著者
金森 悟 甲斐 裕子 山口 大輔 辻 大士 渡邉 良太 近藤 克則
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-141, (Released:2022-06-30)
参考文献数
23

目的 高齢者の中には運動行動に関心が低くても,健康の保持・増進に必要な歩行時間(1日30分以上)を満たしている者が存在する。しかし,そのような集団の特性は明らかになっていない。そこで,本研究では,運動行動の変容ステージ別に,1日30分以上の歩行を行っている高齢者の特性を明らかにすることとした。方法 本研究は2019年度に日本老年学的評価研究(JAGES)が行った自記式郵送法調査を用いた横断研究である。対象者は24都道府県62市町村在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者45,939人とした。調査項目は1日の歩行時間,運動行動(1回20分以上で週1回以上)の変容ステージ,身体活動の関連要因(人口統計・生物学的要因8項目,心理・認知・情緒的要因3項目,行動要因8項目,社会文化的要因40項目,環境要因3項目)とした。分析は変容ステージで3群に層別し(①前熟考期,②熟考期・準備期,③実行期・維持期),目的変数を1日30分以上の歩行の有無,説明変数を身体活動の関連要因,調整変数を人口統計・生物学的要因全8項目としたポアソン回帰分析とした。結果 調査への回答者24,146人(回収率52.6%)のうち,分析に必要な項目に欠損がある者,介護・介助が必要な者を除いた18,464人を分析対象とした。前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみ,1日30分以上の歩行ありと有意な関連が認められた要因は,人口統計・生物学的要因3項目(配偶者あり,負の関連では年齢80歳以上,および手段的日常生活動作非自立),行動要因2項目(外出頻度週1回以上,テレビやインターネットでのスポーツ観戦あり),社会文化的要因6項目(手段的サポートの提供あり,友人と会う頻度が週1回以上,町内会参加,互酬性高い,趣味が読書,負の関連では趣味が囲碁)であった。結論 高齢者において,前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみで1日30分以上の歩行と関連が認められたのは,人口統計・生物学的要因,行動要因,社会文化的要因の中の11項目であった。変容ステージの低い層でも1日30分以上の歩行を促すには,身体活動を前面に出さず,人とのつながりなどを促進することが有用である可能性が示された。
著者
伊藤 まり子 金森 悟
出版者
日本産業看護学会
雑誌
日本産業看護学会誌 (ISSN:21886377)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.62-69, 2022 (Released:2022-11-08)
参考文献数
15

目的:企業内産業看護職の業務に対する関与の必要性と能力について,企業担当者と産業看護職の認識を明らかにすることを目的とした.方法:企業担当者および産業看護職(主に,人材紹介会社A社の登録者)を対象に,web調査を行った.産業看護職の15種類の各業務について,①関与の必要性に対する企業担当者の認識,②関与の必要性に対する産業看護職の認識,③能力に対する企業担当者の認識,④能力に対する産業看護職の認識という4つの視点で結果を比較した.結果:解析対象者は企業担当者104名,産業看護職80名であった.結果の一部として,「傷病者対応」は企業担当者の認識において他の業務と比べて相対的に高く,産業看護職では低いことが示された.結論:本研究の結果から,双方の認識の相違について5つの仮説が導き出された.今後,日本全国の企業担当者と産業看護職を対象とした場合に,これらの仮説が支持されるのか,検証していくことが望まれる.
著者
金森 悟 小島原 典子 江口 尚 今村 幸太郎 榎原 毅
出版者
一般社団法人 日本産業精神保健学会
雑誌
産業精神保健 (ISSN:13402862)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.105-113, 2023-06-20 (Released:2023-06-20)
参考文献数
24

