著者
門田暁人 佐藤慎一 神谷 年洋 松本 健一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2178-2188, 2003-08-15

ソフトウェアに含まれるコードクローン(重複するコード列)は,ソフトウェアの構造を複雑にし,ソフトウェア品質に悪影響を与えるといわれている.しかし,コードクローンとソフトウェア品質の関係はこれまで定量的に明らかにされていない.本論文では,20年以上前に開発され,拡張COBOL言語で記述されたある大規模なレガシーソフトウェアを題材とし,代表的なソフトウェア品質である信頼性・保守性とコードクローンとの関係を定量的に分析した.信頼性の尺度として保守工程で発見された「フォールト数/LOC(Lines of Code)」を用い,保守性の尺度として「モジュールの改版数」を用いた.分析の結果,コードクローンを含むモジュール(clone-includedモジュール)は含まないモジュール(non-cloneモジュール)よりも信頼性(平均値)が約40%高いが,200行を超える大きさのコードクローンを含むモジュールは逆に信頼性が低いことが分かった.また,clone-includedモジュールはnon-cloneモジュールよりも改版数(平均値)が約40%大きく(すなわち,改版のためにより多くの保守コストが費やされてきた),さらに,モジュールに含まれるコードクローンのサイズが大きいほど改版数がより大きい傾向にあることが分かった.
著者
示野 貞夫 松本 将哉 細川 秀毅 益本 俊郎 松本 敏浩
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.866-871, 1999-09-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
23

成長や消化率に及ぼす飼料形態の影響を知るために, 摂餌促進物質を添加した同一組成のMP, EPおよびSPを, ドライベースで等率になるようにブリ稚魚に給与し, 50日間水槽飼育した。SP区の摂餌はやや不活発であったが, 全区の増重量は近似しており, 飼料効率, タンパク質効率およびエネルギー効率の区間差も小さかった。腸重量や消化率に若干の区間差はみられたが, 全区の血液性状や血清成分は類似していた。以上の結果から, 飼料形態によりブリの摂餌活性や消化過程は多少異なるが, 本試験条件下では3飼料の利用性は類似すると判断された。
著者
松本 宜明 清水 万紀子 福岡 正道
出版者
The Japanese Society for the Study of Xenobiotics
雑誌
薬物動態 (ISSN:09161139)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.452-460, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
42

Recently, an increasing number of pharmaceutical scientists and clinical pharmacists have begun to focus on pharmacodynamics, which relates the time course of drug concentration to the time course of pharmacological effects. An integration knowledge of pharmacokinetics and pharmacodynamics is essential for the development of rational pharmacotherapeutics because pharmacodynamics and pharmacokinetics are able to determines the drug concentration required to produce the desired therapeutic effect and the drug dose regimen required to achieve the targeted drug concentration, respectively, by using various models. The general principles of the drug effect model are based on the reversible direct and indirect models. In this review, various models in terms of the time course of drug effects are presented and discussed.
著者
北澤 文章 寺田 智祐 高橋 一栄 松本 繁巳 乾 賢一
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.337-342, 2009 (Released:2010-07-31)
参考文献数
19
被引用文献数
3 2

The aim of this study was to clarify the influence of renin-angiotensin (RA) system blockers on the anti-cancer effect of chemotherapy with bevacizumab and its adverse effects.Twenty-six patients treated for metastatic colorectal cancer at Kyoto University Hospital between August 2007 and July 2008 were assessed.All of the patients received bevacizumab plus mFOLFOX 6 or FOLFIRI,and were divided into a control group (23 patients) and an RA system blocker group (3 patients).Regarding background factors,which included chemotherapy doses,the only significant difference between the groups was with respect to age.However,hypertension grades in the RA system blocker group were significantly higher than those in the control group,and RA system blockers had no significant antihypertensive effect.There was no severe proteinuria in either group.As for anti-cancer effects,in the control group,6 patients exhibited a partial response and in 16 patients,the disease was stable.In only one patient was the disease progressive.On the other hand,the disease was progressive in all patients in the RA system blocker group.These findings indicate that anti-hypertensive agents which provide better hypertension control than RA system blockers may be necessary as first line medication for the management of bevacizumab-induced hypertension.Although RA system blockers are useful antihypertension agents,they might not be able to control bevacizumab-induced hypertension and proteinuria,and could reduce the anti-cancer effect of bevacizumab.
著者
伊藤 晋 山本 茂一 林 司 加藤 誠司 日裏 久英 松本 雅則 藤村 吉博
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-35, 2010 (Released:2010-03-15)
参考文献数
14

ADAMTS13は,止血因子であるフォンビレブランド因子(VWF)のA2ドメイン内のTyr1605-Met1606間のペプチド結合を特異的に切断する酵素である.この切断により新たに生じるペプチドのC末端Tyr1605を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いて,基質の切断生成物をELISA法で直接測定する原理に基づいたADAMTS13活性測定法のキット化を行い,そのキットの基本的な性能を評価した. 本キットの最小検出感度は,健常人のADAMTS13活性100%に対して,0.4%と高感度であった.また,調製したプレート内のウエル間の均一性(変動係数(CV)=3.3%)は良好で,濃度の違う検体での同時再現性(CV=1.1~4.7%)及び日差再現性(CV=2.6~7.5%)も良好であった.希釈試験では,原点に回帰する良好な直線性が得られた.またヘモグロビンやビリルビン等の共存物質の影響は,検討した濃度範囲では認められなかった.反応はEDTAで完全に阻害された. 臨床検体及び健常人検体を本キットで測定したときのADAMTS13活性は,健常人プール血漿100%に対し先天性のADAMTS13活性欠損症であるUpshaw-Schulman症候群(USS)で0.5%以下~2.7%,USS保因者群で7.7~85.3%,血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)群で0.5%以下~58.1%,健常人で54.7~134.4%と測定され,TTPの診断に必要な判別能を有しており,SDS-agaroseゲル電気泳動法との相関は相関係数(r)=0.931と良好であった.本キットは優れた性能と操作性を有していることから,TTPの診断や血小板輸血時の適否判断などにおいて有用であると考えられた.
著者
松本 ゆみ 新井 英雄
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.16-26, 2020-03-31 (Released:2020-03-28)
参考文献数
25

