著者
出山 諭司 金田 勝幸
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.178-182, 2022 (Released:2022-12-25)
参考文献数
24

「モノアミン仮説」に基づく既存の抗うつ薬は遅効性で,約3割のうつ病患者は治療抵抗性を示す。一方,NMDA受容体拮抗薬ケタミンは,治療抵抗性うつ病患者にも即効性かつ持続性の抗うつ作用を示すことから近年大きな注目を集めている。ケタミンの抗うつ作用には,内側前頭前野(mPFC)での脳由来神経栄養因子(BDNF)遊離を介した錐体ニューロンの可塑的変化が重要であることが知られている。筆者らは最近,mPFC錐体ニューロンにおける血管内皮増殖因子(VEGF)シグナルの亢進が,BDNFシグナルと同様にケタミンの抗うつ作用と,その基盤と考えられるケタミンによる錐体ニューロンの可塑的変化に重要であることを見いだした。さらに,mPFCにおけるBDNFシグナルとVEGFシグナルの相互作用が,ケタミン様の抗うつ作用発現に重要であることを発見した。本稿では,筆者らの最近の研究成果を中心にケタミンの抗うつ作用におけるBDNFおよびVEGFシグナルの役割について概説する。
著者
東泉 裕子 金田 恭江 下村 千史 黒谷 佳代 西平 順 瀧本 秀美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.229-237, 2022 (Released:2022-10-19)
参考文献数
27

日本食品標準成分表2010 (六訂) と日本食品標準成分表2015年版 (七訂) 追補2018年を用いて算出した栄養素等摂取量推定値とを比較し, 食品成分表改訂が栄養素等摂取量推定に与える影響を分析した。北海道在住の地域住民および東京都に勤務する者625名の食物摂取量について, 食事記録法により食事調査を行い, 栄養素等摂取量を算出した。炭水化物以外のすべての栄養素等で成分表の違いにより摂取量に有意な差が認められ, とくに分析方法が更新された総食物繊維摂取量への影響が大きく, 七訂値では六訂値より平均で3.0 g (23.2%) 高値であった。また, 日本人の食事摂取基準 (2020年版) を適用した場合の集団の総食物繊維摂取量の評価にも, 成分表の違いによる影響が認められた。以上より, 食事調査から食物繊維摂取状況を評価する際は, 計算に用いられた食品成分表の正式名称および分析方法を考慮した検討が必要であることが示唆された。
著者
金田 真一 千葉 達朗
出版者
一般社団法人 日本リモートセンシング学会
雑誌
日本リモートセンシング学会誌 (ISSN:02897911)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.196-198, 2022-08-10 (Released:2022-11-26)
参考文献数
5

On August 13, 2021, there was an eruption of Fukutoku-Oka-no-Ba submarine volcano, located between Iwo Jima and Minami Iwo Jima in the southernmost part of the Ogasawara Islands, approximately 1,300 km from Tokyo. The volcanic plume reached a height of 16 km and ejected a large amount of pumice, which floated over the Pacific Ocean.Some of the floating pumice drifted to the Ryukyu Islands, reaching the main island of Okinawa and Amami-Oshima in early October 2021. As of June 2022, floating pumice was still affecting marine traffic, fishing, and tourism in the area. This article presents satellite images of the eruption and the drifting floating pumice stone.
著者
川島 弘之 古屋 武史 植草 省太 金田 英秀 越永 従道
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.487-490, 2016 (Released:2017-03-18)
参考文献数
13

