著者
福島 正己 吉田 滋
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.924-932, 2000-12-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
21

地球に降り注ぐ宇宙線には極めてエネルギーの高いものがあって,1020電子ボルトを超えるものが,これまでに8例発見されている.超高エネルギーの宇宙線は,3Kの背景放射に遮蔽されて3億光年より長い距離を伝播することはできないから,これらの宇宙線は銀河系近傍の天体で加速されたと考えるのが自然であるが,その到来方向には加速源となる高エネルギーの天体が見つからない.この矛盾を説明するために,宇宙紐,磁気単極子,寿命の長い超重粒子などの崩壊による2次粒子起源説,あるいは特殊相対論の破れなど,宇宙論や素粒子論に関連した仮説が提案されている.宇宙線望遠鏡(Te1escope Array)計画は,米国ユタ州の砂漠に空気シャワーの発生する大気蛍光を検出する反射望遠鏡群を設置し,数万平方キロの領域に到来する超高エネルギーの宇宙線を観測する.これによって宇宙線のエネルギー・到来方向・粒子種を精密に決定し,超高エネルギー宇宙線の発生起源解明を目指す.
著者
福島 正己
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.20-27, 2005-01-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
31

1020電子ボルト(eV)を超える巨大なエネルギーを持った素粒子が宇宙から飛来し,AGASAやHiResなどの空気シャワー観測装置で検出されている.これらの宇宙線は銀河系外の高エネルギー天体で発生し,長距離の宇宙空間を伝播して地球に到達したと考えられるが,到来方向には起源となる候補天体が見当たらず,その起源は謎である.またAGASAによる観測は,宇宙背景放射との衝突から期待されるエネルギー限界を超えてスペクトラムが続いていることを示しているが,HiResの観測はエネルギー限界の存在とほぼ一致している.「極高エネルギーの宇宙線は何処で生まれるのか」,「宇宙線のエネルギーに限界はあるか」を巡って続く議論に終止符を打つべく,大規模な観測装置の建設が南米アルゼンチンと米国ユタ州で始まった.宇宙ステーションからの観測も計画されている.新たな観測によって,極高エネルギー宇宙線の発生起源と伝播機構が解明され,標準的な素粒子と天体の理論を超える新たな物理への糸口となることが期待される.
著者
横井 徹 和田 淳 森信 暁雄 全 勝弘 関川 孝司 川野 示真子 永山 恵子 池田 弘 浅野 健一郎 福島 正樹 山本 博 土居 偉瑳雄 日下 昌平
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.24, no.11, pp.1463-1469, 1991-11-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
25

1989年7月から1990年9月までの15か月間に経験したパラコート中毒例6例に対し, 胃洗浄, 血液吸着 (DNP), 強制利尿に加えて, ポリエチレングリコール含有電解質溶液Golytelyを用いた72-96時間の連続的な腸洗浄を行い5例を救命した. 救命例5例では, 治療開始後比較的短時間で尿中パラコート定性反応は陰性化し, 全例後遺症なく1か月後に退院した. 死亡例1例は大量服用例で, 尿中パラコート定性反応は陰性化せず, 多臓器不全に陥った.パラコート中毒治療の要点は本剤の体外への速やかな排泄である. 現在治療は腸管洗浄と血液浄化, 強制利尿を組み合わせて行われているが, 腸洗浄は電解質異常などをきたすため強力に行うことは難しい. Golytelyはこの欠点を補い, パラコートが腸管から体内へ吸収される前に速やかに排泄することによって本症を効果的に治療しうると考えられる. しかし本症のように腸管に広範囲の粘膜欠損を生じる場合は, 体内への多量の水分貯留をきたす場合があるので循環動態に注意が必要と考えられた.
著者
竹山 恵美子 小沼 朋恵 高内 沙紀 堀内 美香 福島 正子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 63回大会(2011年)
巻号頁・発行日
pp.174, 2011 (Released:2011-09-03)

【目的】ペルーで栽培されるサッチャインチの完熟種実から圧搾して得られるグリーンナッツオイル(サッチャインチオイル)は,ω-3系脂肪酸であるα-リノレン酸とγ-トコフェロールに富んでいる。発表者らはこのオイルが生体に対して高い抗酸化力を示し,DNAの酸化損傷を抑える働きを有する可能性を臨床試験により明らかにした。一方,アマニ油やエゴマ油も同様にω-3系脂肪酸に富んだ油として知られており,以前から使用されている。しかしながら,ω-3系脂肪酸を豊富に含む油脂は加熱や光照射による影響を受けやすく,保存や調理の際の劣化が問題となる。そこで,より適した調理法を開拓するためグリーンナッツオイル,アマニ油およびエゴマ油の加熱および紫外線照射による影響について検討した。 【方法】試料はグリーンナッツオイル,アマニ油およびエゴマ油の3種類を用いた。これらを各々フライパンに一定量とり,80,100,120,140,160,180℃で10分間加熱した。また,UVランプを用いて,0,5,10,15,20,25時間紫外線照射した。これらの過酸化物価,カルボニル価を測定した。【結果】紫外線照射により過酸化物価・カルボニル価は,3種の油ともに上昇したが,その値はアマニ油>エゴマ油>グリーンナッツオイルの順で,特にグリーンナッツオイルは他の2種に比べて著しく低い値であった。また,10分間の加熱においても,温度の設定が高くなるほど両価の上昇が認められたが,過酸化物価はある温度をピークに減少し,その減少開始温度は油の種類により異なった。140℃までの加熱においては,グリーンナッツオイルが3種の油の中で最も劣化度が低いことが認められた。
著者
荻尾 彰一 千川 道幸 福島 正己 有働 慈治 奥 大介 芝田 達伸 冨田 孝幸 松山 利夫 山崎 勝也
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