目的:本研究は,デジタルヘルス・テクノロジを用いた介入による労働者のメンタルヘルスへの効果や脱落・遵守状況を検証したメタアナリシスをマッピングし,研究されていないギャップを特定することを目的とした.方法:PubMedにて労働者,デジタルヘルス・テクノロジ,メンタルヘルス,メタアナリシスに関するキーワードで2018年以降の文献を検索し,スコーピングレビューを行った.文献から抽出したデータは,研究デザイン,対象者,介入内容などとした.研究の質はAMSTAR 2を用いて評価した.結果:採択した4件におけるアウトカムへの効果は概ね小さい~中程度であった.また,脱落率の高さを示すものもあった.研究の質はいずれも信頼性の評価が極めて低~低であった.考察:未検討の対象があること,用語や定義が統一されていないこと,研究の質の低さなどの課題があり,質の高いシステマティックレビュー/メタアナリシスが必要である.
著者
藤田 大誠 青井 哲人 畔上 直樹 遠藤 潤 菅 浩二 森 悟朗 藤本 頼生 佐藤 一伯 岸川 雅範 今泉 宜子 福島 幸宏 齊藤 智朗 昆野 伸幸 柏木 亨介 北浦 康孝 河村 忠伸 吉原 大志 吉岡 拓
出版者
國學院大學
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、「公共空間」や「公共性」をキータームとして、神道史と都市史・都市計画史、地域社会史の分野などを接続することで、具体的な史料に基づく新たな「国家神道」研究を試みた。神社境内やその隣接空間を「公共空間」として捉え、新旧〈帝都〉である東京と京都との比較の観点を導入することによって、寺院とは異なる神社独自の「公共性」の歴史や、神社の造営と環境整備に係わる人的系譜やその相関関係について解明した。
著者
金森 悟 甲斐 裕子 川又 華代 楠本 真理 高宮 朋子 大谷 由美子 小田切 優子 福島 教照 井上 茂
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.297-305, 2015 (Released:2015-12-18)
参考文献数
13
被引用文献数
4 4

目的:全国の企業を対象に,事業場の産業看護職の有無と健康づくり活動の実施との関連について,企業の規模や健康づくりの方針も考慮した上で明らかにすることを目的とした.方法:東京証券取引所の上場企業のうち,従業員数50名以上の3,266社を対象とした.郵送法による質問紙調査を行い,回答者には担当する事業場についての回答を求めた.目的変数を種類別健康づくり活動(栄養,運動,睡眠,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科)の実施,説明変数を産業看護職の有無,調整変数を業種,企業の従業員数,健康づくりの推進に関する会社方針の存在,産業医の有無としたロジスティック回帰分析を行った.結果:対象のうち415社から回収した(回収率12.7%).産業看護職がいる事業場は172社(41.4%)であった.健康づくり活動の実施は,メンタルヘルス295社(71.1%),禁煙133社(32.0%),運動99社(23.9%),栄養75社(18.1%),歯科49社(11.8%),睡眠39社(9.4%),飲酒26社(6.3%)の順で多かった.産業看護職がいない事業場を基準とした場合,産業看護職がいる事業場における健康づくり活動実施のオッズ比は,メンタルヘルス2.43(95%信頼区間: 1.32–4.48),禁煙3.70(2.14–6.38),運動4.98(2.65–9.35),栄養8.34(3.86–18.03),歯科4.25(1.87–9.62),飲酒8.96(2.24–35.92)で,睡眠を除きいずれも有意であった.従業員数が499名以下と500名以上の事業場で層化し,同様の解析を行った結果,いずれの事業場においても,禁煙,運動,栄養に関する健康づくり活動実施のオッズ比は有意に高かった.しかし,メンタルヘルスと歯科については,499名以下の事業場のみ実施のオッズ比が有意に高かった.結論:全国の上場企業の事業場において,企業の規模や健康づくりの方針を考慮した上でも,産業看護職がいる事業場はいない事業場と比較して栄養,運動,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科の健康づくり活動を実施していた.健康づくり活動の実施には,事業場の産業看護職の存在が関連していることが示唆された.
著者
金森 悟 坂本 宣明 白田 千佳子 海野 賀央 江口 泰正 山下 奈々 北島 文子 厚美 直孝 小林 宏明 高家 望 福田 洋
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.79-86, 2021-02-28 (Released:2021-03-10)
参考文献数
6

