著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2118-2129, 2013-10-01

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,並列度の爆発に抗する技術の導入,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.
著者
清水 俊夫
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.580-584, 2023 (Released:2023-11-27)
参考文献数
52

Weight loss is frequently observed in early–stage amyotrophic lateral sclerosis (ALS) and is considered an independent predictor of survival. Weight loss observed in ALS is associated with multifactorial etiology, including muscle wasting and dysphagia. Recent studies have implicated disease–specific hypermetabolism as one of causes of weight loss in ALS. Involvement of the hypothalamus in ALS has been the other topic in metabolic dysfunction in ALS. TDP–43 protein aggregates detected in the hypothalamic subnuclei may be associated with weight loss or abnormalities of eating behavior in patients with ALS. Nutritional intervention to maintain body weight could become one of disease–modifying therapies, and recent studies have reported that slowing of weight reduction rate after diagnosis was associated with better survival and that a high–calorie fat diet improved survival in patients with rapidly progressive disease. Nutritional education regarding a high–calorie diet, weight control, and early gastric tube placement is required at the time of diagnosis. Formulas to estimate the recommended daily energy intake for patients with early–stage ALS were reported from USA, Europe and Japan. Multidisciplinary team approach and rehabilitation is necessary to support patients with swallowing disturbance. Surgical intervention to prevent aspiration is often needed for patients who frequently develop aspiration pneumonia.
著者
清水 俊夫
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.22-26, 2022 (Released:2022-06-15)
参考文献数
55

Weight loss is frequently observed in early–stage amyotrophic lateral sclerosis (ALS) and is considered an independent predictor of survival. Weight loss observed in ALS is associated with multifactorial etiology, including muscle wasting and dysphagia ; however, recent studies have implicated disease–specific hypermetabolism in weight loss and disease progression in ALS. The pathophysiology of hypermetabolism as a contributor to weight loss in ALS remains unclear ; however, hypothalamic involvement is considered an early extra–motor manifestation of ALS. TDP–43 protein aggregates detected in the hypothalamic subnuclei may be associated with weight loss or abnormalities of eating behavior in patients with ALS. Weight loss from diagnosis up to tracheostomy also predicts functional prognosis during the long–term period with ventilator. In fact, patients with ALS who survive with prolonged mechanical ventilatory support often develop significant brain and brainstem atrophy, including atrophy of the limbic motor system and the hypothalamus. Nutritional intervention to maintain body weight may be a useful disease–modifying therapeutic approach, and recent studies have reported that slowing of weight reduction rate after diagnosis may be associated with better survival and that a high–calorie diet improves survival in patients with rapidly progressive disease. Nutritional education regarding a high–calorie diet, weight control, and early gastric tube placement are important after diagnosis. Researchers from the USA, Europe, and Japan have established formulas to estimate the recommended daily energy intake. Although a lipid shift in energy metabolism might occur in the brain and muscles in patients with ALS, the effectiveness of high–fat diets requires further investigation.
著者
蕨 陽子 林 健太郎 森島 亮 井上 智之 清水 俊夫 高橋 一司
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.799-802, 2022 (Released:2023-01-20)
参考文献数
8

【目的】高齢COVID–19患者の回復期の摂食機能療法の効果と社会的意義について検討する.【方法】高齢者施設を感染経路とし,急性期治療後に当院へ転入院したCOVID–19連続14例の経過を後方視的に検討した.摂食機能療法は医師と看護師,理学療法士で開始し,隔離解除後に言語聴覚士が携わった.【結果】14例は年齢86±7(mean±SD, range 72–95)歳で,8例は認知症,2例は神経変性疾患を有した.COVID–19は86%で肺炎像を呈し,64%で酸素吸入を要した.発症から18.2±5.6(11–33)日経過した当院入院時,9例(63%)が摂食不能であった.入院後,5例は体力や意欲,認知機能が回復し摂食が回復したが,神経変性疾患2例は摂食嚥下機能が回復せず,認知症1例は先行期の問題が回復せず,残る1例は死亡した.【結論】神経変性疾患以外でCOVID–19から回復した高齢者の83%は摂食嚥下機能が回復した.神経難病診療を生かした隔離下での嚥下評価と摂食機能療法が高齢COVID–19患者の摂食嚥下機能回復に寄与し,予後の改善につながった.
著者
大塚 宜一 清水 俊明 永田 智
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

