著者
伊藤 憲二
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.57, no.288, pp.266-283, 2019 (Released:2021-01-24)

This paper examines one of the most publicized scientific scandals in Japan before the end of WWII, Takeuchi Tokioʼs alleged discovery of artificially induced radioactivity in common salt. In 1936, Takeuchi, then an associate professor at Tokyo Institute of Technology, claimed a discovery of a new way to produce a radioactive substance. According to his paper, he could induce radioactivity in common salt by a gamma ray from a radium source. When Takeuchiʼs patent for this alleged discovery was announced, Nishina Yoshio and other researchers at the Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN) objected. A debate took place at a monthly meeting of the Mathematico-Physical Society of Japan in June 1941. The controversy ended when Takeuchi and Nishikawa Shōji conducted an experiment to confirm that Takeuchiʼs result was due to contamination from the radium cells, and Takeuchi withdrew his patent. This incident attracted much media attention: Newspapers and magazines published many articles on it. By examining the debates and the media coverage, this paper analyzes how Nishina and other nuclear physicists sought to set a clear boundary between acceptable and unacceptable studies of radioactivity, and shows that not only researchers, but also newspapers treated and demonstrated to the public the studies of radioactivity as something rationally verifiable, rather than magical or mysterious, indicating that the relation between the lay public and nuclear physics at that time was far more sophisticated than previously suggested. The paper concludes by discussing how such boundary work was possible in the given socio-cultural context.
著者
高岩 義信 九後 太一 早川 尚男 棚橋 誠治 金谷 和至 五島 敏芳 小沼 通二 伊藤 憲二 伊藤 和行 九後 太一 受川 史彦 平田 光司 小長谷 大介 田中 希生 田中 正 難波 忠清 西谷 正 吉川 直志 坂東 昌子
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

日本の素粒子論研究が世界的に評価される礎を築いた湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一の遺した資料を活用してその学問の系譜を研究することを目標とし、その資料の利用環境整備を行った。史料データベースを充実させネットワーク上のサーバーを介して一般に公開している。このサーバで稼働するオープンソフトウェアの検討およびカスタマイズ、さらにその後継ソフトウェアの検討を行った。またこれらの資料を科学史研究に利用するのに有益な史料作成者データのデータベースを、史料カタログと連携するものとして構築することによって、史料の有効利用に資することができるようにすることを検討した。また今後へ向けての課題の検討を行った。

9 0 0 0 OA 学術雑誌

著者
伊藤 憲二
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.9-14, 2023-01-01 (Released:2023-01-01)

本稿は学術情報流通の重要な媒体である学術雑誌の歴史と,その質担保の重要な仕組みである査読制度の発展について述べたものである。学術雑誌,より一般には科学を歴史的に検討することの意義を科学史研究の観点から説明したうえで,現時点における比較的最近の研究に基づいて学術雑誌の歴史と査読制度の発展を概観し,最後に学術雑誌にかかわる現在の課題のいくつかと,それらの問題を乗り越える可能性について論じた。とくに最近出版されたAileen Fyfeらによるロイヤル・ソサイエティにおける学術出版についての大部の研究書の紹介に大きな重点を置いた。
著者
標葉 隆馬 飯田 香穂里 中尾 央 菊池 好行 見上 公一 伊藤 憲二 平田 光司 長谷川 眞理子
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.90-105, 2014

知識経済とグローバル化に対応するための方策として,科学技術政策を始めとする種々の政策において高度知識人材の育成が議論されるようになって久しい。その間,大学-大学院レベルの教育において,高度な専門性に加えて,異分野との協働,コミュニケーション,そして説明・応答責任に関する能力の育成が求められるようになってきた。これらの高度知識人材に必要とされる汎用的能力の育成に関して論じられている事柄は,国内外の「科学と社会」教育が試みてきた「幅広い視野」の育成とも重なる議論である。しかしながら,とりわけ日本において大学院重点化が進められてきた状況を意識しつつ国内外の状況に目を向けるならば,大学院レベルにおける高度教養科目としての「科学と社会」教育プログラムの実施は,内外を問わず試行錯誤が重ねられているのが現状である。本稿ではこの状況を俯瞰しつつ,「総合研究大学院大学(総研大)」の事例を中心に,その現状を記述・検討する。総研大では,研究者の「幅広い視野」涵養を目的として,これまでに必修科目も含めた「科学と社会」教育の取り組みを行ってきた経緯がある。この作業を通じて,今後の「科学と社会」教育の可能性と解決すべき課題について考察する。
著者
平田 光司 出口 正之 関本 美知子 柴崎 文一 安倍 尚紀 高岩 義信 伊藤 憲二 湯川 哲之 横山 広美 高岩 義信 湯川 哲之 伊藤 憲二 柴崎 文一 安倍 尚紀 瀧川 裕貴 横山 広美 加藤 直子
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

個人情報や第三者に関する情報も含むオーラルヒストリー記録を多数収集し、共有資産として研究者に提供するシステムについて検討し、方法を確立した。実際に高エネルギー加速器研究機構における巨大科学プロジェクト関係者に対してインタビューを実施し、記録をアーカイブし、公開した。
著者
高岩 義信 九後 太一 伊藤 憲二 五島 敏芳 金谷 和至 棚橋 誠治 小沼 通二 坂東 昌子 受川 史彦 伊藤 和行 田中 正 山脇 幸一 難波 忠清 西谷 正 吉川 直志
出版者
筑波技術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

日本における素粒子物理学の発展への道を開いた湯川秀樹・朝永振一郎・坂田昌一の遺した資料を保存する記念史料室等で、その資料を近年のアーカイブズ学の知識によってカタログ情報を国際標準に準拠する史料記述の形式で統一的にデータベース化することにより、史料整理と保存の体制整備と利用促進を図った。それにより、未整理であった資料を含め記念史料の全体について把握が可能になり、その管理について見通しが良くなった。さらにそのデータベースは、ネットワーク経由で相互参照(横断検索)が可能なオンライン検索システムを採用して一般向けに提供するための環境づくりを行ったので、当科研費事業の終了後にもその整備と運用の継続が可能になり、様々な研究課題に利用できるようになり、現実にこれらの史料の参照の要求にこたえることが可能になった。
著者
伊藤 憲二
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.558-562, 2016-08-05 (Released:2016-11-16)
参考文献数
59

変わりゆく物理学研究の諸相―日本物理学会設立70 年の機会に日本における物理学研究の転換点をふりかえる―(歴史の小径)量子力学が導いた新しい風
著者
伊藤 憲二
出版者
日本デジタルゲーム学会
雑誌
デジタルゲーム学研究 (ISSN:18820913)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.34-45, 2007 (Released:2021-07-01)

現在、デジタルゲームは従来のゲームのあり方を超えたデジタルメディアに脱皮しようとしている。その状況において、デジタルゲームの学術的研究は、従来のゲーム研究の枠組みを超えたものに発展する可能性を持つ。この論考は、そのような将来のデジタルゲーム研究の射程を推し量ろうとするものである。