著者
尾形 明子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.25-32, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、母親の養育態度に及ぼす子どもの病弱傾向に関する認知の影響について検討することであった。研究の結果、病弱傾向の認知と養育態度の関係については、子どもを病弱だと認知しているほど「責任回避的かかわり」が多く、病弱傾向の認知と「受容的子ども中心的なかかわり」や「統制的かかわり」には相関は認められなかった。さらに、母親の養育態度は、「受容タイプ」「統制願望タイプ」「無関心タイプ」の3つのタイプに分類可能であった。そのうち、「統制願望タイプ」の母親は、他の養育態度パターンの母親よりも、子どもを病弱だと認知している程度が有意に高かった。したがって、子どもの病弱傾向を高く認知している母親は、子どもの活動を過度に制限する一方で、子どもの言いなりになっているという養育パターンの可能性がある。
著者
大塚 明子 形岡 美穂子 村中 泰子 川村 有美子 鈴木 伸一 熊野 宏昭
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-24, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究では,内科・心療内科標榜の施設Aと、神経科・心療内科標榜の施設Bで、過去5年半に認知行動療法(CBT)に基づくカウンセリングに導入された121例のデータに基づき、心療内科および神経科プライマリーケアでのCBTの適用の実際を報告した。診断では、不安障害と適応障害が両施設とも多い一方で、一般身体疾患に影響を与えている心理的要因と身体表現性障害は施設Aで、摂食障害は施設Bで多いという特徴がみられた。治療法では、両施設で共通して気分障害には段階的タスク割り当て・認知行動論的カウンセリング、不安障害にはエクスポージャー・自律訓練法、身体表現性障害・睡眠障害・一般身体疾患に影響を与えている心理的要因には自律訓練法、適応障害には認知行動論的カウンセリングが多く適用されていた。そして一般身体疾患に影響を与えている心理的要因、適応障害、不安障害は症状が改善して終結となる割合が高かったことから、CBTは心療内科および神経科プライマリーケアでも十分に活用可能であると考えられた。
著者
佐藤 秀樹 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.93-102, 2021-03-15 (Released:2021-03-13)
参考文献数
29

The differential effects of rumination on attentional breadth was investigated by experimentally manipulating rumination from the perspective of thought content and valences of thinking-time. We randomly assigned 68 undergraduate and graduate students to negative, neutral, long-, and short-time thinking groups. Then, we administered a questionnaire, conducted a rumination manipulation and the modified Attentional Breadth Task. In this task, there are Close and Far conditions that have a narrow and wide attentional range depending on the location of the target stimulus, and ΔAttentional Narrowing Index (ΔANI) representing the differences between the correct response rate for a target in Close and Far conditions are calculated, such that higher ΔANI values indicate a narrower attention range. Results indicated that state rumination and negative emotions worsened and attentional breadth decreased when participants focused on negative thoughts for a long time. Moreover, a causal relationship between rumination and attentional breadth was suggested. Also, factors narrowing attentional breadth through rumination were identified based on the attentional scope model. It is suggested that future studies should consider whether depression or negative cognitive processing is worsened by narrowing attentional breadth.
著者
巣山 晴菜 大月 友 伊藤 大輔 兼子 唯 中澤 佳奈子 横山 仁史 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.35-45, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、パフォーマンスの解釈バイアス(以下、解釈バイアス)が社交不安に対するビデオフィードバック(以下、VFB)の効果を規定する要因の一つであるかを検討することであった。大学生27名を対象に、VFBを挟んだ2度の3分間スピーチからなる実験を行い、スピーチ前の主観的不安感、スピーチ中の主観的不安感、スピーチの自己評価および他者評価、心拍数を測定した。パフォーマンスの質については解釈バイアスの大小による差は見られなかった。しかし、解釈バイアスの大きい者ほどVFBを受けることで自己評価は改善し、スピーチ前およびスピーチ中の不安感は低下することが明らかにされた。本研究の結果から、解釈バイアスが大きい者の社交不安症状に対してVFBが一層有効である可能性が示唆された。
著者
伊藤 理紗 矢島 涼 佐藤 秀樹 樋上 巧洋 松元 智美 並木 伸賢 国里 愛彦 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.13-22, 2019-01-31 (Released:2019-06-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究では、(1)安全確保行動を恐怖のピークの前でとるか後でとるか、(2)恐怖対象への視覚的な注意の有無が、治療効果に及ぼす影響を検討した。ゴキブリ恐怖の大学生を対象に、四つの条件のいずれか一つに割り当てた:(a)恐怖ピーク後注意あり群、(b)恐怖ピーク後注意なし群、(c)恐怖ピーク前注意あり群、(d)恐怖ピーク前注意なし群。群と時期(エクスポージャー前・エクスポージャー直後・フォローアップ時)を独立変数、ゴキブリ恐怖を従属変数とした分散分析の結果、メインアウトカムである行動評定の恐怖度の変数において、時期の主効果が有意であった。また、セカンダリーアウトカムである想起時の回避度において、交互作用が有意であった。単純主効果の検定の結果、a・b群はフォローアップ時の回避度の改善が認められないのに対し、c・d群は改善が認められた。最後に、治療効果が認められた原因について考察した。
著者
鈴木 伸一 小関 俊祐 伊藤 大輔 小野 はるか 木下 奈緒子 小川 祐子 柳井 優子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.93-100, 2018-05-31 (Released:2019-04-05)
参考文献数
5
被引用文献数
2

