著者
宮下 剛輔 栗林 健太郎 松本 亮介
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.677-686, 2020-03-15

システムの大規模・複雑化にともない,サーバの構築・運用を効率化するために,サーバの設定状態をコードで記述する手法が数多く提供されている.それらの手法を効率良く扱うプロセスとして,テスト駆動開発の手法をサーバ構築に応用したProvisioning Testingという手法が提案されている.この手法を支援するテストフレームワークもいくつか登場しているが,あるものは特定の構成管理ツールに依存,またあるものはOSごとの違いを自ら吸収しなければならないなど,汎用性に難がある.シェルコマンドを直接記述する必要があり,可読性に難があるものも存在する.そこで本論文では,生産性や保守性を向上するために,サーバの設定状態を汎用的かつ可読性の高い宣言的なコードでテスト可能なテストフレームワークを提案する.提案手法では,汎用性を高めるために,OSや構成管理ツール固有の振舞いを整理して一般化し,運用業務で発生するコマンド群を体系化・抽象化した汎用コマンド実行フレームワークを定義する.続いて,テストコード記述の抽象度を高め可読性を上げるために宣言的な記法で汎用コマンド実行フレームワークを操作できる制御テストフレームワークを定義する.これにより,管理者がOSや構成管理ツールの違いを気にすることなく,可読性の高いコードでサーバの設定状態を容易にテストできるようになり,サーバの運用・管理コストを低減できる.提案するテストフレームワークをServerspecと名付けた.提案手法の評価は,生産性,保守性に加え,拡張性,実装公開後の影響の4つの観点で行った.
著者
高橋 春樹 出口 善純 阿部 勝 山田 創 秋月 登 小林 尊志 中川 隆雄
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.226-231, 2009-04-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

症例は75歳の女性。主訴は呼吸困難 飼い犬に左手を噛まれた2日後,呼吸困難で近医を受診した。動脈血ガス分析にて低酸素血症を認め,血液検査にて敗血症,播種性血管内凝固症候群,多臓器不全と診断され,当センターに転送された。集中治療(エンドトキシン吸着,持続血液濾過透析)にて軽快し,第14病日退院した。後日,血液培養よりCapnocytophaga canimorsusが検出された。C. canimorsusはイヌ咬傷後の敗血症の原因菌として米国では死亡例も多数報告されており,高齢者・易感染者に重症例が多い。本邦での報告は稀であるが,早期に適切な抗生剤を選択する上で念頭に置くべき病原体と考える。
著者
橋本 すみれ 地野 充時 来村 昌紀 王子 剛 小川 恵子 大野 賢二 平崎 能郎 林 克美 笠原 裕司 関矢 信康 並木 隆雄 寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.171-175, 2009 (Released:2009-08-05)
参考文献数
13
被引用文献数
1

線維筋痛症による全身の疼痛に対し,白虎湯加味方が有効であった症例を経験した。症例は65歳女性。自覚症状として,夏場に,あるいは入浴などで身体が温まると増悪する全身の疼痛および口渇,多飲があり,身熱の甚だしい状態と考えて,白虎湯加味方を使用したところ全身の疼痛が消失した。線維筋痛症に対する漢方治療は,附子剤や柴胡剤が処方される症例が多いが,温熱刺激により全身の疼痛が悪化する症例には白虎湯類が有効である可能性が示唆された。
著者
諸藤 美樹 梶山 渉 中島 孝哉 野口 晶教 林 純 柏木 征三郎 隅田 郁男 花田 基典
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.1013-1018, 1990-08-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
21

九州地方は, HTLV-IのEndemicareaとされているが, その中でも佐賀県は, 比較的陽性率の低い地域と報告されていた.今回, 佐賀県北部の唐津, 東松浦地区における抗ATLA抗体陽性率を検討するため, 1985年9月から10月にかけ唐津赤十字病院を受診した患者757例を対象とし, 抗ATLA抗体をEIA法により測定した.1. 全患者の抗ATLA抗体陽性率は, 13.7%(757例中104例) で陽性率は加齢と共に上昇し, 60~69歳で最高の21.1%に達した.2. 性別の陽性率は, 男性9.6%, 女性17.8%と有意に女性が高率であった (p<0.001).3. 悪性腫瘍患者を除く患者の居住地別陽性率は, 玄海灘に面する鎮西町, 肥前町, 浜玉町が高く, 沿岸部と山間部の比較では, 有意に沿岸部が高かった (p<0.001).4. 疾患別では, 新生物が26.1%と最も高率で, ATLが100%, ATL以外の悪性腫瘍でも, 25.9%と高く, HTLV-I感染がATLのみならず, 他臓器癌とも関わっていることが示唆された.
著者
小林 謙 五十嵐 岳史
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.108-114, 2008 (Released:2008-05-29)
参考文献数
15
被引用文献数
5 3

