著者
若松 養亮 白井 利明 浦上 昌則 安達 智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.201-216, 2019
被引用文献数
1

<p> 日本の進路指導では長い間,「合格すること」に偏重した指導を行ってきたという批判がある。2004年にキャリア教育が始まって以降も,「キャリア=職業」という誤解のために,「夢やつきたい職業見つけ」ばかりが盛んに扇動されるが,その手段や方法が指導されず,キャリア発達を高める指導も二の次にされる弊害がある。本論文では,進路意思決定,時間的展望,自己効力感,ジェンダーの4つの研究の蓄積をもとに,それを超える指導とはどのようなものか,また進路指導やキャリア教育で目標とされる「社会的・職業的自立」に結びつく支援はどのようなものかが論じられた。最後の節では,4つの論考をふまえて,今後の進路指導とキャリア教育への提言が論じられた。</p>
著者
河村 康佑 若林 明雄
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.13-19, 2017-08-31 (Released:2017-12-16)
参考文献数
16

われわれは日常生活において,痛みを感じている他者を観察すると,痛みの理解や不快感の喚起が生じる.こうした「痛みの共感」に関する先行研究では,他者の痛み場面を示す表象として痛み事象と痛み表情の両方が用いられてきた.本研究の目的は,痛み事象と痛み表情が,他者の痛み場面において,他者の痛み理解と自身の不快感喚起にそれぞれどの程度影響を与えているのか明らかにすることであった.本研究では,痛み場面とは痛み事象と痛み表情から構成されるものとした.実験参加者は,痛み事象と表情が同画面内に映るように撮影した動画刺激に対し,推定されるターゲットの痛みと自分自身の不快感を0~10で評定した.実験の結果,不快評定においては,痛み事象の影響が痛み表情の影響よりも大きいことが示唆された.一方で,ターゲットの痛み推定では,痛み事象と痛み表情の影響に違いはなかった.このことから,他者の痛み場面における不快感喚起には,痛み事象が主として寄与していることが示唆された.
著者
若山 滋 張 奕文 渡辺 孝一
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.60, no.476, pp.101-109, 1995-10-30 (Released:2017-01-27)
参考文献数
30
被引用文献数
4 1

In the present paper, we studied the architectural space in the literary works of Souseki NATSUME who is expected as a representative writer of modern Japan. All wordings related to the urban and architecture were extracted from 12 of his works and the space of stage was specifically analyzed. We found that extremely various architectural wordings were appeared in his works, which indicates sort of "compound aspects" of cultural situation in Japan in that time. According to the distinction in the change of stage-space in his works written in different time, his works could be classified into four patterns. In his earlier works (until "Sanshirou", 1908) the change of stage-space was "active" and "extensive", whereas in his latter works (since "Sorekara", 1909) it was "uneasy" and "circulated".
著者
若松 栄史 妻屋 彰 荒井 栄司 平井 慎一
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 = Journal of Robotics Society of Japan (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.523-532, 2006-05-15
被引用文献数
3 3

A planning method for knotting and tightening of deformable linear objects is proposed. Firstly, we briefly explain crossing state description and basic operations corresponding to crossing state transitions. Possible sequences of crossing state transitions, that is, possible manipulation processes can be generated once the initial and the objective states are given. Secondly, a method to determine grasping points and their moving direction is proposed in order to realize derived manipulation processes. Then, it is theoretically found that any knotting manipulation of a linear object placed on a table can be realized by an one-armed robot with three translational DOF and one rotational DOF. Thirdly, a planning method for tying tightly is established to complete a knot because the knot fulfills its fixing function after it is tightened. Finally, it is demonstrated that an one-armed robot system can plan and execute tying and tightening a slipknot.
著者
若林 成知 石浦 未希 逵 美沙季 西口 光恵 松本 絵美 山岡 里奈
出版者
基礎有機化学会(基礎有機化学連合討論会)
雑誌
基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.3P50, 2011