本研究の目的は、英国のCBTトレーニングにおける基本構成要素と教育方法を明らかにすることであった。英国認知行動療法学会のLevel 2認証を得ているCBTトレーニングコースのカリキュラム責任者を対象に、CBTトレーニングにおける基本構成要素と教育方法に関する調査を実施した。その結果、英国認知行動療法学会のLevel 2の認証を受けたトレーニングコースにおいては、おおむねガイドラインに沿った包括的な教育がなされていた。特に、治療関係の構築やクライエントの個別性への対応、およびスーパービジョンの有効活用などについては、現場実習における実践的なトレーニングが重視されていることが明らかになった。最後に、本研究の結果を日本のCBTトレーニング・ガイドライン策定にどのように活用していくかについて考察された。
著者
鈴木 伸一 嶋田 洋徳 三浦 正江 片柳 弘司 右馬埜 力也 坂野 雄二
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.22-29, 1997 (Released:2014-07-03)
参考文献数
16
被引用文献数
7

本研究の目的は、日常的に経験する心理的ストレス反応を測定することが可能であり、かつ簡便に用いることができる尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。まず、新しい心理的ストレス反応尺度 (SRS-18) が作成された。調査対象は、3,841名 (高校生1,316名、大学生1,206名、一般成人1,329名) であった。因子分析の結果、3因子が抽出された。それぞれの因子は、「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、「無気力」と命名された。各因子の項目数は、それぞれ6項目であった。尺度の信頼性は、α係数、再検査法、折半法によって検討され、いずれも高い信頼性係数が得られた。次に、SRS-18の妥当性が検討された。内容的妥当性、および、高ストレス群と低ストレス群、健常群と臨床群における弁別的妥当性について検討され、いずれもSRS-18が高い妥当性を備えていることが示された。本研究の結果から、SRS-18は、高い信頼性と妥当性を備えた尺度であることが明らかにされた。最後に、ストレスマネジメントの観点から、臨床場面や日常場面におけるSRS-18の有用性が討議された。
著者
平山 裕子 井元 清隆 鈴木 伸一 内田 敬二 小林 健介 伊達 康一郎 郷田 素彦 初音 俊樹 沖山 信 加藤 真
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.60-64, 2008-01-15 (Released:2009-09-11)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