糖尿病は代表的な歯周病の全身的リスクファクターである。今回36歳,女性の1型糖尿病を有する広汎型侵襲性歯周炎患者に対し,内科主治医と連携し血糖コントロールに配慮しながら,歯周基本治療,矯正治療,そして歯周組織再生治療と歯周形成手術を含めた歯周外科治療,口腔機能回復治療を含めた包括的歯周治療を行い,初診から10年経過した現在,歯周状態を良好に維持することができている症例を報告する。本症例を通して,歯列不正を伴う広汎型侵襲性歯周炎患者に対して,早期に感染源除去を図ることはもちろん,プラークコントロールしやすい歯周環境を整え,安定した咬合関係を再構成すること,全身状態と局所的なリスクを把握してSPTを継続することが重要であることが示された。
著者
片岡 一則 横田 隆徳 位髙 啓史 津本 浩平 長田 健介 石井 武彦 西山 伸宏 宮田 完二郎 安楽 泰孝 松本 有 内田 智士
出版者
公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2013

脳は高度に発達した生体バリアに守られているため薬剤の送達が極めて困難な部位である。本研究では、この生体バリアを克服して核酸医薬を脳内に送達して機能させるウイルス・サイズの薬剤送達システムを、高分子材料の自己組織化(高分子ミセル化)に基づいて構築した。すなわち、(1)血管内腔側内皮に局在するグルコース輸送タンパク質を標的とするグルコース結合型高分子ミセルを創製し、血管内腔からの脳内薬物移行を制限する内皮細胞バリア(血液脳関門)を突破して核酸医薬を脳内送達する事によって、アルツハイマー病(AD)の発症に関わる酵素の産生を抑制する事に成功した。(2)生体内で速やかに酵素分解を受けるmRNAのミセル内包安定化を達成し、脳室内局所投与による単鎖抗体のその場産生を実現する事によって、AD発症に関わるタンパク質であるアミロイドβ量を有意に低下出来る事を実証した。
著者
松本 和明
出版者
京都産業大学マネジメント研究会
雑誌
京都マネジメント・レビュー = Kyoto Management Review (ISSN:13475304)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.85-102, 2021-03-31

渋沢栄一の絶大なる信頼を受けてビジネスパートナーの一人として活躍し,「渋沢の股肱」(実業之世界社編輯・発行『財界物故傑物伝』1936 年)と評された,長岡出身の梅浦精一の足跡と活動について考察していきたい.梅浦は長岡藩医の脩介の長男として生まれた.脩介は長岡藩の藩医を務め,東洋,西洋医学ともに長ずる,先進的でかつ優れた漢蘭折衷医であった.梅浦は漢学にも造詣が深かった脩介の影響を強く受けて幼少期から学問への興味を抱き,刈羽郡南条村で藍沢南城が主宰していた三余堂で漢学を学び始めた.続いて,長岡藩の代表的な儒学者である山田愛之助に師事してオランダ語を学んだ.周知のとおり,山田は崇徳館の教授・都講として,小林雄七郎さらには外山脩造も指導した.雄七郎と外山は梅浦の生涯に大きな影響を与えたが,彼らとの関係構築は山田の門人となったことが大きなきっかけであった.その後,江戸に出て西洋医学を学ぶものの,学費が続かなくなり,洋学に転じた.1872 年に大蔵省に入り,A・シャンドの指導のもとで,小林雄七郎などとともに,近代複式簿記の翻訳を『銀行簿記精法』として完成させた.これの普及に尽力した1 人が外山である.1873 年には新潟県令の楠本正隆から招かれて一等訳官に着任した.あわせて楠本の主導により創設された洋学校である新潟学校の責任者を担い,学生に加えて教員にも英語を講じた.同校は新潟県の中等教育機関の嚆矢である.さらに,長岡洋学校の後継である新潟学校第一分校でも教????をとっている.
著者
松本 美千代
出版者
東洋学園大学
雑誌
東洋学園大学教職課程年報 = Bulletin of Teacher Training Course of Toyo Gakuen University (ISSN:2434754X)
巻号頁・発行日
no.3, pp.75-91, 2021-03-20

2020 年5月25日にジョージ・フロイドがミネソタ州ミネアポリスで警察に拘束中に圧殺されて以来、全米で抗議デモが噴出し、ブラック・ライブズ・マターに基づく白人の組織的暴力に対する抗議、黒人差別是正のための運動は世界中に拡大した。この運動の特徴の一つに、参加者の多様性が見られ、デモの参加者の半数以上が白人であるデータも明らかになった。このような時代背景の中で発表された2020年のトニー賞ノミネート作品は黒人問題を扱う作品が中心的役割を果たしている。とくに今回最多部門で候補作品に選出された、2019年にブロードウェイで上演されたアフリカ系アメリカ人の劇作家ジェレミー・O・ハリスの『スレイブ・プレイ』は、近年最も挑戦的な作品と言われ、BLMの時代における人種の力学について黒人の視点から描き出した作品である。本稿では、作品をWOKE 劇の観点から読み解き、作品が展開する新時代の人種偏見の描写法とその独創性について考察する。