著者
木ノ下 修 岡本 和真 小西 博貴 小松 周平 安川 覚 塩崎 敦 窪田 健 保田 宏明 小西 英幸 岸本 光夫 小西 英一 柳澤 昭夫 大辻 英吾
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.1281-1287, 2013 (Released:2013-07-05)
参考文献数
23

症例は56歳男性.膵内分泌腫瘍に対し膵体尾部切除術が施行され,病理学的診断は膵内分泌腫瘍(Ki-67 LI:3%,NET G2),T2N0M0,fStage IIで癌遺残は認められなかった.術後補助化学療法を施行され無再発であったが,術後15年目に胃体上部後壁に約3cmの粘膜下腫瘤を指摘され胃部分切除を施行された.病理組織学的には膵内分泌腫瘍の胃壁内転移(Ki-67 LI:10%,NET G2)と診断された.術後15年目に再発した膵内分泌腫瘍の胃壁内転移は非常にまれである.
著者
辻原 諒 小木曽 哲 佐野 貴司 石橋 秀巳
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

箱根火山は首都圏から最も近く,カルデラ形成噴火を数回繰り返してきた活動的な火山のひとつである.箱根火山における最大規模の噴火は,約6万年前に発生した,箱根火山における最新のカルデラである強羅潜在カルデラを形成した噴火(VEI 6)である.この噴火はプリニー式噴火で開始し,続いて火砕流が発生した.プリニー式噴火による降下軽石(箱根東京軽石)は南関東の広域でみられ,火砕流は噴出源から約50km遠方まで到達した(笠間・山下,2008).この噴火の準備過程を詳細に検討することは,同規模の噴火が今後も起こるリスクを評価する上で非常に重要である.そこで本研究では,降下軽石と火砕流堆積物中の本質物質を対象に噴火準備過程を検討した. 本研究で用いた試料は,神奈川県足柄下郡箱根町芦之湯の谷底露頭から採取した.本質岩片として軽石とスコリアがみられ,軽石にはマフィックエンクレーブを持つものがみられた.本研究ではXRF(国立科学博物館)を用いた全岩主成分・微量元素組成分析を行い,偏光顕微鏡とSEM(京大理学部)を用いた組織解析と,EPMA(京大理学部)を用いた主成分化学組成分析を行った. 軽石は流紋岩からデイサイト(SiO2 =64-71wt.%)で,斜長石,斜方輝石,単斜輝石,磁鉄鉱,チタン鉄鉱,燐灰石,橄欖石の斑晶が見られた.スコリアは安山岩(SiO2=58-60wt.%)で,斜長石,斜方輝石,単斜輝石,磁鉄鉱,燐灰石,橄欖石の斑晶がみられた.マフィックエンクレーブは玄武岩から玄武岩質安山岩で(SiO2 ~52 wt.%),斜長石,磁鉄鉱,橄欖石の斑晶がみられた.ガラスと斑晶鉱物の化学組成から,斑晶鉱物と平衡共存するメルト組成が4種類存在することが示唆され,この噴火の直前のマグマだまりには組成的に異なる4種類のマグマが存在したことが考えられる.全岩化学組成はSiO2 ~67 wt.%で組成トレンドが異なり,SiO2 > ~67 wt.%の全岩化学組成トレンドと斜長石斑晶の組成累帯構造パターンから,噴火前のマグマは結晶分化作用を経験しており,SiO2 < ~67 wt.%の全岩化学組成トレンドと斜長石と橄欖石斑晶の組成累帯構造パターンから,噴火前のマグマはマグマ混合を経験していることが示唆される.Fe-Ti酸化物温度計と斜長石-メルト温度含水量計を用いると,噴火前のデイサイト質〜流紋岩質マグマの温度は820-880 ℃,含水量は4.2-7.2wt.%と見積られ,メルトが水に飽和していると仮定した場合,噴火前のマグマだまり最浅部の深さは5.5-10.5 kmと見積られる.橄欖石のFe-Mg拡散モデリングにより,最後のマグマ混合から噴火までの時間は30日-1年と見積られた. 以上より,次のような噴火準備過程を考察した.結晶分化したデイサイト質〜流紋岩質マグマが深さ≧5.5-10.5kmに存在し,そこに苦鉄質マグマが貫入・混合した.最後のマグマ混合から30日から1年程度経過後に噴火が開始した. 当時のマグマだまり最浅部の深さは,地球物理学的に見積られている現在のマグマだまりの深さ(~10 km: Yukutake et al., 2015) と概ね一致する.このマグマだまりが,今後“箱根東京軽石噴火”と同規模の噴火を起こす可能性を正確に評価するためには,“箱根東京軽石噴火”以降の噴火準備過程の変遷を明らかにする必要がある.
著者
佐藤 至 辻本 恒徳 世良 耕一郎 二つ川 章二 津田 修治
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.825-830, 2003
被引用文献数
2

