著者
細川 雅史 安井 由美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

フコキサンチンは、ケモカインによる脂肪細胞と免疫細胞の相互作用を制御し、肥満脂肪組織での慢性炎症を抑制した。更に、脂肪組織由来の炎症性因子の産生抑制とともに、骨格筋組織における糖代謝を改善した。一方、ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンが、潰瘍性大腸炎や大腸発癌のモデル系において予防効果を発揮した。その予防機構として、組織細胞に対する直接的な抗炎症作用に加え、マクロファージによる大腸細胞の炎症誘導に対する抑制効果を見出した。以上のように、海洋性カロテノイドは細胞・組織への直接的な作用に加え、それらの相互作用を制御し、効果的に慢性炎症や炎症性疾患の予防に貢献するものと推察する。
著者
細川 雅史 安井 由美子
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アスタキサンチンが、潰瘍性大腸炎や大腸発癌に対して予防効果を示すことを見出した。その作用機構として、アスタキサンチンが大腸組織においてNF-κBの活性化抑制を介して炎症性サイトカインの遺伝子発現を制御することが推察された。一方、褐藻に含まれるフコキサンチンは、内臓脂肪の増加抑制と血糖値改善効果を示す。フコキサンチンは脂肪組織における炎症性アディポサイトカインの遺伝子発現を抑制するとともに、炎症に関わるマクロファージの浸潤を抑制し脂肪細胞とマクロファージの相互作用を調節することを見出した。
著者
オードリー オスラー 小玉 重夫 細川 英雄 福島 青史
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.2-32, 2019-12-31 (Released:2020-03-10)

本稿は,2019年3月10日に早稲田大学で開催された言語文化教育研究学会第5回年次大会シンポジウムの記録である。
著者
大谷 龍治 當別當 洋平 米田 浩平 泉 智子 安岡 辰雄 宮島 等 小倉 理代 弓場 健一郎 高橋 健文 細川 忍 岸 宏一 日浅 芳一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.657-663, 2016 (Released:2017-06-15)
参考文献数
20

症例は60歳, 男性. 2015年4月, 夜間嘔吐後に心肺停止状態となり, 救急要請された. 救急隊到着時は心室細動 (ventricular fibrillation ; VF) で, 自動体外式除細動器 (automated external defibrillator ; AED) にて除細動後, 自己心拍が再開し当院に搬送された. 来院時, 心電図にJ波はみられず, 下・側壁誘導にST低下を認めたものの心臓超音波検査で壁運動異常はみられなかった. 意識レベルの低下が遷延しており, 呼吸状態も不安定なため, 鎮静・気管内挿管下に低体温療法を開始した. 治療開始30分後からVFを生じ, 体温が35°C以下に低下後は電気的ストームとなった. 抗不整脈薬による抑制効果はなく電気的除細動を繰り返した. 12誘導心電図を再検したところ, 初診時には認めなかったJ波が広範な誘導に出現しており, 低体温によって顕性化したものと判断した. 低体温療法を中止し, イソプロテレノールの持続静注を開始したところ, 速やかにJ波は消失し, VFの抑制が得られた. 体温が正常化後は, イソプロテレノールを中止してもJ波は出現せず, 以後VFを生じることはなかった. 心肺蘇生後症例の低体温療法時には, J波が顕性化してVFを生じる症例があることに注意すべきと思われた.
著者
三村 雄一 柴田 誠司 久田 茂 児玉 晃孝 吉田 正尚 増山 剛 成田 隆博 立花 滋博 古谷 真美 桑形 麻樹子 早川 和宏 青木 豊彦 細川 暁 牧 栄二
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.P-44, 2012

Wistar HannoverラットはSDラットに比して小型であり、生存率が高く、自然発生腫瘍が比較的少ないことから、安全性試験への利用が注目されている。今回、IGSラット研究会の活動として、4施設参画によるCrl:WI(Han)ラットの一般毒性試験に関する背景データの収集を実施した。下記の共通プロトコールを基に、各施設で試験条件を設定し、Crl:CD(SD)ラットの背景データとの比較を行った。共通プロトコール: • 観察・投与期間 : 4週、13週または26週 • 動物数 : 雌雄 n=10/ 性 (無処置または溶媒投与) • 飼育条件 : 任意 (実施施設で決定,飼料等の条件設定はしない) • 検査項目 : GLP 適用試験で実施する検査項目結果及びまとめ:Crl:WI(Han)ラットは、Crl:CD(SD)ラットと比較して、以下の特徴が認められた。なお、主要な所見について、施設間に相違は認められなかった。 • 体重及び摂餌量:低値 • 眼科学的検査:角膜混濁 頻度増加 • 血液学的検査:WBC、Platelet低値 • 血液生化学的検査:脂質系、AST及びALT低値 • 器官重量(相対):胸腺高値 • 眼の病理組織学的検査:角膜鉱質沈着 増加
著者
林 友直 岡本 良夫 横山 幸嗣 細川 繁 冨田 秀穂 升本 喜就
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.102, pp.13-20, 2005-05-20

