著者
森岡 裕 岩内 秀徳
出版者
富山大学経済学部
雑誌
富山大学紀要.富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.223-241, 2002-11

アジア危機以降,成長し続けるアジアという神話は崩れたが,極東地域(アジア-太平洋地域)が, 21世紀においても世界経済における成長の中心であることは否定できない事実である。 一国あるいは一地域の経済成長を規定する要因は,資源,資金,インフラの整備等様々であるが,質の高い労働力(人的資源)の存在・育成を無視することはできない。成長する経済は,量・質ともに人的資源の拡充を要求する。そこで21世紀の極東地域の発展を,人材育成システムに焦点をあてて考察したのが今回の研究である。極東地域(アジア-太平洋地域)における人材育成システムを研究するために,極東地域を南北にわけ,北についてはロシア極東地域を,南についてはマレーシアを対象とした。ロシアは計画経済から市場経済へ移行中であり,市場経済に適応しうる人材の育成が焦眉の課題となっている。そこでロシア極東地域において人材育成を行っている高等教育機関(大学)を中心に,ロシア極東での人材育成の現状(課題と成果)について森岡が担当した。マレーシアは,アジア危機からの立ち直りを見せ,IT関連を中心に野心的な発展計画を立案・実行している。その際に大きな課題となるのが,上記の計画を担いうる人材の量的・質的充足である。そこでマレーシアにおける人材育成の問題を,岩内が担当した。
著者
森川 知哉 荒堀 喜貴 権藤 克彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1_103-1_109, 2014-01-27 (Released:2014-03-03)

未定義動作を伴う整数オーバーフロー(時限爆弾)は重大な脆弱性の原因となる.本論文では時限爆弾を軽量に効率よく検出する手法として6つの固定的な整数値(整数境界値)を使う方法を提案し,19のオープンソースに適用して定量的に評価した.その結果,整数境界値は従来のランダム法に比べて,平均で36.7%多くの時限爆弾を検出した.さらに,整数演算の未定義動作のうち,比較・ビット演算が61.3%を占めることと,比較・ビット演算とその他の演算での,整数境界値による時限爆弾の検出率には有意差がないという結果を得た.
著者
森 淳子 宇都宮 彬 鵜野 伊津志 若松 伸司 大原 利眞
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.73-89, 1997-03-10
被引用文献数
14

1990年から1992年, 九州北部の2地点(対馬と福岡県小郡)においてエアロゾル観測を実施した。大気中での寿命が長く広域汚染の原因と考えられる硫酸粒子(サルフェート)については両地点において一致した挙動がみられた。一方, 硝酸粒子(ナイトレート)とアンモニア粒子は観測地点周辺の影響を受け, 内陸に位置する小郡では, 離島の観測地点である対馬に比べ両イオンの濃度が高かった。1991年6月と1992年2月に両地点でS0_4^<2->を中心に高濃度現象がみられた。1992年2月の観測データのイオンバランスの解析から, 対馬では酸性のNH_4HS0_4粒子の存在が示された。この2つのエピソードを中心に, 観測データとトラジェクトリー解析により輸送過程の解析を行った。1991年6月は典型的な梅雨期の気象条件であった。九州北部地域が梅雨前線の南部に位置する場合には太平洋高気圧下で低濃度, 北部に位置する場合には高濃度となった。これは, 大陸・朝鮮半島の大発生源から排出された汚染物質が前線の北部に滞留・変質しつつ前線付近に北西の気流によってもたらされたことが一因と考えられた。これらの結果は, 梅雨期においても大陸起源の高濃度の汚染物質の長距離輸送が生じることを示している。一方, 1992年2月に観測されたサルフェートなどの高濃度現象は, 西高東低の気圧配置下において北西季節風によって大陸からもたらされたと考えられる。低気圧は北緯23〜30。付近の日本の南岸を次々と通過し, その後に中国大陸東岸付近に高気圧が張り出し西高東低の気圧配置が出現している。この条件下で吹き出した北西風により大陸からの高濃度汚染物質が九州北部に輸送されたと考えられ, 冬型の気象条件下での高低気圧の通過が長距離輸送の要因であることが示された。
著者
西田 宗幹 門脇 明仁 本村 清二 尾崎 文彦 大西 竜哉 貝谷 誠久 窓場 勝之 坂口 綾 森本 麻紗子 植松 光俊
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2005-04-20

