著者
小林 和夫 Kazuo KOBAYASHI
出版者
創価大学社会学会
雑誌
SOCIOLOGICA (ISSN:03859754)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.87-108, 2018-03-20

本論の目的は,日本占領期ジャワにおける隣組制度が,1944年1月のジャワ全土での導入前に,段階的に各地で設置されていたことをあとづけることにある.本論では,日本占領期のジャワで隣組制度がいちはやく導入されたバンドゥン市における既存の隣保制度,隣組の法的位置づけ,設置目的,機能を論じる。 分析の結果,本論で示したバンドゥンをはじめとする各地の隣組は,ジャワ軍政による動員と統制を容易にする機能をはたしていたこと,インドネシアの「伝統」とされ,相互扶助を表象するゴトン・ロヨンを制度化するかたちで導入されたことが明らかになった。
著者
岡田有司 大久保智生 半澤礼之 中井大介 水野君平 林田美咲 齊藤誠一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

企画趣旨 学校適応に関する研究は近年ますます活発になり,小学校・中学校・高校・大学と各学校段階における学校適応研究が蓄積されてきている。学校段階によって学校環境や児童・青年の発達の様相は異なるといえ,学校適応研究においても学校段階を意識することが重要だといえる。こうした問題意識から,企画者らは2017年度は小学校段階に焦点をあてて学校適応について検討を行った(大久保・半澤・岡田,2017)。本シンポジウムでは,中学校段階に注目し,主に友人関係の観点から学校適応にアプローチする。 先行研究では中学生の学校適応に影響を与える様々な要因について検討されてきたが,その中でも友人やクラスメイトとの関係は学校への適応に大きなインパクトがあることが示されてきた(岡田,2008;大久保,2005など)。 中学校段階は心理的離乳を背景に友人関係の重要度が増すとともに,同性で比較的少人数の親密な友人関係である,チャムグループを形成する時期であるとされる(保坂・岡村,1986)。そして,この時期の友人関係では,内面的な類似性が重視され,排他性や同調圧力が強くなるといった特徴のあることが指摘されている。このような友人関係を形成することは発達的に重要な意味がある一方で,中学校段階において顕在化しやすい学校適応上の諸問題と密接に関連していると考えられる。 以上の問題意識から,本シンポジウムでは友人という観点を含めながら中学生の学校適応について研究をされてきた登壇者の話題提供をもとに,この問題について理解を深めてゆきたい。中学生の「親密な友人関係」から捉える青年期の学校適応中井大介 近年,青年期の友人関係に関する研究では青年が親密な関係を求めつつも表面的で希薄な関係をとることや状況に応じた切替を行うといった複雑な様相が指摘されている(藤井,2001;大谷,2007)。その中で,依然として「親友」と呼ばれるような「親密な友人関係」が青年期の学校適応や精神的健康に影響することも指摘されている(岡田,2008;Wentzel, Barry, & Caldwell, 2004)。 一方で,このように重要とされている青年期の親密な友人関係であるが,そもそも青年にとって,このような親密な友人関係がどのようなものであるかを検討した研究は少ない(池田・葉山・高坂・佐藤,2013;水野,2004)。その中でこのような青年期の親密な友人関係をとらえる枠組みの一つとして,近年,青年期の友人に対する「信頼感」の重要性が指摘されている。 しかし,この青年期の友人に対する「信頼感」については,質的研究は行われているものの量的研究が少ないため未だ抽象的な概念である。この点を踏まえれば青年期の親密な友人関係について主体としての青年自身が信頼できる友人との関係をどのように捉えているのかを量的研究によって検討する必要があると考えられる。 加えて上記のように中学生にとって親密な友人関係が学校適応や精神的健康に影響を及ぼすことを踏まえれば,友人に対する信頼感と学校適応の関連を詳細に検討する必要性があると考えられる。しかし,これまで友人に対する信頼感が学校適応とどのような関連を示すかその詳細は検討されていない。そのため生徒の学年差や性差などによる相違についても検討する必要がある。 そこで本発表では中井(2016)の結果をもとに,第一に,「生徒の友人に対する信頼感尺度」の因子構造と学年別,性別の特徴を検討し,第二に,友人に対する信頼感と学校適応との関連を学年別,性別に検討する。