著者
石塚 達也 西田 直弥 仲保 徹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H4P3248, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】 呼吸筋は呼吸機能を維持するだけではなく、姿勢制御に作用するとされている。臨床では姿勢制御機構が破綻している呼吸器疾患患者が多く観察される。姿勢制御と呼吸機能との関係を裏付ける明確な研究は少なく、筋機能からの推察が主となっている。その中で内山らは、足圧中心点(COP)の動揺と呼吸との関係を検討し、両者には相関があるとしている。このことからCOPを制御することにより良好な呼吸運動が可能になると考えた。人の姿勢制御戦略の中で、静止立位時に一般的に使われているのは足関節戦略である。足関節戦略は、主として足関節を中心とした身体運動を介して身体重心を安定した位置に維持する戦略である。このことに着目し、呼吸運動と足関節底背屈運動を主としたバランス訓練を併用し、胸郭運動に与える影響を検討した。【方法】 対象は,健常成人男性14名(平均年齢22.9±3.0歳、平均身長170.7±6.5cm、平均体重62.5±7.2kg)とした。呼吸運動は3次元動作解析装置Vicon MX(Vicon Motion Systems社)を用い、体表に貼付した赤外線反射マーカーから胸郭運動を計測した。赤外線反射マーカーを剣状突起高周径上に6箇所貼付し、前後径および周径を算出したのち安静呼気-最大吸気の胸郭拡張量を計測パラメータとした。呼吸相を把握するために、呼気ガス分析器AS-300S(ミナト医科学社)を用い呼吸量変化の計測を行った。COPは床反力計(AMTI社)を用い、対象者の踵を基準とした安静呼気時の前後方向位置を算出した。得られた値は、対象者の足長で正規化し、足長に対する割合で3群(前方群、中間群、後方群)に分類を行った。前方群はCOPの位置が足長の50%より前方にある群、中間群は足長の40%から50%に位置する群、後方群は40%未満に位置する群とした。各対象者に対して、安静時のCOP位置および胸郭拡張量を計測したのち、DYJOC BOARDを用いたバランス訓練を行った。バランス訓練は、足関節底背屈運動と呼吸運動を同期して行い、足関節底屈-吸気/足関節背屈-呼気の組み合わせとした。バランス訓練後のCOP位置および胸郭拡張量を計測し、訓練前後の比較を行った。【説明と同意】 計測を行うにあたり、各対象者に対して本研究内容の趣旨を十分に説明し、本人の承諾を得た後、同意書に署名した上で計測を実施した。【結果】 COPの位置変化をみると、前方群は訓練前平均55.1±2.8%、訓練後55.1±2.9%となった。中間群では、訓練前43.7±2.6%、訓練後47.2±4.3%となった。後方群では、訓練前38.8±1.1%、訓練後45.4±3.0%となった。 また胸郭拡張量は、前方群では前後径が19.7±4.4mm、周径が54.8±12.6mmであり、訓練後前後径が17.9±3.1mm、周径が50.9±14.2 mmと減少した。中間群では前後径が16.6±4.1mm、周径が50.9±9.8mmであり、訓練後前後径が16.3±5.4mm、周径が51.8±9.7 mmとほとんど変化しなかった。後方群では前後径が18.3±5.1mm、周径が45.0±5.2mmであり、訓練後前後径が21.3±5.2mm、周径が48.6±2.1 mmと増加した。【考察】 今回の研究で、足長に対する踵からのCOPの位置は中間群と後方群で訓練施行後にCOPの前方化を図ることができた。特に後方群ではそれに伴い胸郭拡張量も増加しており、足関節戦略を学習したことにより安静立位がより安定し呼吸筋による姿勢筋活動から解放されたことが考えられる。そのことにより呼吸筋が呼吸のための筋として活動する機能が高まったことが考えられる。臨床において、自然立位で後方重心となっている例は胸椎の後弯が増強していることが多く、胸郭は呼気位にあることが多い。胸郭拡張量の増加については、COPの前方化と吸気を同期して行うことで、胸郭が呼気位から吸気位へ移行したとも考えられる。胸郭の吸気位への移行は胸椎伸展方向への動きも伴い、後方重心の解消、COPの前方化に繋がったものと考える。すなわち、COPの位置と胸郭拡張差は相互的に作用している可能性が考えられた。 また、前方群は骨盤前方化により姿勢を保持している印象が強く、訓練時に股関節戦略により対応していたことが考えられた。訓練時に股関節、腰椎での代償が大きく胸郭の拡張を得ることができなかったものと推測される。【理学療法学研究としての意義】 本研究より特に後方重心の症例に対して足関節戦略を用いたCOP制御が呼吸筋の姿勢筋活動の解放を促し、胸郭拡張量を増加させる可能性があることが考えられた。今後は安静時姿勢のアライメントなども考慮し、どのような姿勢制御で訓練を行うかということも加味しながら追跡調査をしていきたい。
著者
元井 玲子 矢野 育子 尾崎 淳子 鋒山 香苗 山本 崇 深津 祥央 石塚 良子 松村 由美 谷口 正洋 東村 享治 松原 和夫
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.10, pp.1177-1184, 2015-10-01 (Released:2015-10-01)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

