著者
石田 文香 森 憲一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の診断基準であり病態を表す気流制限は,生活の質(以下QOL)や予後を反映する評価とは必ずしも一致しない。今回,COPDの呼吸障害に対する理学療法(以下PT)の効果を検討する目的で,職業動作のパフォーマンスとQOLを追跡評価し治療を展開したので考察を加え報告する。【方法】カナダ作業遂行測定(以下COPM)により目標と治療戦略を立案し,修正MRC息切れスケール(以下mMRC),Updated BODE index,胸郭拡張差,6分間歩行距離,PCI,COPD assessment test(以下CAT),MOS36-Item Short-Form Health Survey(以下SF-36v2™)にて効果判定を行った。症例は50歳代前半男性。BMI22.4kg/m<sup>2</sup>。独居。職業ラーメン屋店員。喫煙歴約35年。6年前COPD重症度III期と診断。徐々に症状増悪しX年より在宅酸素療法(安静時O<sub>2</sub>1L,労作時O<sub>2</sub>2L)を開始。X+1年9月,重症度IV期に進行,当院PT目的にて入院し1ヶ月の治療を実施。身体機能面とQOLの改善が得られた。退院前にNPPV導入。週1回の外来PTを実施し職場復帰を果たした。その後の追跡にて,各評価測定値の悪化と外来通院継続困難が原因となり,X+2年8月NPPV再教育及びPT目的のため,約3週間の再入院となった。本発表は再入院時を初期評価,退院時を最終評価とした。外来通院期間は仕事や家事のため通院が不定期となり,来院時に運動負荷をかけないコンディショニングが中心とならざるを得ない状態であった。しかし入院期間中は,これらの治療に加えNPPVを併用したトレッドミル歩行の高負荷運動療法を実施できた。また自宅での家事動作や職場での姿勢・動作に特化した動作学習も実施できた。【結果】初期評価→最終評価で記載。COPM(遂行度/満足度)①呼吸困難を減らす(1→7/1→9)②自分より年上の方に負けないように歩く(1→7/1→5)③咳,痰を減らす(3→10/3→10),平均スコア1.7→8.0/1.7→8.0。mMRC Grade3→2.Updated BODE index12→8点。胸郭拡張差(腋窩-剣状突起-第10肋骨)2.0→2.0-3.0→4.0-4.0→5.0cm。6分間歩行距離205→327 m。PCI 0.41→0.29 beats/m。CAT30→22点。SF-36v2™下位尺度得点は身体機能25→50,身体日常役割機能25→37.5,体の痛み22→31,全体的健康感20→25,活力37.5→56.3,社会生活機能25→37.5,精神日常役割機能25→41.7,心の健康30→55と全ての項目において改善がみられた。退院後,週1回の外来PTを再開し,再職場復帰を果たした。【結論】本症例は,家事・仕事による時間・体力的制約により外来通院が困難となり,入院加療が必要となった。通院に体力を消費しない分,入院中では運動負荷をはじめ外来とは異なる治療を展開した。COPD患者の背景は多様であり,治療も画一的ではない。COPMにより個別性を重視した目標設定と治療展開を行い,ラーメン屋で行う動作特性を考えたパフォーマンスの改善を検討できた。不可逆性であり進行性であるCOPDの病態について残存機能に着目し,個別性を重視した治療展開がQOL維持・向上には必要であると考える。
著者
光武翼 中田祐治 岡真一郎 平田大勝 森田義満 堀川悦夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【目的】後頭下筋群は筋紡錘密度が非常に高く,視覚や前庭覚と統合する固有受容器として中枢神経系との感覚運動制御に関与する。後頭下筋群の中でも深層の大小後頭直筋は頸部における運動制御機能の低下によって筋肉内に脂肪浸潤しやすいことが示されている(Elliott et al, 2006)。脳梗塞患者は,発症後の臥床や活動性の低下,日常生活活動,麻痺側上下肢の感覚運動機能障害など様々な要因によって後頭下筋群の形態的変化を引き起こす可能性がある。本研究の目的は,Magnetic Resonance Imaging(以下,MRI)を用いて後頭下筋群の1つである大後頭直筋の脂肪浸潤を計測し,脳梗塞発症時と発症後の脂肪浸潤の変化を明確にすることとした。また,多変量解析を用いて大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子を明らかにすることとした。【方法】対象は,脳梗塞発症時と発症後にMRI(PHILPS社製ACHIEVA1.5T NOVA DUAL)検査を行った患者38名(年齢73.6±10.0歳,右麻痺18名,左麻痺20名)とした。発症時から発症後のMRI計測期間は49.9±21.3日であった。方法は臨床検査技師によって計測されたMRIを用いてT1強調画像のC1/2水平面を使用した。取得した画像はPC画面上で画像解析ソフトウェア(横河医療ソリューションズ社製ShadeQuest/ViewC)により両側大後頭直筋を計測した。Elliottら(2005)による脂肪浸潤の計測方法を用いて筋肉内脂肪と筋肉間脂肪のpixel信号強度の平均値を除することで相対的な筋肉内の脂肪浸潤を計測した。大後頭直筋の計測は再現性を検討するため級内相関係数ICC(2,1)を用いた。発症時と発症後における大後頭直筋の脂肪浸潤の比較はpaired t検定を用いた。また,大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子を決定するために,発症時から発症後の脂肪浸潤の変化率を従属変数とし,年齢,Body Mass Index(以下,BMI),発症から離床までの期間(以下,臥床期間),Functional Independence Measure(以下,FIM),National Institute of Health Stroke Scale(以下,NIHSS),発症時から発症後までのMRI計測期間を独立変数としたステップワイズ重回帰分析を行った。回帰モデルに対する各独立変数はp≧0.05を示した変数を除外した。回帰モデルに含まれるすべての独立変数がp<0.05になるまで分析を行った。重回帰分析を行う際,各独立変数間のvariance inflation factor(以下,VIF)の値を求めて多重共線性を確認した。すべての検定の有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】すべての患者に対して文章,口頭による説明を行い,署名により同意が得られた者を対象とした。【結果】対象者のBMIは21.5±3.3,臥床期間は5.3±9.5日,FIMは84.6±34.5点,NIHSSは5.6±5.9点であった。大後頭直筋の脂肪浸潤におけるICC(2,1)は発症前r=0.716,発症後r=0.948となり,高い再現性が示された。脳梗塞発症時と発症後に対する大後頭直筋の脂肪浸潤の比較については発症時0.46±0.09,発症後0.51±0.09となり,有意な増加が認められた(p<0.001)。また重回帰分析の結果,大後頭直筋における脂肪浸潤の変化率に影響を及ぼす因子としてNIHSSが抽出された。得られた回帰式は,大後頭直筋の脂肪浸潤=1.008+0.018×NIHSSとなり,寄与率は77.5%(p<0.001)であった。多重共線性を確認するために各変数のVIF値を求めた結果,独立変数は1.008~4.892の範囲であり,多重共線性の問題は生じないことが確認された。【考察】脳梗塞患者の頸部体幹は,内側運動制御系として麻痺が出現しにくい部位である。しかし片側の運動機能障害は体軸-肩甲骨間筋群内の張力-長さ関係を変化させ,頸椎の安定性が損なわれる(Jull et al, 2009)。この頸部の不安定性は筋線維におけるType I線維からType II線維へ形質転換を引き起こし(Uhlig et al, 1995),細胞内脂肪が増加しやすいことが示されている(Schrauwen-Hinderling et al, 2006)。脳梗塞発症時のMRIは発症前の頸部筋機能を反映し,発症後のMRIは脳梗塞になってからの頸部筋機能が反映している。そのため,脳梗塞を発症することで大後頭直筋の脂肪浸潤は増加する可能性がある。また大後頭直筋の脂肪浸潤に影響を及ぼす因子としてNIHSSが抽出され,麻痺の重症度が関係している可能性が示唆された。今後の課題は,脳梗塞患者における大後頭直筋の脂肪浸潤によって姿勢や運動制御に及ぼす影響を検証していきたい。【理学療法学研究としての意義】脳梗塞片麻痺患者は一側上下肢の機能障害だけでなく頸部深層筋に関しても形態的変化をもたらす可能性があり,脳梗塞患者に対する理学療法の施行において治療選択の一助となることが考えられる。
著者
森 健一 吉岡 利貢 苅山 靖 尾縣 貢
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.275-284, 2012 (Released:2012-06-02)
参考文献数
37