これにより中学生の学校適応にとって「親密な友人関係」がどのような意味を持つかについて今後の研究課題も含め検討したい。スクールカーストと学校適応感の心理的メカニズムと学級間差水野君平 思春期の友人関係では,「グループ」と呼ばれるような同性で,凝集性の高いインフォーマルな小集団が形成されるだけでなく(e.g., 石田・小島, 2009),グループ間にはしばしば「スクールカースト」という階層関係が形成されることが指摘されている(鈴木, 2012)。スクールカーストは,生徒の学校適応やいじめに関係することが指摘されている(森口, 2007;鈴木, 2012)。中学生を対象にした水野・太田(2017)では学級内での自身の所属グループの地位が高いと質問紙で回答した生徒ほど,集団支配志向性という集団間の格差関係を肯定する価値観(Ho et al., 2012;杉浦他, 2015)を通して学校適応感に関連することを明らかにした。このように,スクールカーストに関する心理学的・実証的な知見は未だに少ないことが指摘されているが(高坂, 2017),スクールカーストと学校適応の心理的プロセスが少しずつ示されてきている。 また,個人内の心理的プロセスだけでなく,学級レベルの視点を取り入れた研究も必要であると考えられる。なぜなら,学校適応とは「個人と環境のマッチング」(近藤, 1994;大久保・加藤, 2005)と言われるように,個人(児童や生徒)と環境(学級や学校)の相性や相互作用によって捉える議論も存在するからである。さらに,近年のマルチレベル分析を取り入れた研究から,学級レベルの要因が個人レベルの適応感を予測することや(利根川,2016),学級レベルの要因が学習方略に対する個人レベルの効果を調整すること(e.g., 大谷他,2012)のように,日本においても学級の役割が実証的に示されてきているからである。 本発表では中学生のスクールカーストと学校適応の関連について,スクールカーストと学校適応の関連にはどのような心理的メカニズムが働いているのか,またどのような学級ではスクールカーストと学校適応の関係が強まってしまう(反対に弱まってしまう)のかを質問紙調査に基づいた研究を紹介して議論をすすめたい。友人・教師関係および親子関係と学校適応感林田美咲 従来の学校適応感に関する多くの研究では,友人や教師との関係が良好であり,学業に積極的に取り組む生徒が最も学校に適応していると考えられてきた。しかし,学業が出来ていない生徒や教師との関係がうまくいっていない生徒が必ずしも不適応に陥っているとは限らない。そこで,今回は学校適応感を「学校環境の中でうまく生活しているという生徒の個人的かつ主観的な感覚(中井・庄司,2008)」として捉え,検討していく。 友人関係や教師との関係が学校適応感に及ぼす影響については,これまでも検討されてきている (例えば,大久保,2005;小林・仲田,1997)。さらに,家族関係も学校適応感と関連することが示されており,学校適応について検討する際には家族関係やクラス内にとどまらない友人関係も考慮するという視点が必要であると指摘されている (石本,2010)。人生の初期に形成される親子関係は,後の対人関係を形成する上での基盤となることが考えられる。そこで,親への愛着を家族関係の指標とし,友人関係,教師との関係と合わせて,学校適応感にどのような影響を及ぼすのかについて検討した(林田,2018)。 その結果,愛着と学校内の対人関係はそれぞれに学校適応感に影響を及ぼすだけでなく,組み合わせの効果があることが示唆された。親子関係が不安定なまま育ってきた生徒であっても,友人関係や教師との関係に満足していることが補償的に働き,学校適応感が高められることや,友人関係や教師との関係に満足できていない場合,親への愛着の良好さに関わらず,高い学校適応感が得られにくいことが示唆された。つまり,学校適応感を高めるためには,友人関係や教師との関係が満足できるものであることが特に重要であると考えられる。 本発表では,親への愛着や友人関係,教師との関係といった中学生を取り巻くさまざまな対人関係が学校適応感にどのような影響を及ぼしているのかについて,研究結果を紹介しながら考えていきたい。
著者
富田 賢吾 林 瑠美子 錦見 端 三品 太志 村田 静昭
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.91-100, 2017 (Released:2017-11-23)
参考文献数
10

