著者
新田 雅子
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 = Journal of the Society of Humanities (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.93, pp.105-125, 2013-02-01

本稿は、ここ数年の「孤独死」をめぐる言説的飽和状況がかならずしもその現象特性を踏まえた対策につながっていないという問題意識を動機とする、実践のためのレビューである。「孤独死」は高度経済成長を経た1970年代の日本において「都市の孤独」あるいは「老人問題」として注目され始めた現象である。1990年代以降は貧困との結びつきが問題となる一方で、単身世帯の急増にともなって「人生の閉じ方の一様態」という捉え方も社会的に受容されつつあり、「孤独死」の意味合いはさらに多層化し、「孤立死」という用語も用いられるようになってきた。2000年代後半には社会的排除の結果としての孤独な死が相次いで報道され社会問題化するなか、「孤独死(孤立死)」対策が講じられてきた。現在の「孤独死(孤立死)」対策は、その概念の多義性や現象としての捉えにくさゆえに、コミュニティの活性化による「孤立」の予防に主眼が置かれている。しかしながら現に社会的孤立状態にある人びとが抱える「死に至るほどの困難」に対して、それは有効に作用しえない可能性を指摘した。
著者
田川 善彦 新田 益大 増山 智之 松瀬 博夫 志波 直人
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム (ISSN:13487116)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.225-236, 2014 (Released:2017-02-15)
参考文献数
55

微小重力下にある国際宇宙ステーション (International Space Station : ISS) では生体の筋骨格系が減弱する. このため種々の対策が実施されているが, 大掛かりな設備となっている. そこで簡便で効果的な訓練法が模索され, 我々のグループではヒトへの電気刺激によるハイブリッドトレーニング (hybrid training : HT) 法を提案し, 地上や微小重力模擬下で効果を検証してきた. 本論文ではHTのISS 内実施に伴い想定される以下の事項を取り上げた. まずシステムの電気刺激条件と含水性刺激電極, 刺激装置と人体通電時の電磁適合性 (electro-magnetic compatibility : EMC) について検討した. 次にHTと人体浮遊時の身体揺動, 日本実験モジュール (Japanese Experiment Module : JEM) に上体を固定した時のISSへの振動的加速度の影響について検討した.
著者
奥村 崇幸 新田 真之介 隈元 庸夫
出版者
Saitama Physical Therapy Association
雑誌
理学療法 - 臨床・研究・教育 (ISSN:1880893X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.11-16, 2022 (Released:2022-06-04)
参考文献数
26

【目的】体幹屈曲・伸展時の腰背部における腰部脊柱起立筋(以下, LES)と多裂筋(以下, MF)の筋活動と循環動態を検討し,体幹屈曲・伸展運動による効果の筋生理学的根拠を得ること。【対象と方法】対象は健常成人男性9名,運動課題は体幹屈曲伸展の多段階角度保持とし, LESとMFの課題動作中の筋活動と循環動態の経時的変化を記録した。【結果】LES,MFともに安静立位と比較して体幹屈曲で有意に筋活動増加,体幹伸展で筋活動が有意に減少した。総ヘモグロビン(以下,total-Hb)の変化はLES,MFともに屈曲時に減少,伸展時に増加の傾向がみられ,LESのtotal-Hbは屈曲時に有意に減少した。MFは安静立位,屈曲時と比較して伸展時に脱酸素化ヘモグロビン(deOxy-Hb)の増加傾向がみられた。【結論】健常者が対象であっても,立位での体幹屈曲運動とその後の立位での体幹伸展運動にて筋活動と循環動態に変化がみられることがわかった。
著者
仁科 慧 岡田 将吾 新田 克己
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回 (2014)
巻号頁・発行日
pp.1F21, 2014 (Released:2018-07-30)

多様な性質の意見や引用を含んだ複雑な議論の、論理構造に関する分析を行う。この目的のため、モジュールベース議論フレームワークによる、議論の形式化を行い、この構造における性質や、それの議論分析への貢献についての考察を述べる。さらに、モジュールベース議論フレームワークに対応した議論解析ツールの展望を述べる。
著者
新田 貴之
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1+2, pp.135-143, 2022 (Released:2022-04-01)
参考文献数
13