平成11年11月から平成14年8月までに狩猟等によって岩手県内で捕獲されたツキノワグマ計42頭 (雄24頭, 雌18頭) の肝臓, 腎臓および被毛についてPIXE分析を行い, 鉛等の重金属による汚染状況を調査した.その結果これらの組織からは, クロム, マンガン, 鉄, コバルト, 銅, 亜鉛, セレン, モリブデン, カドミウム, 鉛等が検出された.このうちコバルトは人などで知られている濃度の10倍以上の高値を示した.また2頭の亜鉛濃度が異常な高値を示し, 何らかの亜鉛暴露を受けていた可能性が考えられた.肝臓, 腎臓および被毛におけるカドミウムの平均濃度はそれぞれ0.20, 9.16, 2.10mg/kgであり, 日本人の正常範囲を超える個体はみられなかった.肝臓の鉛濃度の多くは1mg/kg未満であったが, 3頭が2mg/kgを超え, ツキノワグマにおいても鉛汚染が存在する可能性が示唆された.
著者
辻 尚志
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.691-694, 1995-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2

身の回りにはアミノ酸をはじめ, 様々な光学活性体があり, 生体は光学活性な場を持つ蛋白質を物質の認識に用いることにより巧みにそれらを見分けながら生きている。日頃, 口にする甘味やうま味などの味, 匂いの素になる物質には光学活性体が多く, 更に, それぞれの光学異性体で作用が異なる場合が多い。医薬品にも不斉中心を持つ化合物が多く, それぞれの光学異性体で薬理作用が異なる場合がある。現在はラセミ体の医薬品が多いが, 今後は安全性の観点から, 光学活性体を開発する方向になりつつある。

1 0 0 0 OA 修身教場掛図

著者
辻敬之 著
出版者
普及舎
巻号頁・発行日
vol.別製折本1, 1883
著者
吉井 由美 松村 弥生 朴 将源 上辻 由里 安田 考志 川瀬 義夫 松本 雅則 藤村 吉博 魚嶋 伸彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.147-149, 2013-01-10
参考文献数
5
被引用文献数
1

症例は36歳,女性.リツキシマブ投与にて寛解に至った標準療法抵抗性血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の1例を経験した.血漿交換開始後に抗ADAMTS13抗体およびLDの再上昇を認めた時点で難治性と判断し,リツキシマブを投与した.その結果,第30病日に血漿交換を離脱でき,約18カ月にわたり寛解を維持している.標準療法抵抗性TTPにおいて血漿交換開始後の抗ADAMTS13抗体価およびLDの上昇が難治性の判断に有用であると考えられた.<br>
著者
小林 睦 関戸 聡子 北田 徳昭 西山 祐美 吉岡 睦展 辻 隆志 渡 雅克 安藤 厚志 黒田 和夫
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.262-270, 2001-06-10 (Released:2011-03-04)
参考文献数
5

We developed a computer program for drug information for patients using File Maker Pro® software package (ver 4.0). This program consists of four databases : 1) a main database which manages data of drug efficacies, the initial symptoms of serious side effects, cautions, drug interactions, 2) standardization for drug efficacies, 3) standardization of the initial symptoms of serious side effects, and 4) information on the package insert for drugs.These four databases enabled pharmacists to provide standardized drug information rapidly not only to patients but also to other medical staff members.Moreover, these four databases connected with a relational function of File Maker Pro® enabled us to automatically update the data on drug efficacies and initial symptoms of serious side effects by in putting the drug code numbers designated by the Ministry of Health Labor and Welfare into this program.These results suggested this program to be useful for the standardization of drug information and the automatic updating of the data.
著者
栗尾 和佐子 小西 元美 奥野 智史 中尾 晃幸 木村 朋紀 辻 琢己 山室 晶子 山本 祐実 西川 智絵 柳田 一夫 安原 智久 河野 武幸 荻田 喜代一 曽根 知道
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.134, no.11, pp.1199-1208, 2014 (Released:2014-11-01)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

