著者
納身 節子 中島 治子 七森 浩司
出版者
東九州短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:0918323X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.39-45, 1994-12-20

スポーツ選手の栄養補給の処方を,種目バスケットの女子選手について作成するため本研究は栄養状態と疲労について,実態調査を行ったので報告する。被験者は,女子学生で年齢20歳,7名のバスケット選手である。調査項目は,食事調査・VO_2 maxの測定・心理テストは日本陸連科学部導入のPOMSテスト(原著 McNairら,猪股・山本訳)・生理学的な疲労は尿検査と血液検査をおこなった。結果を要約すると(1)食事調査では運動量に比し栄養素ではエネルギーの不足が顕著であり,食品群では蛋白質源食品・穀類・野菜類が不足であった。(2)VO_2 maxの測定値は高値で良好であった。(3)心理テストのPOMSテストでは,情緒混乱の得点が高く活動性の得点が低値で,精神疲労が見られた。(4)血液検査ではCPK・GOT・CPKの値は正常範囲で内蔵面の疲労は認められなかったが,血清鉄に低値を示した者が2名あった。以上の事から,オーバートレーニングにより,疲労の蓄積,貧血傾向が見られ,精神のストレスは身体状況と関連する事が大きく,栄養補給の必要を認めた。
著者
高森 建二
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.193-199, 2007-06
被引用文献数
1

痒みには抗ヒスタミン薬が奏効する痒みと抗ヒスタミン薬に抵抗する痒みがある.前者の痒みはヒスタミンが痒み発現に主要な役割を演じている末梢性の痒みの場合である.一方,後者の痒みは,いわゆる難治性の痒みと言われる痒みで,痒み発現に蛋白分解酵素(トリプターゼなど)や炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1など),好酸球由来因子(活性酸素ECP,MBP)などヒスタミン以外のケミカルメディエイターが痒み発現に関与している場合,あるいは求心怪C線経が機械的,化学的あるいは温度刺激のような外部からの刺激により活性化される場合,あるいはオピオイドペプチド/オピオイドレセプター系の関与する中枢性痒みメカニズムによる場合などである.抗ヒスタミン薬の奏効しないいわゆる難治性痒みを呈する疾患には腎不全に伴う血液透析患者や胆汁うっ滞が原因で生じる黄疸や肝硬変などの肝疾患やアトピー性皮膚炎などの痒みがある.本講演では腎透析に伴う痒みとアトピー性皮膚炎に認められる痒みの発現メカニズムと対策について考察した.腎透析に伴う痒みの原因としてヒスタミン,セロトニン,ECP,副甲状腺ホルモン,補体の活性化,皮膚の乾燥など多くの因子が推定されているが,これらの血中濃度や症状と痒みの強さが相関しないこと,抗ヒスタミン薬が奏効しないこと,それぞれの因子に対して対処しても痒みが抑制されないこと,などからこれらの因子は否定的である.われわれは本症の痒み発現にオピオイド系(μ-オピオイド系とκ-オピオイド系)が関係していることを示し,κ-オピオイド系を優位にすることにより痒みが抑制されることを示した.アトピー性皮膚炎の痒み発症には多くの因子が関与している.肥満細胞由来因子(ヒスタミン,トリプターゼ,TNFαなど),表皮内神経線経,サブスタンスP,好酸球由来因子(活性酸素,ECP,MBP),リンパ球由来サイトカイン(IL-2ケラチノサイト由来炎症性サイトカイン,オピオイドペプチド/オピオイドレセプターなどである.従ってアトピー性皮膚炎の痒みを一元的に捉えるのではなく,多元的に捉え対処する必要がある.本講演では痒み閾値の低下の原因と考えられる表皮内神経線経とオピオイド系の痒み発現への関与と対策について考察した.
著者
石井大祐 柳澤秀彰 三原鉄也 永森光晴 渡辺裕
雑誌
研究報告オーディオビジュアル複合情報処理(AVM)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.15, pp.1-4, 2014-11-27