食物アレルギーや炎症性腸疾患の病態を解明する目的で、食物の未消化産物との関連を検討した。その結果、未消化産物の明らかな抗原性は確認できなかった。一方、それぞれの消化管粘膜の生検標本を用いmicroarray法、RT-PCR法、免疫組織染法などの検討を行ったところ、新生児・乳児消化管アレルギーにおいてCCL21、CXCL13の、また、小児炎症性腸疾患においてCXCL9、CXCR3などの発現亢進を認め、それぞれの病態に食物の侵入経路であるリンパ濾胞との関わりが示唆された。
著者
大塚 宜一 清水 俊明 鈴木 竜洋
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新生児一過性好酸球性腸炎(NTEC)、食物過敏性直腸炎(FPIP)、小児炎症性腸疾患の粘膜をMicroarray、RT-PCR、免疫組織染色法を用い解析した。NTEC, FPIPではCCL11、CXCL13の関与が、小児クローン病ではCXCL-9,-10,-11、小児潰瘍性大腸炎ではMMP-1,3,7,10の関与が示唆された。両者で発現亢進が確認されたCXCL13は、B細胞を誘導するリンパ濾胞形成因子であり、新生児期からの食物に対するIgA産生や寛容誘導に深く関わっている。その発現亢進は、小児に欠かせない免疫応答であると考えられる一方、炎症増強に関わっている可能性が示唆された。
著者
大塚 宜一 清水 俊明 藤井 徹 工藤 孝広
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

H.pyloriに感染した小児と成人の胃粘膜に発現する免疫・癌関連分子を、microarrayなどを用いて網羅的に比較検討した。対象は各種消化器症状に対して消化管内視鏡検査を施行した患者とし、H.pylori感染小児群、非感染小児群、感染成人群、非感染成人群の各々6症例、合計24症例の胃粘膜(前庭部・胃体部)を検討した。その結果、成人感染群でより強い発現のもの(OLFM4)、成人・小児感染群で同等に発現するもの(PIM2,REG3A,LCN2,CXCL13)が確認された。発癌の機序として、H.pylori感染に伴う小児期からの癌関連分子の発現の亢進及び慢性炎症性変化の関与が示唆された。
著者
室 伊三男 清水 俊太郎 塚本 ひかり
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.13-22, 2022
被引用文献数
3

<p>【目的】深層学習によるモーションアーチファクト(以下,アーチファクト)削減のアプローチが脳MR画像に有効かを検証する.【方法】本研究ではアーチファクトを含んだ画像と含んでいない画像が学習データとして大量に必要である.臨床画像で学習データを集めるには多くの労力と時間を要して困難である.われわれは脳のアーチファクト画像をシミュレーションによって作成した.ボランティア20人の動きのない頭部画像を取得し,この画像を使用してアーチファクトの異なる画像をシミュレーションによって作成して深層学習を行う.得られた学習モデルのアーチファクト除去効果の検証は,別途テストデータを作成し,テストデータの入力画像と出力画像間のピーク信号対雑音比(peak signal-to-noise ratio: PSNR)と構造的画像類似性(structural similarity: SSIM)を3種類のデノイジング手法で比較した.使用したニューラルネットワークはU-shaped fully convolutional network(U-Net),denoising convolutional neural network(DnCNN)とwide inference network and 5 layers Residual learning and batch normalization(Win5RB)である.【結果】アーチファクト除去効果はU-Netが最も高く,SSIMの平均値は0.978, PSNRの平均値は32.5であった.【結語】本法は脳MRI画像の画質を劣化させずにアーチファクトを軽減できる有効な方法である.</p>
著者
鈴木 達也 岩堀 裕介 水谷 仁一 竹中 裕人 大家 紫 清水 俊介 矢澤 浩成 花村 浩克 筒井 求 伊藤 岳史
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.27, pp.48, 2011

