著者
小松 義孝 田中 秀治 櫻井 勝 黒木 尚長 櫻井 嘉信 田久 浩志 島崎 修次
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.631-637, 2017-10-31 (Released:2017-10-31)
参考文献数
11

目的:救急車を各走行条件のもと加速度が胸骨圧迫深度に与える影響と胸骨圧迫実施者の姿勢制御の効果を検討した。対象と方法:救急隊員の男性救急救命士,32人を対象に実験的研究を行った。実走行させた救急車内で胸骨圧迫を行い,直線,加減速,左右カーブで,胸骨圧迫実施者の体幹部を固定し姿勢制御した状態と非制御時の胸骨圧迫深度,リズム,胸骨圧迫位置,リコイルを比較検討した。走行中の救急車内における加速度は,加速度計を防振架台に設置し計測した。統計学的検討は各比較検討箇所で実施した5回分の胸骨圧迫時の比較項目平均値についてt検定と分散分析(p<0.05)を,また群間比較にBonferroni法(p<0.005)を用いた。結果:実施者の姿勢制御を行った群は非姿勢制御群に比べて,右カーブと減速で胸骨圧迫深度が有意に深くなった(p<0.05)。その他の評価項目に有意差はなかった。結論:実走行中の救急車内で胸骨圧迫実施者の姿勢制御をすることにより,右カーブと減速による影響が軽減され,深い胸骨圧迫が可能となった。
著者
榊原 直樹 増田 藍 井口 匠 築地新 建太 田中 伸之輔 丸山 幸伸
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.363-372, 2023-11-25 (Released:2023-11-25)
参考文献数
10

Dark patterns are designs that intentionally lead website users toward choices that are detrimental to their best interests. In recent years, the use of dark patterns on websites has grown, becoming a global issue. While typical dark patterns on websites are well-known, those associated with IoT devices remain less understood. In this study, we conducted two workshops to explore dark patterns in IoT products and identify associated risks. In the first workshop, we created a matrix to categorize existing dark patterns in IoT devices and conceptualize new approaches. In the second workshop, we developed a customer journey map to scrutinize dark patterns from the customer's point of view. Subsequently, we evaluated the effectiveness and limitations of our research methodology for identifying these risks. Our findings suggest that using a customer journey map provides several advantages over traditional methods based on existing classifications: it allows for contextual understanding of the product or service, enables a comprehensive examination of the entire process, and encourages consideration from the user's perspective.
著者
笛木 司 田中 耕一郎 牧野 利明 松岡 尚則 佐藤 忠章 小池 一男 頼 建守 並木 隆雄 千葉 浩輝 別府 正志 須永 隆夫 岡田 研吉 牧⻆ 和宏
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.281-290, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
22

「桂」に類する生薬(以下「桂類生薬」)は,古典医書中,多くの薬名で記述されており,それらの薬名と基原の対応は現在も未解決の問題である。我々は『本草経集注』「序録」の「桂」の長さと重さに関する記述に,先に明らかにした同書の度量衡の換算値を適用することにより,当時「桂」として流通していた生薬は,現在のシナモンスティックに相当するCinnamomum cassia の枝皮(カシア枝皮)であったと強く推測した。推測の妥当性を確認するためカシア枝皮に含まれるケイアルデヒドとクマリンを生薬市場で入手した種々の桂類生薬と定量比較したところ,カシア枝皮中の2成分の含有量は,市場で上品とされる日本薬局方適合ベトナム産ケイヒ(C. cassia の幹皮)と近い値を示し,この推測を支持する結果を得た。C. cassia の幹皮の代わりに枝皮を医薬品として応用できる可能性があると考えられた。
著者
田中 直樹 長屋 匡信 中村 浩蔵
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

トランス脂肪酸は日常生活で我々が頻繁に食する脂肪酸である。米国ではトランス脂肪酸摂取が禁止されているが、我が国ではトランス脂肪酸の健康被害に関する科学的根拠が乏しいとの理由で、その摂取に注意が払われていない。我々はトランス脂肪酸が肝癌を促進させる可能性を見出したが、そのメカニズムは不明である。本研究では、食事中トランス脂肪酸が肝臓に与える影響を多角的に解析し、その毒性を機能性食品で軽減する方法も探索する。トランス脂肪酸毒性に関する明確な科学的根拠とその予防戦略を提示できれば、国民の食生活の改善や健康寿命延伸、新規産業創出につなげられる可能性があると考えている。
著者
田中 幸道 江頭 賢治 吉岡 美智子
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.183, 2017 (Released:2019-06-01)