物語性のあるマンガにおいて,シーン情報は重要なメタデータの一つである.シーンはマンガの意味的側面における一区間として定義されており,内容の要約単位として有効である.また,マンガ内に含まれる多数のメタデータをシーン単位にまとめることで,メタデータの利便性を高められるものと考えられる.これまでに,マンガ画像解析処理として,コマ,登場人物,吹き出し等,マンガの構成要素を検出するための手法が提案されている.我々の研究目的は,マンガのコマ内に含まれる構成要素に基づいて,シーンの切り替わりとなるコマを判別する手法を実現することである.本稿では,マンガの各コマに含まれる構成要素の分布について調査し,シーンの切り替わりとなるコマについて重要な構成要素を明らかにする.実際のマンガ画像から取得したメタデータを基に調査を行った.調査結果から,他のメタデータと比較して,現時点で自動取得可能とされるメタデータではナレーション,現時点で自動取得困難なメタデータでは背景の距離がシーン切り替わりにおいて重要な要素となりうる可能性が高いことが確認された.
著者
森本 真一
出版者
昭和女子大学
雑誌
學苑 (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.763, pp.84-94, 2004-04-01

William Faulkner told two different stories alternately in The Wild Palms. In one of them an intern falls in love with a married woman who becomes pregnant and asks him to perform an abortion. After she dies because of the operation, he is determined to serve his fifty-year sentence remembering her. The End of the World and Hard-boiled Wonderland by Murakami Haruki is similar to The Wild Palms structurally and thematically. An engineer in "Hard-boiled Wonderland" has a specific circuit installed in his brain by a scientist. The data is stolen and the engineer's consciousness is about to be extinguished. Then the scientist's granddaughter declares that he will remain in her heart as long as she lives. The protagonist of "The End of the World" lives in a town separated from his shadow. Though he has lost his memory, he is presumably in the situation imagined by the engineer. He plans to escape, but finally lets the shadow go alone, saying that he cannot abandon a world he created. Both Faulkner and Murakami cherish or rely upon the memories of what has vanished. In "The Bear" Faulkner dramatically depicts the wilderness as the hunters' utopia that is being destroyed by civilization. Murakami's "Firefly" deals with a young man's longing for a girl who leaves him after their intercourse. Murakami makes a character of Dance, Dance, Dance warn the narrator to go on dancing without doubting how foolish it is. This may be the author's critical view of mechanized and high-speed society in which people are deprived of profound thinking. Sheep Expert in his Adventuring after a Sheep observes that Japan was destined to be defeated in World War II because there have been no thoughts based on life. Faulkner wrote an essay, "To the Youth of Japan." He mentioned his belief that in Japan out of the disaster and despair after World War II there would appear writers who would speak not a Japanese truth but a universal truth. Murakami is certainly among such writers. Readers should notice his pursuit of human ego in the midst of complicated circumstances.
著者
榎木 光治 宮田 一司 森 英夫
出版者
公益社団法人 日本冷凍空調学会
雑誌
日本冷凍空調学会論文集 (ISSN:13444905)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.275-283, 2015-09-30 (Released:2016-09-30)
参考文献数
23

著者らは,先に,微細円形流路内の沸騰熱伝達率について,強制対流蒸発と核沸騰の寄与に加え,新たに微細流路に特有の液膜熱伝導蒸発の寄与を考慮した精度の高い整理式を提案した.液膜熱伝導蒸発は,主にスラグ流における気体プラグ周囲の薄液膜を通した熱伝導による蒸発熱伝達である.しかしながら,近年広く用いられる比較的高圧の冷媒に対して整理式で用いた核沸騰整理式の予測精度が良くないこと,また,最近得た水平流の低流量のデータに対して整理式の予測精度が低いことが明らかになった.本研究では,この2 点について以前に提案した整理式を修正し,予測精度の改善を行った.新たに得られた整理式は,著者らのR 410A のデータのみならず,他研究者によるR 32,R 1234yf およびH2O やCO2 を含む広範囲のデータに対して,水平流の低流量の条件を含め,高い予測精度を示した.
著者
田中 裕史 迫田 晃弘 安藤 正樹 石森 有
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.107-114, 2016 (Released:2016-08-09)
参考文献数
9
被引用文献数
2