症例は76歳,女性.両下肢浮腫と呼吸困難を主訴に来院した.経胸壁心エコーで右房内に可動性に富む腫瘤を認め,心不全を伴う右房内腫瘤と診断し手術を施行した.術中の経食道心エコーで右房内腫瘤が下大静脈内へ連続していることを確認したが原発巣は不明なため,心腔内腫瘤摘除にとどめ,残存腫瘍断端はクリップでマーキングした.術直後のCTで子宮筋腫から下大静脈内へ連続する構造物の中にクリップを認め,さらに摘出標本の病理所見からintravenous leiomyomatosis(IVL)と診断した.術後半年のCTでクリップは下大静脈から子宮に連続する静脈内に移動しており,腫瘍は退縮傾向であると考えたが,今後も厳重なる経過観察が必要である.
著者
元川 竜平 遠藤 仁 横山 信吾 西辻 祥太郎 矢板 毅 小林 徹 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.190, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所の事故により環境中へ放出された放射性セシウムが、福島県を中心に広範な地域に対して環境汚染をもたらした。放射性セシウムは、水を介して拡散し、土壌に吸着しているが、その中でも特に風化黒雲母・バーミキュライトといった特定の粘土鉱物に濃縮され、強くとり込まれることが明らかにされている。そこで我々は、X線小角散乱(SAXS)法を用いて、バーミキュライト・風化黒雲母/セシウム懸濁液の構造解析を行い、セシウムイオンの吸着に伴う粘土鉱物の構造変化を明らかにした。
著者
真子 正史 鈴木 伸一 鈴木 誠
出版者
神奈川県農業総合研究所
巻号頁・発行日
no.145, pp.35-41, 2004 (Released:2011-03-05)

‘湘南ゴールド’は1988年に‘黄金柑’に‘今村温州’を交配して得られた実生の中から選抜・育成した品種である。樹や果実の特性から‘黄金柑’の珠心胚実生と考えられる。2000年に品種登録を申請し、2003年11月18日付けで品種登録(第11469号)された。‘湘南ゴールド’の樹勢は強く、有刺で、樹姿は当初直立性であるが、結実し始めると次第に開張する。若木を放任すると結実までに長年月を要するため、枝の誘引が必要である。樹勢が落ち着くと結実性は安定し、豊産性であるが、隔年結果性は強い。大玉果生産のためには7月摘果が有効である。果実は‘黄金柑’より大きく、平均果重は77gである。果形は球形で、‘黄金柑’に比べて果面が滑らかで、剥皮しやすい。また、果皮は黄色で、果皮厚は薄い。種子は少なく、果肉は柔軟多汁で、風味がよい。適熟期は4月で、4-5月にかけて優れた食味を有している。樹上越冬して4月に収穫するため、海岸沿いの風当たりの少ない、温暖な地域が適地と思われる。
著者
松岡 昭善 鈴木 伸一 池田 周平
出版者
神奈川県農業総合研究所
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-41, 1988
被引用文献数
1