目的:筆者らは,多職種産業保健スタッフの研究会にて「コロナは世界・健康教育・ヘルスプロモーションをどう変えたのか?」というテーマで夏季セミナーを開催した.本報告ではセミナーの開催概要を紹介するとともに,参加者によるセミナーの評価について報告する.方法:2020年9月13日に多職種産業保健スタッフの研究会のコーディネーター12名がセミナーを開催した.参加形態はZoomを用いたオンライン形式とした.全体の構成は第I部に基調講演,第II部は産業保健の現場からの話題提供,第III部は「オンラインの対面型コミュニケーションツールで可能になったことや新たな使い方」についてのグループワークとした.セミナーの評価を行うため,参加者を対象にGoogle formを用いた質問票調査を実施した.結果:参加者は71名,調査への回答者は52名(73.2%)であった.回答者のうち女性が69.2%,年代では40代が34.6%,職業では看護職が53.8%であった.各部について参考になったという者は80.8~96.2%であった.学んだことを今後に活用していこうと思う者は94.2%,全体について満足であった者は96.2%であった.結論:本セミナーでは,新型コロナウイルス流行下での健康教育やヘルスプロモーションの意義や事例,可能性が議論された.参加者のほとんどがセミナーに満足し,本セミナーの開催は意義があった.
著者
桑原 恵介 金森 悟 鈴木 明日香 渋谷 克彦 加藤 美生 福田 吉治 井上 まり子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-007, (Released:2023-06-08)
参考文献数
26

目的 本邦の公衆衛生専門職大学院は疫学,生物統計学,社会行動科学,保健政策・医療管理学,産業環境保健学を基本5領域に据えて教育を行ってきたが,その現状と課題に関する知見は乏しい。そこで,帝京大学大学院公衆衛生学研究科を教育活動事例として,公衆衛生学修士課程(Master of Public Health, MPH)での教育の現状と課題,改善案をまとめることとした。方法 MPH教育の目標と授業科目の記述には,帝京大学大学院公衆衛生学研究科2022年度履修要項を参照した。課題と改善案は,同研究科での各領域の担当教員から意見を抽出し,要約した。活動内容 疫学では問題の本質を定式化して,データを収集・評価し,因果効果について推定できるように,討議を含む講義が行われきたが(計8科目),新たな公衆衛生課題への応用や技術革新へのキャッチアップの担保が課題である。生物統計学ではデータと統計学を理解し,解析を実践するための講義・演習が行われてきた(計9科目)。課題としては学生の理論の理解と講義難易度の設定,新しい統計手法の教材不足が浮かび上がった。社会行動科学では人間の行動を理解し,課題解決に向けて行動するための講義・演習・実習が行われてきた(計8科目)。課題としては,様々な行動理論の限られた時間内での習得,多様なニーズとの乖離,実践で役立つ人材育成が示された。保健政策・医療管理学では世界や地域の課題を発見・解決するために,政策や医療経済的視点も交えて講義・演習・実習を行ってきたが(計19科目),グローバル人材の輩出や行政実務者の入学不足,合理的・経済学的思考やマクロ経済的変化の認識の不足が課題である。産業環境保健学では産業・環境による影響と対策を法律・政策も含めて理解するための講義・演習・実習を行ってきた(計9科目)。課題としては最新技術や環境保健,社会的に脆弱な集団等のテーマの充実が挙げられた。結論 帝京大学でのMPH教育の振り返りを通じて,時代に即したカリキュラム編成,多様な学生,求められる知識・技能の増加,実務家の実践力醸成といった課題に対処していくことが,次世代の公衆衛生リーダーの育成に向けて重要であることが示唆された。こうした課題を解決していくために,公衆衛生専門職大学院での教育内容を全体像の視点から定期的に見直し,改革を行う不断の努力が求められよう。
著者
川又 華代 金森 悟 甲斐 裕子 楠本 真理 佐藤 さとみ 陣内 裕成
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.2022-017-E, (Released:2023-03-19)