The purpose of this study was to verify the applicability of the Wingate test (WT) for evaluation of anaerobic capacity and performance in sprinters, based on the relationships among the maximal accumulated oxygen deficit (MAOD) during cycling, accumulated oxygen deficit (AOD-WT), and output power during the WT.   Eight 400-m sprinters (SP group; 49.29±1.56 s) and six decathletes (DC group; 50.29±1.27 s) participated. They performed the WT on an electromagnetically braked cycle ergometer. The applied resistance was 7.5% of body weight, and the duration was 60 s. Moreover, anaerobic capacity (MAOD) was determined using a supramaximal constant load test. The oxygen uptake during each test was recorded using the breath-by-breath method.   The results were as follows: 1) There was no significant difference between MAOD during cycling and AOD-WT, and a significant correlation between these parameters was evident. 2) In the SP group, there were significant correlations between 400-m performance and MAOD during cycling, and the mean power at 30 s in the WT. However, no significant correlations were observed in the DC group.   These results suggest that in sprinters, the applicability of the WT for evaluation of anaerobic capacity and sprint performance differs between cycling exercise and running exercise.
著者
森 一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の初年度である平成29(2017)年度は、「世界への愛」という研究テーマが大きく進捗した一年であった。まず、2017年10月に、単著『世代問題の再燃――ハイデガー、アーレントとともに哲学する』を明石書店から出版した。これは『死を超えるもの 3・11以後の哲学の可能性』(東京大学出版会、2013年)のいわば姉妹編であり、世界への愛をめぐる試論集成である。世代という今日的問題を深く問い直そうとする本書に対する反響は大きく、朝日新聞などで書評に取り上げられ、出版二ヶ月後には増刷となった。また、2018年3月には、初めての書き下ろし単著『現代の危機と哲学』を放送大学教育振興会から公刊した。放送大学ラジオ科目の印刷教材であり、現代人にとっての哲学的思考の重要性を広く、分かりやすく市民に伝える内容でありつつ、ニーチェ、ハイデガー、アーレントについて独創的解釈を展開している。のみならず、年来の「世界への愛」著作構想の第一部という面をもち、「始まりの時間性」や「世界の存続」の謎に挑む大胆な思索の書である。4月から始まったラジオ放送とともに、今後の反響が期待される。論文としては、「ハイデガーからアーレントへ――世界と真理をめぐって」を、実存思想協会編『実存思想論集』第32号に、「『存在と時間』はどう書き継がれるべきか」を、ハイデガー研究会編『Zuspiel』に、「労働という基礎経験――ハイデガーと三木清」を、青土社の『現代思想』のハイデガー特集号に、「世代の問題――マンハイムと三木清」を、明治大学の『異境の現象学』に、それぞれ寄稿した。
著者
波多野 元貴 三浦 亜友 森安 健太 西脇 剛史
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集 2015 (ISSN:24329509)
巻号頁・発行日
pp._B-15-1_-_B-15-7_, 2015-10-30 (Released:2017-06-19)