【目的】投球動作による肩・肘障害の原因として,オーバーユース,コンディショニングの不良,不良な投球フォームなどがあげられる.我々は第7回肩の運動機能研究会において,wind-up phase(以下WU)での体幹後方傾斜と肘下がりとの関係を調査し,WUでの体幹後方傾斜とearly-cocking phase(以下EC)での肘下がりとの関係は示唆されたが,late-cocking phase(以下LC)での肘下がりとの関係は見られなかったことを報告した.今回,WUで体幹後方傾斜を認める選手に対し,その場で投球フォーム指導を行い体幹後方傾斜を修正し,投球フォームが即時的に変化するのかどうかを調査したので報告する.〈BR〉【対象】対象は,メディカルチェックを行い本研究に賛同し同意を得た肩・肘に愁訴のない中学生野球選手27名(平均年齢13.30±0.61歳)の中から,明らかにWUで体幹後方傾斜を認めた選手(以下WU体幹後方傾斜群)11名である.なお,11名は全員右投げである.〈BR〉【方法】方法は,CASIO社製デジタルカメラEX-FH25を用い,前方,側方,後方の3方向からハイスピードモードの動画で撮影した.frame rateは240fpsとし,18m先の相手に対し,セットポジションから全力投球で3球投げさせ(撮影1),デジタルカメラの映像から複数人で評価し3球とも明らかにWUで後方傾斜が確認された選手をWU体幹後方傾斜群として抽出した.次に,WU体幹後方傾斜群に対し言語教示と実技によりWUの後方傾斜を修正した状態で撮影1と同様の撮影方法で投球フォームを撮影した(撮影2).撮影と同時にBushnell社製スピードガンスピードスターVで球速も測定し,もっとも速い1球を分析対象とした.投球フォームの分析は撮影1,撮影2とも動画を静止画にして行った.投球フォームの評価項目は(1)ECでの投球側股関節屈曲不足,(2)FPでの体幹後方傾斜,(3)FPでの投球側肘下がり,(4)LCでの投球側肘下がりの有無である.それぞれの基準は(1)右手が最も下がった時点で膝関節と股関節が同程度に屈曲していなければ投球側股関節屈曲不足あり,(2)FPで地面からの垂線に対し,体幹が後方に傾斜していれば体幹後方傾斜あり,(3)FPで両肩峰を結ぶ線よりも投球側肘関節が下がっていれば肘下がりあり,(4)LCで両肩峰を結ぶ線よりも投球側肘関節が下がっていれば肘下がりありとした.撮影1と撮影2の静止画を比較し,(1)から(4)の項目が変化したのかどうかを,i)変化なし,ii)改善,iii)改悪の3項目に分類し,投球フォームの変化を確認した.〈BR〉【結果】WU体幹後方傾斜群の投球フォームの特徴として(1)EC股関節屈曲不足ありが11名中7名(63.6%),なしが4名(36.4%),(2)FPの体幹後方傾斜ありが11名中4名(36.4%),なしが7名(63.6%),(3)FP肘下がりありが11名中8名(72.7%),なしが3名(27.3%)(4)LC肘下がりありが11名中6名(54.5%),なしが5名(45.5%),であった.撮影1の投球フォームと撮影2の投球フォームを比較したところ,(1)EC股関節屈曲不足ありが7名中,変化なし4名(57.1%),改善3名(42.9%),改悪0名(0.0%),(2)FPの体幹後方傾斜ありが4名中,変化なし0名(0.0%),改善4名(100.0%),改悪0名(0.0%),(3)FP肘下がりありが8名中,変化なし6名(75.0%),改善2名(25.0%),改悪0名(0.0%),(4)LC肘下がりありが6名中,変化なし5名(83.3%),改善1名(16.7%),改悪0名(0.0%)であった.〈BR〉【考察】今回の結果から,WUの体幹後方傾斜を即時的に修正することにより,FPでの体幹後方傾斜は100%改善できた.しかし,FPでの肘下がりは25%,LCでの肘下がりは16.7%しか改善できなかった.FP,LCでの肘下がりに関しては別のアプローチが必要であると考えられた.
著者
木田 耕太 林 健太郎 清水 俊夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.260-263, 2020 (Released:2020-04-24)
参考文献数
15

神経変性疾患を中心とした神経難病患者の栄養障害は疾患および嚥下障害,呼吸障害,運動麻痺,筋強剛,不随意運動,運動失調など種々の症状や疾患およびその病期によるエネルギー代謝の変容などのため患者ごとに多様である.神経難病患者の栄養療法には多専門職種の知識・経験の共有に基づいた個々の患者に対するオーダーメイドのサポートが必要である.しかしながら外科・内科領域と比して,脳神経内科領域では栄養管理のエビデンスの蓄積は未だ十分でない.神経難病専門病院における栄養サポートチーム(nutrition support team; NST)の活動,および活動を通じて得られた知見について述べる.
著者
清水 俊夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.p807-811, 1993-10
被引用文献数
6

