著者
小野 秀樹 松本 欣三 太田 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

フェニルエチルアミン(PEA)は生体内に存在する微量アミンであり,精神機能と関わりがあると考えられている。その化学構造や薬理作用は覚醒剤のものと類似している。これらの薬物は様々な薬理作用を発現するが,作用と立体構造の関係は不明である。著者らはすでに、これらの薬物は脊髄反射の系において,少量では下行性ノルアドレナリン神経の終末よりノルアドレナリンを放出させることにより、単シナプス反射(MSR)を増強し、高用量ではセロトニン受容体へ作用することによってMSRを抑制することを示している。本研究においては、ノルアドレナリン放出作用・セロトニンアゴニスト作用と立体構造との関係について実験した。PEAのフェニル基とアミノ基窒素が近い形で固定されていると考えることができるノミフェンシンおよびマジンドールは下行性神経からのノルアドレナリン放出により、MSRを増強した。さらにMSR増強作用と腺条体の〔^3H〕マジンドール結合阻害作用の間には良い相関があった。PEAのフェニル基とアミノ基窒素が遠い形で固定されている2-アミノテトラリン類はセロトニンアゴニスト作用によりMSRを抑制した。光学活性体についてはR体に活性があった。これらの結果から,PEAおよび覚醒剤のノルアドレナリン放出作用は、フェニル基とアミノ基が近い形のコンフォメーションの時に生じ、セロトニンアゴニスト作用は遠い形のコンフォメーションの時に生じることが示唆された。以上、単純な系であり定量的な実験が可能な脊髄反射を用いて得られた結果ではあるが、この解釈は運動量増加作用(脳でのノルアドレナリン放出による)および幻覚作用(脳でのセロトニン_2アゴニスト作用による)にもあてはまるものと考えられた。
著者
岸 恭一 力丸 共子 松本 善子 志塚 ふじ子 井上 五郎
出版者
THE PHYSIOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
The Japanese Journal of Physiology (ISSN:0021521X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.959-970, 1982 (Released:2011-06-07)
参考文献数
27
被引用文献数
6 6

Voluntary intake of proteins of various qualities in relation to dietary protein utilization was investigated in growing and adult rats. The rats were given two diets, one containing high protein and the other no protein, and were allowed to self-select protein and energy intakes freely from both diets. The results showed that total food intake (protein diet plus protein-free diet) and body weight gain were similar among five proteins tested. However, the amount of protein consumed by the growing rats per 100 g of total food intake (i.e., dietary protein level) was different depending upon the protein qualities, that is, wheat gluten (WG) 44 g, casein (CA) 30 g, soy protein (SP) 21 g, lactalbumin (LA) 19 g, and amino acid mixture simulating egg protein (AA) 11 g. Net protein utilization (NPU), estimated as the proportion of protein intake that is retained in the body, was as follows: WG, 20%; CA, 33%; SP, 44%; LA, 50%; and AA, 74%. From the above figures, net dietary protein value, which is a measure of utilizable protein in the diet, was calculated by multiplying the dietary protein level by NPU. In contrast to the difference in protein intake, net dietary protein value was quite constant in spite of large differences in the dietary protein quality, being 8 to 10%. A similar relationship between protein intake and protein utilization was obtained also with adult rats, except that the net dietary protein value was smaller in adult rats than in growing rats. These results may suggest that the animals can regulate the intake of dietary protein to keep the amount of protein available for the body constant.
著者
松本 憲次
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11-12, pp.145-148, 1945-12-15 (Released:2011-12-12)

一、甘藷は味噌に使用するには蒸して食鹽を一五%以上混合混捏して貯藏して置き必要に應じ使用する。一、蒸甘藷は既製味噌に混控して漉込み數日にして使用して差支ない、其際に食鹽は甘藷に甥し一零- 八%内外に添加する。一、干甘藷は製麹して米麥麹代替網とすることが出來るが、干甘護に適度に吸水し蒸し時には火蓋と交互に重ねて蒸し混控して生甘藷と同様に味噌に漉込んでも收得量には餘り生甘藷と相違を認めない、多少色澤を損じてをる位でもる。一、甘味多い甘藷は多少温暖なれば酸昧を早く増すことがあるから甘味の少ない藷を使用する方がよい。一、冠水甘藷は混捏が充分に行かぬから可成避けた方がよい。一、甘藷加用の味噌は所謂甘味が割合に少ない藷でよい、種類によつては味噌汁に粘味を與へ風味を軟げると同時に味噌汁の沈降速度を遲くする様になる。
著者
小畠 靖 白井 伸生 河合 昌孝 村口 元 坂本 裕一 松本 晃幸
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-23, 2021-05-01 (Released:2021-06-16)
参考文献数
34

