著者
岩田 裕子 森 恵美 土屋 雅子 坂上 明子 前原 邦江
出版者
千葉看護学会
雑誌
千葉看護学会会誌 (ISSN:13448846)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.71-79, 2017-08

[抄録] 目的:日本では高年初産婦が珍しくなくなってきているが,これらの女性は産後うつに対して脆弱であることが示唆されている。本研究の目的は,産後1か月時に産後うつスクリーニング陽性である日本人高年初産婦の母親としての経験を記述することである。方法:本研究はケーススタディであり,2011年の6月から12月の期間に3つの病院で健康な単胎児を出産した21人の高年初産婦を対象とした。質的データと量的データを収集し,量的データはうつのハイリスク女性を抽出し,さらに質的データの補完的解釈に用いた。量的データとしては,1)アクティグラフを用いて測定した客観的睡眠の質と,2)日本語版エジンバラ産後うつ病自己調査票(EPDS)により測定したうつ症状の,2つのデータを収集した。日本語版EPDSで9点以上の得点者を,うつのハイリスク女性とした。うつのハイリスク女性の母親としての経験に関しては,半構成的面接によりデータ収集し,質的に分析した。ナラティブ統合により,個々の女性の文脈の中で質的データと量的データを解釈した。結果:うつのハイリスク女性は5名であった。本研究の結果から,高年初産婦の経験を理解するために重要な以下のテーマが抽出された。1)身体的健康状態の維持,2)子どもの世話:実践,気がかり,対処,3)ソーシャルサポートの利用,4)基本的ニーズの充足,5)新しい生活への適応。考察:母親個々の状況の中での母親としての経験を理解することが,適切なケア提供につながると考えられる。[ABSTRACT] Purpose: Older primiparae have become more common in Japan. It has been suggested these women are vulnerable to post-partum depression. The present study aimed to describe maternal experiences of older Japanese primiparae with a positive screen for depression at 1 month post-partum. Methods: This case study examined 21 older primiparae who delivered healthy singletons at three Japanese hospitals from June to December 2011. We used qualitative and quantitative data, with quantitative data for selecting women at high risk for depression as complementary to qualitative data. Quantitative data included: 1) objective sleep quality measured by actigraphy and 2) depressive symptoms measured by the Japanese version of the Edinburgh Postnatal Depression Scale (EPDS). Women who scored 9 or more on the EPDS were considered to be at high risk for depression. Semi-structured interviews were conducted to explore maternal experiences of women at high risk for depression and analysed qualitatively. Narrative integration was used by interpreting qualitative and quantitative findings in each woman's individualized context. Results: Five women were at high risk for depression. Our findings support the importance of understanding older primipara's experiences of: 1) maintaining physical well-being; 2) childcare: practice, concern, and coping; 3) utilizing social support; 4) meeting basic needs; and 5) adjustment to a new life. Discussion: Understanding maternal experiences in each individualized context will lead to providing appropriate care.
著者
村瀬 英一 森上 修 橋本 英樹 松崎 伊生
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集B編 (ISSN:18848346)
巻号頁・発行日
vol.79, no.805, pp.1839-1847, 2013 (Released:2013-09-25)
参考文献数
9
被引用文献数
1

Spark ignition of premixed gases was experimentally studied. Minimum ignition energy and initial burning velocity, which is a burning velocity at an initial stage of flame propagation, were measured and their dependences on equivalence ratio were discussed. Minimum ignition energy takes a minimum value when equivalence ratio is around 0.9 for methane/air mixtures, and around 1.5 for n-butane/air mixtures, which corresponds with the study of Lewis and von Elbe. A shadowgraph technique was used to observe the growth of the flame kernels. A burning velocity was measured from the images of the flame kernel, and initial burning velocity was defined as a burning velocity at the moment when the equivalent radius of the flame kernel is approximately 3.0mm. Initial burning velocity takes a maximum value when equivalence ratio is around 0.9 for methane/air mixtures, and around 1.5 for n-butane/air mixtures, while laminar burning velocity of well-grown flame takes a maximum value when equivalence ratio is around 1.1 for both mixtures as known well. This is caused by the curvature of flame surface at the initial stage. It is suggested that the equivalence-ratio dependence of minimum ignition energy is derived from that of initial burning velocity.
著者
竹山 雅規 森田 修一 山田 秀樹 武藤 祐一 齊藤 力 高木 律男 花田 晃治
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.105-110, 2003-12-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
17
被引用文献数
1