The Faculty of Pharmaceutical Sciences, Setsunan University, offers the Self-improvement and Participatory Career Development Education Program: Internship and Volunteer Training Experience for Pharmacy Students to third-year students. We previously reported that the training experience was effective in cultivating important attributes among students, such as a willingness to learn the aims of pharmacists, an awareness of their own role as healthcare workers, and a desire to reflect on their future careers and lives. A follow-up survey of the participants was carried out three years after the training experience. The questionnaire verified that the training experience affected attendance at subsequent lectures and course determination after graduation. We confirmed the relationship between the participants' degree of satisfaction with the training experience and increased motivation for attending subsequent lectures. Through the training experience, participants discovered future targets and subjects of study. In addition, they became more interested in subsequent classroom lessons and their future. The greater the participants' degree of satisfaction with their training experience, the more interest they took in practical training and future courses. The present study clarified that the training experience was effective in cultivating important attributes such as a willingness to learn and an interest in future courses. Moreover, the training positively affected the course determination after graduation.

1 0 0 0 OA 倫理学

著者
和辻哲郎 著
出版者
和辻哲郎
巻号頁・発行日
vol.上2,
著者
辻 竜平
出版者
信州大学人文学部
雑誌
信州大学人文科学論集 = Shinshu studies in humanities
巻号頁・発行日
no.2, pp.67-79, 2015-03

口承文芸の一つの形態に昔話がある。本稿では,新潟県旧栃尾市で水沢謙一によって収集された「三枚のお札」のヴァリアントを事例に取り上げ,その地理的な分布と物語の内容の特徴が,通婚圏によって規定されているのではないかと考えた。農村集落では近隣集落から語り手の女性が結婚して移動したことから,近隣の農村集落間でヴァリアントの類似性が高く,かつ,比較的特徴的なものであると予想した。一方,町部では女性がより広域に移動したことから,町部における口承文芸のヴァリアントは,折衷的であまり特徴のないものになってしまうと予想した。コレスポンデンス分析の結果,予想はおおむね支持された。
著者
辻 富彦
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.153-157, 2015-06-15 (Released:2016-06-15)
参考文献数
8

当院を平成25年の1年間に受診した耳鼻咽喉科疾患の症例のストレス検査 (STAI=State-Trait Anxiety Inventory) の結果について集計した。 STAI の結果は特性不安, 状態不安に分けて Ⅳ, Ⅴ を呈した症例を高値例として集計した。 末梢性めまい, メニエール病を含む “めまい群” では STAI 高値の症例は特性不安で47.1%, 状態不安で80.8%であった。 突発性難聴, 低音型突発難聴などの “難聴群” では STAI 高値の症例は特性不安で50.0%, 状態不安で69.7%であった。 咽喉頭異常感症, 逆流性食道炎を含む “異常感症群” では STAI 高値の症例は特性不安で42.9%, 状態不安で57.1%であった。 正常成人では STAI で Ⅳ, Ⅴ を呈する割合は30~40%程度とされており, これと比較すると高値例の割合が高い傾向にあった。 このような耳鼻咽喉科疾患にはストレスが高い症例が多く存在していることがわかったとともに, ストレスを客観的に定量化する検査法として STAI は有用であると考えられた。
著者
辻 修平
出版者
岡山大学
巻号頁・発行日
1998

