GEOTAILによって磁気圏内部で観測された「振幅変調をうけた電子プラズマ波」と同様な波形がWIND衛星によって太陽風中でも観測されていることがわかった。GEOTAILでの観測では、その波動の伝搬方向は外部磁場に対して平行、垂直の両者があることがわかっていたが、現在までのところWINDの方では平行伝搬のみがみつかっている。4.POLAR衛星の打ち上げに伴う共同観測体制を整えるための情報交換をアイオワ大学と行っている。5.POLAR衛星の打ち上げが遅れて本年度の3月になったため、具体的な共同観測は来年に執り行われることになる。6.本研究課題に関連して投稿された論文リストは、本報告書の研究発表欄に列挙する。以上が、交付申請書に書かれていた計画に対応する報告であるが、上述の他に、以下の項目についても共同研究を行った。1.極域で観測されるイオンサイクロトロン波とイオンコニックス分布との相関をAKEBONO衛星とFreja衛星の共同観測で明らかにした。2.極域で観測されるAKRの観測をGEOTAIL、WIND衛星で共同して行い、その観測が衛星の位置によってどのように変化してみられるかの評価をを行い、AKRの伝搬特性についての解析をおこなっている。3.太陽バースト伝搬をGEOTAIL、WIND衛星で同時に観測し、その強度を比較することにより、両者の受信機の較正を行った。
著者
長野 勇 木村 磐根 岡田 敏美 山本 正幸 橋本 弘蔵 鶴田 浩一郎 川口 正芳 杉森 明志
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.77-91, 1991-03

EXOS-D衛星は1989年2月21日に打ち上げられ, その後伸展物の展開, 高圧電源の投入を経て, 観測態勢に入った。VLF装置によるプラズマ波動の観測は, 一部他の搭載機器との電磁干渉が見られるが, 概ね良質のデータが取得されており, PFX装置で観測されたオメガ信号及びホイスラ空電のk及びPoynting vectorの解析に成功している。また, WB受信機やMCA装置により, オーロラに関連したHissやfunnel typeのエミションのスペクトラムが観測されている。この様に, 概ね良質な波動データを取得できたのは, 次のようなEMI対策によるところが大きい。すなわち第1次噛み合わせにおいて, 全てのサブシステムを衛星に組み込んだ後に各サブシステムからの放射磁界雑音特性を測定し(システム全体により構成されるループからの放射も含む), その雑音強度がVLF班の測定対象としている波動のレベル(磁界センサーが検出できる最小レベルを基準にすることが望ましいが)を越えている場合, そのサブシステムについてEMI対策をお願いした。改修後, 単体によるEMI測定を行なった。更に, 第2次噛み合わせにおいて, 組み上げ後再度EMIテストを行なった。このようにして, 各サブシステムのPIのご協力により, 放射磁界干渉雑音強度を減少させることが出来た。しかし, 一部の搭載機器においては, その改修によるシステム全体に与える影響を避けるため, そして改修にかかる時間的制約のもとで, 干渉を減らす為の装置の改修を諦めざるを得なかった。本報告では, EXOS-Dの干渉試験を通して得られたいくつかのEMI対策方法や資料について述べる。また, 打ち上げ後の軌道上におけるVLF装置と他サブシステムとの干渉結果についても述べる。そして, これらの経験を通して作成された1992年打ち上げ予定の科学衛星(GEOTAIL)に於けるEMC規制値についても触れる。
著者
古樋 知重 橋口 正哉 大平 孝 浅田 峯夫 岡田 敏美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.219-225, 2003-02-01
被引用文献数
20

雪山などにおける遭難救助のための探索システムとして,腕時計型の小型電波発信機(マイクロ波ビーコン),及びエスパアンテナを利用した電波到来方向探知機の試作及び検証を行った。本システムはマイクロ波帯の利用により従来システムに比較して探索の位置精度(分解能)を大きく向上させた.更に,直接拡散型スペクトラム拡散方式(DS-SS)により耐干渉性を向上させたうえ,短パルスでも方向探知が可能なように方向探知機のアルゴリズムを改造することにより,マイクロ波ビーコンの電池寿命を大幅に延ばした.積雪地での実験により見通しで最大600m,マイクロ波ビーコンを湿った雪の下1mに埋めたときには30m離れた地点からの探知が可能であることを確認した.
著者
浅田 峯夫 岡田 敏美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.1318-1324, 2006-07-01

山岳遭難者の探索システムとして,登山者が携帯する400MHz帯小型発信器(ビーコン)から発信される電波を利用して捜索する方法が提案されている.そこで,遭難時を想定してビーコンを大地付近に設置あるいは積雪中に埋設した場合の伝搬距離と電波の減衰の関係について理論的な検討及び実証実験を行った.その結果,無雪時において400MHz帯ビーコンを地上高約1.7λあるいは0.4λ付近に設置した場合は,大地反射の影響によって電界強度は12dB/octで減衰し,一方,やや湿った均質な積雪中にビーコンを埋設した場合は約16dB/octで減衰することを実証し,更に,雪の誘電率,ビーコンの埋設深さなどによって周期的に変動することを見出した.