紫外線照射により胞子落下量が元株(野生型)の1/10,000程度に低下したシイタケ胞子欠損性変異体B682を分離した.SEM観察において変異体ヒダ表面には成熟胞子がほとんど認められず,未熟な球状胞子が観察された.変異体の子実体ヒダ組織をギムザ染色したところ,担子器の多くで8個の核が観察され,減数分裂後の担子器内4娘核の体細胞分裂が推察された.検定集団(98115A population)を用いた遺伝性解析で,本変異形質は一因子性の顕性変異によるものと推察された.次世代シーケンス解析に基づく元株と変異体ゲノムの配列比較により,変異体の推定遺伝子領域にナンセンス変異を生じる一塩基多型(SNP)を見出した.本SNP特異的なPCR増幅の有無は検定集団(32D population)の表現型と完全に一致した.B682はシイタケで初めて確認された顕性の胞子欠損性変異体であり,育種利用を進める上で本SNPはマーカーアシスト選抜を可能にする有効な変異点と考えられる.
著者
小林 泰輔 暁 清文 柳原 尚明 松本 康 町田 敏之 堀内 譲治
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.321-327, 1993-03-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

Case 1: a 59-year-old male with a one-year history of diabetes mellitus complained of right sudden deafness with vertigo. Otoneurological examinations showed sensorineural hearing loss of the right ear and bidirectional horizontal gaze nystagmus. MRI revealed infarction of the right cerebellar hemisphere indicating occlusion of the anterior inferior cerebellar artery (AICA). With conservative treatment his hearing returned to the contralateral ear level. Case 2: a 49-year-old female who complained of right sudden deafness with vertigo and ipsilateral facial palsy. Audiometric studies showed total deafness on the right. Bidirectional horizontal gaze nystagmus, together with V, VII, IX and X cranial nerve palsies were recognized. CT and MRI proved infarction of the right cerebellum and pons. Her hearing improved only partially. Other neurological signs disappeared within eight months. Case 3: a 54-year-old male with a history of hypertension and angina pectoris complained of right sudden deafness with dizziness. Right sensorineural hearing loss and spontaneous nystagmus toward the left were noted. His hearing improved on the next day. Two days later, however, he lost consciousness. CT showed no abnormality, but angiography revealed occlusion of the basilar artery.These three cases showed the importance of differential diagnosis between acute hearing loss due to cerebral infarction and idiopathic sudden deafness. We emphasize the diagnostic importance of risk factors such as hypertension and diabetes mellitus and the sign of vertigo with nystagmus of central origin in cases of cerebral infarction.
著者
池田 昭夫 松本 理器 長峯 隆 菊池 隆幸 小林 勝弘 國枝 武治 宇佐美 清英
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

難治てんかん患者の脳内脳波記録への数理モデルの適用や、手術病理標本の解析、動物実験などを通じ、てんかん焦点の脳波バイオマーカーとしてのActive ictal DC shiftsの存在を確立し、てんかん発作における、 神経細胞, 能動的グリア, 受動的グリアの3成分、特に前2者の重要性を明らかにした。また、てんかん発作前状態ではred slow(低周波数帯域活動と高周波律動の共起)がactive DC電位の領域に一致することを明らかにした。一方で、頭皮上脳波での記録の実証により、Active ictal DC shifts、Red slowのバイオマーカーとしての汎用性を明らかにした。
著者
秋葉 智弘 松本 尚 平木 敬
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.47-48, 1993-09-27

共有メモリー型並列計算機における、並列アプリケーションの最適化を支援するために、様々なハードウェアー機構が提案されている。特に、本論文で取り上げるハードウェアー機構は、Elastic barrier(同期待ちによるアイドルタイムを減少させるために、同期に幅を持たせたり、必要のないバリアーを削減したりできる拡張されたバリアー)とスヌープキャッシュにおけるプロトコルの、データオブジェクト毎の切替えである。本論文では、SPLASHと呼ばれる並列アプリケーション群を用いたシミュレーションにより、これらの機能がどのような性能改善をもたらすかを評価する。SPLASHは、普通のC言語とPARMACSと呼ばれるマクロによって、明示的に並列性を記述した、実際に使用されているアプリケーション群である。SPLASHのこの性質により、より現実に即した性能評価を行なうことが出来ると期待できる。
著者
福島 可奈子 松本 夏樹
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.91-112, 2020

