著者
久志本 鉄平 新田 理枝
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.17-23, 2023-04-25 (Released:2023-05-11)
参考文献数
36

ペンギンの胃内から見つかる石の役割については,潜水時の浮力調節のため,あるいは餌の消化を助けるために飲み込む,もしくは絶食への適応ではないかと考えられてきた.本研究では,胃の中にある石の役割を明らかにするため,飼育下のフンボルトペンギンが小石を飲む行動と吐き戻しする行動を観察し,産卵との関連を調べた.その結果,産卵期のメスにのみ小石を飲み込む行動が確認され,その多くが卵殻形成時期に集中していた.このことから,ペンギンの胃内から見つかる石は,メスが卵殻形成に必要なカルシウムを補給しようとして,誤って小石を飲み込んでいる可能性が考えられ,これまで考えられているような浮力調節や消化や絶食時の適応のために胃石を持つ必要性は低いのではないかと考えられた.
著者
御子柴 卓弥 新田 清一 中山 梨絵 鈴木 大介 坂本 耕二 島貫 茉莉江 岡田 峻史 藤田 航 鈴木 法臣 大石 直樹 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.315-325, 2019-08-30 (Released:2019-09-12)
参考文献数
18

要旨: 音楽幻聴は, 外部からの音刺激がないのに歌や旋律が自然に聞こえる現象であり, 耳鳴患者の中にも稀に存在する。2011年1月から2018年10月までに当科を受診した耳鳴患者のうち, 音楽幻聴を訴えた23例の臨床像を検討した。このうち11例に対し耳鳴について詳細に説明した上で補聴器による音響療法を行い, 治療効果を検討した。音楽幻聴症例は, 高齢者・女性に多く1例を除く全例で感音難聴を認めた。全例で病識が保たれており, 精神神経科疾患の合併を認めなかった。治療後に Tinnitus Handicap Inventory の合計値, 耳鳴の自覚的大きさ・苦痛の Visual Analogue Scale は有意に改善した。本検討から, 精神神経科疾患の合併がなく難聴が主病因の音楽幻聴に対し耳鳴の説明と補聴器による音響療法が有効な治療である可能性が示唆され, 耳鼻咽喉科医が中心となり診療に携わることが望ましいと考えられた。
著者
新田目 倖造
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌B(電力・エネルギー部門誌) (ISSN:03854213)
巻号頁・発行日
vol.141, no.8, pp.551-558, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

According to rapid increase of photovoltaic (PV) and wind generations in recent power system of Japan, the cases arise that power generation exceeds demand, so PV generations must be curtailed in some area. Hereafter, part of PV and wind generations may be curtailed in other areas too. In Europe and America too, similar surplus electricity are genetated and capacity of battery to withdraw surplus electricity are researched. This paper analyzes basic supplying characteristics of PV and wind generations in the simplified model system based on the actual power system in north-east area in Japan. As a result, when penetration ratio of PV or wind generation exceed 10~20%, surplus energy arise. It needs much capacity of battery to withdraw surplus energy, so supplying cost including battery is several ten times of cost of generation alone. If minimum output of stable generations except PV and wind generations could be lowered, surplus energy, capacity of battery and supplying cost will lower remarkably. But unit supplying cost of stable generations increases. According to introduction of much PV and wind generations, more coordination of power system and PV, wind generations is necessary, i.e. scaling up and cost down of energy storage, extension of power control range of stable generations, demand side management, etc.
著者
新田 孝行
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.61-85, 2022-09-30

あるインタヴューでジャン=クロード・ビエットは,批評家としては一義的な関心の対象である演出が自ら映画を監督する際は二次的な問題になったと述べている。ヌーヴェル・ヴァーグ以後の批評における特権的な価値基準だった演出よりも重要になったのは俳優と人物(役柄)の関係だった。俳優が役を演じることを嫌ったロッセリーニやブレッソン,ゴダールらに対し,ビエットは,パゾリーニとともに,誰もが日常生活でつねにすでに演じているという前提から出発し,その「ドラマ性」を映画に取り込んだ。彼は親しい仲間でもある俳優を観察し,私的な会話での発言を台詞として採用して役を当て書きした。こうした撮影以前の段階が擬似的な演技指導の役割を果たすことで,ビエットの映画では俳優本人の過去の生が人物に反映され,映画内の物語に先行する時間が表現される。
著者
新田 孝行
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.86-100, 2017 (Released:2018-03-15)