This study investigated the soft tissue profile change of the chin following genioplasty. The subjects were 20 females who underwent genioplasty. They were divided into two groups depending on the directions of surgical displacement of the chin. In 11 patients anterior repositioning was made (forward movement group) and in 9 patients posterior repositioning was made (backward movement group).For each patient, lateral cephalograms taken preand postoperatively were traced and superimposed, and then linear measurements were obtained.The results were as follows: 1. There were differences in soft tissue reaction to hard tissue displacement between the forward movement group and backward movement group.2. In the forward movement group, the size of the chin increased as a result of further forward displacement of soft tissue pogonion in spite of forward displacement of lower labial sulcus. In the backward movement group, the size of the chin decreased as a result of backward displacement of soft tissue pogonion and forward displacement of lower labial sulcus.3. The horizontal displacement ratio of soft tissue pogonion to pogonion was 148% in the forward movement group, and 33% in the backward movement group.4. There was a significant positive correlation between the horizontal change of pogonion and soft tissue pogonion, horizontal change of menton and soft tissue menton, horizontal change of pogonion and the size of the chin, and horizontal change of menton and the size of the chin. On the other hand, in the forward movement group, there was no correlation between skeletal changes and soft tissue changes of the chin.
著者
艾乃吐拉 木合塔尓 壽松木 章 小森 貞男
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.439-443, 2005
参考文献数
9
被引用文献数
2 10

エチレン作用阻害剤の1-MCPが我が国のリンゴ果実の貯蔵性に及ぼす影響について, 早生品種の'さんさ', 中生品種の'ジョナゴールド'および晩生品種の'ふじ'の収穫適期の果実を用いて検討した.その結果, 3品種とも1-MCP曝露処理により果実のエチレン生成は顕著に抑制されたが, 貯蔵品質に及ぼす効果は品種により異なった.早生品種の'さんさ'では, リンゴ酸含量の低下はやや抑制したものの, 果肉硬度の低下は抑制せず, 鮮度保持効果は処理後1か月程度であった.また, 1-MCP処理は収穫後3日以内に行わないと効果が認められなかった.それに対し, 中生品種の'ジョナゴールド'では収穫当日処理から収穫後7日目処理まで, 果肉硬度, リンゴ酸含量とも処理後2か月まで保持効果が認められた.特に, 果皮の油あがりが顕著に抑制された.晩生品種の'ふじ'では, 'ジョナゴールド'と同様, 1-MCP処理果実は貯蔵後2か月目まで収穫時の硬度を維持しており, また, みつ入りも当日処理では2か月後まで, 収穫後3日目および7日目処理でも対照区より多く維持する傾向にあり, 鮮度保持効果が認められた.この結果は, 従来CA貯蔵など長期貯蔵が困難であった暖地型の完熟'ふじ'果実の長期鮮度保持が可能になることを示しており, 今後の貯蔵技術に大きな影響を及ぼすことが示唆された.
著者
森本 拓也
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.80_3, 2017

<p> 広島カープにおける事例研究として、近畿カープ後援会は後援会設立当初、会員にとって同郷集団的機能を果たしたが、カープ黄金期を経て同郷人的結合に拠らない結節が混在していることを高橋(2005)は明らかにしている。こうした結合には、少なからず「アンチ(巨人)」という志向も含まれていると考えられる。</p><p> 「アンチ巨人」と呼ばれる人は読売ジャイアンツを嫌い、批判するという点で結節している。そのつながりは巨人が嫌いというものであり、作田啓一が「我々体験」と呼んだ「拡大体験」をもとにした人のつながりと捉えることができる。しかし、アンチ巨人は単純な拡大体験と呼べるのであろうか。他球団のファンが巨人の強さや財力、巨人に在籍したスター選手のプレイなどの魅力に没入した時に、他方で同じく作田が述べた「自我の壁」が喪失する体験=「溶解体験」が「アンチ巨人」現象には同時にみられるのではないか。それは、溶解体験を可能とした巨人の「共視」(北山,2005)でもありうる。</p><p> 本研究では、このようなスポーツファンに現れる「アンチ」現象がもたらす社会的結合の二面性について、いくつかの事例をもとに検討することを試みてみたい。</p>
著者
森貞 和仁 大野 泰之 澤田 智志 片倉 正行 吉岡 寿 中岡 圭一 高宮 立身
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.115, pp.P1056, 2004