In strength training, squat exercise is a representative example of lower extremity training. As target muscles of squat exercise are mainly knee extensrs and hip extensors, it is well-known that posture can effect on the main muscles activities. In addition, it is pointed out that injuries on squat exercise such as patellar tendinitis and low back pain are caused by the wrong posture. Therefore, it is important to design shoe function considering safety posture, effective load, and stability. However, athletes and trainee tend to do barbell squat exercise with various types of shoes such as weight lifting specific shoes, versatile training shoes, and indoor athletic shoes. Hence shoe heel-heights, which are derived from sole thickness difference between rearfoot and forefoot, are widely different from almost 0mm to over 20mm and might change the effect of training. The purpose of this study is to investigate the influence of the shoe heel-height on squat motion. Firstly the motion analysis was conducted and it was confirmed that low heel-height structure leads anterior projection of the knee and high load on knee joint. In contrast, high heel-height structure causes trunk forward tilting and high load on hip joint. Secondly, the relationship between experience of the exercise and shoe heel-height was investigated using beginner and experienced subjects. Judging from the results, it was concluded that shoe heel-height makes influence on squat motion especially posture and load for beginners and stability for experiencesd subjects.
著者
市村 美香 松村 裕子 佐々木 新介 村上 尚己 森 將晏
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.55-63, 2011