We performed a demographic analysis of 2293 vertiginous patients seen at our clinic from February 1995 to November 2005. While a definitive diagnosis could be made in 1287 cases (56%), the diagnosis remained tentative in 622 (27%), and the cause diagnosis remained unknown in 384 cases (17%). The most common vertiginous disease was benign paroxysmal positional vertigo (456 cases), followed in prevalence by Meniere's disease (232 cases). Most patients had visited other medical facilities before visiting our clinic. Analysis of the medical facilities visited by the patients suggested that the vertiginous patients visited both physicians and otolaryngologists; while. physicians saw the patients in primary care settings, otolaryngologists examined the patients at general hospitals and university hospitals. This discrepancy may complicate the care of vertiginous patients.
著者
池辺 正典 田中 成典 古田 均 中村 健二 小林 建太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1687-1695, 2006-06-15

近年のインターネットの複雑化にともない,Web の自動解析による情報取得に対する需要が高まっている.そのため,Web ページをカテゴリに分類する手法やWeb の関係情報を解析する手法が数多く提案されてきた.しかし,既存の研究では,Web の自動解析は,リンク関係を中心とした解析を行っており,リンク関係のないWeb ページを関連付けることが困難であった.このため,本論文では,リンク構造解析だけでなく,形態素解析によって任意の単語から関係情報の抽出を行うことで,リンク関係のないWeb ページを関連付ける.また,その結果と品質判定を行ったリンク構造解析結果を組み合わせることで,信頼性の高いWeb ページの関係図を作成する.さらに,アルゴリズムの評価として,Web から取得した情報を利用して,組織の関係図を作成する.そして,既存研究においての主要な方式であるリンク構造解析による結果との比較を行った.評価方式には,リンク構造解析で一般的に用いられている評価値とグラフ理論による可視化を採用し,その結果から本方式の有用性を確認した.
著者
小林 益江 中嶋 カツエ 田中 佳代
雑誌
母性衛生 = Maternal health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.370-374, 1998-12-01
被引用文献数
4
著者
富田 基史 小林 聡 阿部 聖哉 津田 その子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.45-50, 2018-08-31 (Released:2019-05-10)
参考文献数
33

緑化工事において地域性種苗を使用する場合,種苗の移動可能範囲を定めることがまず必要となる。本研究は,種苗移動可能範囲の設定に向け,日本の暖温帯(東北〜九州)において海浜植物6種の葉緑体DNA非コード領域(3,010〜3,647 bp)の遺伝変異にもとづく地域差を評価することを目的とした。ハマエンドウでは主要2グループが,日本海側と太平洋側に分かれて分布する傾向が認められた。一方,ハマヒルガオ・ネコノシタでは複数のハプロタイプが得られたものの明瞭な地域差は認められなかった。コウボウムギ・コウボウシバ・イワダレソウはすべてのサンプルが同一ハプロタイプであった。
著者
大道 博文 林 柚季 目良 和也 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
人工知能学会
雑誌
2019年度 人工知能学会全国大会(第33回)
巻号頁・発行日
2019-04-08

近年,インターネット上でCGアバターを介した他者とのコミュニケーションが普及しつつある.しかしアバターの表情・動作パターンを生成する際,複数の感情が混在する表情やある感情を抑圧しているような表情を表現するための典型的な特徴や統一された指標は無く,モデル作成者の経験や感覚に依るところが大きい.そのため,非熟練者や表情自動合成手法による表情モデルの作成は現状困難である.そこで本研究では,感情の部分的表出(Action Unit(AU))の組み合わせに基づいて複数の表情アニメーション動画を作成し,Shefféの一対比較法を用いて表出したい表情に対する各AUの効果について分析を行う.本研究では“ツンデレ”と呼ばれる「快感情の抑圧表情」を対象として,Ekmanの知見に基づき“中立化”と“隠蔽”の二種類の抑圧表現を用いる.実験の結果,中立化によるツンデレ表現に最も適しているAUの組み合わせは,AU6+12(幸福の目,頬,口の動作)が弱いか無い,かつ赤面が起こっている表情であった.また隠蔽によるツンデレ表現に最も適しているAUの組み合わせは,AU4(怒りの眉)かつ赤面が表出している表情であった.
著者
伊地知 美知子 小田巻 淑子 小林 茂雄
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.213-220, 2010-04-15 (Released:2012-12-13)
参考文献数
11

