著者
若泉 悠 鈴木 誠
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.469-474, 2008
被引用文献数
2

Fukuba Hayato (1856-1921) is known as a person who created the foundation of modern gardening. This study is aimed to search his thoughts of modern horticulture and landscape gardening in Japan through his personal records.Also the author intended to clarify his influences on modern horticulture and landscape gardening in Japan. He studied knowledge and skills of modern horticulture and landscape gardening from foreign countries over his life for refining the Shinjuku Imperial Gardens (Shinjuku Gyoen National Garden). He advocated the ideal way of Imperial gardens and gardening in Japan, established Kunaisyo Naienkyoku (after Imperial Household Agency, Maintenance and Works Department, Gardens Division), and popularized skills of modern landscape gardening not only inside of imperial palaces. In addition, he greatly contributed to the development of the modern landscape gardening including professional educations. In conclusion, the author pointed out the influence that he had given to the horticulture and landscape gardening in Japan was considered as a critical one that has continued until today.
著者
若宮 達夫
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.141-150, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
1

発光ダイオード(以下,LEDという)は消費電力がきわめて少なく,堅牢,長寿命である特徴を生かし,現在ではたいていの電気製品にLEDが用いられている。言うまでもなくLEDは今やたいへん身近なもので,価格,入手性もよく,これを教材として活用できないかを検討した。LEDはその扱いが簡単であるところから,筆者のゼミにおける学生の電子実習用教材として表題の制御回路の設計・製作を行なうに至った。本回路で実習を行なうことによりLEDの制御方法を理解し,マイクロコンピュータによる点灯,消灯および点滅プログラミングの手法を修得することができる。
著者
椎野 若菜
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.59, pp.71-84, 2001

ルオ村落社会では, 既婚の男が死んだあと, 残された妻は「墓の妻 (<i>chi liel</i>)」とよばれ, 亡夫の代理になる男と「テール (<i>ter</i>)」関係を結ばねばならない。寡婦は亡夫の妻であり続けながらジャテール (<i>jater</i>) とばれる代理夫を選択し, 彼と亡夫の土地で「夫婦」生活を送る。<br>従来の多くの研究における寡婦に関する慣行は, 夫の集団が彼の死後もその妻に対し保持しうる権利として解釈されてきた。寡婦と性関係を結ぶ男たちとのかけひきをも描いた, 寡婦の生活実践を究明するものは極めて少なかった。そこで本稿では, 寡婦が夫の死後, 新たな男との関係を築きそれを維持していく過程に注目した。まず慣習的規範や信念などと絡み合う, 寡婦をめぐる人間関係を抽出したうえで, そのなかにおける寡婦の生活の社会的側面と, 性生活におよぶ寡婦の個人的側面を支える, テール関係の様々な局面についての考察を試みた。<br>その結果, このテール関係は父系的土地慣行を前提としているだけでなく, 性に関する細かな慣習的規範,「娼婦」のレッテルなど, 寡婦にとって圧力になりうる諸要素の影響下に成り立っていることが判明した。一方で寡婦は, そうした社会的な圧力と人間関係の絡み合いのなかで生じる力のバランスを巧みに利用し, 不都合があれば逆に慣習的規範を関係解消の理由づけとして使い, 代理夫を頻繁に変え得ることが明らかになった。つまりルオの寡婦は, 個々のもつ社会的状況に応じて策略を練り, 男たちとかけひきしながら自由に代理夫を選択するという, 実践を続けているのである。
著者
安東 悟央 松居 喜郎 橘 剛 加藤 伸康 有村 聡士 浅井 英嗣 新宮 康栄 若狭 哲 加藤 裕貴 大岡 智学
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.13-17, 2018

<p>非常に稀で,手術施行例の耐術例はほとんど報告がない,先天性心疾患姑息術後の肺動脈瘤の合併症例を経験した.症例は40代男性.肺動脈閉鎖症兼心室中隔欠損症に対して一歳時にWaterston手術を施行されたが,その後当時としては根治手術が困難と判断され,NYHA class I度のため数十年間近医で経過観察されていた.労作時の呼吸苦増悪を認め他院を受診,肺炎と心不全の疑いで入院加療されたが,胸部CT検査で95 mmの右肺動脈瘤を認め,切迫破裂も疑われたため外科的加療目的に当科紹介となった.入院時,右胸水と右肺の広範な無気肺を認めた.胸水ドレナージを施行(800 ml)した.胸水は漿液性で胸背部痛など認めず血行動態は安定していた.切迫破裂は否定的であったものの95 mmと巨大な瘤径であり,利尿薬および抗生剤治療を数日間先行し,準緊急的に右肺動脈瘤に対して瘤切除および人工血管置換を施行した.術前NYHA I度であったことから,もともとの吻合部径や末梢の肺動脈径にならい24×12 mm Y-graft人工血管を用いてcentral shuntとして肺動脈を再建した.PCPS装着のままICU入室,翌日離脱した.術後4日目に人工呼吸器離脱,術後38日目に退院となった.現在術後一年になるが,NYHA class I度で経過している.Waterston術後約40年後に発症した巨大肺動脈瘤に対し手術を施行し良好な結果を得たので報告する.</p>
著者
布施 彩音 今田 康大 大野 智貴 若林 敏行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.H2-105_2-H2-105_2, 2019