本研究では、前腕で静脈穿刺をする際に、静脈怒張を得るために実際に臨床で行われている方法を明らかにする目的で、質問紙を作成して実態調査を行った。回収率は70.5%であり、このうち309名の回答(有効回答率99.4%)を分析対象とした。静脈怒張を得るために最もよく行う方法として、割合が高い順にマッサージ(20.7%)、温める(20.1%)、クレンチング(18.4%)、叩く(15.9%)、手をしっかり握らせる(13.3%)の5つの方法に1割以上の支持が集まり、マッサージ、温める、叩く方法は、標準採血法ガイドラインが推奨する方法と一致していた。この他には、駆血帯をきつく締め直す方法(4.5%)と腕を下してから駆血する方法(3.6%)を提示したが、支持する人は少数であった。一方、これらの方法を行ったことがある人が感じる主観的効果が最も高かったのは、もっともよく行われるマッサージではなく、温める方法であった。このことから、多忙な臨床現場においては、すぐに実施できる方法を優先する傾向があり、それを試してみてから、手間や時間はかかるが効果のある方法を行っているのではないかと考えられる。また、それぞれの方法における手技は、回答者により様々であることが分かり、今後は、静脈怒張の効果を検証した上で、簡便で確実な手技を示すことが必要と考えられた。

1 0 0 0 OA 玉之枝 5巻

著者
森羅子
出版者
奥村喜兵衛[ほか5名]
巻号頁・発行日
vol.[2], 1802
著者
竹森 民樹
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 21.46 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.13-19, 1997-08-29 (Released:2017-06-23)

The spatial resolution and area of a SLM are so limited that the reconstructed image and the visual field inevitable become small. The maginification of the reconstructed image and the visual field is realized by combining a Fourier transform lens together with a magnification lens. New technique to calucuate the CGH for the fast computation and the elimination of the conjugate image is also developed. 3-dimentional object consists of 1973 bright points is displayed 10 times per second with the techniques.
著者
越智 康雄 森川 日出貴 丸茂 文幸 野崎 浩司
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1053, pp.229-235, 1983-05-01
被引用文献数
1 6

希土類を層間に含む一連のメリライト型化合物Ln<sub>2</sub>GeBe<sub>2</sub>O<sub>7</sub> (Ln=Y, La, Pr, Sm, Gd, Dy, Er) を合成した. 粉末X線回折図形から, これらの化合物はすべてメリライトと同形であり, 空間群P42<sub>1</sub><i>m</i>に属することが明らかとなった. Cu Kα線を用いて粉末X線回折図形の強度をステップ走査法 (15°≦2θ≦100°, ステップ幅: 0.05°) で測定し, プロファイル解析法によりこれらの化合物の結晶構造を解析した. <i>c</i>軸の長さは層間にある希土類イオンのランタノイド収縮に対応して短くなる. また<i>a</i>軸の長さもランタノイド収縮に対応してBe<sub>2</sub>O<sub>7</sub> 4面体グループが小さくなるために短くなる. 本研究で解析したメリライト型化合物の層間の8配位席は他の同形化合物と比べてひずみが小さい. 希土類を含む化合物は低温で特徴的な磁性を示すことが多いが, これらの化合物は4.8Kまで磁気相転移を示さなかった.
著者
緒方 美湖 森 いつか 松岡 達司 河崎 靖範 槌田 義美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ea0368, 2012