二酸化炭素吸収源としての森林の役割を正確に評価するには森林が成立している土壌炭素量および森林伐採など土地利用変化に伴うその変化量を精度良く評価することが必要である。土壌の分析・測定値はある一定の広がりをもつ土壌の代表値であるので,森林伐採が表層土の炭素貯留量に与える影響を精度良く推定するには土壌炭素量の空間的変動に基づいた多点サンプリングを行う必要がある。褐色森林土3カ所(北海道,秋田,愛媛),黒色土3カ所(長野,広島,大分)調査地において森林伐採前と伐採直後に3mないし4m間隔で規則的に100点程度のサンプリングを行い,鉱質土壌深さ0-30cmの表層土における炭素量の空間的変動とその変化率から目標精度に見合うサンプリング方法を検討した。その結果,表層土に含まれる土壌炭素量は土壌の種類によって違い,黒色土の炭素量は褐色森林土より明らかに多かった。空間的変動の指標として炭素量の変動係数を比較すると,褐色森林土ではどの調査地も約20%以上で試料採取点による変動が大きかったが,黒色土では大分以外の2調査地では約10%と比較的均質であった。伐採後の変動係数はどの調査地も伐採前と同じレベルであった。伐採に伴う変化率は平均で-7%(秋田)から+17%(愛媛)と調査地によって違う傾向を示したが,どの調査地でも採取地点による変動が大きかった。伐採前の調査結果から目標精度(信頼度95%,誤差5%)で表層土の炭素量を推定するには少なくとも褐色森林土で60点,黒色土で20点必要とみられた。伐採前後で土壌炭素量の変動係数に大きな変化がみられない。上記の点数を継続サンプリング,分析することで伐採後の変化を追跡することが可能と考えられるが,調査を継続して更に検討する必要がある。
著者
菅野 洋光 西森 基貴 遠藤 洋和 吉田 龍平 ヌグロホ バユ ドゥイ アプリ
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

北日本における4月と8月の月平均気温は、季節が異なっているにもかかわらず、1998年以降、強い負の相関関係を示している(Kanno,2013)。前回の大会では、これがIPOにより判別される気候ステージ(-IPO)で発現しており、ラニーニャモードによるSSTの応力の弱さと偏西風循環に内在された独自の変動に影響されている可能性があることを指摘した。また、インドネシア付近の対流活動の重要性についても明らかにした。今回は、対流活動の中心に位置するインドネシアの農作物生産性の変動について、IPOに基づく気候ステージを考慮した解析を行った。<br>北日本の月平均気温偏差は気象庁HPよりダウンロードした。客観解析データはJRA55を、多変量解析は気象庁のiTacs (Interactive Tool for Analysis of the Climate System)を用いて行った。インドネシア農作物収量データは、イネ、トウモロコシ、ダイズの3種類で、1993年~2015年の期間、34の州のデータをインドネシア農業省より入手した。このうち、26の州についてはデータの欠落がなく、以下の解析にはそれらのデータを用いている。一般に途上国での農作物生産性は、栽培技術の進歩により時間の経過とともに増加する。そこで本研究では、全期間のデータに一次回帰計算を行い、回帰式からの偏差を解析対象データとした。また、近年の気候ステージについては、England et al.(2014)によるIPOのステージ区分を用い、また生産性と海洋変動との比較には、標準的なPDOインデックスを用いた。<br>図1にはインドネシアにおけるイネの生産性の一次回帰式からの偏差と年平均PDOインデックスの時間変化を示す。全期間(1993-2015年)を通すと相関係数は0.34となり、統計的に有意ではない。そこで、IPOによる気候ステージを考慮して、2001年以前(概ね+IPO)と2002~2013年(概ね-IPO)とで分けると、前者はR=+0.78、後者はR=-0.70で、ともに危険率5%以下で統計的に有意となった。また、エルニーニョが発生した2014年以降は、一転して同時的な変動に移行したようにみえる。トウモロコシでは、イネと同様に、全期間を通すとR=0.22となり、統計的に有意ではないが、IPOステージを考慮すると、2001年までがR=0.84、2002~2013年までがR=0.71となり危険率1%以下で統計的に有意となる(図略)。図2にはダイズの例を示す。こちらはIPOステージとの関係は明瞭ではなく、全期間を通して有意な正の相関を示す(R=0.57)。このような作物ごとの差異についてその原因を考察するため、JRA55を用いたインドネシア域(10S-5N, &nbsp;95E-140Eの矩形領域)における年積算解析降水量を計算し、PDOと比較した(図3)。その結果、全期間を通して降水量とPDOは負の相関を示し(R=0.67)、特に1997年以降が明瞭でR=0.76となる。すなわち、イネ、トウモロコシの生産性については、-IPO期間は降水量の年々変動に強く影響されていることが分かる。また+IPO期間については数年の幅はあるが、PDOと降水量とが比例している時期と重なっており、こちらも概ね降水量に影響されていると言える。一方、ダイズについては解析期間を通してPDOと正の相関を持ち、イネ、トウモロコシとは異なった変動を示している。これは、インドネシアではダイズはmain cropではなくcatch cropであるため、特に-IPO期間ではイネ、トウモロコシが不作の際に補完的に作付けられ、それが降水量変動と負の関係を示す原因として考えられる。
著者
松井 希代子 柳原 清子 佐藤 正美 能登原 寛子 下 綾華 塚本 愛実 中村 優希 西野 ひかり 東 郁江 兵田 亜未 村田 奈穂 元橋 茉佑 森田 恵里 米澤 智亜紀
出版者
ウェルネス・ヘルスケア学会
雑誌
Journal of wellness and health care (ISSN:24333190)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.125-135, 2017

