著者
林 奈津子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.418-427, 2010-07-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

静岡県西部の太田川下流低地において,1944年の東南海地震の際に生じた,噴砂地点と微地形・浅層堆積物との関係を考察した.液状化現象は一般的に,砂質の堆積物で構成される地表の微地形に対応して発生するとされるが,対象地域では局所的に後背湿地に集中して発生する場合がみられた.調査地における表層堆積物について検討したところ,後背湿地を構成する粘土-シルトの細粒堆積物の下位に,砂質シルト-砂の粗粒堆積物が検出され,噴砂地点の分布と対応することが明らかになった.さらに,この粗粒堆積物は遺跡で検出された埋没旧河道の両岸に認められ,地表の自然堤防構成層と同様の層相であるという特徴をもつことから,埋没した自然堤防構成砂層である可能性が高い.また,この自然堤防構成砂層が母材となった噴砂痕が弥生後期の考古遺跡から検出されており,1944年の地震時には,地表の微地形を構成する堆積物に加えて,このような埋没自然堤防構成砂層が液状化したと考えられる.

2 0 0 0 OA 博雅笛譜考

著者
林 謙三
出版者
奈良学芸大学
雑誌
奈良学芸大学紀要 (ISSN:0369321X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.89-103, 1960-02-15

The Hahuga-Tehihu is a partial score edited by Minamoto-no-Hiromasa 源博雅 (a noted Japanese musician in the 10th cent.), for flute in the 3rd year of Koho 康保 (A.D.966). This consists of about 50 melodies both in T'ang and Japanese musics ; and among them you will find some rare ones of T'ang period that are now entirely forgotten. They would be very good material for us in the study of the music of T'ang period. To our great regret, however, these melodies are now dead ones ; they could be really helpfull as materials only after they were made to be read. I was fortunate enough to read most of them through my own methods. In fact, this score has something common in it with those of sho 笙 (Chinese mouth-organ) and of biwa 琵琶 (Chinese lute) of old times in point of its expression only of the basic melodies of T'ang music.
著者
小林 茂雄 中嶋 聡 小林 美紀
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.2_103-2_110, 2014-09-30 (Released:2014-10-25)
参考文献数
24