コロナ禍においてホームレス支援は,いかにして可能か.本稿は,ホームレス支援NPO仙台夜まわりグループが行ったホームレス支援活動を事例として,感染症拡大を避けなければならないという,これまで経験したことのない状況にあって,仙台夜まわりグループが,どのような決定を行ったのか,その決定に基づいてどのようにホームレス支援活動を行ったのかについて検討し,コロナ禍によって顕となったNPOの脆弱性と課題について考察した.その結果,万が一,ホームレスがコロナ感染症に罹患したとしても,また,「NPOスタッフ」やボランティアがコロナに感染したとしても,自己責任とされてしまい,感染症拡大において最もケアしなければならない社会的弱者に対する,そのケアの基盤は脆弱であることが明らかになった.
著者
新田 均
出版者
関西法政治学研究会
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.79-94, 1999-12-20 (Released:2018-01-10)

ASYIZU Uzuhiko is an important theoretician of conservatism after World War II in Janan. In this essay, I will introduce his theories of the Meiji Constitution, which are neglected by scholars nowa days. So, I think, his theories of political process of "BAKUMATSU" are decisive ones when interpreting the history of the establishment of the Meiji Constitution.
著者
石塚 裕子 新田 保次
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_283-67_I_290, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

本研究では,視覚障がい者は移動を伴う観光行動へのニーズの表明率が低いという既往研究の結果を踏まえて,自身の五感を使って地区の魅力を体得するような楽しい散策経験は,散策意図の向上に寄与すると仮説を設定した.散策の支援策の一つとして観光ガイドに着目し,観光ガイドを伴った散策経験により,当該地の魅力の認知ならびに当該地を散策しようという散策意図の向上に寄与する可能性を検証し,観光ガイドを伴った散策の効果について考察を行うことを研究目的とした.その結果,観光ガイドを伴った散策の経験は,地区の印象や推薦意図の向上を促すことが確認され,視覚障がい者が当該地の魅力を認知することに寄与することが確認された.しかし,散策意図の向上を図ることは難しいことが明らかになった.
著者
古橋 勉 新田 博幸 工藤 泰幸 真野 宏之
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.821-826, 1999-07-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
9

液晶ディスプレイは,薄型,軽量,低消費電力が特徴であることから,ノートPCなどの表示装置として広く採用されてきている.現在では,対角画面サイズが15インチ以上,解像度が1024×768画素以上の大画面,高精細液晶ディスプレイが各社から製品化されてきている.これに伴い,液晶モニターという新しい市場も拡大してきている.本文では,この液晶ディスプレイの駆動方式と駆動回路ならびに高速伝送技術に関して解説する.
著者
芳村 圭 新田 友子
出版者
土壌物理学会
雑誌
土壌の物理性 (ISSN:03876012)
巻号頁・発行日
vol.151, pp.27-34, 2022-07-20 (Released:2022-08-02)
参考文献数
16

これまで大気モデルの一部であった地表面パラメタリゼーションを,大気モデルから独立させ,統合陸域シミュレータ(ILS)を開発した.ILSとは,モデル単体ではなく,開発の枠組みに対する名称である.本解説では,その開発経緯と,ILSを用いた3つの事例を紹介した.実時間陸域水文予測への応用,3次元土壌分類パラメタセットの実装,そしてサブグリッドスケールでの水平方向の土壌水分輸送の実装である.諸外国の研究速度も鑑み,本研究並びに気候変動及び影響評価研究のさらなる進展のためには,陸域モデル開発体制のコミュニティ化(共同体化)が必要である.
著者
新田 孝作
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.5, pp.1330-1335, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