【はじめに、目的】 回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)の役割は、ADL能力向上による寝たきり防止と家庭復帰である。先行研究では、退院後の環境変化によって患者のADLが低下しやすいとの報告があるが、回復期病棟のセラピストが患者の退院後の生活に関わる機会は少ない。そこで、在宅患者のADLの確認・指導と、患者の在宅復帰後の生活を把握する為のセラピスト教育を目的に、H21年度から退院後訪問指導を導入した。今回、在宅復帰した患者の環境調整状況と満足度、活動範囲、セラピストの意識調査を行い、入院から在宅までの在宅復帰支援システム構築の一助となったので報告する。【方法】 (1)H21年4月~H23年5月までに退院後訪問指導を実施した脳血管障害患者57名(年齢69±14歳、男性30名、女性27名)を対象に、家屋改修や福祉用具導入などの環境調整状況の確認と満足度、Life-Space-Assessment(LSA)を調査し、χ2検定を用いた。(2)退院後訪問指導を実施した当院セラピストPT・OT・STの50名(経験年数6.8±4.3年)を対象に、セラピストの訓練内容の変化、訪問時に指導した内容、感じたこと等に関するアンケート調査を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はデータ抽出後、集計分析した後は個人情報を除去し、施設内の倫理委員会の審査を経て承認を得た。【結果】 環境調整調査:環境調整場所としては玄関、寝室、トイレ、浴室、屋外の順で多く、満足している患者が77%、不必要だと感じた患者が10%、要改善と感じた患者が12%であり、有意な差を認めた(P <0.01)。不必要な調整内容として、ベッドのL字バーは使用していない、玄関のベストポジションバーは使用せず勝手口から出入りしている等があった。要改善内容として、シャワー浴時の手すりが必要、2階への昇降の為の手すりが必要、夜間移動時に廊下の電気が必要等があった。LSA:活動範囲として、町外への外出が37%、町内までの外出が53%、隣近所までの外出が10%、自宅周辺や自宅内活動は0%であり、有意な差を認めた(P <0.01)。外出先として、通所系サービス+通院が46%、通所系サービス+それ以外の外出が35%、通院のみが7%であった。セラピストアンケート:家屋改修後の環境を意識した訓練を行うようになった、家族から詳細に患者の生活背景や家屋の情報収集をするようになった、リハビリテーション(リハ)効果の確認や患者への動作再指導が行えた、家族指導の重要性を感じた等の意見が得られた。【考察】 環境調整に関しては、80%弱の患者が満足していると感じており、適切な環境調整が施されていることが明らかになった。しかし、20%強の患者では不必要、または改善が必要と感じており、環境調整施行における課題が残った。課題解決の為には、患者の在宅復帰後の身体能力やADL能力の予後予測、在宅復帰後の活動範囲や活動内容の把握、発症前の生活様式の理解など在宅生活を十分に予測し、環境調整に活かす必要がある。活動範囲に関しては、町内外への外出がほとんどを占めており、外出先として通所系サービスが多い事から、退院後の社会参加への取り組みとして通所系サービスへの介入が施されている事が分かった。しかし、疾患管理を中心とした通所系サービスの外出だけでなく、在宅生活の経過と共に、本人の望む外出や活動につながるアプローチが必要である。退院後訪問指導では、患者の在宅生活における環境調整の満足度や社会参加を知る手がかりになると考えられる。これらの調査結果から、個々の患者の在宅生活を見据えたアプローチの必要性が明らかになった。アンケート結果からも、退院後訪問指導を通して、セラピスト自身がそれらを認識し、アプローチの視点が在宅へも向くようなった。退院はリハのゴールではなく、在宅生活へのスタートである。退院後訪問指導は、環境調整後の動作確認や指導、相談、アドバイスなど在宅生活のフォローの機会となる。またセラピストが患者の生活期を見る機会でもあり、セラピストが予測、計画した退院後の生活を実際に確認し、在宅で生じた問題の修正の場となる。この経験の繰り返しが、リハや家族指導の再考の機会となり、在宅を見据えたリハの提供につながると考えた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は、回復期病棟に勤務するセラピストにとって退院後訪問指導が、在宅生活フォローや、在宅生活を見据えたアプローチを行う上で、その糸口となる事を示唆するものと考える。
著者
ミットロモジュムダール ドッキナロンジョン 大橋 弘美 森 日出樹
出版者
松山東雲女子大学人文科学部紀要委員会
雑誌
松山東雲女子大学人文科学部紀要 = Annual bulletin of the Faculty of Human Sciences, Matsuyama Shinonome College (ISSN:2185808X)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.81-100, 2016-03