The use of iodine contrast agents occasionally causes serious allergic symptoms including anaphylaxis. At Kyoto University Hospital to prevent nephropathy we began recommending water intake before and after administration of iodine contrast agents in September 2012. In the present study we investigated the effect of water intake on the incidence of allergy-like events after the use of non-ionic iodine contrast agents. We extracted the occurrence of allergy-like events from the incident report system in our hospital from January 2011 to September 2014, and classified these events into the following 3 grades: 1+ (follow-up); 2+ (medication treatment); and 3+ (hospitalization). The allergy-like incidence rate was calculated for subsequent evaluation according to season and water intake. Allergy-like events significantly decreased from 0.49% before the recommendation of water intake to 0.26% at 1 year and 0.20% at 2 years after implementing the recommendation. The incidence of allergy-like events was significantly higher in summer than in winter before water intake was recommended. After implementing the recommendation, the value for summer significantly decreased to an incidence similar to that of winter. Respiratory and gastrointestinal allergy-like symptoms were dramatically decreased after implementing the recommendation. Water intake may be useful for preventing allergy-like events associated with non-ionic iodine contrast agents, especially during the summer.
著者
石塚 晴通
出版者
東洋文庫
雑誌
東洋学報 = The Toyo Gakuho (ISSN:03869067)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1~4, pp.33-61, 1985-03

It is well-known that the texts of the Nihonshoki owned by the Iwasaki-Bunko, which include the use of diacritic marks are the oldest texts of this kind, but there are few papers written about the compounding marks “gōfu” 合符 used with characters. In the texts there are two types of compounding marks. One was marked between two characters in the middle and the other was marked between two characters on the left. These compounding marks were based not on Chinese but on Japanese. The ones marked in the middle indicated a single Japanese word, and the ones on the left indicated two Japanese words in the 10th century.
著者
石塚,元徳
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, 1963-03-01
著者
石塚 洋一 山本 邦夫 今村 祐佳子
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.39, no.Supplement2, pp.156-161, 1996-08-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

エアロゾル療法は, 局所や全身にあたえる影響は少ないが, ネビュライザー療法として用いた場合, 下気道にもエアロゾル粒子が沈着することを念頭においた使用が望まれる。これは, エアロゾル粒子が, 上気道よりも下気道に障害をあたえる可能性が高いからである。日常生活でも, 様々なスプレー製品を用いる機会がある。これらの製品の中には, エアロゾル粒子の下気道障害性が強いものもあり注意を要する。防水スプレーは死亡事故が出ており, これはフッ素樹脂の吸入毒性により, 間質性肺炎や肺水腫を起こしたものと考えられる。この他にも, ヘアスプレー, 静電気防止スプレー, 殺虫剤スプレーなどの中毒が報告されている。
著者
石塚 幸太郎
出版者
The Japanese Society for the History of Economic Thought
雑誌
経済学史学会年報 (ISSN:04534786)
巻号頁・発行日
vol.39, no.39, pp.103-115, 2001 (Released:2010-08-05)
参考文献数
3

The ideas of Charles Fourier were imported into 1840's America by Albert Brisbane. Fourier's ideas, some of which seemed eccentric and extravagant to Brisbane, were abridged and adapted to the context of American society. Brisbane claimed that the building of a new community “Association” would be the best solution to all social problems of that time. In his plan, about 1800 people would live together cooperatively in a labor system called “attractive industry” which promised high productivity. An “Association” would be a community in which each member would hold stock certificates as personal property.In the Jacksonian era, chartered business corporations were attacked for their privileges. However, in the course of deliberating the general incorporation act some economists including Henry Carey, argued in their favor. They thought that business corporations supported by small shareholders would provide an oppotunity for poor people to become independent and reasonably wealthy.Brisbane argued that his Association was based on the operating style of current business corporations. In addition, he pointed out that this shared property system would harmonize diverse interests of members, interests which had up until then been the source of ruinous conflicts.Brisbane presented his Associaton, which was based on a joint stock property system originally found in the business world, as the best means of social reform.
著者
石塚 和夫
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
顕微鏡 (ISSN:13490958)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.11-15, 2015-04-30 (Released:2019-09-03)
参考文献数
10

高分解能電子顕微鏡には透過型電子顕微鏡(CTEM)と走査型透過型電子顕微鏡(STEM)がある.現在,どちらのタイプの電子顕微鏡でも最適な条件では原子コラムの並びが観察できる.しかし,電子顕微鏡像から推定された原子構造が正しいこと確認するにはシミュレーションが必要になる.試料の構造情報と顕微鏡の結像情報をシミュレーションプログラムに与えれば,顕微鏡像が表示されるが,CTEMとSTEMでは顕微鏡像に寄与する信号が異なり,電子レンズの効果も異なる.表示された結果を正しく評価するにはシミュレーションの基本的な考え方やアルゴリズムの大枠を理解しておく必要がある.本解説ではマルチスライス法による高分解能電顕像のシミュレーションの基礎的な考え方,特に弾性散乱,熱散漫散乱の計算方法および部分干渉性の取り扱いについて説明する.