目的:身体活動の効果のエビデンスは集積されているが,事業場では身体活動促進事業は十分に行われておらず,「エビデンス・プラクティス ギャップ」が存在する.このギャップを埋めるために,本研究では,わが国の事業場における身体活動促進事業に関連する組織要因を明らかにすることを目的とした.対象と方法:全国の上場企業(従業員数50人以上)3,266社を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査項目は,身体活動促進事業の有無,組織要因29項目とした.組織要因は,事業場の健康管理担当者へのインタビューから抽出し,実装研究のためのフレームワークCFIR(the Consolidated Framework For Implementation Research)に沿って概念整理を行った.目的変数を身体活動促進事業の有無,説明変数を組織要因該当総数の各四分位群(Q1~Q4),共変量を事業場の基本属性とした多重ロジスティック回帰分析を行った.最後に,各組織要因の該当率と身体活動促進事業の有無との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:解析対象となった事業所は301社であり,98社(32.6%)が身体活動促進事業を行っていた.Q1を基準とした各群の身体活動促進事業の調整オッズ比は,Q2で1.88(0.62–5.70),Q3で3.38(1.21–9.43),Q4で29.69(9.95–88.59)であった(傾向p値 < .001).各組織要因と身体活動促進事業との関連については,CFIRの構成概念のうち「内的セッティング」に高オッズ比の項目が多く,上位から「身体活動促進事業の前例がある」12.50(6.42–24.34),「健康管理部門の予算がある」10.36(5.24–20.47),「健康管理部門責任者の理解」8.41(4.43–15.99)「職場管理者の理解」7.63(4.16–14.02),「従業員からの要望」7.31(3.42–15.64)であった.考察と結論:組織要因該当数と身体活動促進事業の有無に量反応関連が認められ,組織要因の拡充が身体活動促進事業につながる可能性が示唆された.特に,社内の風土づくりや関係者の理解の促進が有用であると推察された.
著者
金森 悟 甲斐 裕子 川又 華代 楠本 真理 高宮 朋子 大谷 由美子 小田切 優子 福島 教照 井上 茂
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
pp.B15006, (Released:2015-08-12)
被引用文献数
5 4

目的:全国の企業を対象に,事業場の産業看護職の有無と健康づくり活動の実施との関連について,企業の規模や健康づくりの方針も考慮した上で明らかにすることを目的とした.方法:東京証券取引所の上場企業のうち,従業員数50名以上の3,266社を対象とした.郵送法による質問紙調査を行い,回答者には担当する事業場についての回答を求めた.目的変数を種類別健康づくり活動(栄養,運動,睡眠,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科)の実施,説明変数を産業看護職の有無,調整変数を業種,企業の従業員数,健康づくりの推進に関する会社方針の存在,産業医の有無としたロジスティック回帰分析を行った.結果:対象のうち415社から回収した(回収率12.7%).産業看護職がいる事業場は172社(41.4%)であった.健康づくり活動の実施は,メンタルヘルス295社(71.1%),禁煙133社(32.0%),運動99社(23.9%),栄養75社(18.1%),歯科49社(11.8%),睡眠39社(9.4%),飲酒26社(6.3%)の順で多かった.産業看護職がいない事業場を基準とした場合,産業看護職がいる事業場における健康づくり活動実施のオッズ比は,メンタルヘルス2.43(95%信頼区間:1.32–4.48),禁煙3.70(2.14–6.38),運動4.98(2.65–9.35),栄養8.34(3.86–18.03),歯科4.25(1.87–9.62),飲酒8.96(2.24–35.92)で,睡眠を除きいずれも有意であった.従業員数が499名以下と500名以上の事業場で層化し,同様の解析を行った結果,いずれの事業場においても,禁煙,運動,栄養に関する健康づくり活動実施のオッズ比は有意に高かった.しかし,メンタルヘルスと歯科については,499名以下の事業場のみ実施のオッズ比が有意に高かった.結論:全国の上場企業の事業場において,企業の規模や健康づくりの方針を考慮した上でも,産業看護職がいる事業場はいない事業場と比較して栄養,運動,メンタルヘルス,禁煙,飲酒,歯科の健康づくり活動を実施していた.健康づくり活動の実施には,事業場の産業看護職の存在が関連していることが示唆された.
著者
小林 果 永吉 真子 金森 悟 徳増 一樹 中部 貴央 桑原 恵介
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.78, pp.23005, 2023 (Released:2023-12-08)
参考文献数
12