本研究は、視覚を完全に遮断した空間で協同造形作業を行う際、どのような対人協力行動やコミュニケーション効果が得られるかを実験的に検討した。幼稚園児から大学生までの被験者実験で得られた主な結果を以下にまとめる。 1)暗闇では明所の作業に比べ、声が大きく、発話量が増える傾向にあった。暗闇では初対面同士でも発話が増えることと、小学生以下の低年代の方が声が大きく発話が増える傾向にあった。 2)暗闇では明所に比べ、他者との協同作業が顕著に観察された。協同作業が、低年代では身体接触によって、高校生以上の高年代では言語によるコミュニケーションによって、より活性化されていた。 3)暗闇での協同作業は困難であったと被験者に評価されたものの、視覚が働かないことの非日常性による楽しさや、他者と躊躇なく関われるなどの対人行動に対する障壁の低さが言及された。
著者
徳永 由太 高林 知也 稲井 卓真 中村 絵美 神田 賢 久保 雅義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.I-106_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに】膝関節周囲の悪性腫瘍による大腿四頭筋の広範囲切除によって膝関節伸展筋力は大幅に低下し,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作に影響を及ぼすことが報告されている.一般的には,大腿四頭筋が膝関節伸展作用を発揮すると考えられているが,一部の先行研究ではハムストリングス(HAM)が膝関節伸展作用を発揮する可能性が提示されている.しかし,どのような姿勢でHAMが膝関節伸展作用を発揮するのかは明らかとなっていない.そこで本研究は,数理モデルを用いてHAMが膝関節伸展作用を発揮できる姿勢を明らかすることを目的とした. 【方法】身長1.8 m,体重80 kgの対象者を仮定し,体幹,大腿,下腿から構成される矢状面リンクモデルを構築した. HAMの膝関節屈曲および股関節伸展モーメントアーム(MA)はOpenSimのGait2392モデルで報告されており,HAMの筋張力を決定すれば,HAMによる膝関節屈曲および股関節伸展モーメントは一意に決定できる.本研究では10Nmの膝関節屈曲モーメントが発揮されるようにHAMの筋張力を設定した.膝関節を屈曲0度~90度,股関節を伸展30度~屈曲90度の範囲内で変位させ,順動力学シミュレーションを実施した.なお,純粋なHAMの作用を確認するため重力の影響がない姿勢を仮定した.HAM機能の判定には,シミュレーション開始時と終了時の膝関節屈曲角度の差を用いた.先行研究において,HAMが膝関節伸展作用を発揮するためには,HAMの股関節伸展MAが膝関節屈曲MAに比較して大きい必要があると報告されている.そのため,股関節伸展MAを膝関節屈曲MAで除した値(MA比)も算出した.上記の解析はScilab 6.0.0によって実施した. 【結果】HAMは膝関節屈曲7~0度かつ股関節屈曲2~62度(条件1),膝関節屈曲44~90度かつ股関節伸展30~屈曲50度(条件2),の2つの条件下で膝関節伸展作用を発揮した.条件1では膝関節角度が小さいほど,条件2では膝関節屈曲角度が大きいほど膝関節伸展作用が強くなる傾向にあった.また,MA比が大きい場合でも,HAMが膝関節伸展作用を発揮しないこともあった. 【考察】本研究の結果より,HAMの膝関節伸展作用の発揮はMA比の大小だけでは説明できないことが明らかとなった.先行研究において,筋の力学的作用はリンクシステムの姿勢により変化することが報告されている.本研究においても,姿勢の影響によりHAMの力学的な作用が修飾されている可能性が考えられた. 【結論】本研究は2つの条件下においてHAMが膝関節伸展作用を発揮する可能性を提示した.この結果から考えると,条件1・2におけるHAMの膝関節伸展作用をうまく活用することが出来れば,大腿四頭筋の機能不全を有する者であっても,椅子からの立ち上がりや歩行などの日常生活動作を円滑に遂行できる可能性が考えられた. 【倫理的配慮,説明と同意】本研究は数理モデルを用いた順動力学シミュレーションによる検証のため,倫理的配慮および説明と同意に該当する内容は含んでない.数理モデルに必要なパラメータは先行研究で報告されたものや既存のモデルを参照しているため,個人を特定する内容は含まれていない.
著者
小林 義典 松本 敏彦 石上 恵一 平井 敏博
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-23, 1996-02-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
139
被引用文献数
12 9

In order to verify the relation between the body function and occlusion, the gravity function, electronystagmography, and auditory brainstem response of TMD patients, edentulous patients and healthy subjects with 500 μm thick experimental occlusal interference were analyzed, and it was confirmed that occlusal problems impede the auditory system, body's posture adjusting system and vestibule system. Further, when the relation between the occlusal contact and the bodily motor function were compared between healthy subjects and patients whose occlusion had been treated, it was confirmed that there was close relation between the two.Furthermore, from the analysis of human body phenomena of healthy subjects with 100 μm thick experimental occlusal interference, it was confirmed that occlusal problems induced bruxism or continuously aggravated the problem and eventually entailed TMD, as well as changed the function of the autonomic nervous system and provoked emotional stress and sleep disorders.From these results, it was verified that occlusal problems affected the function of the middle ear transmission system, equilibrium sense, auditory brainstem response, function of autonomic nervous system, emotion and sleep and that the occlusal function was closely related to the bodily motor function.
著者
石井 宏明 樋端 恵美子 村山 秀喜 小林 則善 小林 龍彦 床尾 万寿雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.185-190, 2021

<p>HbA1cの測定方法は,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法のほか,免疫法,酵素法など複数存在する.本邦では従来多くの施設でHPLC法が用いられてきたが,近年酵素法や免疫法による測定が増えている.今回,免疫法でHbA1c偽高値を示した異常ヘモグロビンHbCの1症例を経験した.HPLC法では異常低値を示し,酵素法では基準値内,グリコアルブミンは基準値内であった.遺伝子解析で,<i>β</i>グロビン鎖のミスセンス変異によるHbCと診断した.HbCはアフリカに多い異常ヘモグロビン症で,日本人の報告としては非常に稀であるが,国際化に伴って日本でも症例数が増えることが予想される.HbA1cと血糖値に乖離を疑った際には,複数の方法によるHbA1cの測定,グリコアルブミンによる評価等を含めた慎重な対応が必要である.</p>
著者
光安 皓 大口 敬 林 誠司 金成 修一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_621-I_628, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
7

