著者
小林 勝
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.763, 1983 (Released:2014-08-20)

レチノイド(etretinate)を CH3/He マウスに連日経口投与し,表皮ラングルハンス細胞(L細胞),ことにその分布密度と形態に及ぼす影響について検討した.L 細胞の分布密度は投与量(4mg/kg および 16mg/kg)と部位(耳,足脈,尾)により若干の差はあるが,ほぼ同様の傾向を示して変動した.すなわち,投与開始直後にL細胞は一過性に増加するが,以後は減少傾向を示し,2週後には最低値となる.しかし,その後投与を続けることにより回復傾向がみられた.このL細胞の分布密度の変動は表皮の厚さがレチノイド投与により変動する経過ときわめてよく一致た.一方,レチノイド投与により胞体が縮少し,樹枝状突起が細長く伸びた L 細胞が多数観察された.足蹠皮膚の垂直切片における観察では,投与2週日以後,基底層から真皮上層にla抗原陽性の樹枝状細胞がみられ,L細胞かあたかも真皮へ脱落しかけているような所見が得られた. 以上の実験を通じて,L 細胞は表皮内において抗原提示細胞としての機能を果すべく,角化細胞と密接な関連を保ちながら,その分布密度を調節し,恒常性を保ちつつあることか考えられた.
著者
小林 祥子 金田 勇
出版者
一般社団法人 日本レオロジー学会
雑誌
日本レオロジー学会誌 (ISSN:03871533)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.139-143, 2018-06-15 (Released:2018-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

UDON is a type of traditional Japanese noodles. “TEUCHI UDON” are made by kneading and rolling wheat flour, cutting it into strips, and then boiling them. One of the visible characteristics of “TEUCHI UDON” is sharp edge that appears in the ridge of the noodles, and such visual effect, in addition to the mechanical properties of noodles, greatly enhances the taste. To understand why the “edge” appears in the UDON noodles, we investigated the change in the shape and mechanical properties of UDON noodles during cooking. Moreover, we performed quantitative evaluation of the “edge” using image analysis of the cross-section of the UDON noodles during cooking. Image analysis showed that the structure of the gluten network and shape of the starch granules observed in the rolling side was different from that in the cut end. Furthermore, results of compression test revealed that the mechanical characteristics of these two ends were different from each other. We suppose that there is anisotropy in the swelling behavior of UDON noodles.
著者
三谷 章雄 大澤 数洋 森田 一三 林 潤一郎 伊藤 正満 匹田 雅久 佐藤 聡太 川瀬 仁史 高橋 伸行 武田 紘明 藤村 岳樹 福田 光男 稲垣 幸司 石原 裕一 黒須 康成 三輪 晃資 相野 誠 岩村 侑樹 鈴木 孝彦 外山 淳治 大野 友三 田島 伸也 別所 優 前田 初彦 野口 俊英
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.313-319, 2012-10-31

目的:欧米では,心臓血管疾患と歯周病には関連性がみられるというデータが得られているが,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関連についてはほとんど報告がない.そこで今回われわれは,東海地方での心臓血管疾患の罹患状況と歯周病の指数を比較することで,日本人における心臓血管疾患と歯周病の関係を明らかにすることを目的とし,健診のデータを基にその関連性の検討を行った.対象と方法:2008年に豊橋ハートセンターのハートの日健診において,一般健診を受診した者でかつ歯科健診を受けた者549名についてのデータを分析対象とした.心臓血管疾患データとして,血圧,脈拍,動脈硬化・不整脈の有無,狭心症・心筋梗塞の既往の有無,手術歴を,歯周病データとして,現在歯数,Community Periodontal Index (CPI)を用いた.これらのデータを用いて,心臓血管疾患の有無と健診時点での歯周病の指数を比較し,統計分析を行った.結果:対象者の平均年齢は61.7±13.6歳であった.狭心症,心筋梗塞,手術(経皮的カテーテルインターベンション)のいずれかの既往のある者を冠動脈心疾患(coronary heart disease: CHD)群(82名:男性44名,女性38名)とし,それに該当しない者,すなわち非CHD群(467名:男性122名,女性345名)と比較検討したところ,女性ではCHD群の現在歯数が有意に少なかった.また男性では,糖尿病,BMI,中性脂肪,HDL,総コレステロールおよび年齢の因子を調整してもなお,CHD既往のあるオッズ比は,CPIコード最大値2以下の者に比べ,CPIコード最大値3以上の者が3.1倍(95%信頼区間1.2〜7.7)高かった.結論:CPIや現在歯数と,CHDの既往があることの関連性が認められ,日本人においても歯周病とCHDに相関がみられることが示唆された.
著者
堤林 剣
出版者
慶應義塾大学
雑誌
法學研究 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.41-102, 1999-11-28