Ambient dose rates are continuously monitored in Ningyo-toge Environmental Engineering Center, Japan Atomic Energy Agency. The present study discussed the variations in ambient dose rates, observed from April 2014 to March 2015, due to snowfall as well as rainfall. It is much snowy as one of climatic features in this area. Rain or snow was sampled for a certain period in the day of interest (17 cases in total), and then the concentration of radon progeny was measured. With the measured data, the variation in ambient dose rate was calculated considering the accumulation of the radon progeny on the ground. As a whole, this calculation was found to reasonably reproduce the time trends of observed dose rates, except for four cases. Based on the backward trajectory analysis, it was explained that the discrepancy in two cases out of the four was induced by changes of radon progeny concentration in precipitation around sampling period. It was suggested that the other two cases were caused by the run-off of rain from the ground surface.
著者
森下 敬一 越智 久男
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.588-600, 2003-11-01 (Released:2011-03-18)

・1975以降、森下世界的長寿郷調査団は、毎年2~3回の頻度で「世界三大長寿郷 (コーカサス、フンザ及び南米・ビルカバンバ) 」の実地調査を実施してきた。・1984年-新彊ウイグル特に南彊が「第四の世界的長寿郷」であることを認定した。・1987年-コーカサス、中央アジア、パミール高原周辺 (フンザを含む) 及び南彊の北緯40度前後、東西8000kmに及ぶベルト地帯を「絲綱之路・長寿郷」と命名し、第16回・自然医学・国際シンポジウムに於いて研究発表を行った。・1991年-広西壮族自治区・巴馬の実地調査を試み、是が「第五の世界的長寿郷」である事を認定した。世界の百歳長寿者達は、シルクロード沿いのベルト状地帯に多く存在し、幾つかの共通項があることが判明した。主食が挽きぐるみの未精白穀物であり、竈に貼り付けて焼くこと。生まれた土地を離れず、その土地で収穫できる作物を食していること。文明の侵襲を受けていない長寿郷では、土壌→食物→身体の生命エネルギーが循環していた。
著者
黒田 勇 水野 由多加 森津 千尋
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.159-174, 2006-10

スポーツイベントにおいて、近年、公式スポンサーに対抗する「アンブッシュ・マーケティング」という新しい手法が広がっている。本稿では、これまでのアンブッシュ・マーケティングをめぐる議論を紹介し、その大規模な具体的事例として、2002年W杯の際の、韓国SKテレコムのマーケティング、および2006年W杯における日本のテレビCMを中心としたアンブッシュ・マーケティングの、いわゆる「グレーゾーン」展開について明らかにする。そして、企業のスポンサーシップの論理を超えたスポーツイベントの社会的・文化的価値という視点から、スポンサーシップの歴史的展開と社会的意味について仮説的に論じる。
著者
深山 貴文 森下 智陽 奥村 智憲 宮下 俊一郎 高梨 聡 吉藤 奈津子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.59-64, 2016-04-01 (Released:2016-06-14)
参考文献数
17
被引用文献数
2

森林土壌のテルペン類の放出特性に関する研究は少なく,特に空間分布特性の評価が必要とされている。本研究はアカマツ林床が放出するテルペン類の主成分であるα-ピネンについて,その放出量を測定するための土壌チャンバーを開発し,空間分布特性と変動要因について検討した。野外観測の結果,樹幹からの距離とα-ピネン土壌放出量の関係性は方位の違い,個体差に関わらず認められなかった。アカマツのリター堆積量とA0層上の放出量の間には関係性が認められなかったが,リター堆積量とリター除去後に測定したA層上の放出量との間には春秋共に正の相関が認められた。室内実験で十分にリターを撹拌した場合,リター量とリターの放出量の間には線形的な関係が認められた。アカマツ林床では特に春に高い放出量が観測されるが,これはA0層上に存在する樹脂成分が放出量の不均一性をもたらすと共にその高い放出の原因となっている可能性が考えられた。
著者
森 臨太郎 森 享子
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.666-671, 2016-08-25