悪性腫瘍による腎障害の病態は多彩である.腫瘍の浸潤や移転に起因せず,腫瘍細胞から産生される各種ホルモンやgrowth factor,cytokineおよび腫瘍特異的抗原物質に対する抗体産生によって引き起こされるparaneoplastic glomerulopathy,悪性腫瘍の急速な進展や放射線および化学療法後に生じる腫瘍融解症候群,多発性骨髄腫に伴う腎障害,腹部や骨盤部の悪性腫瘍の浸潤による尿路閉塞による腎障害および抗悪性腫瘍薬による腎障害などがある.それぞれの病態に応じた対策が必要である.
著者
岩田 英紘 恒川 佳未結 新田 憲司 水嶋 祥栄 長田 裕之 村瀬 陽太 瀬古 周子
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.724-732, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
10

〈目的〉「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」において推奨されているホルマリン固定時間を超過した検体は,核酸品質の低下が懸念されている。今回,臨床現場で固定時間が超過する検体を想定し,良好な核酸品質保持のための固定条件を検討した。また,病理組織診断に与える影響についても検討した。〈方法〉未固定の肺,甲状腺,卵巣を用い,「1,3,7日間室温固定」「3,7日間冷蔵固定」「1日間室温固定後にALへ置換し2,6日間保存」「1日間室温固定後にALへ完全置換し2,6日間保存」「1日間室温固定後に2,6日間冷蔵保存」の11の条件で固定を行った。ΔCT値による核酸断片化の評価およびHE染色,IHCの染色性を評価した。〈結果〉「3,7日間室温固定」検体では,推奨QC値を下回る検体が認められたが,それ以外の条件においては,「1日間室温固定」と同等のQC値であった。最もQC値が高い固定条件は,「3日間冷蔵固定」であった。HE染色およびIHCともに,すべての固定条件において,染色結果に問題はなかった。〈考察〉金曜日や長期休暇前に提出された生検検体は,冷蔵固定もしくは一晩室温固定後のAL置換により,良好な核酸品質が保持できることが示された。臨床現場での業務効率を考慮すると,検体提出直後から冷蔵固定することが,最善の固定条件であると考えられる。
著者
新田 均
出版者
サンケイ新聞社
雑誌
正論
巻号頁・発行日
no.343, pp.286-297, 2001-03
著者
山口 鉄平 新田 泰広 稲葉 雅美 秋山 義幸 杉山 達也 川上 真澄 島袋 潤 小川 秀人
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2012-SE-176, no.1, pp.1-6, 2012-05-14

制御機器のソフトウェア開発では,制御パラメータの調整工数削減による開発工数削減を目的に,モデルベース開発の適用がすすんでいる.制御式を設計する制御設計者とソフトウェアを開発するソフト開発者の違いや,制御式が書かれた制御仕様書と機器の動作実現方法が書かれたソースコードの違いにより,従来の開発方法からモデルベース開発への移行は困難となっている.本報告では,モデルベース開発時に,制御設計者によるモデルの修正とシミュレーションが可能な新たなモデルベース開発への移行方法を提案する.提案方法は,3パターンでのソースコードのリファクタリングと,モデルとソースコードのデータの受け渡しおよび処理の呼び出しを定義するという特徴を持つ.
著者
大原 貴都 藤平 達 茂岡 知彦 新田 泰広 岩崎 力 杉山 達也
雑誌
研究報告システムLSI設計技術(SLDM)
巻号頁・発行日
vol.2014-SLDM-165, no.5, pp.1-6, 2014-03-08

組込みシステムの開発効率向上のため,MATLAB 注 1/Simulink 注 2を用いたモデル駆動開発の適用が進められている.モデル駆動開発の一つである SILS では,S-Function ブロックを用いてソフトウェアをモデル上に取り込む.しかし,S-Function ブロックを用いた際,ブロック間の信号量に比例してシミュレーション速度が低下する課題がある.本稿では,共有ライブラリを用いることで Simulink ブロック間の信号量を削減し,高速なシミュレーションを可能とするモデル構成を提案する.提案手法を業務用空調機器に適用し,暖房のシミュレーション時間を約 90%削減し,本提案手法の有効性を確認する.