<p>本稿は2018年に筆者らが入手した幻燈兼用の水平走行型玩具映写機とそのフィルムの精査と復元、19世紀末から20世紀初頭にかけての日独仏の玩具会社の販売カタログなど一次文献資料の分析によって、これらのアニメーションフィルムとその水平走行装置の存在とその映像史上の意義について論じる。</p><p>一般的に映画はリュミエールのシネマトグラフから始まったとされる。シネマトグラフ装置はフィルムを垂直に走行することで撮影・映写するものであり、現在のようにデジタル化が進むまで、映画はフィルムを垂直走行することで現実世界を記録・再生するのが当然であると考えられてきた。だがシネマトグラフが誕生した当初、家庭などの非劇場空間においては、実は実写映画の垂直走行装置よりもアニメーション映画の水平走行装置が先行していた。この発想は家庭用の幻燈など種々の光学玩具の延長上に必然的に登場したものであった。それ故筆者らは入手し復元された玩具フィルム2本が最古のアニメーション映画である可能性が極めて高いことを実証的に論じる。</p><p>幻燈から映画へとその流行が大きく移り変わるメディアの過渡期において、この水平走行型が大衆の映像メディアの認識において重要な役割を果たした点を本稿は明らかにする。</p>
著者
福島 可奈子 松本 夏樹
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.91-112, 2020-01-25 (Released:2020-02-25)

本稿は2018年に筆者らが入手した幻燈兼用の水平走行型玩具映写機とそのフィルムの精査と復元、19世紀末から20世紀初頭にかけての日独仏の玩具会社の販売カタログなど一次文献資料の分析によって、これらのアニメーションフィルムとその水平走行装置の存在とその映像史上の意義について論じる。一般的に映画はリュミエールのシネマトグラフから始まったとされる。シネマトグラフ装置はフィルムを垂直に走行することで撮影・映写するものであり、現在のようにデジタル化が進むまで、映画はフィルムを垂直走行することで現実世界を記録・再生するのが当然であると考えられてきた。だがシネマトグラフが誕生した当初、家庭などの非劇場空間においては、実は実写映画の垂直走行装置よりもアニメーション映画の水平走行装置が先行していた。この発想は家庭用の幻燈など種々の光学玩具の延長上に必然的に登場したものであった。それ故筆者らは入手し復元された玩具フィルム2本が最古のアニメーション映画である可能性が極めて高いことを実証的に論じる。幻燈から映画へとその流行が大きく移り変わるメディアの過渡期において、この水平走行型が大衆の映像メディアの認識において重要な役割を果たした点を本稿は明らかにする。
著者
野村 修一 鷲尾 一浩 山野 寿久 松本 英男 永広 格 東 良平 佐々木 澄治
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.41-44, 1994

症例122歳, 妊娠31週, 当院入院の前日夕方より腹痛があった. 腹痛は腹部全体におよび間歇性であったが, 入院翌日には右側に限局する傾向がみられ, 翌々日手術となった. 虫垂穿孔と右側腹腔への膿汁貯留が認められた. 妊娠40週で正常女児を自然分娩にて出産した. 症例225歳, 妊娠33週, 前日より心窩部痛があったが, 腹部全体の痛みとなり入院した. 腹痛はしだいに右側にかた寄るようになったため同日手術となった. 虫垂は穿孔はしていないものの著明に発赤腫大し, 周囲に膿汁貯留を認めた. 妊娠38週で帝王切開にて正常男児を出産した.<br>妊娠優期においては, 子宮の増大と虫垂の変位により症状所見が非定型的で不明瞭であり, 診断が難しい場合がある. 虫垂炎に腹膜炎が加わると胎児死亡や早産の危険があり, 手術をためらってはならない.
著者
松本 真 マツモト シン Shin Matsumoto
雑誌
広島修大論集. 人文編
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.49-113, 2000-03-10