自動車分野における省エネルギー方策の1つとして,エコドライブがよく知られている.これまでガソリン車の車両の運動とエネルギー消費量の関係については理論的および実証的検討がなされてきたが,近年普及が進みつつある電気自動車については,未だ十分な検討がされていない.その理由の1つとして,電気自動車特有の回生エネルギーを考慮した検討が十分になされていないことが挙げられる.本論文では,まず,実際に市販されている電気自動車のシャシダイナモ試験結果から,車両が任意の運動状態にあるときの駆動力およびエネルギー消費量を算出し,整理した.次に,都市部における様々な条件を想定したショートトリップに対して,エネルギー消費量の推計を行い,電気自動車のエコドライブ方法についての検討を行った.
著者
勝山 美海 花田 恵介 河野 正志 市村 幸盛 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.733-741, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
19

要旨:右上肢麻痺を呈した亜急性期脳梗塞患者1例に対して,リストバンド型活動量計を用いた行動心理学的介入(Transfer Package)を行った.作業療法介入は,第17病日から1回2時間,週3回,計10回行った.また上肢活動量計測は1週ごとに実施し,対象者に示した.その結果,麻痺側上肢機能と日常生活における麻痺手の使用頻度は改善し,外来終了2ヵ月後にも維持された.上肢活動量の客観的計測は,対象者と作業療法士の双方が麻痺手の使用状況を客観的に振り返ることができ,Transfer Packageをより効率化できると思われた.今後はケースシリーズ研究や比較研究を行い,その有効性を確認する必要がある.
著者
小林 勇輝 後藤 惟樹 遠藤 勝義 山崎 大 丸山 龍治 林田 洋寿 曽山 和彦 山村 和也
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, pp.973-974, 2017

中性子応用計測において,集光デバイスを用いた中性子線の高強度化による測定時間の短縮が求められている.我々はマイクロ波プラズマジェットを用いた数値制御PCVMにより,石英ガラス製のマンドレルを作製し,その上にNiC/Tiの多層膜を積層し,これを離型することで,中性子集光用Wolter Ⅰ型スーパーミラーの作製を目指している.本報では,石英ガラス製回転体試料へマイクロ波プラズマジェット加工を適用し,その加工特性について評価した.

2 0 0 0 OA 経書大講

著者
小林一郎 著
出版者
平凡社
巻号頁・発行日
vol.第2巻 論語下, 1940
著者
小林 秀明 相馬 仁 谷藤 克也
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.74, no.748, pp.2932-2938, 2008-12-25 (Released:2011-03-04)
参考文献数
9

This paper deals with the effects of axle misalignment of a truck with independently rotating wheels (IRWs) on the wheel lateral force and the flange wear. Since the truck with IRWs lacks for self-steering ability, it is concerned that the wheel continues flange contact with rail due to the effects of axle misalignment in parallelity and the flange wears rapidly under the continuous flange contact condition. Numerical simulations are carried out, using an analytical vehicle model with the axle misalignment. Obtained results are as follows : Even if misalignment is a little, the vehicle with IRWs which dose not have self steering ability tends to run under the flange contact condition, and then continuous lateral force acts between the flange and the rail. The vehicle with IRWs, which has axle misalignment only in the lateral setting, does not have tendency of continuous flange contact. In the range of misalignment in parallelity considered in this paper, the wheel lateral force increases with the increase of the misalignment, and the wheel lateral force of IRW increases more than that of the solid wheelset. The wheel lateral forces generated due to the misalignment are equivalent to the ones generated in the curved tracks, the radii of which make the attack angles corresponding to the misalignment.
著者
林 文雄
出版者
北海道帝国大学
巻号頁・発行日
1931

博士論文
著者
林 祐一 西田 承平 竹腰 顕 村上 宗玄 山田 恵 木村 暁夫 鈴木 昭夫 犬塚 貴
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.244-249, 2016-07-25 (Released:2016-08-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