論説第一章 問題の所在第二章 スキナーの方法論の今日的有意性をめぐる問題第三章 スキナーの初期の方法論 第一節 ケンブリッジ・パラタイムのポジティヴな影響 第二節 スキナーの方法論と「神話」批判第四章 誤解にもとづいたスキナー批判 第一節 相対主義者スキナーという誤解 第二節 テクストの歴史的意義や意図せざる結果を無視し、排他的な方法一元論を主張しているという誤解 第三節 意図の位置づけにまつわる誤解 第四節 著者のオリジナリティを解消し、また誤読の積極的意義を無視しているという誤解 第五節 方法論的主張と思想史叙述が矛盾しているという誤解第五章 適切な批判 第一節 政治的行為としての政治思想史研究の役割を無視しているという批判 第二節 思想史研究の射程を狭く設定しすぎているという批判第六章 軌道修正と新たな展開 第一節 著者の意図の同定、「コンテクストを閉じる」方法をめぐって 第二節 ダンの初期の方法論との距離
著者
林 成多
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.305-312, 1996-10-31
参考文献数
19
被引用文献数
3 5

前橋台地に広く分布する前橋泥炭層(約14,000~13,000年前)からは,おもにネクイハムシ類やゲンゴロウ類などの湿地性の甲虫類の化石が産出する.産出した昆虫化石について検討した結果,北方系のゲンゴロウ類であるクロヒメゲンゴロウ属<i>Ilybius</i>の一種が得られた.本標本は,クロヒメゲンゴロウ属では1種のみ本州に分布するキベリクロヒメゲンゴロウ<i>I.apicalis</i>とは形態が異なるため,北海道を中心に分布するクロヒメゲンゴロウ属(3種)と,形態が類似しているマメゲンゴロウ属の大型種(1種)との比較を行った結果,ヨツボシクロヒメゲンゴロウ<i>I.weymarni</i>であることが明らかになった.さらに,ヨツボシクロヒメゲンゴロウは,最終氷期の寒冷気候を示す気候推定の指標性昆虫であることを示し,生息していた古環境について考察した.
著者
倉林 利行 吉村 優 切貫 弘之 丹野 治門 富田 裕也 松本 淳之介 まつ本 真佑 肥後 芳樹 楠本 真二
雑誌
ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム2020論文集
巻号頁・発行日
vol.2020, pp.143-152, 2020-09-03

本論文ではソフトウェア開発における実装の自動化に向けたファーストステップとして,プログラミングコンテスト AtCoder の正解プログラムを自動生成する技術の開発を目指す.自動プログラミングの既存研究としては,生成したいプログラムの入出力例からプログラム部品を合成する手法などが存在するが,プログラム部品の組み合わせ爆発により入出力例を満たすプログラムが生成できない,また生成できたとしても入出力例は満たすが正しいプログラムではないというオーバーフィッティングしたプログラムが生成されてしまうという課題が存在した.本論文では深層学習を用いて過去の問題情報から問題文と正解プログラムの関係性を学習することで上記の問題を解決する.具体的には学習済みモデルを用いて過去の問題情報から解きたい問題と類似した問題を検索して取得し,その正解プログラムを雛形としてプログラムを複数個合成し,再び学習済みモデルを用いて生成されたプログラムから最も問題文との関係性が近いプログラムを判定して出力する手法を提案した.提案手法は AtCoder の配点が 100 点の問題 92 問に対して評価を行い,24 問の正解プログラムの自動生成を確認した.
著者
石丸 伸司 山口 隆義 川崎 まり子 柿木 梨沙 管家 鉄平 五十嵐 正 岡林 宏明 古谷 純吾 華岡 慶一
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌 (ISSN:18831273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1_2, pp.41-44, 2018-10-25 (Released:2019-04-02)
参考文献数
15

2016年に公開された心臓サルコイドーシスの診断指針では,造影MRIによる心筋の遅延造影所見(Late Gadolinium Enhancement:LGE)が主徴候の一つとして挙げられているが,CT画像での異常所見については触れられていない.今回,我々はCTでの心筋遅延造影(Late Iodine Enhancement:LIE)が診断の契機となった心臓限局性サルコイドーシスの一例を経験した.本症例では,心臓CTでのLIEは心臓MRIでのLGEの部位と一致しており,また18F-FDG-PETでも同部に強い集積を認めた.サルコイドーシスの心病変診断において,CTはMRIと同等の診断能を持つ可能性があると考え報告する.
著者
久世 建二 小島 俊彰 北野 博司 小林 正史
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.8, pp.19-49, 1999-10-09 (Released:2009-02-16)