The Oribe-style stone lantern used in a garden for tea ceremony has its origin in the time around 1600. On the remains of those lanterns is engraved the year 1615. Their formative characteristics are found at the three parts of stone poles. First, the top part of stone poles, projecting right and left, has a shape Τ (Egyptian Cross), and a shape † (Latin Cross). There's a theory from this that it's the symbol of the Holy Cross. However, I think this theory is wrong. The design Τ is not limited to the Holy Cross. Second, in the center of the shape † are engraved hieroglyphic characters. There's another theory from this that these characters mean IHS (Jesus; lesus Homium Salvator), or IHP. This theory is also wrong. I think it's the ideogram of the old form of a Chinese character Tatsu. Tatsu means the year of the birth of Furuta Oribe (1544-1615). Tatsu is one in Eto (or, Chinese sexagenary cycle), and the character means the North Star. It also has its original meaning of "being the best season for crops in fine spring weather." Third, at the base of the stone pole is a figure in relief. There's a theory from this that this is an image of Jesus Christ or of a missionary. I think this is wrong, too. I think it's an image of a bonze (or, priest) style of the master of tea ceremony and its variation.
著者
松本 健太郎 佐野 伸之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.329-335, 2021-06-15 (Released:2021-06-15)
参考文献数
12

作業療法では,対象者の生活行為がやり遂げられるように,意欲を引き出す支援が重要となる.今回,人工股関節全置換術後患者に対して,自己評定法に加えて半構造的面接法を併用することで,対象者の目標に対する意欲や生活行為への参加を高められた介入手順について報告する.リハビリテーションに関する達成動機尺度の得点から達成動機の状態を把握し,面接法により事例の作業参加につながる目標,行動計画,周囲のサポートについて合意形成した.その内容を視覚的に意識づけし適宜修正することで,事例の達成動機の向上や積極的な行動変容が窺えた.達成動機の観点から面接法を併用することで,サポート内容を明確化することが期待できる.
著者
松本 桂子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.85-95, 2005-03-01

D.H.ロレンスは、晩年を南フランスで静養に努めながらも創作を続け、価値ある諸作品を残した。中でも、刻々と迫る死を自覚しつつ書かれた詩「死の船」は、死後の魂を未知なる世界へと運び行く小さな船を象徴として、死という自然の摂理を独特の解釈と手法で描いた作品である。そこに凝縮された死生観にも通じる根本思想を追究することにより、ロレンスの最後のメッセージとして受け取りたい。方舟聖書エトルリア復活再生
著者
脇本 博 青野 敏博 松本 圭史 高安 進
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.421-424, 1983-06-10

睾丸性女性化症は性染色体がXYで,腹腔内に睾丸を有し,外性器は女性型を呈する。思春期には正常女性と同様に乳房の発育がみられ,男性化徴候は出現しない。腋毛,陰毛はほとんど認められない。このような睾丸性女性化症の症状は,胎生期または思春期に男性ホルモン作用が発現されていないことを示唆する。本症の病因として,1)睾丸における男性ホルモン分泌能の低下,2)男性ホルモンに対する標的器官の感受性の低下の2つが考えられるが,本症の患者睾丸のテストステロン合成能は正常男子と同様良好であることが明らかにされた1)。そこで標的器官のホルモン感受性の低下が本症の病因として重要視されるようになった。近年,Bullock2),Griffin3)らの研究により,本症の男性ホルモン不応は男性ホルモンレセプターの欠損に起因するものであることが証明された。したがって,睾丸性女性化症の確定診断には,アンドロゲンレセプターの検索が不可欠と考えられる。しかし,実地臨床の場でアンドロゲンレセプターの測定が,本症の鑑別診断に利用されたという報告は未だ見られない。我々は正常のヒト皮膚由来培養線維芽細胞中における5α-dihydrotcstosterone(DHT)に対するレセプターをデキストランーチャーコール法によって検索し,その最大結合部位数(B max)ならびに解離恒数(Kd)をScatchard分析によって求め,その正常値を決定した4)。同様に睾丸性女性化症および外性器異常を伴う内分泌異常疾患,染色体異常疾患を有する患者の皮膚由来培養線維芽細胞中のDHTレセプターを検索し,正常値と比較対照することにより睾丸性女性化症の診断に本検査法を応用した。本稿では,睾丸性女性化症の病像を解説した後,本検査法の実際的な使用例について報告したい。