ドッキナロンジョン・ミットロモジュムダール(Dakshin・ārañjan Mitramajumdār 1877- 1957)は生まれ育った東ベンガル(現バングラデシュ)で親しまれていたベンガル地方の昔話に魅了され、自ら採話した昔話編纂集である『おばあさんのお話袋-ベンガルの昔話』(Ṭhākurmār Jhuli: Bānglār Rūpkathā)を、1907年にコルカタで出版した。 本稿では、ベンガル語のオリジナルテキストの第2 部から「金の杖 銀の杖」、第3 部から「デル・アングレ、指一本半の大きさの男の子」を訳出した。「金の杖 銀の杖」は、王子とラッコシ(羅刹鬼)との闘いや王女の獲得等、お決まりのモティーフがちりばめられた冒険譚である。 「デル・アングレ、指一本半の男の子」では、指一本半の大きさに生まれついた男の子が、王様に身売りした樵の父親を取り戻すために冒険をする。ベンガル語ならではの数を表す言葉が語呂合わせのように多用されているのも面白い。Dakshinaranjan Mitramajumdar (1877-1957), who was born in east Bengal (now Bangladesh), had been fascinated by Bengali folktales since his childhood and published "Ṭhākurmār Jhuli: Bānglār Rūpkathā (Grandmother's Bag of Tales)," a collection of Bengali folktales, in Kolkata in 1907. This is a Japanese translation of two stories from parts II and III of the original Bengali text. The first one, "Sonār Kāṭī Rūpār Kāṭī (Golden Stick, Silver Stick) ," is an adventure story in which a prince fights against monsters (rakshas) and eventually marries a princess. In the second story, "Deṛ Āṅgle (One-and-a-half finger-size boy)," a very small size boy has an adventure to bring back his father.
著者
山田 陽滋 森園 哲也 増尾 安弘 梅谷 陽二
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2002, 2002

人間の手とロボットハンドの間には, 動力学パラメータや可動範囲, さらにアクチュエータの特性や, 取得できる触覚情報などにさまざまな違いがある。これらの違いから, 人間の手に対してロボットハンドの機能や性能に制約が生じている。本研究では, 人間がロボットハンドと同等の機能や性能に関する制約のもとで, ハンドに対する教示を与えることを考え, これを達成する為のWearableなロボットハンドを提案する。提案の対象として, まず指一本に着目する。
著者
武森 真由美 坂牧 成恵 貞升 友紀 植松 洋子 門間 公夫 新藤 哲也 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.99-105, 2018
被引用文献数
1

<p>HPLCおよびLC-MS/MSを用いた食品中のエリスリトール,マルチトール,ラクチトールおよびトレハロースの分析法を開発した.HPLC分析では,アミノ基結合型ポリマーカラムを用い,カラム温度を室温とすることで定量することが可能になった.LC-MS/MSでは,SRMモードにより定量・確認を行うことができた.また,試験溶液を1,000倍以上に希釈することで,試料由来のマトリックスによる影響を抑えられた.紅茶飲料,ゼリー,ラムネ菓子およびチョコレートを用いた添加回収試験の結果,回収率はいずれもHPLCで90%以上(CV≦6.1%),LC-MS/MSで94%以上(CV≦4.8%)であった.クッキーについては,まず水で抽出してからエタノールを加えることで,HPLCで回収率83%以上(CV≦4.1%),LC-MS/MSで回収率90%以上(CV≦3.0%)と良好な結果が得られた.</p>
著者
井上 拓 森山 孝男 小松 秀昭 中谷 登志男
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.47, no.SIG7(ACS14), pp.105-113, 2006-05-15

データを値の順番に並べ直すソート処理は多くのソフトウェアで使用される最も基本的な操作の1 つであり,ソート処理の高速化は多くのワークロードの性能向上に寄与する.ソート処理は基本的な操作であるため,古くから多くのアルゴリズムが提案されているが,近年の高性能な汎用プロセッサのSIMD 命令を用いて高速にソートを行うことのできるアルゴリズムはこれまで提案されていない.そこで本研究ではPowerPC アーキテクチャが持つSIMD 命令セットであるVMX を使用して,並列に処理を行うとともに分岐予測ミスの影響をなくすことで高速にソート処理を行うことのできるアルゴリズムを提案する.このアルゴリズムを実装し,PowerPC 970FX プロセッサ上で評価を行い,クイックソートと比較して最大で5.6 倍の性能向上が得られることを示した.