Cancer medicine is becoming more sophisticated and complex, and therefore it is becoming more difficult to care for people at the end of life. This study was performed to identify the nature of positive attitudes to nursing practice of nurses in general hospitals, and to examine their associations with various different factors. The participants were 683 nurses working in 41 wards in eight regional general hospitals. The survey was carried out as an anonymous self-administered questionnaire. Four factors were identified as constituents of nurses' positive attitudes to nursing practice. These consisted of three factors concerning attitudes and knowledge, comprising [The practice of specialist end-of-life specific care], [Making the best arrangements until the end], and [Spiritual care], and one affirmative sentiment, that of [The confidence to nurse someone at the end of life]. The mean score for factors related to knowledge of nursing practice was > 4 points on a 6-point scale, corresponding to "Somewhat applicable," whereas the mean score for the sentiment [The confidence to nurse someone at the end of life] was > 3 points, corresponding to "Not really applicable." In terms of related factors, for all factors other than spiritual care, positive attitudes to nursing practice increased significantly with increasing experience. There was no association with having cared for a dying family member. Although having experienced an educational opportunity was not associated with the practice of case conferences for deceased patients, it was significantly associated with the experience of having been able to talk at length about the care they had provided and their own thoughts in venues such as case conferences, receiving recognition by colleagues at their own level of seniority or above, and reflection. Improving nurses' positive attitudes to nursing practice in end-of-life care in general hospitals, therefore, depended not on personal characteristics, such as having taken care of a dying family member, but rather on having repeatedly overcome difficulties in the course of nursing experience. Talking at length about care and expressing one's own thoughts, receiving recognition from colleagues at one's own level of seniority or above, and reflection on nursing practice were all important in this process.がん医療が高度・複雑化し、結果、人々が「死」を看取っていくことが難しくなっている。本研究の目的は、総合病院における看護師のがん終末期の実践への肯定感はどのようなものかを明らかにし、要因との関連を見ることとである。対象は地方の 8 つの総合病院 41 病棟683 名の看護師である。自記式質問紙調査を行い、看護師の実践への肯定感は 4 因子の構造として見いだされた。それは【終末期固有の専門的ケア実践】、【最期までの最善の調整】、【スピリティアルなケア】という実践への態度や認識と、【最期を看取っていく自信】という肯定的心情であった。実践への認識の平均値は 6 段階中 4 点台で、「どちらかといえばできる」レベルであり、【最期を看取っていく自信】の心情は 3 点台で「どちらかといえば自信がない」であった。関連要因では、スピリティアルケアを除く全ての因子で、経験年数が増すと実践への肯定感が有意に高まっていた。また、身内の死の看取り経験は関連がなかった。一方、教育的働きかけを受けた経験との関連は、デスカンファレンス実施の有無とは関係がなかったが、自分の行ったケアや思いを十分に語った経験、先輩や同僚に認められた経験、そしてリフレクションが有意に関係していた。つまり、総合病院の終末期ケアにおいて、看護師の実践への肯定感の高まりは、身内の死の看取りなどの個人的特性ではなく、看護経験の中で、困難感からの転換の形で積み重ねられていた。その過程では、ケアや思いを十分に語り、先輩や同僚に認められ、そして実践をリフレクションすることが重要となる。
著者
金森 修
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.68-75, 2014