鯨生態観測衛星(WEOS, 観太くん)は2002年12月14日に種子島宇宙センターからH-IIA-4号機により、高度800kmの太陽同期軌道に打ち上げられ、それ以来千葉工業大学津田沼キャンパスに設けられた地上管制装置によりデータ取得が順調に続けられている。鯨に対する生態観測プローブの取り付けはいまだ成功していないが、数多くの試行により装着の見通しが得られつつある。ここでは衛星、地上系、プローブとその装着について、その開発方針と其の成果について述べ、さらに本システムの応用として展開している計画とその結果を示す。
著者
田島 正浩 細川 江利子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.55-73, 2017

<p>本研究では,教員養成系G大学におけるダンス実技授業において,履修学生を対象としてサンバの授業を2回(「はじめの段階」 と 「やや進んだ段階」) 実践し,質問紙調査により授業後の学生の意識や学習達成感の変容を考察することによって,立案したサンバの授業の有効性について検証することを目的とした。<br/>実施した2回の授業は,各回とも,指導者によるサンバの授業実践,指導案を参照しながら指導内容の振り返り,指導実習(学生が教師役となった展開部の模擬指導など)の3つの内容で構成した。また,各回のサンバの授業の内容と指導については,①基本である 「リズムに乗って友達と関わりながら自由に踊る力」 を身につけることを主軸とし,②サンバのリズムの特徴を感じ取れるような言葉がけや指導法を工夫し,③教師リードと学習者リードという双方向の活動を重層的に組み込んで授業を構成し,途切れのないスムーズな学習の流れを重視して授業を展開するよう工夫した。<br/>その結果,授業後の質問紙調査の結果は以下の通りであった。 ①「サンバのリズムで自由に踊ることができそうだと思うか・難しいと思うか」 という質問に,授業前はほぼ半数の学生が 「難しい」,3割強の学生が 「どちらともいえない」 と回答したのに対し,第2回授業後は9割強の学生が 「踊ることができる」 と回答し有意に肯定的な変化が認められた。また,②「サンバのリズムで踊る楽しさ」,③「サンバのリズムの特徴の理解」,④「サンバの授業の組み立て方や展開方法の理解」 については,第1回授業後と第2回授業後では有意な傾向(②)ないし有意に(③④)肯定的な変化が認められ,第2回授業後には全員が「楽しかった」「理解できた」 と回答した。<br/>以上より,本研究で実践した教員養成系大学の学生を対象とした授業構成,サンバの授業内容と展開,サンバのリズムの指導法については,対象とした学生たちのサンバのリズムダンスの学習において有効であったと推察された。</p>
著者
細川 三郎 松本 祥吾 多田 稜平 芝野 卓也 田中 庸裕
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.583-588, 2017-11-15 (Released:2017-11-29)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

Mn-modified hexagonal YbFeO3 (Mn-YFO) synthesized by a solvothemal method is found to have a higher catalytic activity for C3H8 or CO oxidation than noble metal catalyst, Pd/Al2O3. The catalytic activity is mainly due to amorphous MnOx species located on ab plane of the hexagonal lattice. A small amount of Pd loading on Mn-YFO drastically enhances the catalytic activity; that is, 0.5 wt% Pd/Mn-YFO shows excellent activity for CO oxidation that exceeds the activity of 2.0 wt% Pd/Al2O3. The Pd loading dramatically improves the reducibility of the MnOx species and also CO adsorption to Mn-YFO. Thus, we demonstrate that an extremely small amount of Pd species plays a role as a promoter for the catalytic and reduction functions of the MnOx species on Mn-YFO. It is expected that the establishment of such promoter effect will provide a novel guideline for reducing the use of precious metal resources.
著者
福西 勇夫 細川 清 中川 賢幸
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.619-627, 1987
被引用文献数
3

It is said that Tanshin-Funin (people who live and work alone away from their families) of more than a hundred thousand live in Japan. Recently there has been much discussion on Tanshin-Funin as social problems. But very few reports and investigations have been made about this subject. We reported psychosomatic health investigations on Tanshin-Funin in Kagawa by using General Health Questionnaire (GHQ) and the questions : What do you think of Tanshin-Funin? GHQ has been developed by Goldberg in England and translated by A. Nakagawa in Japan in 1985. It consists of 60 questions dealing with recent symptoms. It was known that GHQ discriminate effectively between psychiatric patients and normal controls. Especially, we can find the patients in the area of neurosis and psychosomatic disease by estimating total score of GHQ and 4 factors (somatic symptoms, anxiety sleep disturbance, social dysfunction, severe depression) by GHQ. <Subjects and Method> Subjects; 215 men in 20 companies, Tanshih-Funin in Kagawa Controls; 201 men in the same companies We made a comparison between subjects and controls by GHQ. (1) Total scores of GHQ (Mean score, Percentage of over 17 score) (2) Histogram of GHQ scores in subjects and controls (3) 4 factors (somatic symptoms, anxiety. sleep disturbance, social dysfunction, severe depression) (4) Siginificant items between Subjects and controls regarding 60 questions by x^2-test. We asked Tanshin-Funin the questions of concerning "What do you think of Tanshin-Funin?" <Result and Discussion> 1) Subjects showed a tendency of higher scores by GHQ than controls. Especially, Tanshin-Funin who think "Tanshin-Funin is bad" showed a neurotic tendency. This may be due to the existence of neurotic tendency prior to this job arrangement. 2) Subjects were characterized with their tendencies that they have anxiety about the future and they do not go out after, saying that they are too tired. 3) Subjects have been under unstable circumstances from the standpoint of mental health. Because Tanshin-Funin have been living irregular life alone and lacking in the communications with their families, and suffering from economic burden for the double life. Tanshin-Funin have psychosomatic problems, which are related to the idea that Tanshin-Funin is bad. 4) Psychosomatic health controls of Tanshin-Funin are necessary in each company.
著者
竹永 博 細川 明 河又 虎好
出版者
[宇都宮大学農学部]
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.41-56, 1989 (Released:2011-03-05)
著者
細川 允史
出版者
日本農業市場学会
雑誌
農業市場研究 (ISSN:1341934X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.1-12, 1997