<p>【症例紹介】</p><p>&nbsp;症例は年齢17歳、性別男性、部活動はバレーボールであった。病歴は3年程前より明らかな誘因なく、両膝関節外側に疼痛が出現、他院にて成長痛疑いで経過観察していた。運動中の痛みは顕著ではなかったことから運動を継続していたが、1年程前から疼痛頻度が増加し、運動後には歩けない程の痛みを呈すようになった為、当院を受診した。主訴は「膝を曲げ伸ばしすると外側に痛みが出る」、Hopeは「日常生活での痛みをなくしたい。6ヵ月後の引退試合に痛みなく出場したい」であった。</p><p>【評価とリーズニング】</p><p>医師診察としてMRIにて半月板損傷、靭帯損傷、軟骨損傷は除外され、腸脛靭帯炎の診断で理学療法開始となった。初回介入時、両側の膝蓋骨下極から傍外側にかけて腫脹、熱感が認められたが、膝蓋跳動は陰性であった。非荷重位での膝関節完全伸展位から約30°屈曲時に膝蓋骨の傍外側でクリックと同時に疼痛を認め、同部位の圧痛も確認できた。Active、Passive両者ともクリック、疼痛程度に変化はないが、上記以外の角度では症状は見られず、安静時痛、夜間痛も認めなかった。部活後、長距離歩行後(1km程度)など運動後のNRS(右/左)は10/10と著明な疼痛を訴えていた。右側に関しては歩行時にひっかかり感も訴えており、日常生活にも支障があった。また疼痛の出現頻度も右側に多く認められた。静的アライメントは大腿、下腿外旋位でわずかに膝内反位、膝蓋骨外上方偏位、外側傾斜を呈しており、膝蓋骨の内下方への動きが制限されていた。膝関節の可動域は屈曲130°/135°、伸展−5°/-5°でエンドフィールは軟部組織性であった。Grinding test、Ober test、Ely test、SLRは全テスト両側で陽性となったが左右差は無かった。</p><p>クリニカルリーズニング:外側滑膜ヒダ障害と診断された先行報告と今回の症状、疼痛部位が類似していたことから、クリックは外側滑膜ヒダが膝蓋大腿関節に挟み込まれることで生じており、これが疼痛を惹起している原因だと考えた。さらに膝蓋骨が外上方偏位、外方傾斜を呈していることで膝蓋骨傍外側に、より圧縮ストレスが生じていると考え、徒手的に膝蓋骨を内下方へ誘導したところ、わずかにクリックが減少した。これらのことから膝蓋骨のマルアライメント修正することにより症状を軽減できるのではないかと考えた。</p><p>【介入内容および結果】</p><p>介入は週1回の外来理学療法を実施した。治療介入はまず疼痛誘発の原因と思われた膝蓋骨のマルアライメントを中心に理学療法を実施した。具体的には膝蓋骨傍外側を中心に超音波を実施し、炎症が強い時期には非温熱にて炎症緩和を、炎症緩和後は温熱にて膝蓋骨周辺組織の伸張性の改善を図った。その上で外側膝蓋支帯、膝蓋下脂肪体周囲のリリース、膝蓋骨のモビライゼーション、腸脛靭帯-外側広筋間のリリースを実施し膝蓋骨の外側傾斜、外方偏位の修正、内下方への可動域制限の改善を図った。また膝蓋骨の内下方への誘導を目的にテーピングを貼付したところ、歩行時の疼痛がわずかに減少したことから、日常生活、部活の際に貼付するよう指示した。その結果、介入から2ヵ月程で膝蓋骨外側の腫脹が軽減し、クリック、疼痛の程度も軽減した。介入開始から4か月ではNRS(右/左)は6/1となり、運動後の疼痛出現頻度も減少した。過度な運動後は疼痛が出現するものの、直後のアイシング、セルフケアにより疼痛自制内でコントロール可能となった。本人の希望であった引退試合に出場することもでき、日常生活にもほぼ支障がなくなったため、外来理学療法終了とした。</p><p>【結論】</p><p>先行報告において外側滑膜ヒダ障害は、膝関節30〜75°で膝蓋骨傍外側にクリックを伴う疼痛が出現するとされており、本症例の症状と類似していた。外側滑膜ヒダ障害は非常に稀であり、過去に保存療法で症状が軽減した報告は見当たらない。診断には関節鏡検査でのみ確定診断が得られるが、本人が希望しなかったため今回確定診断には至らなかった。しかし膝蓋骨のマルアライメントを修正したことで症状が軽減したことから、外側滑膜ヒダ障害と疑われる症例に対し理学療法の有効性が示された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に従い対象者には口頭及び文書で同意を得た。</p>
著者
若島 孔文
出版者
立正大学心理学部
雑誌
立正大学心理学部研究紀要 (ISSN:13482785)
巻号頁・発行日
no.1, pp.113-123, 2003-03-25