The recruitment and training of early-career researchers are important for the development of science, especially in countries with low birth rates, such as Japan. In several academic societies for social medicine, early-career researchers have formed associations for the purposes of networking and career development. However, to date, little information about the activities of these associations has been shared. Therefore, we organized a symposium at the 93rd Annual Meeting of the Japanese Society for Hygiene (March 4, 2023) to introduce the early-career researcher associations that have been formed within five academic societies namely the Japanese Society for Hygiene, Japan Epidemiological Association, Japan Society for Occupational Health, Japan Society for Medical Education, and Japan Society for Healthcare Administration. In this paper, we summarize the activities, challenges, and future prospects of each association and their strategies for future development and collaboration on the basis of presentations and discussions at the symposium.
著者
鍬崎 美和 藤村 望 森 悟子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-36, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

目的:救命救急センターで働く中堅看護師の困難な状況を乗り越えさせる認知を明らかにすること。 方法:質的記述的研究デザインにより、A病院救命救急センターに新卒採用で入職した看護師経験年数4~7年目の看護師5名に半構成的面接調査を行い、得られたデータから6つの認知的変数に該当するデータを演繹的にコード化し、それらを帰納的に分析して、サブカテゴリー、カテゴリーへと統合した。 結果:〔対処可能性〕は【過去の体験を将来に活かす】【適切な対処を取れる】、〔信念〕は【逃げたくないというプライド】【やっぱり救急看護がしたい】等の4カテゴリー、〔期待〕は【能力を高めたい】【組織全体を見据えた目標】等の4カテゴリー、〔自己効力感〕は【自分自身の成長を実感】【同期の存在で頑張れる】【患者や家族との関わりが原動力】、〔考え方〕は【割り切りながら仕事をする】【腹をくくって仕事をする】【振り返ると悪いことばかりではなかった】等の7カテゴリー、〔構え〕は【リーダーとしての責任】【自分がやりたい所だから頑張れる】等の6カテゴリーで構成された。 結論:救命救急センターで働く中堅看護師は困難な状況に直面した時、誇りを持ち逃げずに立ち向かいたいと思いを持っていた。また、明確な目標を持ち柔軟な考えを持つことで自らの健康管理を行い、救急看護師としての自分を見失わないようにしていた。
著者
桑原 恵介 金森 悟 鈴木 明日香 渋谷 克彦 加藤 美生 福田 吉治 井上 まり子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.544-553, 2023-09-15 (Released:2023-09-30)
参考文献数
26

目的 本邦の公衆衛生専門職大学院は疫学,生物統計学,社会行動科学,保健政策・医療管理学,産業環境保健学を基本5領域に据えて教育を行ってきたが,その現状と課題に関する知見は乏しい。そこで,帝京大学大学院公衆衛生学研究科を教育活動事例として,公衆衛生学修士課程(Master of Public Health, MPH)での教育の現状と課題,改善案をまとめることとした。方法 MPH教育の目標と授業科目の記述には,帝京大学大学院公衆衛生学研究科2022年度履修要項を参照した。課題と改善案は,同研究科での各領域の担当教員から意見を抽出し,要約した。活動内容 疫学では問題の本質を定式化して,データを収集・評価し,因果効果について推定できるように,討議を含む講義が行われきたが(計8科目),新たな公衆衛生課題への応用や技術革新へのキャッチアップの担保が課題である。生物統計学ではデータと統計学を理解し,解析を実践するための講義・演習が行われてきた(計9科目)。課題としては学生の理論の理解と講義難易度の設定,新しい統計手法の教材不足が浮かび上がった。社会行動科学では人間の行動を理解し,課題解決に向けて行動するための講義・演習・実習が行われてきた(計8科目)。課題としては,様々な行動理論の限られた時間内での習得,多様なニーズとの乖離,実践で役立つ人材育成が示された。保健政策・医療管理学では世界や地域の課題を発見・解決するために,政策や医療経済的視点も交えて講義・演習・実習を行ってきたが(計19科目),グローバル人材の輩出や行政実務者の入学不足,合理的・経済学的思考やマクロ経済的変化の認識の不足が課題である。産業環境保健学では産業・環境による影響と対策を法律・政策も含めて理解するための講義・演習・実習を行ってきた(計9科目)。課題としては最新技術や環境保健,社会的に脆弱な集団等のテーマの充実が挙げられた。結論 帝京大学でのMPH教育の振り返りを通じて,時代に即したカリキュラム編成,多様な学生,求められる知識・技能の増加,実務家の実践力醸成といった課題に対処していくことが,次世代の公衆衛生リーダーの育成に向けて重要であることが示唆された。こうした課題を解決していくために,公衆衛生専門職大学院での教育内容を全体像の視点から定期的に見直し,改革を行う不断の努力が求められよう。
著者
川又 華代 金森 悟 甲斐 裕子 楠本 真理 佐藤 さとみ 陣内 裕成
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.260-267, 2023-09-20 (Released:2023-09-25)
参考文献数
16