実験研究を行う大学において、火災事故が多数発生しており、防火教育の必要性が高まっている。本研究では、より効果的な防火教育のための教材、手法を開発することを目的として、学内の解体予定の建物を活用し、実験室で起こる火災事故を模擬した火災実験を実施した。火災発生からわずか3分程度で、煙は通常の人間の呼吸域に達し、視界も煙によって遮られることや、室内で発生した煙は廊下、階段室、上階にまで拡散すること、煙の流動に伴って温度の上昇が起きること、入口扉や防火扉によって煙の拡散が遮断されること、防火扉が火災感知器のセンサーと連動して閉鎖すること等を建物内各所に配置したビデオカメラや温度センサーによって確認した。これらの得られた教訓を元に、撮影した映像を編集し、防火・防災教育のためのビデオ教材を作成した。学内で行われている化学物質や火災対応向けの講習、講義等に活用しており、高い教育効果が期待できる。
著者
林 博貴
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、超弦理論の真空を用いて現象論における問題を解明することである。その中でも特に、F理論のコンパクト化は四次元の超対称性大統一理論に出現する物質場と湯川結合を全て生成することができるため、現象論を議論する超弦理論の真空として非常に魅力的である。本年度はF理論を用いた超対称性大統一理論における陽子崩壊問題について議論した。超対称性を持った大統一理論は、繰りこみ可能な陽子崩壊を引き起こす演算子の存在が一般には許されてしまう。そこで、F理論を用いて大統一理論を構築した際にも、この項をなんらかの方法で禁止する必要がある。我々の研究以前まででよく用いられてきた方法は、あるゲージ群を大統一理論のゲージ群へ破る際に導入する随伴表現スカラー場の期待値を特殊に調節することによって、余分なU(1)対称性を低エネルギー理論に残すというものである。このU(1)対称性によって次元四の陽子崩壊演算子は禁止されると思われてきた。しかし、内部空間の構造をよく調べるとこの期待値が発散し、ゲージ理論の近似が悪くなる場所があり、そこを考えてもU(1)対称性が残るかは自明ではない。そこで、我々は期待値が発散する場所も含めたF理論の内部空間全体を詳細に解析することで、生成されると思われてきたU(1)対称性が実際には破れていることを示した。さらにその元で、次元四の陽子崩壊演算子が生成されることをも明らかにした。我々の研究によって初めて、ゲージ理論の枠内を越えた寄与が物理的帰結を与えることが示され、F理論の内部空間全体の構造も重要であることが認識された。
著者
小林 茂
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.52-66, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
63
被引用文献数
1 4

第二次世界大戦終結まで,日本がアジア太平洋地域で作製した地図を「外邦図」と呼んでいる.外邦図の多くは,旧日本軍が作製し,その性格からこれまで利用が限られてきたが,近年は景観・環境の長期的変化を考える上で重要な資料と考えられるようになってきた.ただしその利用にあたっては,東アジアの近代史を意識しつつ,作製過程や仕様,精度などを解明する作業が不可欠である.そこで本稿では,ここ数年間関係者の協力を得て研究を進めてきた成果を紹介する.外邦図の多様性に始まり,外国での秘密測量,台湾や朝鮮など旧植民地での地籍測量に伴う地形図作製,外国製図の複製や空中写真測量の発展など外邦図に関連する主要なトピックついて触れ,あわせて東アジア地域への技術移転にも言及する.
著者
石原 和弘 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山. 第2集 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.269-271, 1988-10-31
被引用文献数
2
著者
林 衛
巻号頁・発行日
pp.1-39,