本論文ではBavelas et al. (2000) による聞き手反応についての実験研究を追試検討し、心理臨床場面での「共感」のあり方について考察をした。聞き手反応は語り手の話の内容にあまり影響を受けない一般的聞き手反応(GLR) と語り手の話の内容に強く影響を受ける特殊聞き手反応(SLR) の2つに区分された。実験では3つの仮説について検討した。1) SLR の出現する時間は、GLR の出現する時間と比べて、より遅くなるであろう。2) SLR はGLR に比べて、聞き手が話の内容から注意をそらされる条件でより出現することが少なくなるであろう。3) 聞き手が話の内容から注意をそらされる条件では、聞き手が適切に話を聞くことができる条件と比べて、話の質が低下するであろう。被験者は20組のペアであり、聞き手が注意深く話し手の話を聴くように教示された物語り群と聞き手が物語りから注意をそらされる言葉数え群のいずれかにランダムに割り当てられた。話し手は危機一髪の体験を話すように求められた。結果は3つの仮説を全て支持するものであった。以上の実験研究の結果から、心理療法場面で重視されてきた「共感」概念に対して考察し、いくつかの示唆を提示した。
著者
松本 啓子 若崎 淳子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.67-72, 2006
被引用文献数
1

Successful Agingの研究は主に米国において進んでいるが,用語そのものの意味も研究者によって見解が異なる.我が国では未だ独自の社会的文化的民族的背景からの示唆は得られていない段階である.そこで今回,著者らの先行の報告を基に,65歳以上の高齢者36名へのアンケート調査から,Successful Agingの現状について質的因子探索型研究を行った. 高齢者におけるSuccessful Agingの現状としては,【満足】【健康】【自己保存】【参加】【チャレンジ】【自負心】の6カテゴリーが抽出された.`健康・元気にむけて努力する'から【健康】,`過去も現在も満足している'から【満足】,`満足している今の自分を,努力して維持させたい'から【自己保存】,`社会や人との関わりに意味を見出している'から【参加】,`好奇心旺盛で前向き'から【チャレンジ】,`高い自己評価とともにある自信'から【自負心】,の6カテゴリーであった.高齢者におけるSuccessful Agingの現状を明らかにすることは,新たな高齢者像の構築,医療・看護教育における高齢者理解の一端に寄与することができる.
著者
前澤 聡 中坪 大輔 津川 隆彦 加藤 祥子 柴田 昌志 高井 想生 鳥居 潤 若林 俊彦 齋藤 竜太
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.847-856, 2021-07-10

Point・集束超音波治療(FUS)は皮膚切開を必要としない最新の定位・機能神経外科治療であり,その凝固術は本態性振戦およびパーキンソン病に対して保険適用となっている.・集束超音波の特性と治療法の原理を十分理解し,安全性を考慮しながら,最適な標的部位に十分なsonicationを行うことで,良好な治療効果を得ることができる.・脳深部刺激療法(DBS)や他のモダリティの特性も理解し,十分なインフォームド・コンセントに基づいた患者選択を行うことが重要である.
著者
小若 順一・三宅 征子
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.343-352, 1992-10-15 (Released:2017-08-31)

輸入農産物の増加に伴い,農産物輸出国で使用されたポストハーベスト農薬の残留が問題になってきている.そこでアメリカおよびオーストラリアの現地調査をふまえ,輸入農産物の残留農薬の検出テストを実施し,その検査結果を考察した。 ポストハーベスト農薬の影響としては,微量な化学物質摂取により引き起こされるアレルギー様の症状である化学物質過敏症との関連が問題視されはじめている。このような状況の中で厚生省は,これまで無防備だったポストハーベスト農薬への対応として,規制体制を整えつつあるが,基準値が緩すぎ問題を残しているのが実情である.
著者
村井 純 真鍋 大度 藤井 進也 若林 作絵
出版者
慶應SFC学会
雑誌
Keio SFC journal (ISSN:13472828)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.8-20, 2020