宇宙から飛来する極限的高エネルギーを持った素粒子を検出し、その到来方向・エネルギー・粒子種を求め、活動銀河、銀河の衝突など宇宙における極限的高エネルギー現象を解明するための観測装置が、日米韓露の国際共同研究として、2008年から米国ユタ州で稼働し続けている。本研究では、この観測装置のエネルギー較正のための「標準光源」として、射出方向可変で、持ち運び可能な紫外線レーザー光源を製作し、その性能を評価し、較正装置として十分な性能を有していることを確認した。本格的な較正装置としての運用は2011年度から開始される。
著者
岩久 正明 福島 正義 岡本 明 子田 晃一 児玉 臨麟 吉羽 邦彦 鮎川 幸雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、ウ蝕への系統的対応のためのクリニカルカリオロジーを確立することを目的として、これまでの一連の研究成果を総合的に検討するとともに臨床対応へのシステム化を図ることである。主要な結果は以下のとおりである。1.ウ蝕の各ステージにおける病態の分析・診断(1)レーザーによるウ蝕診断法ついてその有用性を明らかにした。(2)ウ蝕治療後における抗原提示細胞の局在とその動態を免疫組織化学的に検索した結果・修復処置後も長期間残存するが明らかにされた。2.感染症としてのう蝕への対応(1)ウ蝕象牙質から高頻度に検出されるPseudoramibacter alactolyticusの遺伝学的多様性が明らかにされた。(2)in vitroにおける人工的バイオフィルム形成モデルを確立し、抗菌剤効累の判定におけるその有用性を明らかにした。3.ウ蝕治療(1)Er: YAGレーザーよる歯質蒸散部の微細形態、切削効率、および歯髄反応について検討し、その臨床応用への有用性が明らかにされた。(2)象牙質・歯髄複合体の修復、再生メカニズムの解明の一環として、直接覆髄処置後ならびに歯牙移植実験モデルにおける硬組織形成過程を免疫組織化学的に観察し、この過程における非コラーゲン性タンパクの関連性を明らかにした。(3)難治性感染根管症例への対処法として、混合抗菌剤の応用を検討し、根管内貼薬の基材としてのプロヒレングリコールの有効性が認められた。4.術後の再感染予防再発予防のための抗ウ蝕性修復材に関する研究の一環として、各種フッ素徐放性修復材料による歯質の強化(耐酸性)が明らかにされ、臨床応用への有効性が示唆された。5.術後指導、定期診査、リスク評価要介護高齢者の口腔ケアのために新たに開発された口腔ブラシのプラーク除去効果と臨床応用への有用性が示唆された。
著者
武井 典子 藤本 篤士 木本 恵美子 竹中 彰治 福島 正義 奥瀬 敏之 岩久 正明 石川 正夫 高田 康二
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.384-396, 2009-03-31 (Released:2011-02-25)
参考文献数
25
被引用文献数
3

近年, 軽度の要介護高齢者の増加が厚生労働省より指摘され, 平成18年度の介護保険制度の改正では, 介護予防として口腔機能の向上が位置づけられた。また, 平成20年度の「後期高齢者医療制度」では, 食べる・話す・笑う機能を低下させないために「口腔機能の評価と管理」が位置づけられた。しかし, どちらも総合的な評価法や具体的な管理方法は, 社会科学的施策として確立されていない。このような現状から, 著者らは, 自立から要介護までのすべての高齢者のための介護状態の予防・軽減, QOLの向上などを目指した安全で有効な口腔機能の評価と管理のシステムの開発を試行し, 広く社会科学的に合理的な施策として実現すべく検討を試みてきた。今回はその第1報として, 自立高齢者を対象に, 口腔機能の総合的な検査法, その結果に基づいた改善法, その実施の有効性についての評価法を試行検討した。対象者は, 札幌市の某ケアハウスに入所している自立高齢者91名である。口腔機能を総合的に評価するために, 口腔の周り, 口腔の入り口 (咀嚼), 口腔の奥 (嚥下), 口腔の清潔度の4つのカテゴリーに分けて行った。その結果を活用して改善法を提案・実施・評価を行った。その結果, 咀嚼力の判定, 唾液湿潤度検査, 反復唾液嚥下テスト, オーラルデイアドコキネシス, カンジダ検査が有意に改善したことにより, 今回試作したシステムは, 自立高齢者の口腔機能の評価と向上に役立つ可能性が示唆された。