首都圏を構成する1都3県の人口は3240万人に達し、都市地域は県境を超えてとぎれることなく続き、道路や鉄道網は東京を中心として放射線状に結ばれている。このように、首都圏は東京を核とした経済圏、生活圏を構成している。青果物中央卸売市場は、東京都に9市場ともっとも多く、神奈川県に5市場、千葉県に2市場ある。地方卸売市場は、中央卸売市場が存在しない埼玉県にもっとも多い。主要卸売市場は、東京都心を中心として半径40kmの範囲内に分布している。小売業者は、都市の歴史が長い東京都に一般小売商が多く、一方、スーパーマーケットは、郊外である3県に多い。取引方式については、予約取引、予約相対取引、時間前販売などの予約型取引が中心となっていて、セリは地場出荷品などを対象として部分的なものとなっている。予約型取引が中心となっている理由は、産地の大型化やスーパーマーケットなど大型小売資本の進出を背景として、(1)高率で時間前販売が行われていて、セリ開始時刻に現物が少ない、(2)出荷に当たって大型出荷団体からの価格要請がなされる、(3)買い手側の小売企業への販売にあたって価格協議が行われている、(4)中小卸売市場においては、基幹的大市場で形成された建値を元にした販売を余儀なくされている、などである。予約型取引においては、事前に価格の協議が産地や小売側と行われることから、基幹的大市場が優位に立つ。現在、大産地の出荷品については、東京都中央卸売市場大田市場における価格形成を頂点としながら、他の卸売市場間に価格横並びの現象が見られる。物流については、東京都中央卸売市場の取扱数量の25%が首都圏3県に搬出されるほか、東北地方、北海道、中部地方など広範な地域にも搬出され、物流においても頂点に立っている。さらに、他市場への出荷品も基幹的大市場に荷下ろしして、そこから搬送する「気付出荷」が相当量存在し、大田市場がデポ拠点の中心的役割を果たしている。搬送費用は出荷を受ける卸売会社が負担し、経営を圧迫する要因となっている。卸売会社が仲介して、トラック1台分以上の取引が産地と買い手小売業との間に成立する場合には、品物は卸売市場を経由せず、直接に産地から買い手小売企業に納入する「商物分離」が取引量の1〜2割程度行われる状況となっている。このような取引・物流の状況変化により、変化に対応できる卸売市場(卸売会社)と、それが困難な卸売会社との間の格差が拡大し、一部卸売市場の拡大の下で、他の多くの卸売市場の集荷力が低下し、転送や気付集荷で対応することを余儀なくされている。利益率が低下し、経営内容の悪化を招来している傾向が見られる。大手卸売会社資本による卸売会社の系列化は必ずしも経営改善に結びつかないことから停滞していたが、異なる開設者間の卸売市場の卸売会社が本支社化するという新しい方式も登場しており、広範囲に同一卸売会社資本が支配関係を構築することに道が開かれた。結論として首都圏においては、大型小売資本の進出、大型産地の価格要請の強化を背景に、東京都中央卸売市場なかんずく大田市場を頂点とした取扱量の集中化が進行している。その過程で、予約型取引が増大しているが、これに対応困難な卸売会社の弱体化と再編は不可避であろう。
著者
村橋 俊一 細川 隆弘
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.933-951, 1981 (Released:2009-11-13)
参考文献数
269
被引用文献数
2 4

金属の特性を活用した新しい有機合成反応は数多く開発され, 天然物合成にもしばしば応用している例が見られるようになっている。金属のなかでも特にパラジウムの活用例が抜きん出て多く, 現在もその開発研究の数が増大している傾向が見られる。この理由はパラジウム化合物の取り扱いの容易さと, 反応性の多様性にもとつくものである。パラジウムを用いる有機合成反応や機構の解説は成書や総説によりいくつか紹介されている。ここでは有機合成反応の一つの柱となる官能基変換反応に, パラジウムがどのように触媒あるいは試剤として用いられているかについて紹介することとしたい。有機合成反応によく用いられるパラジウム化合物の具体的な合成法, あるいはその使用法については本協会誌にすでに紹介したので参照していただきたい。