徳島保健所管内の砂場のToxocara属虫卵による汚染状況を把握するために46力所を調査したところ, 29力所(63.3%)から虫卵が検出された. 公園や住宅団地内の遊び場の砂場(87.5%)が, 幼稚園や学校, 児童館等の施設に付属する砂場(36.4%)より明らかに汚染率が高かった. また, その内5力所の砂場について, 1990年5月から1991年4月の間に汚染状況の季節的変化を調査したところ, 3〜6月の春から初夏にかけてと, 9〜11月の秋季に陽性率が高く, 7・8月の夏季及び12〜2月の冬季に低下し, 7・8月には検出される虫卵数も明らかに減少した. 砂場の一つから回収した虫卵を走査電子顕微鏡で観察したところ, 犬蛔虫卵と猫蛔虫卵の比は2:3であった. また, 5-6力月未満の144頭の子犬の直腸便を調査したところ, 98頭(68.0%)が犬蛔虫卵陽性であった. この調査から当保健所管内の砂場が幼虫移行症を引き起こす可能性のあるToxocara属虫卵により著しく汚染されていることがわかった. 今後, このような汚染を防止するための対応が必要である.
著者
清水 俊幸 石畑 宏明 飯野 秀之 木村 雅春
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.72(1993-HPC-048), pp.17-24, 1993-08-19

並列計算機AP1000の数値演算アクセラレータオプション(A:Numerical Computation Accelerat) を開発した.NCAによりAP1000のプロセッサエレメント () にベクトル処理機構を付加し,計算能力を高めた.NCAでは,ベクトル演算器とスカラ演算器の間にコマンドFIFOと呼ぶバッファを設け,ベクトル処理とスカラ処理のオーバラップを可能とした.オーバラップによりベクトル演算器とスカラ演算器の処理速度の差に起因する演算器の利用率の低下を防ぎ,トータルな処理時間の短縮を実現した.NCAのアーキテクチャと基本性能,並列処理性能について述べる.
著者
水谷 仁一 伊藤 岳史 岩堀 裕介 竹中 裕人 鈴木 達也 大家 紫 清水 俊介 矢澤 浩成 太田 和義 花村 浩克 筒井 求
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌
巻号頁・発行日
vol.27, pp.87, 2011