自然にはたらきかけ,自然を改変しながら進化的適応をはたしてきた人間やその営みを理解するためには,はたらきかけの対象である自然環境の理解が欠かせない。自然環境の理解は,人間やその営みの限界(ポジティブな表現では到達点)や矛盾を照らし出すはたらきをもっている。地球惑星科学の探究者はしばしば,その最先端にいてそれら限界や矛盾にいちはやく気づける。社会の代表者として探究をしている科学研究者ならではの役割は,市民社会の構成員であるほかの主権者(市民)と探究の目的や成果の共有を図ることにある。しかし,地球惑星科学によって得られる知見や批判的思考力はしばしば「抑制」され,活用されず,学問が軽視あるいはねじ曲げられる状況が放置され,自然災害や原発震災の原因となってきた。「御用学者」問題発生に通ずる科学リテラシーや批判的思考力の「抑制」とその克服の道筋を,認知科学的な「共感」と理性のはたらかせ方のメタ認知から始まる人の「倫理」の視点から考察する。
著者
大嶋 繁 山田 真理絵 根岸 彰生 大島 新司 齋木 実 小林 大介
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.175-178, 2016 (Released:2016-09-21)
参考文献数
4

薬剤師の在宅業務の充実を目的として, 在宅患者の症例を基に作成したシナリオおよび高機能患者シミュレータを用いた『フィジカルアセスメントアドバンス講習会』を行った. その際シナリオを用いた演習を行い, 薬剤師が在宅で実施すべき項目 (在宅業務必須項目) の実施率 (実施者数/受講者数) を, 訪問薬剤管理指導料の算定要件等を基に作成したチェックシートを用いて調査したところ, 項目ごとの差が大きかった. 本調査結果から薬剤師が在宅業務を実施する上で, 患者の生活を支えることを意識した薬学的管理業務のトレーニングの必要性が示唆された.
著者
渡辺 彰 名村 正伸 金谷 法忍 大家 他喜雄 林 守源
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.76, no.9, pp.1409-1413, 1987

症例は26才男性で,急性左心不全で入院した.心電図は心室内伝導傷害と前側壁心筋梗塞の所見を示した. CPKは最高10470IUに上昇し, LDHは6620IUに上昇した.入院第51病日に心臓カテーテル検査を施行した.左室造影では心筋収縮能はび漫性に低下していた.選択的冠動脈造影では左冠動脈主幹部に長さ1.6cmの辺縁が平滑な50%の狭窄を認めた.また,前下行枝に長さ2.8cmにわたり冠動脈内陰影欠損を認めた.血中ウイルス学的検査でムンプスウイルス抗体価が有意に変動した.発症1年後の右室心内膜心筋生検から心筋炎と診断した.以上より,冠動脈病変を呈したムンプスウイルス心筋炎と診断し,冠動脈病変の病因として冠動脈炎が考えられた.

8 0 0 0 OA 国有林

著者
農林省山林局 編
出版者
大日本山林会
巻号頁・発行日
vol.下巻, 1937
著者
各務 彰洋 花井 泰三 本多 裕之 小林 猛
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.387-395, 1995-09-25
被引用文献数
9

This paper deals with the quality modeling of Ginjo sake using a neural network (NN) and genetic algorithm (GA). A NN model was constructed to estimate 7 sensory evaluations concerning the quality of Ginjo sake from 18 chemical component analytical values. The performance index, J, of the NN model was significantly small compared with that obtained using multiple regression analysis (MRA). Using the model, analytical data on the chemical components was estimated from the 7 given sensory evaluation values by means of a genetic algorithm, which was employed as an optimizing method. It was found that almost all the estimated values coincided with the actual values within an error range of less than 0.3.
著者
田上 幸治 松井 潔 島 貴史 山本 敦子 林 拓也
出版者
日本小児科学会
雑誌
日本小児科学会雑誌 (ISSN:00016543)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.1456-1460, 2011-09-01
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
林 哲也
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:13477196)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.57-61, 2015-03-21

図書館の本への書き込み被害への対策として、利用マナーやモラルに訴えるよりも、個人の私有物か公共の財産かにかかわらず、そもそも本はノートではないのだから、書き込みする対象物とは始めから全く思ってもみないような人が増えるよう誘導したほうが、被害予防に効果的ではないか。そのために、身近な日常生活からの比喩やアナロジーを用いて有害無益をアピールすることを試みる。