我々はすでにアズレン骨格の1位または1、3位に2-ピリジル基または4-ピリジル基が結合したアズレン誘導体(例えば1)は、Hg2+ などのソフト金属イオンの添加により、青から赤に顕著に変色することを見出している。しかし金属イオンの選択性や感度に欠けるため、分析試薬としては満足できるものでない。今回、水銀イオンセンサーへの応用を検討するため、含硫ピリジルアズレン2, 3を合成し、その性質を検討したので報告する。
著者
健山智子 小原伸哉 田中泰史 桶川萌 古川顕 金崎周造 若宮誠 韓先花 陳延偉
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.255-262, 2011-07-20

統計形状モデルは医用画像データから統計解析に基づいて人体臓器の個体間における大きさ,形状のバリエーションを記述したものであり, 計算解剖学や術前計画など多くの医療分野において幅広く利用されている.一方,統計形状モデルを構築する場合,各症例間における表面点の対応付けを行うためには複雑でかつ膨大な計算を要するだけでなく,統計形状モデル構築の際に用いられる学習用症例数が限られているため,症例数に対し形状特徴ベクトルは膨大な次元を要してしまう.そのため,少数症例からでも汎化能力の高いモデルを構築するためには臓器の形状情報を効率的に取り扱う必要がある.本研究では新たな統計形状モデル作成法として, 人体臓器の3次元形状を球座標により形状間における表面点対応を回転のみで行い,得られた形状表現を球面調和関数に展開することで形状情報ベクトルの次元を抑えることが可能な統計形状モデルの構築法を提案する. 提案法は球面調和関数に展開された係数により3次元形状情報を効率的に扱えることから,サンプル数に依存することなく高い汎化能力を持つ統計形状モデルの構築が行われ,そのモデルは未知のデータに対しても高い再現率で再構成が行えることを示す.
著者
若澤 友行 田村 典久 永谷 貴子 牧野 恵里 面本 麻里 寺井 アレックス大道 大月 友
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.91-103, 2011-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究の目的は、2名の自閉症スペクトラム障害をもつ児童・生徒を対象に、社会的スキル訓練を行い、その効果に対する社会的妥当性を検討することであった。当該児童・生徒の行動アセスメントは、訓練機関において彼らの学校における問題行動の文脈と関連した場面を設けて行った。行動アセスメントの結果に基づいて標的行動を選定した後、訓練機関にて社会的スキル訓練を実施した。社会的妥当性の評価は母親と教師が行った。社会的スキル訓練の結果、訓練機関および学校における当該児童・生徒の行動の改善が示唆された。社会的妥当性の評価では、標的行動の選定と訓練手続きに関して母親と教師は肯定的な評価を示したが、訓練効果に対しては両者で異なる結果が示された。訓練機関における訓練効果の社会的妥当性を高めるためには、評価者が当該児童・生徒の主訴に関して、どのような場面でどのような行動を問題にしているのかを詳細にアセスメントすることの重要性が示唆された。
著者
津田 良子 若松 浩美 藤本 尚
出版者
公益社団法人 日本化学療法学会
雑誌
CHEMOTHERAPY (ISSN:00093165)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.641-648, 1993

アミノグリコシド系抗生物質であるnetilmicin (NTL) を測定するにあたり, 酸・塩基指示薬であるthymolphthalein (TP) およびmethylred (MR) をしみ込虫せた濾紙を用い, <I>Bacillus subtilis</I>の発生するCO<SUB>2</SUB>の酸性度により, この濾紙が変色する度合いを比色分析法によって測定した後, この変化量から試料中のNTLの量を求める新しいbioassay法について検討を行った。<I>B. subtilis</I>懸濁液, nutrient broth, 0.1Mリン酸塩緩衝液 (pH8.0) およびNTI水溶液をガラスバイアルに入れ, TP-MRおよびNaOHをしみ込ませた濾紙をパイアルのセプタムの内側に貼り付け, 3時間培養した。TP-MR濾紙は培地中の<I>B.subtilis</I>の生育に伴い変色 (脱色) し, その色はNTL濃度に依存した。この変色をコンプリメンタリートリスティミュラス法を利用し, pH依存性であるTP-MR濾紙の色を分光光度計で測定した結果, NTL濃度と滋紙の変色の間には十分な相関, y=0.0286x+ 0.0832;r (相関係数)=0.943, が得られた。本法は, 従来のbioassay法に比べて試験時間を13時間以上短縮することができ, NTLの簡便で有用な測定法であることが示唆された。