今回のテーマ インターネットには子育てに関する情報が氾濫している。そのなかで,駆け出しのお母さんがどの情報が適切なのか見極めることは,至難の業である。情報があるからこそ不安が募り,選択肢が多いからこそ迷いも増えてしまう。新しい命を迎え,母親として,家族として一歩を踏み出すこの時期は,親子関係を築くうえでもとても大切であるからこそ,何を基準に考えていけばよいのか,道しるべがほしい。今回は,赤ちゃんが生まれてからの親子関係や子育て支援に関して取り上げてみる。
著者
高野 健人 中村 桂子 木津喜 雅 清野 薫子 森田 彩子 杉村 正樹
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

社会的凝集性、集団的エフィカシーならびに帰属意識について、指標分析、キーインフォマントインタビュー、住民調査を実施し、居住地域に対する帰属意識を形成する都市の社会的物理的な環境条件、市区町村レベルの疾病傷病リスクと社会的凝集性、集団的エフィカシーおよび帰属意識を含む地域関連指標との関連と、各要素の寄与を検証した。市区町村レベルの地域健康関連指数を作成し、住民の健康水準と地域指標の関連モデルを得た。全国の市区町村を悪性新生物、糖尿病および脳血管疾患、心疾患、不慮の事故の4分類による健康指標とその差について分析を行い、健康指標水準の差異と健康関連要因指標の差異の関連を明らかにした。
著者
若林 諒三 浅井 友詞 佐藤 大志 森本 浩之 小田 恭史 水谷 武彦 水谷 陽子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101957, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】立位安定性は、外界に対する身体の位置関係を視覚、前庭感覚、足底感覚、固有感覚情報により検出し、それらの求心性情報が中枢神経系で統合され、適切な運動出力が起こることで保たれている。立位安定性を保つ上で特に重要となるのが、自由度の高い頭部の運動を制御することである。頭部の制御は、前庭感覚、頚部からの求心性情報をもとに頚部周囲筋が協調的に活動することで、姿勢変化に応じて頭部の垂直固定、意図した肢位での保持、外乱刺激に対する応答が可能となる。そのため、前庭機能障害や頚部障害の患者では前庭、頚部からの求心性情報の異常により立位安定性が低下することが報告されている。また、健常成人においても静止立位と比較して頭部回旋運動時の立位重心動揺は有意に増加することが報告されている。一方、頚部関節位置覚は前庭感覚とともに頭部の位置・運動情報を中枢神経系に提供していることから、頭部運動時の立位安定性に関与する可能性が考えられるが、その関連性は明らかでない。したがって今回、頭部回旋運動時の立位安定性と頚部関節位置覚の関連性についての検討を目的に研究を行ったので報告する。【方法】健常成人25 人(28.6 ± 6.1 歳)を対象とした。被験者に対して頚部関節位置覚の測定および頭部正中位での重心動揺、頭部回旋運動時の立位重心動揺の測定を行った。頚部関節位置覚の測定は、Revelらが先行研究で用いているRelocation Testを使用した。椅子座位にて被験者の頭部にレーザーポインタを装着させ、200cm前方の壁に投射させた。安静時の投射点に対する、閉眼で頚部最大回旋後に自覚的出発点に戻した時の投射点の距離を測定し、頚部の角度の誤差を算出した。測定時に被験者の後方にビデオカメラを設置し、我々が開発した解析ソフトを使用して解析を行った。頚部関節位置覚の測定は、左右回旋それぞれ10 回行い平均値を代表値として算出した。頭部正中位での重心動揺の測定は、Neurocom社製Balance Master®を使用して、modified Clinical Test of Sensory Interaction on Balanceにて行った(以下Normal mCTSIB)。Normal mCTSIB の条件1 は開眼・固い床面、条件2 は閉眼・固い床面、条件3 は開眼・不安定な床面、条件4 は閉眼・不安定な床面である。頭部回旋運動時の立位重心動揺の測定はNormal mCTSIBと同様の条件下で行い(以下 Shaking mCTSIB)、測定中の頭部回旋運動をメトロノームで0.3Hzに合わせて約60°の範囲で行うよう被験者に指示した。重心動揺の指標には重心動揺速度(deg/sec)を使用した。また、測定中に転倒したものは解析から除外した。統計処理はSPSSを使用し、Relocation TestとNormal mCTSIBおよびShaking mCTSIBの相関関係をピアソンの相関係数を用いて検討し、有意水準を5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】日本福祉大学ヒトを対象とした倫理委員会の承諾を得た後、対象者に本研究の主旨を説明し書面にて同意を得た。【結果】Relocation Testの平均値は5.36 ± 2.06°であった。Normal mCTSIBのすべての条件においてRelocation Testとの相関関係は認められなかった。Shaking mCTSIBの条件1 においてRelocation Testとの間に中等度の相関(r = 0.42)が認められた。【考察】本研究の結果より、健常成人において、Shaking mCTSIBの条件1 とRelocation Testとの間に中等度の相関関係が認められた。Honakerらの先行研究によると頭部回旋運動は立位安定性を低下させることが報告されている。また立位安定性保つ上で頭部の運動を制御することが必要であり、頭部の位置・運動に関する求心性情報を伝える頚部関節位置覚の正確性が重要であると考えられる。したがって、本研究では頚部関節位置覚と頭部回旋運動時の立位安定性との間に中等度の関連性が認められたと考えられる。また今回、Relocation TestとNormal mCTSIBやShaking mCTSIBの条件2、3、4 との間には相関関係が認められなかった。姿勢制御においては頚部関節位置覚以外にも、前庭感覚、視覚、足底感覚などの感覚系を含め様々な因子が関与する。本研究では健常成人を対象としており、閉眼や不安定な床面などで一部の感覚系が抑制された条件下では前庭感覚などの感覚系の個人差が反映されるため、頚部関節位置覚との相関関係が認められなかったと推察される。【理学療法学研究としての意義】日常生活活動において頭部を動かす機会は多く、姿勢安定性を保つために頭部の運動を制御することは重要であると考えられる。本研究において頚部関節位置覚が頭部回旋運動時の姿勢安定性に関連することが示されたことから、高齢者やバランス機能低下を有する患者において頚部関節位置覚の評価を行い、それを考慮した治療プログラムを立案することの必要性が示唆された。
著者
森戸英幸著
出版者
弘文堂
巻号頁・発行日
2016
著者
森脇 広 松島 義章 町田 洋 岩井 雅夫 新井 房夫 藤原 治
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.253-268, 2002-08-01
被引用文献数
2 7