横紋筋肉腫は間葉系細胞を起源とする悪性腫瘍であり,全身のどの部位にも発生する.鼠径部に発生し,非還納性鼠径ヘルニアとの鑑別を要した横紋筋肉腫の1例を経験したので報告する.症例は2歳女児で鼠径部腫瘤を認め,当院へ紹介受診した.超音波検査の結果,非還納性鼠径ヘルニアが否定できないために同日手術を施行した.手術所見で鼠径ヘルニアは認めず,鼠径部腫瘤は腫瘍性病変であり,腫瘍の部分切除術を施行し手術を終了した.病理結果で胞巣型横紋筋肉腫の診断を得た.日本横紋筋肉腫研究グループのプロトコールに準じて腫瘍全切除術を含めた治療を行い,治療終了後2年で再発は認めていない.非還納性鼠径ヘルニアの診断で手術を施行した際に腫瘍性病変を認めた場合には,術中に腫瘍進展を的確に評価し,腫瘍の全切除が不可能と判断した場合は腫瘍生検術や部分切除術による病理診断を得ることが治療方針を決定していく上で重要であると考えられた.
著者
金田 重郎 Shigeo Kaneda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.21-45, 2012-03-15

要求分析では,母語を用いて仕様を記述する.Object 指向分析は要求分析の代表的な手法の一つであるが,ここでも,クラス名等には母語が使われる.本稿では,英語圏で生まれたObject 指向を利用するとき,日本語と英語の違いを考慮するべきことを問題提起する.具体的には,認知言語学の立場から,クラス図の構造は英語の5 つの基本文型そのものであることを示す.例えば,クラスとは可算名詞,メソッドは動作動詞,関連は状態動詞,Has-s 関係は第4 文型(S+V+O+O),Is-a 関係は第5 文型(S+V+O+C),である.これによって,GOFのデザインパタンの理解も容易になる.一方,日本語と英語の構造は大きく異なっている.日本語仕様からクラス図を描くことは,日英翻訳に等しいことを明らかにしている.更に,本論文では,日本語クラス図における「関連名」について,考察を加えている.そして,手島によって提案された概念データモデリングと関係モデルとの関係を論じている.
著者
金田 龍平 芳賀 大地 杉山 弘晃 酒造 正樹 前田 英作
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022)
巻号頁・発行日
pp.2L1GS203, 2022 (Released:2022-07-11)

ニューラル言語生成技術の進展により, 雑談などの非タスク指向型対話においてより自然な発話生成が可能になりつつある. そして,自然且つ多様な発話生成を実現するためには,それまでの発話履歴を参照するだけでなく 適切な外部知識を参照して,発話文生成を行うことが必要となる. このとき外部知識として, タスク指向型対話で用いられる構造化された情報(例えば旅行案内対話における料金・アクセス等)に加え BlogやWikipediaに代表される非構造化情報(同口コミテキスト等)の活用が期待される. しかしながら,構造化/非構造化情報の混在下において 文脈に応じて適切な外部知識を選択することは必ずしも容易ではない. そこで本研究では,BERTを利用した発話生成のための知識選択手法について検討を行い, 旅行案内ドメインを事例としてとりあげ, 適切な知識選択のための入力情報について検討を行った
著者
金田一京助 [ほか] 編
出版者
小学館
巻号頁・発行日
2002
著者
靍久士 保利 金田 聡 飯田 明彦 内藤 哲也 池田 理恵 中澤 保子 若林 由紀子 山崎 明 山本 俊文
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.183-187, 2021 (Released:2022-01-25)
参考文献数
7

症例は2カ月男児.腸回転異常症・中腸軸捻転で,回盲部は残存するが残存小腸が30cmの短腸症候群となった.馴化期に入った後も,連日10回以上の排便,夜間に2~3時間ごとの排便があった.患児は体重増加が停滞し,頻便によるおむつ皮膚炎が増悪した.また,家人も頻回のおむつ交換で睡眠時間が確保できず,QOLが低下したため,以下の栄養管理の工夫を行った.①グァーガム分解物(partially hydrolyzed guar gum;以下,PHGGと略)の投与,②経管栄養剤や投与方法の検討,③五苓散の使用である.今回これらの3つの工夫を含めて5期に分類し,排便回数および夜間排便回数を比較検討したところ,probioticsとPHGGの併用,成分栄養剤とPHGGの混合液の持続投与に五苓散,離乳食を併用することで便性の改善と良好な体重増加が得られた.特に夜間排便回数が減少したことは,患児・家人のQOL改善につながったと考えられた.
著者
齋藤 邦彦 鈴木 英敏 金田 修一 阿部 剛 齋藤 薫 佐久間 弘典 庄司 則章
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.133-141, 2016-05-25 (Released:2016-06-18)
参考文献数
22