§ SFCの音楽、そして真鍋さんとの出会い§ 真鍋さんと音楽の出会い§ COVID-19禍で生まれる新しいこと§ 創造性の泉と音楽の科学§ これからの音楽と科学§ 近未来の感動シアター§ 音楽と医科学の可能性特集 音楽と科学対談
著者
若曽根 健治
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ドイツ中世後期の騎士および市民のフェーデには同時代人の「はげしい情感」(ホイジンガ)の動きがあった。これは「名誉に敏感で傷つき」易いことと、表裏の関係にあった。暴力現象の背後には、名誉に拘泥し、身分に拘る、騎士や市民の繊細さが潜んでいた。他方で、フェーデには他の様々の問題が絡む。フェーデの考察は、中世ヨーロッパに関する1つの総合史的考察とならざるをえない。このことは、フェーデの1つの担い手であった都市ひとつをとってみても、よくわかる。都市を周域と切り離して隔離的に取り上げることは、できないのである。関係的状況の考察をもっと押し進めていかねばならない。日本中世との比較法社会史的考察も、中世ヨーロッパの法的制度の特質を浮き彫りにする。比較史的考察の必要性は今後高まろう。その場合類似だけに注目するのでなく、むしろ相違に目を向ける必要がある。これによって、本当の意味で類似性にも理解がいく。フェーデの現象には、蓄積された富に与かろうとする、騎士の志向が働いていた。この志向は、フェーデによって権利を主張し、暴力を正当化しようとしたところからわかる。他方で、騎士による権利主張の理由や正当化の根拠については、史料からは見えにくい。このことは、騎士の権利主張や権利正当化には、必ずしも十分な理由・根拠がなかったことを思わせる。市民には、富の形成・蓄積について実績があったが、騎士にはこれがない。じつは、このことを、誰よりも騎士自身がよく知っていたのではなかろうか。時代と共に、フェーデによって富の蓄積に関与しようとすることが、もはや意味をなさなくなる。このことに騎士は気づくのではないか。これは、上級権力者--領邦君主--によるフェーデ権の集中化・独占化と表裏の関係にある。時代は、こうして1つの変化を見せるのである。
著者
若杉 晃介 藤森 新作
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.73, no.9, pp.785-788,a1, 2005-09-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
5
被引用文献数
3

農村の生物多様性低下の要因に乾田化の増加が挙げられている。そこで, 乾田化が水田に生息するトンボ幼虫の生息環境に与える影響を調べ, それに対するビオトープ整備の指針と対策を検討した。通年湛水を行った水田では一年中生息が確認されたが, 非灌漑期に用水供給がないと多くのトンボ種が採取されなくなった。中でも乾燥に弱いアオモンイトトンボ幼虫は湛水深がなくなってから砂質土で4日, 重粘土で8日, 関東ロームで23日後に死滅した。また, 土壌硬度を測定した結果, 土壌によってはコンバインの走行に必要な硬度を得た時も生息していたことから一般的な水稲栽培管理とトンボの保全が両立する可能性が示唆された。
著者
清水 洋 松本 聡 酒井 慎一 岡田 知己 渡辺 俊樹 飯尾 能久 相澤 広記 松島 健 高橋 浩晃 中尾 茂 鈴木 康弘 後藤 秀昭 大倉 敬宏 山本 希 中道 治久 山中 浩明 神野 達夫 三宅 弘恵 纐纈 一起 浅野 公之 松島 信一 福岡 浩 若井 明彦 大井 昌弘 田村 圭子 木村 玲欧 井ノ口 宗成 前原 喜彦 赤星 朋比古 宇津木 充 上嶋 誠 王 功輝 ハザリカ ヘマンタ 矢田 俊文 高橋 和雄
出版者
九州大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2016-04-22