【はじめに】従来の全国学会で実施されていたワークショップは、講師の方々がテーマに沿って検討会を実施するのを参加者が聴くというタイプのものであり、実質はパネルディスカッション的なものであった。本来、ワークッショプは「研究集会:参加者が専門家の助言を得ながら問題解決のために行う共同研究講習会」である。平成16年11月7,8日、奈良県において開催された第39回日本理学療法士協会全国研修会における参加型ワークショップは、受講者が従来のような受け身的なものではなく、取り上げたテーマに対し能動的に関わりを持ち充実した研修を行うことを目的とした。その受講者アンケート調査結果より若干の知見を得たので報告する。<BR>【ワークショップ概要】今回のテーマは「歩行自立度判定」(参加者49名)、「高齢者の車いすの作製」(44名)、「装具作製はいつ行うか?」(50名)で、研修会後すぐに実際の臨床の場面で役立つと考えられるものとした。実施時間は3時間。進行内容はメイン講師によるワークショップの説明と討議内容の説明、テーブル講師の指示課題およびモデル症例・事例提示のもと各班で検討、討議後各班より発表、最後にメイン講師による総括という流れであった。ワークショップ後、参加者にアンケートを実施した。<BR>【結果】アンケート回収率は84.5%(n=126)、参加者の平均経験年数3.12年。「参加して良かったか」では「はい」が100%、「また参加したいか」では「はい」が80.2%、「いいえ」が0.8%で、「はい」と答えた方の80.2%が「勉強になった」、29.4%が「おもしろかった」と答えられた。また「今後の業務に役立つ」が98.4%、「役に立たない」が0.8%、「希望したテーマに参加できた」89.7%、「参加できなかった」8.7%であった。実施時間は「短い」36.5%、「丁度いい」56.3%、「長い」5.6%であった。あと感想として「仕事に生かせる」、「色々な方の意見が聞けて良かった」、「見方が変わった」、「もっとディスカッションをしたかった」等が聞かれた。3テーマとも、参加者の多くはワークショップ終了後も15~30分以上もの熱いディスカッションを続けていた。<BR>【考察】今回のアンケート結果より全員が参加して良かった、約9割の方がまた参加したい、約8割の方が勉強になった、ほとんどの方が今後の業務に役立つと答えられていることより若い参加者の多くは本当に現場で役に立つ研修会を望んでいると考えられた。このことより、講演やパネルディスカッションのような受動的な研修会も必要だが、参加者自らが考え、討議などを実施する能動的な研修会のあり方が臨床上では重要であり、若い参加者のニーズを把握していく必要があることを示唆した。
著者
森田 英嗣
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-13, 1994-09-20
被引用文献数
6

多桁減算の領域を対象にして,学習者が他者の犯す誤りから学ぶことを目指すコンピュータ利用の学習環境を設計した.この環境は,デバッギングの機会を保障するために,コンピュータにバグをもつ学び手の役割を担わせ,教え手としての学習者がコンピュータの演示する誤りを指摘・修正するという活動を導くものである.83名の小学二年生にグループ活動として適用した評価研究の結果,次のことが示唆された.すなわち,(1)システムとの型通りの形式的な相互作用だけでは効果が導かれない.(2)誤りを導く意図的な問題作成をなすこと,誤りの指摘・修正活動を通して誤った手続きの対象化をなすことが,効果を生む要因である.(3)活動の文脈がシステムの効果を決定する重要な要因になっている.(4)グループが協同的でない時は成員間に効果の差異が生じる,等が明らかにされた.最後に,環境改善のポイントが検討された.
著者
前田 博之 森 千恵子 山田 英清 浦木 増太郎 湯浅 亮 森 貫一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.339-344, 1988-05-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
16

現在, わが国において一般的に用いられている各種と殺方式, とくにと豚をけい留場から電殺室へ移動する手段が, 肉質に及ぼす影響について検討した. その結果, (1) と豚の狂騒による騒音とPSEやDFDなどの “生理的異常肉” の発生を示唆する早期温体硬直と体の発現率は, 誘導路・V字型レストレーナー方式から動床コンベアー方式に変更することにより著しく低下した.(2) 放血の良否を示す筋肉内残留血液量は, レストレーナー方式に比べて, 他のと殺方式で低かった.(3) と殺前の興奮と筋運動を反映すると殺後10分の枝肉の温度は, レストレーナ.方式に比べて動床方式で低かった.これは, 血液中乳酸量でも裏付けられた.(4) 死後解糖の亢進の程度を示す枝肉のpHは, 動床方式に比べてレストレーナー方式と実験的CO2麻酔と殺で急激に低下した. このことは, 筋肉内グリコーゲンの減少率や, 筋肉内乳酸量でも裏付けられた.(5) 死後硬直の発現と関連する筋肉内ATP関連化合物は, 動床方式と打額と殺に比べてレストレーナー方式と実験的CO2麻酔と殺で分解傾向にあった. これは, R値でも同様であった. これらの調査研究により, 現行と殺方式としては動床コンベアー方式が優れていることが示された. なお, と豚に対するストレスを少なくし, 肉質の向上や血液の有効利用の観点から, CO2麻酔と殺方式を導入したと殺システムの検討が必要と思われる.
著者
森 伸一郎 和仁 晋哉
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会 報告集 (ISSN:18848451)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.183-183, 2005