縄文土器の野焼き方法を復元するためには,黒斑などの焼成痕跡が最も重要な材料となる。縄文土器の黒斑は弥生土器に比べ明瞭なパターンを見い出しにくいので,野焼き実験により黒斑の形成過程を明らかにし,実験結果と縄文土器の黒斑を突き合わせる作業を積み重ねることが重要である。本稿では,一連の開放型野焼き実験に基づいて,形成過程の違いにより黒斑を「大きな炎を出す薪からのスス付着による薪接触黒斑(逆U字形と2個1対が典型)」「棒状の薪接触黒斑」「オキ接触黒斑」「残存黒斑」などに類型化した。東日本の縄文時代前・中期の5資料の黒斑を観察した結果,かなり多くの土器においてこれらの類型が適用できたため,黒斑の形成過程から野焼き方法をある程度推定できた。その結果,以下の点が明らかになった。1.大きな炎からのススを起源とする薪接触黒斑が本稿の分析資料の多くでみられたことから,覆い型ではなく開放型で野焼きされたことが再確認された。薪接触黒斑は土器の地面側の内面,地面側の外面,上向き側の外面などに付くことから,横倒しになった土器の下側や側面に多くの薪が置かれていたことが明らかになった。一方,覆い型野焼きでは内部が窯に近い状態になり,大きな炎から出たススによる黒斑は少ない。2.5資料の大半の土器において内面に薪・オキ接触痕がみられることから,内面に薪を入れたことが明らかである。弥生土器では内面に薪を入れないのに対し,縄文土器では内面に入れるのは,開放型の野焼き実験で示されたように,外面の薪だけでは内面まで十分に燃焼ガスが回りにくいためと考えられる。3.本稿では東日本の縄文前・中期の5資料の黒斑を観察したが,上述の共通性と共に,以下の違いもみられた。三内丸山遺跡Vb層の円筒下層b式土器(特に大型)は,薪の上に横倒しに設置し,側面・上面に薪と草燃料をかぶせている点で,野焼き途中で横倒しした可能性が高い他の4資料と異なる。このような方法をとる理由として,(1)土管のような形の円筒下層b式土器は,直立して設置すると口縁部まで十分な炎が当たりにくい,(2)土器の大量生産に伴う薪燃料の節約のため草燃料を併用した,などが考えられる。4.「器面の色調が橙色か白色か」についての資料間の違いは,内外面の黒斑の特徴や内外底面の黒斑の有無と相関を示すことから,焼成雰囲気と共に,加熱の強度の違いを反映する可能性がある。三内丸山遺跡Vb層では,5リットル未満の小型は大半が橙色なのに対し,大型は白色の方がやや多かったが,これは,薪・草燃料を土器に立てかける大型深鉢の野焼き方法の結果かもしれない。【引用文献 】阿部芳郎 1995「弥生前期土器の器体構造について」『津島岡大遺跡5』pp.89-1001995「土器焼きの火・煮炊きの火」『考古学研究』42(3):75-91青森県教育委員会 1979『板留(2)遺跡』1997『三内丸山遺跡VIII』後藤和民 1980『縄文土器を作る』中公新書。北上市教育委員会 1983『滝ノ沢遺跡』小林正史 1993「民族考古学からみた土器の用途推定」『新視点・日本の歴史1』 132-139頁。1993「カリンガ土器の制作技術」『北陸古代土器研究』3号74-103頁。1994「稲作農耕民とトウモロコシ農耕民の煮沸用土器―民族考古学による通文化比較」『北陸古代土器研究』4号 85-110頁。1995「縄文から弥生への煮沸用土器の大きさの変化」『北陸古代土器研究』5号 110-130頁。1998「野焼き方法の変化を生み出した要因―民族誌の野焼き方法の分析―」『民族考古学序説』民族考古学研究会編、pp.139-159、同成社久保田正寿 1989『土器の焼成I』クオリ久世建二・北野博司・金昌郁・藤井一範・姜興錫・南部次郎・小林正史 1994「縄文土器から弥生土器への野焼き技術の変化」『日本考古学協会第60回総会研究発表要旨』26-29頁。久世建二・北野博司・小島俊彰・小林正史 1996「縄文土器の野焼き方法」『日本考古学協会第62回総会研究発表要旨』94-97頁。宮川村教育委員会 1996『堂の前遺跡発掘調査報告書』小笠原雅行 1996「三内丸山遺跡出土土器の数量的研究」『シンポジウム考古学とコンピュータ―三内丸山をコンピュータする―』pp.29-44岡安雅彦 1994「黒斑にみる弥生土器焼成方法の可能性」『三河考古』7号 45-65頁。1996「縄文土器焼成方法復元への実験的試み」『古代学研究』133号 21-31頁。1999「野焼きから覆い焼きへ その技術と東日本への波及」『弥生の技術革新 野焼きから覆い焼きへ』pp.48-63 安城市歴史博物館
著者
星上 幸良 小林 昭男 宇多 高明 三浦 正寛 熊田 貴之 三波 俊郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海洋開発論文集 (ISSN:09127348)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.481-486, 2003 (Released:2011-06-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Preventive method of beach erosion and accretion triggered by the formation of wave shadow zone associated with extension of port breakwater is investigated through the field observation, taking the Shimohara fishing port in Tateyama City in Chiba Prefecture as the example. This phenomenon is well-known in coastal engineering, but in Japan this kind of beach erosion and accretion have been repeatedly reported. In order to solve this problem, not only the research in engineering method, but also improvement of the environmental assessment system are required so as to include the prediction of topographic changes in the items of environment assessment.
著者
杉林 堅次
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.201-209, 2016-07-25 (Released:2016-10-25)
参考文献数
26
被引用文献数
1