目的:身体活動の効果のエビデンスは集積されているが,事業場では身体活動促進事業は十分に行われておらず,「エビデンス・プラクティスギャップ」が存在する.このギャップを埋めるために,本研究では,わが国の事業場における身体活動促進事業に関連する組織要因を明らかにすることを目的とした.対象と方法:全国の上場企業(従業員数50人以上)3,266社を対象に,郵送法による自記式質問紙調査を行った.調査項目は,身体活動促進事業の有無,組織要因29項目とした.組織要因は,事業場の健康管理担当者へのインタビューから抽出し,実装研究のためのフレームワークCFIR(the Consolidated Framework For Implementation Research)に沿って概念整理を行った.目的変数を身体活動促進事業の有無,説明変数を組織要因該当総数の各四分位群(Q1~Q4),共変量を事業場の基本属性とした多重ロジスティック回帰分析を行った.最後に,各組織要因の該当率と身体活動促進事業の有無との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った.結果:解析対象となった事業所は301社であり,98社(32.6%)が身体活動促進事業を行っていた.Q1を基準とした各群の身体活動促進事業の調整オッズ比は,Q2で1.88(0.62–5.70),Q3で3.38(1.21–9.43),Q4で29.69(9.95–88.59)であった(傾向p値 < .001).各組織要因と身体活動促進事業との関連については,CFIRの構成概念のうち「内的セッティング」に高オッズ比の項目が多く,上位から「身体活動促進事業の前例がある」12.50(6.42–24.34),「健康管理部門の予算がある」10.36(5.24–20.47),「健康管理部門責任者の理解」8.41(4.43–15.99)「職場管理者の理解」7.63(4.16–14.02),「従業員からの要望」7.31(3.42–15.64)であった.考察と結論:組織要因該当数と身体活動促進事業の有無に量反応関連が認められ,組織要因の拡充が身体活動促進事業につながる可能性が示唆された.特に,社内の風土づくりや関係者の理解の促進が有用であると推察された.
著者
栄 涼子 森 悟 古賀 俊策 朝山 正己
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.63-69, 2001 (Released:2002-10-16)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究では,高蛋白食によって生ずる食餌誘発性熱産生(DIT)の増加により,運動開始前の体温が異なる状況下で運動を実施した際の体温調節反応を観察し,DITと運動時の体温調節反応との関係について検討した.実験は健康な女子大学生10人を被検者とし,無摂食と高蛋白食摂取の2条件下でそれぞれ60%V.O2maxに相当する自転車エルゴメーター運動を60分間負荷した.その結果,運動開始前の深部体温は,無摂食時に比して摂食時の方が有意に高い値を示した(P<0.01).一方,運動時の深部体温は,運動前の体温差を運動終了時まで維持しながら上昇した.また,熱産生量は無摂食時と比較して摂食時は有意に高い値を示し(P<0.01),熱放散量には差は認められなかった.以上から,DITによって生ずる体温上昇は,すくなくとも60%V.O2max程度の中等度の運動によって修飾されることは無く,体熱平衡も保たれていた.すなわち,DITによる体温の増加が運動時の体温に加算されて生ずる受動的な反応と考えられる.
著者
金森 悟 宇都宮 千春 石倉 恭子 秋元 史恵 鳥羽山 睦子 高波 利恵
出版者
日本産業看護学会
雑誌
日本産業看護学会誌 (ISSN:21886377)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.11-19, 2023 (Released:2023-05-09)
参考文献数
17