宇宙空間から地球に入射する放射線のことを宇宙線と呼ぶ。この宇宙線は,地球に入射する1次宇宙線とそれが大気圏内の原子核と相互作用して生み出された2次宇宙線との2つに大別される。1次宇宙線は約90%が陽子,9%がα線である。これら1次宇宙線が大気に入射すると大気中の陽子,あるいは中性子と強い相互作用を起し主に多数のπ(パイ)中間子が発生する。そのうち中性のπ(0)は2つのγ線に崩壊し,さらにこのγ線は対生成を起しe(-)(電子)とe(+)(陽電子)を生成する。また電荷を帯びたπ(+),π(-)中間子は,μ粒子(ミューオン)とυμ(ミューオン・ニュートリノ)に崩壊する。μ粒子はレプトンなので大気の核子と強い相互作用はしない。また,μ粒子はe(電子または陽電子)とυe(エレクトロン・ニュートリノ)とυμに崩壊するがπ中間子に比べ寿命が長いため,地表に到達する2次宇宙線の約70%がμ粒子である。1950年代から1980年代にかけてμ粒子の強度,および電荷比の理論的,実験的研究がなされてきた。これによりμ粒子の生成に関与したπ中間子やK中間子の割合を求めることができる。さらに,これから1次宇宙線のエネルギースペクトルや1次宇宙線が大気と相互作用するプロセスを導き出すことができる。また天体宇宙物理学的見地からは,地表にどの程度μ粒子が降り注いでいるかを知っておくことは必要である。最近では,ニュートリノ・フラックスの理論的計算を確かめるためにμ粒子のエネルギースペクトル及び電荷比がきわめて重要な指標となっている。というのは,最近のニュートリノ地下実験の報告によると,地下実験のニュートリノの観測値とニュートリノフラックスの理論計算に大きなずれが生じているためである。この意味においても十分な精度のミューオン強度の地上観測結果が要求される。理論的には全天頂角方向から到来するμ粒子のエネルギースペクトルが計算されているにも関わらず,実験では主に鉛直近辺と大天頂角近辺(75°~90°)しか報告されていない。これは,巨大なμ粒子観測装置を垂直か水平に設置することは比較的容易であるが,いろいろな方向に向けることは難しいからである。これに対して,任意の方向からのμ粒子を観測できる宇宙線検出器「岡山粒子望遠鏡」の設計,建設,観測を行なった。「岡山粒子望遠鏡j は,サーボ・モータ・システムIこよる経緯儀になっており,コンピュータ制御により任意の方位角,天頂角に検出器を向けることができる。この機能は大気μ粒子の全方位測定に対して非常に有用である。さらに入射荷電粒子の電荷符号の判別,運動量の測定が可能である。本論文では,この「岡山粒子望遠鏡」を用いて天頂角毎の測定と方位角毎の測定を行い,大気μ粒子の全方位測定結果を示した。天頂角0°から81°までから到来するμ粒子を観測し,観測期間1992年から1996年,及び運動量領域1.5GeV/cから250GeV/cのデータを天頂角別に解析し,μ粒子の強度分布,電荷比(charge ratio)を運動量の関数として求めた。天頂角0°から81°まで2°刻み連続的なμ粒子強度分布はこれまで未測定であったが,本論文に示すように中間角度領域ではμ粒子強度に特異性がないことを示した。これによって,これまでに測定された狭い天頂角領域での実験や理論計算の結果を検討することが可能になり,本論文とのよい一致を見た。この一致は,理論の前提が示す全天頂角領域に対し,運動量領域1.5GeV/cから250GeV/cの範囲で,ミューオンがほとんどπ中間子からの崩壊の寄与に依存していること,K中間子の寄与は無視してよいことの恨拠を与えた。このことは1次宇宙線と空気核衝突においてK中間子が関与するような特異な反応は生じていないことを示すとともに,大気ニュートリノ・フラックスを推定する際にπ→ μυμのプロセスのみを扱えばよいことも示している。方位角毎のμ粒子測定に関しては,天頂角5°,20°,40°に対し8方位角方向を観測し,観測期間1997年から1998年までのデータを解析用に採用した。運動量領域に関して2.5GeV/cから3.5GeV/c(低運動量領域),3.5GeV/cから100GeV/c(高運動量領域)までの2領域に分け,電荷別,方位角方向別にこれらのデータを解析した。この結果,低運動量領域において,特定の方位角領域でμ粒子強度が減少した。これは,地磁気の影響のために,特定の方位角方向からのμ粒子の通過距離が延び,μ粒子が電子及び2種のニュートリノに崩壊するためである。大気ニュートリノは,μ粒子の生成(A:μ粒子強度の天頂角依存性),崩壊過程(B:電荷別μ粒子強度の方位角依存性)に1対1に対応するので, μ粒子のフラックスを求めることは,大気ニュートリノ・フラックスを求めることに対応する。このととを確証するために,本論文での解析A,Bからニュートリノエネルギーにして1GeVの,大気電子ニュートリノ,大気反電子ニュートリノ・フラックスを求め,相対変化の割合が数%であることを得た。さらに,海面位で,天頂角5°,1GeVの各々の大気ニュートリノ・フラックス比を求め,電子・反電子ニュートリノ,ミューオン・反ミューオンニュートリノ,ミューオン・電子ニュートリノ比それぞれ,1.23,1.02,2.26を得た。これらの比は,理論的に予想されるもの(それぞれ,1.24,1.04,2.48)に近い値であり,岡山粒子望遠鏡で大気二ユートリノ・フラックスを求めることができることを示した。