2004年10月23日にマグニチュード6.8の新潟県中越地震が発生し, 初めて新幹線が脱線した. その原因を振動という立場から検討するために著者らは脱線区間に沿う地盤の常時微動測定を行った. H/V比による地盤の卓越周期と表層地盤の層厚の関係を明らかにした. 沖積層の卓越がH/V比の2次ピークに相当することがわかった. また, これらの点で1次元の地盤モデルにより地震応答を評価し, 加速度, 変位, 線路に沿う曲率などの応答を求めた. さらに, 被害の生じていない高架橋の応答も1質点系により評価した. 地震時の列車の位置を, 列車運転規則や乗員乗客の証言により推定した. これらに基づき脱線原因を考察した.
著者
森 辰則 瀧野 弘幸 中川 裕志
出版者
言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.3-18, 1995-10

我々は,接続助詞「ので」による順接の複文と接続助詞「のに」による逆接の複文を対象とする理解システムを計算機上に構築することを目的とする.この際には,ゼロ代名詞の照応の解析が重要な問題となるが,文献(中川1994; Nakagawa and Nishizawa1994) にあるように,本論文で扱う形式の複文では動機保持者という語用論的役割を新たに定義し用いることにより,従属節と主節それぞれで設定される意味役割や語用論的役割の間の関係を制約として記述することができる.そこで,日本語の複文に対する形態素解析や構文解析の結果を素性構造で記述し,この結果に対して制約論理プログラミングの手法を用いることにより意味および語用論的役割間の制約を解消し,ゼロ代名詞照応などを分析する理解システムを計算機上に構築した.
著者
森 治夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.254-257, 1959-11-30 (Released:2010-11-29)
参考文献数
9

One variety of barley and two of naked barley collected from several prefectures of Japan were analyzed on their phytic acid content by the McCance's method, in which the author adopted the colorimetric determination of phosphorus by Gomori.The phytic acid contents of pressed barley produced in various parts of Japan were also determined.Their values were very small, and almost the same as the values of polished rice.
著者
森 治夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.258-260, 1959-11-30 (Released:2010-11-29)
参考文献数
7

Three varieties of wheat produced in various parts of Japan, several brands of wheat flour made in two of the largest milling factories in Japan and several samples of bread made in Sendai and Tokyo were analyzed on their phytic acid content.The values of wheat flour were fairly different among different brands.The phytic acid contents of buckwheat and several kinds of noodle were also analyzed, indicating considerably high values.
著者
湯原 雅信 井森 一樹 岸本 光弘
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第44回, no.ソフトウェア, pp.31-32, 1992-02-24

オペレーティング・システムのカーネルを開発する際,そのデバッグは頭の痛い問題である。実際,我々がMach-OSを移植した時にも,カーネル内部の動作を簡単に把握することができず,苦労した経験がある。そこで,カーネルのデバッグを一般のアプリケーションのデバッグと同じくらい簡単に行えるようにカーネルデバッガを開発した。
著者
田淵 篤 正木 久男 稲田 洋 森田 一郎 石田 敦久 菊川 大樹 遠藤 浩一 村上 泰治 藤原 巍
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.260-263, 2000

症例は26歳, 男性. 3年前にアメリカンフットボールの競技中に左膝靱帯損傷をきたし, 保存的加療を受けた. 2カ月前から左足の冷感, 知覚障害を自覚し, 当科に入院した. 大腿動脈造影では左膝窩動脈の高度狭窄, 前脛骨および後脛骨動脈の閉塞が示された. CT, MRI検査では左膝窩動脈内腔に突出した腫瘤, 解離などが考えられた. 手術は後方到達法で施行, 左膝窩動脈外側からの圧排はなく, 切開を加えると狭窄部位は白色血栓であった. 血栓を摘除し, 膝窩動脈切開部は自家静脈にてパッチ閉鎖した. 狭窄性病変の病理組織学的所見は, フィブリンを主体とした器質化血栓および内膜からなり, 血栓および内膜内に肉芽組織の進入が観察された. 本症の成因として鈍的血管損傷後の治癒過程で壁肥厚, 血栓形成をきたし, 狭窄したと考えられた. 術後経過は順調であった.