目的:今後の日本産業看護学会のあり方に関する会員のニーズを明らかにすることを目的とした.方法:研究デザインはデルファイ法とした.日本産業看護学会の会員363名を対象に,2回のWeb調査を2022年9月から11月にかけて行った.調査項目は,基本属性,学会のあり方に関する原案項目,原案項目以外に学会のあり方で期待することとした.結果:1回目調査は120名(回答率33.1%),2回目調査は98名が回答した.結果を踏まえた著者らの検討により,会員のニーズは【会員向けの情報提供や教育】【産業看護学の推進】【会員同士の交流や相談】【国内外の関連学会・団体等との連携】【社会への発信】【学会の運営】となった.考察:関連学会から出されている学会のあり方と類似する領域もあったが,会員同士の交流や相談に関する領域は特徴的であることが示唆された.結論:会員のニーズは6領域17項目であった.理事会を中心に,対策を検討していくことが望まれる.
著者
金森 悟 高宮 朋子 井上 茂
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.54-61, 2017-03-31 (Released:2019-06-14)
参考文献数
45

身体活動には1人で行うか,あるいはグループで行うかという側面がある。しかし,グループ運動と健康アウトカムとの関連,健康アウトカムとの関連のメカニズム,グループ運動参加の規定要因についてこれまで包括的に検討された研究はない。本総説の目的は,対象を特定の疾患等の保持者ではなく一般の成人および高齢者とした場合の,グループ運動と健康アウトカムとの関連,そのメカニズム,グループ運動参加の規定要因を明らかにすることとした。その結果,グループ運動をすることは身体活動の継続,心理的要因・社会関係を改善させることで,身体的・精神的疾患のリスクを下げることが示唆された。グループ運動の規定要因には多様な要因があると考えられるが,今回検討した先行研究では一部の人口統計学的要因や環境要因のみ検討が行われていた。また,1人で行う運動とグループ運動との違いを直接検討した報告は少ないため,グループ運動による特有の効果や規定要因があるのかは十分に明らかとなっていない。今後はこの点を考慮した研究を行い,グループ運動に関する知見を積み重ねていくことが望まれる。
著者
金森 悟 甲斐 裕子 石山 和可子 荒尾 孝
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.125-134, 2013

目的:中年期地域住民を対象に,社会参加と首尾一貫感覚との関連を検討することを目的とした.<br>方法:東京都あきる野市の旧秋川市地区に居住する40~64歳の男女2,000名を無作為抽出し,郵送法による質問紙調査を用いた横断研究を行った.有効回答者は男性200名,女性300名であった.調査項目は首尾一貫感覚,社会参加,基本属性とした.社会参加には,ボランティアや趣味,スポーツなどの12種類の地域組織や団体について,月に1回以上参加している組織の数を扱い,3分位にあたる0種類,1種類,2種類以上の3群に分類した.参加組織数と首尾一貫感覚との関連に対しては共分散分析を行った.<br>結果:参加組織数別の割合は,男性で0種類が122名(61.0%),1種類が56名(28.0%),2種類以上が22名(11.0%),女性ではそれぞれ174名(58.0%),83名(27.7%),43名(14.3%)であった.月1回以上参加している組織別では,男女ともにスポーツ関係のグループが最も多かった.参加組織数と首尾一貫感覚との関連では,男性においては有意な関連はみられなかったものの(F=0.56,p=0.57),女性においては有意な関連がみられた(F=5.54,p<0.01).さらに,女性の首尾一貫感覚の推定平均値は参加組織数が0種類で14.7点,1種類で15.3点,2種類以上で16.3点と,多いほど首尾一貫感覚も高い傾向が示された.<br>結論:中年期地域住民における参加組織数別の首尾一貫感覚は,女性のみ関連が示唆され,参加組織数が多いほど首尾一貫感覚が高い傾向が認められた.