本稿は現代の生命倫理学でも重要な位置を占める<人間の尊厳>という概念が、ヨーロッパの歴史の中でどのような文脈の中で生まれ使われてきたのか、その主要な流れを最低限確認することから始めた。その際、インノケンティウス三世の<人間の悲惨>論に重きを置いた記述をした。また、ピコ・デラ・ミランドラの高名な一節が含意する、一種の知性鼓舞論が、純粋に世俗的な位相のみにおいて<人間の尊厳>概念を理解することを困難にしているという事実に注意を喚起した。それらの検討を通してわれわれは、この概念が十全に機能するためには、神のような超越的存在との関係における人間の定位を必要とするということを示した。では現代の世俗的社会の中で、この概念の使命は既に終わったと考えるべきだろうか。いや、そうは考えない。この神的背景を備えた概念は、世俗的微調整の中でその神的含意を解除されながらプラグマティックに使用され続けるという趨勢の中でも、依然として人間存在の超越性を示唆し続けることをやめないだろう。それこそが、この概念の独自な価値なのである。
著者
渋川 剛史 浅野 周平 十河 孝介 森本 章倫
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.408-415, 2018-10-25 (Released:2018-10-25)
参考文献数
17
被引用文献数
2

人口減少時代に突入した我が国では、少子高齢化の進展も著しく、持続可能な都市構造への転換が急がれており、各自治体で「立地適正化計画」の策定及び、本計画に基づく都市構造の転換に取り組んでいる。また、本計画では、およそ5年毎に計画の進捗を評価・見直しが要請されているが、施設誘導や公共交通サービスの改善に対する面的な評価は、把握できるデータの制約などから、十分な評価ができていない。一方で近年、携帯電話基地局データなどにより、施策実施前後の中心市街地などに滞在する属性別人数の変化を把握することが可能となっている。そこで本研究では、立地適正化計画の適切な進捗管理の実践に向け、既存指標の課題を整理し、課題に対応する評価指標として携帯電話基地局データの活用方法についてケーススタディを通じて検討を行った。
著者
髙濱 聡 溜渕 功史 森脇 健 秋山 加奈 廣田 伸之 山田 尚幸 中村 雅基 橋本 徹夫
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

気象庁では,地震調査研究推進本部の施策に基づき,全国の高感度地震計のデータを収集し震源決定等の処理を一元的に行い,その結果を地震カタログとして公表している。 現在の地震カタログは,精査により一定の基準を満たしたものを掲載することとしている。しかし,東北地方太平洋沖地震後の余震域では余震活動は低下してきているものの以前と比べれば活発な状況にあり,処理対象地震の規模の下限を上げた処理を行っていることから,検知されても処理基準未満であるため地震カタログに掲載されない地震がある。 これに対処するため,平成25年度に同本部地震調査委員会の下で検討が行われ,1)これまでの検知能力は維持し,2)検知された地震のすべてを地震カタログへ掲載する,3)精度に段階をつけた品質管理を行う,の3つの方向性を示した報告がまとめられた。 気象庁ではこの報告を踏まえ,自動震源を活用するなど,震源決定処理手順を変更し改善する。具体的には,領域と深さごとに精査を行う地震のMの閾値(以下,Mthと記す)を設定し, Mth以上の地震については,現行通りに精査した震源決定を行い,Mth未満の地震については自動震源を基本とし,検知されても自動震源が求まらない地震については,最大10点程度の観測点を検測する簡易な手順により震源決定を行うことで、処理の効率を高める。精査される震源の目安は、内陸の浅い地震はM2以上とし,海域については陸域(観測網)からの距離に応じてMを上げて最大でM4以上とする。また,処理方法と精度の違いがわかるような登録フラグを新たに設ける。 ここでは、新たな地震カタログを用いて気象庁が作成する震央分布図等の資料について、具体例を紹介する。

1 0 0 0 OA 燕都の見図

著者
森羅亭 作
出版者
和泉屋市兵衛
巻号頁・発行日
vol.[1], 1795
著者
中森 泰三 一澤 圭 田村 浩志
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.43-82, 2014-11-14 (Released:2017-07-20)