目的 A病院における動く重症心身障害児(者)で、強度行動障害の中でも特に破衣行為のある患者に対する思いと看護実践について明らかにする。 方法 A病院に入院中の破衣行為のある患者の看護に携わった経験が3年以上を有する看護師5名に対し患者への思いや看護について2〜3名でグループインタビューを行った。逐語録から意味のある文節で区切りコード化し類似するコードをまとめ抽象化を繰り返し、サブカテゴリを〈 〉カテゴリを《 》で表した。本研究は当センター倫理審査委員会の承認を得て実施した。 結果および考察 破衣行為のある患者に対する看護実践の内容について分析した結果、5つのカテゴリを抽出した。看護師は全体の関わりを通して《破衣に至る患者の真意を探求》しており、患者が自分の意志を十分に伝えられないからこそ患者理解に多くの時間を費やし心を砕きながら患者の真意を探求していたと考える。 看護師は患者の〈発達過程から破衣の要因や関わりを検討〉しながら〈患者の好むモノや活動を把握〉することで強化因子を探り〈破衣の要因別に対応の方法を選択〉していた。また、これまでの〈看護師の経験から効果的な看護を引き出し〉《患者の障害特性に合わせて破衣が減少する手立てを探って》いた。看護師は、破衣の要因が重複するケースもあり患者の真意を掴めず患者に適した看護実践の選択に悩みながら《患者の特性を考慮し試行錯誤を重ね》ていた。 そして《他職種と患者の問題行動を共有し対応方法を統一》していた。このことは患者が混乱しない環境を提供するため、支援者の言葉や態度を統一することを重要視していたのではないかと考える。 日々の関わりの中で看護師は《「服は着る」の言い聞かせ》を行っており、患者が将来社会に出て生活をすることを前提に、ソーシャルスキルを身につけてほしいといった看護師の強い思いの表れによって実践していた内容であると考える。
著者
光井 卓 清水 奈保子 田中 雄悟 大路 剛 亀井 克彦 眞庭 謙昌
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.57-61, 2020-01-15 (Released:2020-01-15)
参考文献数
15

症例は46歳女性.中米を拠点として中南米で勤務している.健診で胸部異常陰影を指摘され,CT検査で右肺下葉に辺縁明瞭な2 cmの小結節が認められた.現地でCTガイド下生検術を施行されるも悪性所見は認めず,抗酸菌,真菌の感染所見も認めなかった.精査目的で帰国後,前医で気管支鏡検査を施行されるも壊死のみで診断がつかず,肺生検目的で当科に紹介となった.胸腔鏡下右下葉部分切除術を施行し,術中迅速検査にて悪性所見は認めず,炎症性肉芽腫の診断であった.検体は黄白色調,凝固壊死を伴った類上皮肉芽腫であり,病理診断では抗酸菌染色は陰性,Grocott染色で類円形,楕円形の酵母様真菌が認められた.術後血清H. capsulatum陽性を確認し,肺ヒストプラズマ症と診断した.免疫正常者であり,無症状であることからIDSAガイドラインに則り,経過観察となった.術後20ヵ月現在,感染の再燃なく経過している.
著者
藤原 道隆 岩田 直樹 三澤 一成 丹羽 由紀子 高見 秀樹 田中 千恵 小寺 泰弘
出版者
日本VR医学会
雑誌
VR医学 (ISSN:13479342)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-14, 2020-01-10 (Released:2021-02-05)
参考文献数
46
被引用文献数
1 1

It has been about 20 years since the commercial use virtual reality (VR) surgical simulator was launched. We have used VR surgical simulator for surgical education from early stage. At present, the weight of the VR simulator in current surgical education is lower than initially expected. This has been mainly due to the discord between the expectation for the functions of the VR simulator of the coaching surgeon and the actual use of the VR simulators without essential comprehension of simulation training. In addition, the focus of developers of the VR simulators has been besides the points. In this article, we summarize the situation of VR simulator so far, and describe the future measures of surgical training using VR simulators more effectively from the view point of clinician.
著者
田中 大輔
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.171-176, 2020-11-01 (Released:2021-05-01)
参考文献数
5

2012年英国で誕生したExscientiaは、人工知能(AI)創薬における世界のフロントランナーである。本年1月には大日本住友製薬との共同研究で生み出された化合物が臨床試験入りし、世界で最初のAIがデザインした治験薬として多くのメディアに採り上げられるなど、その実力と実績を「成果物」として世に知らしめた。その結果、ExscientiaはAIによるドラッグデザインをする企業であると理解されがちであるが、それは主要であるものの一部に過ぎない。Exscientiaではドラッグデザインに止まらず、これから注目される新規標的分子の提案にもAIを活用している。筆者らのAI創薬プラットフォームを紹介するとともに、世界のAI創薬の最前線に身を置く立場からこれからの創薬化学者のあり方についても私見を述べてみたい。
著者
田中 惣治
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.199-203, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
7