2016年熊本地震について、地震活動や地殻変動、活断層、火山活動への影響、地震災害の特徴などを調査した。その結果、熊本地震は布田川・日奈久断層帯の右横ずれ運動によって発生したが、複数の断層面と複雑な断層形状を持つことを明らかにした。また、建物被害や土砂災害の地盤との関係、特に、地盤の過剰間隙水圧が地すべりの発生要因であることを明らかにした。さらに、災害情報や災害過程、被災救援、エコノミークラス症候群などについての調査から、広域複合災害の問題点と対応策を提示した。
著者
勝又 泰貴 竹井 仁 若尾 和昭 中村 学 美崎 定也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3O2113, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】 徒手療法の一手技である筋膜リリース(Myofascial Release;以下、MFR)は、穏やかな持続した伸張・圧力というその手技の特性から、可動域・アライメントの改善や急性・慢性の疼痛軽減を始めとして、パフォーマンスの向上など幅広く用いることができる。そのMFRを治療プログラムに取り入れることで機能障害が改善したという報告はいくつかあるが、MFRのみ施行時の効果と、1回の治療におけるMFRの効果の持続時間に関する報告はない。本研究では、MFRの効果の持続時間をスタティックストレッチングと比較し、効果の持続時間の違いを比較検討したので報告する。【方法】 対象者は腰部・下肢に既往のない健常者31名(男性16名、女性15名)で、年齢・身長・体重の平均値(標準偏差)はそれぞれ25.0(2.4)歳、165.6(8.7)cm、56.3(9.0)kgであった。この31名を無作為に以下の3群に分けた。a.腹臥位で、大腿後面に対しMFRを片側ずつ各180秒施行したMFR群10名、b.背臥位で股・膝関節90°屈曲位にて膝関節を伸展していき、ハムストリングスに対しストレッチングを片側ずつ各30秒、3セット(15秒のインターバル)施行したストレッチング群11名、c.介入なく測定のみを繰り返した対照群10名とした。 測定項目は自動・他動運動時における左右下肢伸展挙上角度(Active・Passive Straight Leg Raising angle;以下、ASLR、PSLR)、立位体前屈(Finger Floor Distance;以下、FFD)、長座体前屈(Sitting Forward Extension;以下、SFE)とし、SLRは5度単位で、FFDとSFEは0.1cm単位で測定を行った。また、SFEは足底を基準の0cmとして測定した。それぞれの介入前・直後・30分後・60分後・120分後・介入直後と同時刻の1日後・2日後に各項目を測定した。測定結果はそれぞれ、介入前との変化量を介入前で除した変化率(%)にて解析した。統計解析はSPSS ver12.0を用い、3群の年齢・身長・体重および各測定項目の介入前について分散分析とその後の多重比較(Tukey HSD法)を用い検討した。その後、各測定結果の性差は対応のないt検定を、SLRの左右差は対応のあるt検定を行いその影響について検討した。また、3群の各時期間の比較についてはTukey HSD法を用い、各群における介入前と比較した各時期の差はBonferroni法にて解析した。有意水準は5%とした。【説明と同意】 対象者にはヘルシンキ宣言に基づき、事前に本研究の目的と内容および学会発表に関するデータの取り扱いについて説明し、十分に理解した上での同意を得て実施した。【結果】 各群において年齢・身長・体重・各測定項目の介入前に有意差を認めなかった。また、性差と左右差に有意差を認めなかったため、男女ともに各測定項目の結果を同一に取り扱い、全被験者のASLRとPSLRの結果を左右平均して取り扱った。測定項目ごとに3群と時間的経過を2要因として二元配置分散分析後の多重比較の結果、ASLRはMFR群で全時期においてMFR群は対照群に比較して有意な増加を認めた。PSLRは全時期においてMFR群は対照群に、また、60分後以降はストレッチング群と比較して有意な増加を認めた。FFDは群と時期に有意差を認めなかった。SFEは1日後までMFR群は対照群に、また、30分後・120分後・1日後 でストレッチング群と比較して有意な増加を認めた。各群における介入前と比較した各時期の差については、MFR群のみASLR・PSLRで各時期に有意な増加を認め、SFEで1日後までに有意な増加を認めた。【考察】 本研究の結果より、MFRの効果は1日以上持続することが分かった。MFRとストレッチングの効果の持続時間という点では、明確に二つの手技に差を認めることはできなかったが、PSLRでMFRは60分後以降にストレッチングと比較して有意な増加を認めたことから、MFRはストレッチングに比べ他動運動時の伸張性の改善あるいは疼痛閾値の上昇を期待でき、その効果はストレッチングより持続すると考える。今回、FFDに有意差が出ずSFEに有意差が出た要因として、FFDでは上半身の自重によりハムストリングスの遠心性収縮が起き、慎重性の改善効果が減少してしまったのに対し、SFEでは重力の影響を受けず、ハムストリングスの伸張性の向上により骨盤が前傾した分だけ改善したと考える。【理学療法学研究としての意義】 MFRの効果の持続時間を明らかにすることで、治療プログラムの立案、治療頻度を考慮する上での参考となると考える。また、本研究を参考にその効果を延長させる方法なども今後の検討課題と考える。