【緒言】投球フォームと投球障害との関連についての報告は散見され,投球障害の治療として投球フォームの修正は再発予防の観点から重要である.しかし不良な投球フォームの修正は簡単ではなく,中には難渋する症例を経験する.このような症例は機能的な問題が不良な投球フォームの原因となっているだけではなく,投球フォームのイメージ自体やその想起,再現に問題がある可能性も考えられる.一般に脳内には運動プログラムが内部モデルとして存在し,運動を行う際にはその運動プログラムをもとに運動が実行されている.つまり,投球フォームを修正するには機能的な面からのみアプローチするだけではなく,投球フォームの内部モデルを投球イメージとして評価し修正する必要もあると思われる.しかし投球フォームのイメージについての報告は少ない.【目的】本研究の目的は,中学生野球選手における投球フォームのイメージを調査することである.【方法】対象は中学生軟式野球チームに所属し,身体に愁訴がなく,本研究の趣旨に賛同し同意の得られた10名で,平均年齢13.6±0.52歳,平均野球歴66±10.2ヶ月であった.ポジションの内訳は,投手1名,捕手2名,野手が7名で,全例右投げ右打ちである.<BR>方法は,十分なウォーミングアップのあと18m先の相手に対し全力投球を3球行わせBushnell社製スピードガンを用いて撮影と同時に球速を測定した.投球フォームの撮影はCASIO社製デジタルカメラEX-FH25を用い,側方,後方,前方の3方向からハイスピードモードで同時に行った.frame rateは240fpsとし,最も球速の速かった1球を分析対象とした.投球フォームはJobe分類を用いて5相に分類し,そのうち(1)Wind-Up phase (WP)の体幹傾斜,(2)Early-Cocking phase (EC)の投球側肘関節位置,(3)Late-Cocking phase (LC)の投球側肘関節位置を静止画にして評価した.それぞれの指標は(1)が地面からの垂線を基準線とし体幹の傾斜を確認,(2)(3)は両肩峰と投球側肘頭を結んだ線を基準線とした.<BR>運動イメージは,自分が運動を行っているような一人称的イメージと他者が運動を行っているのを見ているような三人称的イメージに大きく分類される事から,本研究では2種類の投球イメージの調査を行った.(実験1)言語教示により被検者の持つ投球イメージをWP,EC,LCの各位相で再現,静止させ,静止画で側方,後方,前方より同時に撮影した.分析は,上記の投球フォーム評価項目が実際の投球フォームと投球イメージで明らかに違いがあるものを違いありとして各位相でそれぞれ比較した.(実験2)実験1で分析対象とした位相にAcceleration phase(Ball Release)を加えた実際の投球フォームの静止画をAdobe photoshop CS4でシルエット化し,印刷した側方,後方,前方の各位相の画像を被検者の人数分提示し,自分の投球フォームがどれかを回答させ正答率を算出した.【結果】実際の投球フォームはWPでの体幹後方傾斜が7名(70%),ECでの投球側肘下がりが3名(30%),LCでの投球側肘下がりが6名(60%)であった.<BR> 実験1では明らかな違いがあったものが,WPの体幹傾斜で7名(70%),ECの肘関節位置で5名(50%),LCの肘関節位置では5名(50%)であった.投球イメージが実際の投球フォームより良好であったのはECで1名のみで,他はすべて実際の投球フォームより不良なフォームとなっていた.<BR>実験2では,シルエット化した投球フォームの正答率が側方20%,後方20%,前方20%であった.全方向で正しく選択できたものは0人で,2方向で正しく選択できたものが1名という結果であった. 【考察】本研究の結果から,実験1では投球イメージと実際の投球フォームに明らかな違いがみられ,さらに投球イメージのほうが実際の投球フォームよりも不良な投球フォームとなっている被検者が多くみられた.実験2においても全体的に正答率が低かった.これらのことから,本研究の被検者はいわゆる良好な投球イメージを元々有していないか,投球イメージを想起,再現する能力が十分でない可能性が考えられる.しかし個別で確認すると,実際の投球フォームに問題の見られなかった被検者は,実験1で2つの投球フォームに違いが少なく,実験2においても自分の投球フォームを2方向で正しく選択していた.このことから投球フォームが良好なものと不良なものとの投球イメージに違いがある可能性があり,調査,比較する必要があると思われた.その他に本研究に影響を与える因子として年齢や野球歴などが考えられるため,被検者数を増やすことや年代の幅を広げ調査する必要があると思われる.さらに投球フォームの分類はあくまで検者側に立ったものであり,選手自身が持っている投球イメージと異なっている可能性も考えられることから,投球フォームの位相を細かくするなどの工夫も必要だと考えられた.
著者
木田 耕太 清水 俊夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1083-1085, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
3 3

Fasciculation potential(FP)は,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の筋電図診断において非常に重要な意義を持つ.運動ニューロンの自発放電に由来するこの現象は,神経変性のもっとも早期からおきると考えられており,FPをいかに正確に検出するかが,ALSの早期診断には重要である.また5相以上のものをcomplex form FP(CFP)と呼ぶ.CFPはALS以外では出現することが少ない.CFPの発生部位は,多くが軸索遠位部であると考えられており,軸索膜の興奮性の増大や不安定性と関連した現象であり,脊髄前角細胞や神経根から生じていると考えられる他疾患のFPと性状がことなり,診断的価値が高いものと考えられる.
著者
清水 俊
出版者
熊本大学
雑誌
先端倫理研究 (ISSN:18807879)
巻号頁・発行日
no.1, pp.146-156, 2006-03

本稿では、ハンス・ヨナスの『責任という原理』において、ヨナスが責任をどのようなものとして捉え、そして私たちが何をしなければならないと考えていたかを明らかにする。そのためにまずヨナスの形而上学的な論理を明らかにし、その後に今日の科学技術文明において求められる責任原理による倫理学の必要性について検討する。
著者
清水 俊宏 長谷川 博
出版者
日経BP社
雑誌
日経ニューメディア (ISSN:02885026)
巻号頁・発行日
no.1615, pp.7-8, 2018-07-02