日本産ミズトビムシ科およびムラサキトビムシ科の種を同定するための形質を示した.ミズトビムシ科は1属1種からなる.ムラサキトビムシ科の9属42種については図解検索表を示した.識別の指標となる主な形質は,小眼の数触角後器および副爪の有無,跳躍器端節の形,毛序である.各種の形態学的特徴をまとめた.
著者
森上 和哲 田中 茂 橋本 芳一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.1, pp.98-104, 1993
被引用文献数
3

1991年7月-9月にかけて,日本から中東ペルシャ湾までのタンカー航路上において海洋大気中ギ酸および酢酸濃度を測定し,ギ酸および酢酸の海洋における濃度分布およびその挙動について検討を行った。海洋大気中のギ酸濃度は平均1.18ppbv,酢酸濃度は平均0.60ppbvであり,ギ酸濃度が常に酢酸濃度より高かった。ギ酸および酢酸ともに,日中濃度が高く,夜間濃度が低くなるという濃度変化を示した。海洋大気中のギ酸および酢酸の発生源としては,対流圏あるいは陸上からの輸送の影響が大きいことが推測された。ギ酸および酢酸の除去機構としては,OHによる気相分解よりも乾性沈着の方が寄与が大きかった。海表面におけるギ酸および酢酸のフラックスを他のガスと比較したところ,一酸化炭素とほぼ同じレベルとなり,炭素循環においてギ酸および酢酸は重要な役割を果たしている。またギ酸および酢酸は大気中から海表面に取り込まれ,海洋における重要な炭素供給源であると言える。
著者
W. Schmidt-Kessen 森永 寛 花王 石鹸
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.193-203, 1985 (Released:2010-08-06)
参考文献数
56

Die Wirkungen des CO2-Bades beruhen auf der freien Diffusion des gelösten Gases und dessen teilweiser Hydration in der Haut. Die Empfindlichkeit cutaner nervöser Rezeptoren wird verändert, die Kaltafferenz gehemmt. Das cutane Pooling verändert die Reaktion auf den hydrostatischen Druck im Bade. Die vermehrte Hautdurchblutung verbessert die Bedingungen des konvektiven Wärmetransportes durch die Haut bei allen Badetemperaturen. Die verschiedenen Effekte sind vielfach therapeutisch nutzbar.
著者
渡辺 一尊 鈴木 悠人 原田 裕子 齋藤 雅樹 上野 真史 森本 仁 上田 敦史
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会誌 (ISSN:00214663)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.141-147, 2018-05-05 (Released:2018-05-05)
参考文献数
4

きぼうロボットアームは,親アーム,子アームから構成され,現在は曝露ペイロードの移設などすべてのアーム運用を地上からの遠隔操作で行っている.2015年5月のExHAM 1号機による初回ミッションでは,ExHAMをきぼうエアロックから船外へ搬出し,JEM曝露部上の電気箱Survival Power distribution Box(SPB)のハンドレールに,子アーム特有の力覚制御を使用した押し付け動作により取り付けた.この半年後の2015年11月には,ExHAM 2号機を同様のシーケンスで船外搬出し,JEM曝露部上Exposed Facility System Controller a(ESC a)のハンドレールへの初の取り付けに成功している.本稿では,Ex-HAM 1, 2号機のJEM曝露部への設置,船内回収を定期的に行ってきたきぼうロボットアームの運用実績について述べる.
著者
大井 恵太 亀井 聡 森 達哉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.87, pp.17-24, 2003-08-28
参考文献数
22
被引用文献数
6

インターネットへのアクセス環境の向上により,P2Pアプリケーションの普及が著しい.特に,ファイル共有アプリケーションの普及は,著作権ビジネスに関わる者達をはじめとした様々な領域にその影響をおよぼしつつある.一方で,ファイル転送時にはサーバを介さないP2Pアプリケーションの特性から,大規模な情報収集は困難であった.本稿では,P2Pファイル共有の規模,共有されるファイルの実態を明らかにするため,WinMX Gnutella Winny について,ヒューリスティックな測定手法に基づき,測定とコンテンツ分析を実施した.As Internet access line bandwidth has increased, peer-to-peer applications have been increasing and they have had a great impact on networks. In particular, the spread of peer-to-peer file sharing applications raises concerns about copyrights. However, it is difficult to gather much information because files are not transmitted via a server. In this paper, we measure and analyze peer-to-peer file sharing applications, WinMX, Gnutella, and Winny by heuristic methods in order to clarify the scale of peer-to-peer file sharing and details of shared files.