経皮吸収型製剤(TDDS)を多くの薬物に応用するためには、皮膚透過促進技術の利用が必須となる。一方で、最終的な医薬品とするためには、バイオアベイラビリティや吸収速度をあらかじめ予測した値にするため、コントロールドリリースの機能も必要となる。本稿では、TDDSのこの40年の開発研究から、経皮吸収促進剤の利用研究やイオントフォレシスやマイクロニードルなどの物理的吸収促進法の研究までについて紹介する。また、これら吸収促進法との併用により、ようやく本来の意味のコントロールドリリース能を持ち、高いバイオアベイラビリティを有するTDDSの開発が可能になりつつあること、さらにはモノのインターネット(IoT)の概念を導入したTDDSについて述べ、これら新規なTDDS(TDDS-IoT)が医薬品製剤の中心を担う可能性について論述する。
著者
西林 克彦 宮崎 清孝 工藤 与志文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.202-213, 2017-03-30 (Released:2017-09-29)
参考文献数
33

本論文は2011年から2014年に実施した教育心理学会の研究委員会企画シンポジウムである「教科教育に心理学はどこまで迫れるか」の企画者による教育心理学研究の現状に対する問題提起である。現在の心理学的な教科教育研究では「どう教えるか」という方法のみが焦点化され, 「何を教えるのか」, つまり扱われる知識とその質の問題は教科教育学の扱うべきもので心理学的研究とは無関係とされる。しかし扱われる知識の質を抜きにした心理学的研究は, 実践的な有効性を欠くのみならず, 理論的にも不十分なものになるだろう。扱う知識内容と教える方法は相互作用をするため内容別に方法を考えなければならない, というだけのことではない。授業に臨む個々の教師が, 個々の教材についてその時々に持っている知識の質のあり方を, 教授学習過程の研究に取り込んでいかなければならない。このためには, 特定の授業者が特定の知識内容についておこなう特定の教授学習過程から出発する「ボトムアップ的実践研究」が必要になるだろう。ボトムアップ的アプローチでも科学としての普遍性を求める研究は可能であり, それは教授学習過程について新しい知見を生み出していく可能性を持っている。
著者
小林 良彦 中世古 貴彦
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.3-16, 2019-07

科学技術コミュニケーター像の探求に有益な情報提供を行うための試行調査として,求人・求職支援ポータルサイト「JREC-IN Portal」に掲載された求人情報の分析を行った.本研究では,5カ月間の調査を通して得た83件の求人情報における雇用条件や応募要件,また,そこから読み取れる職務や職能の実情を調べた.結果として,それらの求人情報を,URAや産官学連携コーディネーターを含む「URA相当」,研究機関や研究プロジェクトの広報担当者から成る「科学広報」,ジオパーク専門員を含む「科学館スタッフ」,そして,ファンドレイザー等の「その他」に大別することができた.さらに,担う職務や求められる職能が求人情報において詳述されていない,という現状も明らかにすることができた.これらの結果からは,想定する職種分類に応じた科学技術コミュニケーター養成のコンテンツ開発が求められること,そして,科学技術コミュニケーターの専門的な能力が未だ十分に認知されていない状況が示唆された.