フジテレビジョンとその系列局で構成するフジニュースネットワーク(FNN)が新たなオンラインメディア「FNN.jpプライムオンライン」(FNN.jp)を開始してから3カ月が経過した。FNN.jpは、フジテレビが運営する「ホウドウキョク」と、FNN系列局の「FNN-News.com」という…
著者
高嶋 浩一 清水 俊彦 朝倉 伸司
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.403-409, 2018-05-25 (Released:2018-05-30)
参考文献数
12

症例は78歳,男性。夕刻に西日の眩しさを気にしながら自家用車を運転していたところ,急に右手のけいれんが起きてパニックになりガードレールに衝突した。頭部MRIのFLAIR画像では両側に高信号域が散見された。また,頭部MRAでは右中大脳動脈の狭窄があった。脳波は3 Hzの光刺激で開始から約1秒後に前頭部優位の小棘・徐波複合が出現した。その後12 Hzの光刺激において開始直後に顔面と上半身がけいれんした状態になり,名前を呼んだが無反応であった。けいれんは約10秒で治り呼名にも応じるようになった。本症例は問診,画像所見,および脳波上のてんかん性放電の出現により症候性てんかんの臨床診断となった。今後,超高齢化社会の到来により,子どもの病気と考えられていたてんかんが高齢者にも増えることが予想される。てんかんであれば薬剤で治療できる疾患である。これは脳波担当の臨床検査技師,および多くの高齢者と日常的に接する老人介護施設のスタッフ,地域のケアマネージャーも認識する必要がある。
著者
安藤 敏 高橋 千晶 幾見 京子 増田 彩子 清水 俊雄
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学雑誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.195-201, 1997

アルファルファ雄性不稔系統(CMS)のオルガネラの遺伝情報を栽培品種に導入するため非対称融合法の検討を行い,その結果,安定して雑種カルスを得る方法を確立した。栽培品種のプロトプラストはヨードアセトアミド(IOA)で処理し,CMSのプロトプラストにはX線を照射したのち電気融合法で非対称融合を行った。栽培品種のプロトプラストはアガロース包埋法で培養した場合,6mMのIOAで処理することでほとんど不活化できた。CMSのプロトプラストのコロニー形成を抑えるには900Gy以上のX線照射量が必要で,他の植物と比べ高いことが明らかとなった。融合処理した細胞はアガロース包埋法で培養したが,この時,培養の最初からナース細胞を加えず,アガロースのまわりにKaoの液体培地のみを加えることにより,不定胚を形成するカルス(embryogenic callus:EC)の出現が確認できた。両親の植物体から全DNAを抽出し,ミトコンドリアDNA(mtDNA)をプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行いRFLP(制限酵素断片長多型)を調査した結果,制限酵素XhoIとプローブatpAの組合せで両者を明確に区別できることを見いだした。IOA濃度として3mMと6mM,X線照射量として1350 Gyと2250 Gy,アガロースのまわりに添加する培地としてKP培地とKC培地を選び,それぞれの組み合わせで融合処理と培養を行い,カルス形成,EC形成,植物体の再生およびmtDNAのタイプ毎のカルスの出現割合に及ぼす影響を調べた。その結果,IOAは低濃度(3mM)の方がカルス数,EC数,再生植物体数が多かったが,栽培品種型のエスケープカルスを抑えるためには高濃度(6mM)が必要だった。X線照射量は2250 Gyの方がカルス形成の頻度が高かった。CMSのプロトプラストに2250 Gyという高い量のX線を照射する条件では,核ゲノムだけでなくオルガネラゲノムが破壊されることが懸念されたが,mtDNAの分析からCMS特有のバンドが確認され,この条件が許容されると判断された。細胞質雑種と考えられるカルスの出現割合,及びECや再生植物体数から考えると,IOA 6mMとX線照射量2250 Gyの組み合わせが最もよいと考えられた。MtDNA分析で雑種型と判断されたカルスについてmalate dehydrogenase(MD)のアイソザイム分析を行った結果,CMS特有のバンドをもたず核が栽培品種型であるサイブリッドと考えられるものが得られた。再生植物体についてもmtDNA分析を行ったが,全て栽培品種と同じ型を示し,雄性不稔の形質は導入されていないものと判断された。