姶良カルデラ北西縁の平野を対象に,完新世の地形発達および相対的海水準変動,地殻変動を,地形と堆積物の観察,<sup>14</sup>C年代測定,テフラ分析,考古遺跡,貝化石と珪藻化石の分析結果にもとづいて検討した.3面に区分される完新世海成段丘は,それぞれ7,300cal BP(6,500yrs BP)~3,500yrs BP,3,000~2,000BP,古墳時代(1,500cal BP)以降に形成された.姶良カルデラ周縁では,カルデラ中心部へ向かって傾き上がる傾動隆起が生じ,その隆起量は7,300cal BP(6,500yrs BP)以降,最大10m以上に達する.この地域の海面高度は8,700cal BP(8,000yrs BP)頃には現海面高度にあり,現海面上4~5m(8,500~8,400cal BP:7,700yrs BP頃),現海面上6m(8,100cal BP:7,300yrs BP頃)を経て,7,300cal BP(6,500yrs BP)頃に現在の海抜12mの高さに達した.その後,海面は次第に低下し,現海面上5~7m(3,000~2,000yrs BP),現海面上2~3m(1,500cal BP)を経て現在に至った.この特異な相対的海水準変動は,姶良カルデラの火山活動に伴う地殻変動が影響しているとみられる.8,100~8,000cal BP(7,200~7,300yrs BP)には,海進は内陸深く及び,溺れ谷が形成された.この時期,米丸マールを形成したベースサージは,別府川流域の内湾を大きく埋積した.その後,汀線は段階的に前進し,縄文時代後期(3,500yrs BP頃)には現在の海岸に近い位置にまで達した.約8,000~7,000cal BP(約7,300~6,000yrs BP)の時期に,池田カルデラ,桜島,鬼界カルデラでも大規模な噴火が起こり,縄文海進最盛期に形成された南九州のリアス式海岸は急激に変化した.