The purpose of this study is to investigate the relationship between female students' attitudes toward body images and dressing ideas by compaing the results of two surveys which were conducted in 1992 and 2006 .Two hundred female university students who live in the metropolitan area filled out the questionnaire in 1992 and 2006,respectively.The main items of the questionnaire are the consciousness of their real and ideal body images,and the daily patterns of wearing clothes.These questionnaire data were analyzed by using statistical testing,factor analysis and Quantification Method Ⅲ. As to the female students' consciousness of their own body images,5 common factors which express stoutness,bust size,hipline level,height and shoulder slopes were extracted by factor analysis in 1992 and 2006,respectively.Two factors which express stoutness and bust size were different statistically between ideal and real body images.But the structure of factors indicated the same tendency in both 1992 and 2006.Among the factors from dressing ideas by Quantification Method Ⅲand the factors from body images by factor analysis, some correlations were found in 1992, but none were found in 2006.
著者
小林 盾
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.81-93, 2010

この論文では,社会階層の違いがどのように食生活の違いとして現れているのかを,健康への影響に着目して調べた.食生活として野菜と海藻を事例とした.分析の結果,高階層の人ほど野菜と海藻をよく食べ,そうした人たちほど健康と感じていた.野菜と海藻は,バランスのとれた食生活を象徴していると考えられる.これまで,社会階層が食生活にどう影響するのかは分かっていなかった.そこで,東京都西東京市在住の35~59歳女性を対象として,郵送調査を実施してデータを得た(回収人数822人,回収率68.7%).分析の結果,以下のことが明らかになった.第一に,高階層の人ほど野菜と海藻を毎日食べていた.たとえば,高校卒のうち15.4%が毎日海藻を摂っていたのにたいして,大卒だと27.5%,大学院卒だと50.0%であった.第二に,野菜や海藻を毎日食べる人ほど,健康と感じていた.野菜と海藻のどちらも毎日は食べない人のうち,健康に幸せまたはやや幸せと感じるのは81.2%,両方を毎日食べる人のうちでは91.1%だった.第三に,教育から健康への影響を調べた結果,野菜と海藻の摂取が媒介変数となっていた.第四に,みそ汁摂取と朝食摂取が効果をもたなかったので,伝統的な食生活や規則正しい食生活が,健康を促すわけではなかった.
著者
米田 諭 小林 洋三 布居 剛洋 竹田 幸祐 松森 篤史 安藤 稔 辻之上 裕久 西村 公男 福井 博
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.1270-1273, 2006 (Released:2006-11-06)
参考文献数
15
被引用文献数
1

症例は28歳女性.近医でインフルエンザBにてリン酸オセルタミビルなどを処方され,翌日夜間より下腹部痛,下痢,血便が出現し当院を受診.大腸内視鏡検査で横行結腸左半部に全周性にわたる表層の出血,びらんを認めた.内服薬中止にて症状,内視鏡所見の治癒を認めた.薬剤リンパ球幼若化試験でリン酸オセルタミビルのみ陽性であった.本症例はリン酸オセルタミビルが誘因と考えられた急性出血性腸炎第1例目であり報告した.
著者
渡辺 哲也 小林 真 南谷 和範
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.13-20, 2018-02-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
17

A user survey on Braille transcription and audio recording services for the blind was conducted. The use rates of these two services were both more than 40%. The top two providers of these services were either of Braille transcription or audio recording circles and Braille libraries. Nearly half of the users were using these services at a frequency of once in a few months. The problems faced when using these services were long waiting times for the books to be translated. The difference between these two services were documents to be translated and the frequency: Braille transcription service was used mostly for work-related documents, product manuals, music materials, and technical books whereas audio recording service was used for novels, technical books, magazines, and non-fictions: A certain amount of people were using audio recoding service more frequently, once in a week to a few times a month, than Braille transcription service.
著者
小林 一樹 齊藤 由空 廣神 奏音 広井 勉 小野田 淳人
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.199-206, 2017-06-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

世界中で消費され始めている日本の伝統的な食材の一つにこんにゃくがある。こんにゃく製品を製造する過程で多量のこんにゃく飛粉が副産物として生み出されているが,有効な活用方法が少なく,その付加価値を高めるために利用方法を模索する研究が求められている。本研究は,こんにゃく飛粉から再生可能エネルギーの一つであるバイオエタノールを生成することが可能かどうか検証することを目的として行った。硫酸,塩酸または硝酸を用いてこんにゃく飛粉中に含まれる多糖類を単糖類に分解(糖化)し,発酵で単糖類をエタノールと二酸化炭素に分解,蒸留による精製を行うことでエタノールの濃縮を試みた。また,糖化,発酵,精製の各工程後に生成する物質を明らかにするため,高速液体クロマトグラフならびにガスクロマトグラフによる成分分析を行った。本研究により,硫酸を用いた糖化を経ることで,こんにゃく飛粉(30 g)から他の食糧廃棄物と同様にエタノール水溶液(9.1 g/L,600 mL)の生成が可能であることが,明らかになった。本研究は,肥料や家畜飼料の他に,こんにゃく飛粉の新たな活用方法としてバイオエタノールが製造できる可能性を示した。