症例は65歳女性.40年前,双極I型障害と診断され,リチウム製剤で治療を開始された.途中,数年の中断を経て,10年以上前から炭酸リチウム600 mg/日を内服していた.精神症状のコントロールは比較的良好であった.X年12月,高血圧の診断のもと,アジルサルタン20 mg/日の内服が開始されたところ,内服3週間後から動作時の両手指のふるえが生じるようになった.症状は進行性で,手指のふるえが強まり,内服4カ月後ごろからたびたび下痢,便秘を繰り返すようになった.経過観察されていたが,翌年10月下旬ごろから食欲の低下,認知機能の低下が生じ,2週間程度で進行するため当科に入院した.神経学的には,軽度の意識障害,四肢のミオクローヌス,体幹失調を認め,立位が困難であった.リチウムの血中濃度は3.28 mEq/lと高値を認めた.リチウム中毒と診断し,炭酸リチウムを含む全ての経口薬を中止し,補液を中心とした全身管理を行ったところ神経症状の改善を認めた.炭酸リチウムは長期間,適正な投与量でコントロールされていたが,降圧薬のアジルサルタンの投与を契機として,慢性的な神経症状が出現し,次第に増悪,下痢,脱水を契機にさらに中毒となったものと推定した.リチウム製剤はさまざまな薬剤との相互作用がある薬剤で,治療域が狭いという特徴がある.双極性障害は比較的若年期に発症し,リチウム製剤を長期内服している患者も多い.このような患者が高齢となり高血圧を合併することも十分考えられる.リチウム製剤投与者に対して,降圧薬を新たに開始する場合には,相互作用の観点から薬剤の選択ならびに投与後の厳重なリチウム濃度の管理が必要となる.現行の高血圧治療ガイドラインでは特にリチウム製剤投与者への注意喚起がなされておらず,このような高齢者が今後も出現する可能性がある.また,リチウム製剤投与高齢者の高血圧の管理において重要な症例と考え報告する.
著者
伊藤 海斗 林 輝 加嶋 健司 加藤 政一
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.878-885, 2018 (Released:2018-12-18)
参考文献数
18
被引用文献数
2 1

The statistical property of wind power fluctuation, which does not fit to the normal distribution because of its high probability of the extremal outlier, is regarded as a source of severe damage to power systems. In view of this, the authors have proposed an evaluation method for the impact of wind power fluctuation on power system quality, assuming that this heavy-tailed uncertainty obeys a power-law. In this paper, we first examine the validity of this assumption based on real data of frequency deviation under wind power interconnection. Then, the evaluation method is improved by extending theoretical results, and is applied to analysis of load frequency control model to verify its advantage over Monte Carlo methods.
著者
若林 明彦 ワカバヤシ アキヒコ Akihiko WAKABAYASHI
雑誌
千葉商大紀要
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.335-352, 2004-12-31

1960年代後半から1970年代にかけて環境問題に取り組む思想は人間中心主義から人間非中心主義,つまり環境主義へと転換した。後者には様々な思想が含まれるがその中でもアルネ・ネスが提唱したディープ・エコロジー運動は思想だけでなく実際の環境保護運動にも大きな影響を与えた。本稿は,ネスのディープ・エコロジーの概念及びそれを基礎づける彼の環境哲学を概観するものである。彼は,人間中心主義的なシャロー・エコロジーに対して生命圏中心主義,生態系中心主義としてのディープ・エコロジーの原則を,それがどのような思想を持つ者でも同意できる八項目のプラット.ホームとして提起する。そしてそのプラット・ホームがどのように究極的規範から合理的に導出され,どのように環境保護のための実践的規則へと合理的に展開されるかを示す「エプロン・ダイアグラム」という図を呈示することによって,ディープ・エコロジー運動がいかに根源的かを示す。また,プラット・ホームを導出する究極的規範は,同一のものである必要はなく,各自がそれを宗教や哲学に求めてもかまわないとされる。そこでネスは,「自己実現!」を究極的規範とする彼固有の環境哲学「エコソフィT」を展開する。それは,利己主義的な自己(self)の枠組みを突破して行き,最終的には生命圏全体を包括する自己(Self)にまで自己を拡大することを意味している。