イノブタは同一月令であっても, 生体重に個体差があることが知られており, この生体重の差と肉質の関係を明らかにする目的で, 2腹のイノブタを同一月令肥育し, と殺時の生体重により, 重い区 (平均体重: 88.6kg) と軽い区 (平均体重: 74.9kg) に分け, 枝肉成績および理化学的性状の差異を検討し, 次の結果を得た。<br>枝肉歩留, 背腰長I, IIおよび中躯の割合は, 生体重の重い区が大であり, 後躯の割合は生体重の軽い区が大きい値を示した。後躯の脂肪, 骨, 筋肉の構成割合は, 生体重の重い区で脂肪の割合が高く, 骨と筋肉の割合は低かった。胸最長筋の断面積および脂肪の厚さは, ともに生体重の重い区で大きい値を示した。<br>筋肉の理化学的性状は, 生体重の差による影響は顕著に認あられなかったが, 生体重の重い区は軽い区よりもわずかではあるが, 粗脂肪が高い値を示した。<br>体脂肪の特性は, 生体重の重い区において融点が高く, ヨウ素価, 屈折率は低い値を示した。<br>胸最長筋の色調は, 生体重の相違による差は少ないようであった。<br>筋肉の脂肪酸組成は, 生体重の重い区においてオレイン酸含量が高く, リノール酸含量が低かった。背脂肪については, 生体重の軽い区はリノール酸含量が高く, 腎脂肪では生体重の軽い区はリノール酸含量が高くオレイン酸含量が低かった。<br>以上の結果から, と殺月令が同じであるイノブタにおいて, 生体重の軽い個体は, 体脂肪の特性と脂肪酸組成から判断して, 軟脂の要素を持っていることが示唆された。
著者
伊藤 大輔 中澤 佳奈子 加茂 登志子 氏家 由里 鈴木 伸一 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.19-29, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、PTSD症状と生活支障度の関連を検討し、認知行動的要因がそれぞれに及ぼす影響を明らかにすることであった。主にDVをきっかけに医療機関を受診した女性のPTSD患者41名を対象に、出来事チェックリスト(ECL)、PTSD症状(IES-R)、生活支障度(SDISS)、認知的評価(CARS)、PTSD症状に対する否定的解釈(NAP)、対処方略(TAC)を実施した。IES-RとSDISSに弱い相関が見られたため、階層的重回帰分析を行った結果、PTSD症状には、トラウマの脅威性の認知、症状に対する否定的予測と意味づけ、回避的思考の有意な正の影響性が見られた。一方、生活支障度には、トラウマの脅威性の認知、放棄・諦めの有意な正の影響がみられ、肯定的解釈、責任転嫁の有意な負の影響が見られた。これらのことから、DVに起因したPTSD患者には、生活支障度の改善に焦点を当てた介入を積極的に行う必要性が示唆された。
著者
長 知樹 鈴木 伸一 南 智行 益田 宗孝
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.631-634, 2009-10-25 (Released:2009-11-06)
参考文献数
6

症例は75歳男性.6 年前にリウマチ性多発筋痛症と診断され,ステロイドが開始された.1 カ月後に突然の胸背部痛で来院しStanford B型急性大動脈解離と診断し,厳重な降圧治療を開始した.発熱,炎症反応の高度上昇,CT所見から感染性大動脈解離を疑い抗菌薬治療を同時に開始した.血液培養からSalmonellaが検出された.5 週間後,突然の腰背部痛が出現し,CTで再解離,右下肢虚血を認めたため,緊急右腋窩動脈-右大腿動脈バイパス術を行った.その後も抗菌薬治療を継続し独歩退院となった.感染性大動脈解離は比較的稀であるが,急激な経過をたどることがある.感染性B型解離に対しては,降圧保存治療と抗菌薬投与による感染の沈静化が重要である.しかし治療の急性期に大動脈の急速な拡大や再解離発生の危険は高く,厳重に経過観察し,合併症発生時には迅速に外科治療を施行する必要がある.
著者
藤目 文子 尾形 明子 在原 理沙 宮河 真一郎 神野 和彦 小林 正夫 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.167-175, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、1型糖尿病患児を対象としたキャンプが、病気の自己管理行動に及ぼす影響を検討することであった。キャンプの前後に1型糖尿病患児28名に対して、自己管理行動に対するセルフエフィカシー、糖尿病に関する知識、ストレス反応、HbAlcを測定した。キャンプにおいて、ストレス反応が減少し、自己の症状把握に対するセルフエフィカシーの上昇が認められた。さらに自己注射や、糖分摂取、インスリン調節に対するセルフエフィカシーがストレス反応やHbAlc値を改善させる要因として示唆された。1型糖尿病患児を対象としたキャンプは、症状コントロールのための自己管理行動へのセルフエフィカシーや知識の向上に効果的であることが示唆された。