現代オペラ演出は音楽学の新しい課題である。ドイツ語圏ではレジーテアター(演出演劇)がオペラ愛好家や理論家の間で議論を呼んできた。台本上の地理的・時代的設定や登場人物の役柄、プロットを変更する権限を演出家に認めるレジーテアターは、「作品への忠実さ」を尊重せず、こじつけ的解釈を好む演出家の横暴と批判されることも多い。しかし、これを擁護する側は、台本やスコアだけでなく上演もオペラに含まれるとする記号論的観点から、忠実さの要求が的外れにすぎないと主張する。 現代オペラ演出は、1990年代のアメリカで発展したニュー・ミュジコロジーと比較することができる。いずれも学問的‐芸術的実践に属する。前者が音楽学的に再検討されたオペラ上演ならば、後者は研究者による主観的・修辞的音楽言説である。両者はまた音楽作品の意味を動かそうとする。演出家は音楽家ではないが、演出によってオペラのイメージをつくりかえることができる。同じ目的のためニュー・ミュジコロジストは、ある楽曲をそれに新たなものを付け加えるような言語によって解釈する。 言い換えれば、現代オペラ演出とニュー・ミュジコロジーはともに解釈学的性格を有する。ドイツ文学者ゲアハルト・ノイマンは、それを通してオペラに秘められた矛盾した意味が明らかになる窓としてレジーテアターを定義した。似たような考えに基づいて、ニュー・ミュジコロジーを代表する一人のローレンス・クレイマーは、自らの音楽解釈学を「解釈学的窓」という観点から定義している(『文化的実践としての音楽』、1990年)。最終的に、現代オペラ演出はニュー・ミュジコロジーの演劇的で、より説得的なヴァージョンと言える。なぜなら、劇場では作品とその解釈を区別することができないからである。
著者
柏木 雄太 田中 美佐子 新田 泰生 カシワギ ユウタ タナカ ミサコ ニッタ ヤスオ
出版者
神奈川大学心理相談センター
雑誌
心理相談研究 : 神奈川大学心理相談センター紀要 (ISSN:21855536)
巻号頁・発行日
no.11, pp.11-32, 2020-12-20

本研究では,臨床心理士を目指す大学院生の,学びに関する場面での傷つきにまつわる体験に焦点を当て,大学院を修了するまでの内的な変容プロセスについてのモデルを生成することを目的とした。5つの臨床心理系大学院(第一種指定)を修了した10名を対象に半構造化面接を実施してデータを収集し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて質的に分析した。その結果,臨床心理士を目指す大学院生は初期に,《臨床心理学文化の入り口に立つ》ことを経験する。ケースの開始と共に《ケースに出る未熟さ》と直面する。中期では〈限界を許せずに抱いてしまう怒り〉などからなる《未熟さから起こる学びの滞り》や,〈構造が守られないことから生まれる傷つき〉が起こる。終期では,《時間経過による不安と焦り》を経験する。また,〈自己変容へのストレス〉などからなる《深化する自己内省に伴う痛み》を経験し,大学院を修了する過程が示唆された。
著者
新田 英雄
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.6-10, 2022-03-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
6

1.はじめに文科省のウェブサイトに,「学習指導要領ができるまで」 (本拙文はこの題名を拝借した) と題して,次のフローチャートが掲載されている1).文科大臣から中教審に諮問
著者
新田 哲夫
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.6-15, 2011-04-30 (Released:2017-08-31)

A special geminate like ff in maffa "pillow", which does not exist in the Standard Japanese (SJ), is found in the Antoh dialect in Fukui Prefecture. This paper deals with the synchronic and diachronic phenomena concerning the ff geminate in addition to bb and ss. This paper has the following purposes: (1) to illustrate the correspondence of geminates between the Antoh dialect and SJ, (2) to investigate the historical development of the geminates in the Antoh dialect, (3) to point out that the manifestation of the geminates in the Antoh dialect is similar to that of the Miyakojima dialect in the Ryukyuan language, and (4) to propose that the explanation for the process of the geminate in this dialect gives a suggestive source to the discussion on the processes of sound changes in the Ryukyuan language.
著者
新田 均
出版者
大明堂
巻号頁・発行日
1997-04-29
著者
角田 啓斗 新田 理人 豊田 賢治
出版者
アクオス研究所
雑誌
水生動物 (ISSN:24348643)
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.AA2023-22, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)

A carcharhinid shark was caught in a set-net fishery off Wajima City in Ishikawa Prefecture, Japan. The individual was identified as a copper shark Carcharhinus brachyurus based on morphological characteristics and DNA barcoding using the 12S ribosomal RNA and cytochrome c oxidase subunit l gene (cox1) regions of the mitochondrial DNA. In Japan, the copper shark has been recorded from the Sea of Japan, including the coasts of Hokkaido, Niigata and Yamaguchi prefectures; and from the Pacific coast, including the Kashima-nada Sea, the east coast of the Boso Peninsula, Sagami Bay, the Ariake Sea and the south coast of Kyushu. This report represents the first reliable record of the copper shark from Ishikawa Prefecture.