膨潤化処理した飼料米(膨潤玄米)の給与が肥育牛の発育性と産肉性に及ぼす影響を検討した.供試牛は黒毛和種去勢牛を用い,濃厚飼料多給肥育による対照区に4頭を,15ヵ月齢から出荷まで濃厚飼料の30%量を膨潤玄米に代替給与する試験区に4頭をそれぞれ配置した.試験区において稲わら摂取量が有意に多くなった結果,肥育全期間における推定総TDN摂取量も試験区が対照区より多くなったが(P<0.01),試験牛の発育および日増体量は試験区間に差が認められなかった.枝肉格付成績,胸最長筋の水分,粗脂肪,粗タンパク質の各含量および脂肪酸組成については試験区間に差はなかった.以上のことから,黒毛和種去勢牛肥育において配合飼料の30%量を膨潤玄米に代替給与しても,発育性および産肉性への影響はなく,輸入穀物の代替飼料として利用可能であることが示唆された.
著者
寺田 昭彦 堀 知行 久保田 健吾 栗栖 太 春日 郁朗 金田一 智規 伊藤 司
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.91-105, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
119

近年の超高速シーケンサー技術, 顕微鏡, 質量分析装置の開発のスピードは目覚ましいものがあり, 純然たる環境微生物学や微生物生態学を専門としない工学系研究者でも複合微生物系の機能や活性の解明といった, 微生物群集の高度な生理生態解析が行えるようになっている。このような潮流により, 水処理施設に潜む新奇微生物の存在や, 新機能の発見が進んでいる。本総説では, 水処理施設や自然環境の水質変換に関与する微生物の遺伝子, 細胞, 活性, 代謝物を高解像度に診る最新手法の紹介を行う。さらに, 手法の導入によってもたらされた水処理施設に存在する微生物群の生理生態に関する最新知見と今後の水処理技術の進展に向けた微生物生態研究の展望について概説する。
著者
小嶋 智 丹羽 良太 岩本 直也 金田 平太郎 服部 克巳 小村 慶太朗 山崎 智寛 安永 一樹
出版者
Japan Society of Engineering Geology
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-12, 2022-04-10 (Released:2022-06-06)
参考文献数
42
被引用文献数
1

中部日本,越美山系,冠山地域にみられる二重山稜地形は,山体重力変形(DSGSD)により形成されたものである.二重山稜地形の間の凹地を埋積した堆積物は,上位より,(a)炭質泥層と植物遺体に富む層の互層,(b)明灰色泥層,(c)橙色礫質泥層からなる.(c)層は基盤との不整合直上の基底礫層と解釈した.(a)層に含まれる木片の加速器質量分析計を用いて測定した放射性炭素年代(AMS-14C年代)と,7,300 cal BPの鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah)により,凹地埋積堆積物の平均堆積速度は約0.25 mm/yearであり,二重山稜地形は約11,000年以上前に形成されたと推定した.比抵抗トモグラフィー探査の結果から,この凹地は,伸びに直交する方向の断面では東に薄くなる楔形を呈し,凹地の西を限る東に急傾斜した重力性断層に沿った円弧滑りにより形成されたと推定した.約7300年前の地表面を示すK-Ahの層準は,水平で西に傾斜した基盤にアバットしている.このことはDSGSDによる二重山稜地形の形成が約7300年前までには終了し,その後は安定していることを示している.DSGSD活動は,おそらく最終氷期後の寒冷・乾燥気候から温暖・湿潤気候への変化により引き起こされた.氷河の後退とそれに伴う急斜面の形成,支えや重圧の徐荷による同様な斜面の不安定化は,世界中から報告されている.(b)層から(a)層への層相の変化も,この気候変動に伴う植生の変化に起因する可能性がある.

1 0 0 0 OA 近世英傑略伝

著者
金田耕平 編
出版者
黄雲山房
巻号頁・発行日
vol.巻之2, 1878