短下肢装具が脳卒中者の歩行にどのような影響があるか,バイメカクスの観点から理解することは,短下肢装具の選定や使用に欠かすことのできない知識である.脳卒中者の歩行を対象とし,矢状面における短下肢装具の効果について解説する.また,足継手の種類,歩行のロッカー機能と短下肢装具の作用,下腿前後傾角度(Shank to Vertical Angle:SVA)に着目した評価のポイントについて述べる.さらに症例を通じて短下肢装具の使用により脳卒中者の歩容や筋活動が変化することを示す.
著者
爲廣 一仁 靍 知光 古賀 仁士 島 弘志 黒田 久志 田中 将也 瀧 健治
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.734-738, 2014-09-15 (Released:2015-01-19)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

上部消化管内視鏡検査中に緊張性気腹から心肺停止(cardiopulmonary arrest: CPA)に陥ったが,迅速な減圧により救命できた症例を経験した。症例は63歳の男性。心窩部痛のため前医を受診した。前医で上部消化管内視鏡検査中にCPAとなり,心肺蘇生を行いながら搬入された。頸静脈怒張と著明な腹部膨満を認めた。上部消化管内視鏡検査中に生じた緊張性気腹と診断し,tube drainageを行った。腹部は平坦となり,心拍が再開し,大網充填術を行った。術後,集中治療を要したが,後遺症なく退院となった。緊張性気腹は非常に稀な病態で報告は少ない。緊急性が高いことと,減圧により病態を改善させることが可能であることを認識する必要がある。またCPAであっても,的確な一次救命救急処置(basic life support: BLS)と迅速な診断,迅速な減圧により予後良好な転帰が得られる。
著者
中川 洸志 匂坂 量 齋藤 駿佑 都 城治 田久 浩志 田中 秀治
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-15, 2023-06-22 (Released:2023-07-26)
参考文献数
29

目的:傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与時間と神経学的転帰の関連を検討すること。方法:ウツタインデータ2015-2019年において,病院前にてアドレナリン投与を受けた18歳以上のOHCAを対象とした。マルチレベルロジスティック回帰分析を行い,傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与時間(1分増加単位)と神経学的転帰良好(CPC1-2)の関連を検討した。結果:Shockable群とNon-shockable群において,傷病者レベルおよび都道府県レベルのアドレナリン投与時間の遅延(1分増加単位)はCPC1-2に有意な負の関連を示した。結語:傷病者および都道府県レベルでのアドレナリン投与の遅延とCPC1-2の有意な負の関連を示した。
著者
田中 隆宏 黒澤 忠弘 齋藤 則生
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.222-233, 2012 (Released:2012-12-11)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2

乳がんの早期発見のため、乳房X線検査(マンモグラフィ)が2000年より乳がん検診に導入され、受診者数は増加の一途をたどっている。診断の高い信頼性と人体への十分な安全性を両立させるためには、X線照射を適切な線量に抑えた上で、高品質なX線診断画像を得ることが必要となる。マンモグラフィでは、乳房撮影に特化した通常とは異なる特殊なエネルギースペクトル(線質)のX線が用いられる。しかし、その線質は、これまでの線量計の校正に用いられているX線とは大きく異なるため、線量計の校正の信頼性が十分であるか心配する声が、学会や産業界から挙げられた。そこで、産総研ではマンモグラフィ用のX線の線質に基づいた線量の国家標準を開発し、それを産業界へ供給した。既存の研究設備や技術を最大限活用したり、現行の精度管理体制の中にこの標準を組み込むことにより、この標準の迅速な開発を可能にした。また、国内・国外の両方を意識した研究開発のシナリオをあらかじめ策定したことが、国際的な同等性の確認された標準の迅速かつ広範な供給へ結びついた。
著者
杉木 翔太 喜熨斗 智也 羽田 克彦 櫻井 勝 原 貴大 武田 唯 中川 洸志 田中 秀治
出版者
一般社団法人 日本救急救命学会
雑誌
救急救命士ジャーナル (ISSN:2436228X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.39-44, 2021-06-15 (Released:2023-06-08)
参考文献数
13

【目的】群衆密集度が高い状況や,複数階を有する建築物において自動体外式除細動器(automated external defibrillator,以下AEDと略す)が到着するまでの時間の関連性を検討すること。【方法】模擬傷病者発生場所とAED設置場所の往復200mの道程にて,混雑群(10m四方に70名以上)と閑散群(10m四方に10名以下)のAED取得に要する時間を測定し,両群の往復時間について,t検定を用いて比較した。また,1階から6階までの階段にて,模擬傷病者発生場所からAED設置場所までの往復時間を各階層で計測した。【結果】混雑群は往復平均時間が有意に延伸した(混雑群 vs 閑散群;127.8±10.6秒 vs 102.7±6.5秒,p<0.001)。また,階層が上がるほど往復平均時間は延伸したが,いずれの階も往復2分以内にAEDの確保が可能であった。【結語】群衆密集度や上下の移動は,AED到着までの時間に影響を及ぼすため,高い群衆密集度が予想される場合やAEDを設置する建築物を考慮して,AEDの戦略的な配置が重要であると考える。