著者
近藤 尚己 石川 善樹 長友 亘 齋藤 順子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

疾病予防行動の社会経済格差是正に向け、人の持つ認知バイアス効果を応用した行動科学アプローチの枠組みを整理したのち、実証研究を行った。健康チェックサービス事業者のデータを用いて、サービス利用の勧誘の際、従来の健康リスクの理解を促す方法と、サービスへの興味関心を引きやすい感性に訴える方法を用いた場合の利用者の属性を比較したところ、後者の方が社会的に不利な状況(無職者など)の割合が高かった。足立区と区内26のレストランと合同で行った、野菜増量メニュー注文者に対する50円割引キャンペーンの効果検証の結果、普段昼食に支払う価格が最も少ない人々でキャンペーンの効果が最も高まり、店舗の売り上げも増加した。
著者
小林 正史 徳澤 啓一 長友 朋子 北野 博司
出版者
北陸学院短期大学
雑誌
北陸学院短期大学紀要 = Bulletin of Hokuriku Gakuin Junior College (ISSN:02882795)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.277-328, 2007-04-20

前稿では東北タイと北部タイの土器作り技術の違いを生み出した要因を検討し、自然環境の違いが強く影響していることを明らかにした。本稿ではこの結果を踏まえ、比較対象を東南アジア全体に広げて、5地域間の土器作り技術の違いを生み出した要因を検討した。その結果、稲作農耕民の土器作り技術の特徴であるタタキ成形と覆い型野焼きについて、以下の点が明らかとなった。第一に、成形手法は「円筒形の一次原形を叩きにより膨らませる」点で共通するが、円筒形の一次原形の作り方には中空円筒手法、紐積み、手びねり(+紐積み)などのバリエーションがあり、この順に上半部の形を完成品に近づけ、また器壁を締める効果が高まる。よって、その後の二次成形叩きはこの順に「叩きによる変形度」と「成形全体に占める叩き時間の比率」が小さくなる。叩き技法の重要性(形の変形度、サイクル数、成形作業に占める叩き時間の比率)に影響する要因として、(1)1日当り生産個数(叩き技法を多用する方が多め)、(2)乾燥時間(乾季のみ土器を作る場合は、叩きの重要性が高い成形手法により多数の土器を作ることができる)、(3)土器の大きさ(大きめの土器ほど叩きの重要性が高まる)、の3つがあげられた。第二に、覆い型野焼きでは「覆いの密閉度」と「薪燃料の多さ」が最も重要な要素となるが、覆いの密閉度は、(1)薪燃料の多さ(薪多用型ほど薪に着火しやすい工夫が必要)、(2)雨季にも野焼きを行うかどうか、(3)素地の砂含有量(砂が少ない素地では密閉度が高いほうが適する。密閉度の低い覆い型では急激な昇温に耐えるため、砂を多く含むか多孔質の素地が必要)、(4)樹脂コーティングや黒色化などのために熱い状態で取り出すかどうか、(5)硬質に焼き上げる必要性(窯焼き土器と競合する仏器が主体の曼斗村では高密閉の覆い型を用いる)などの多様な要因に影響されることがあきらかとなった。また、薪燃料多用型が可能になるか否か「薪の得やすさ」が大きく影響するが、薪の得やすさは「土器作りに対する男性の関与程度」と自然環境(都市近郊型か農村立地型か)という2要因に強く影響されることが示された。
著者
長友 重紀 藤井 邦彦 佐藤 智生
出版者
大学等環境安全協議会
雑誌
環境と安全 (ISSN:18844375)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.135-140, 2017 (Released:2017-11-23)
参考文献数
7

大学等の化学実験におけるリスク低減は長年の課題である。その中でも、多人数が同時に実験を行う学生実験室において揮発性の高い化学物質を使用する場合、実験を行う学生数に対して十分な数の囲い式フード型の局所排気装置を設置できていない状況がある。さらに、囲い式フード型の局所排気装置については、予算とスペースの問題から必要数を導入できない場合も多い。そこで、我々は低費用でリスクの低減化を図るために、通常の化学実験室に備えられている既設の設備を活用して外付け式フード型の局所排気装置を導入した。本報告では、その費用対効果と実際に使用した学生の意見を示し、化学実験における安全性の向上および教育効果を紹介する。
著者
Grubb Blair P. 長友 敏寿 安部 治彦
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.239-245, 2000-09
被引用文献数
1

Head-up tilt試験の普及により, 再発性の失神および失神前駆症状が自律神経調節障害による一過性の起立性低血圧と徐脈に起因することが明らかになり, 神経調節性失神(neurally mediated syncope)として知られている.一方, これまでの研究で, 血圧はさほど変化しないにもかかわらず, 起立時に心拍数が異常に増加し, 失神前駆症状・運動不耐性・疲労・ふらつき・眩暈などの起立性不耐性を発現する大きな患者群があることがわかった.本障害は一般に体位性起立性頻拍症候群(POTS;postural orthostatic tachycardia syndrome)として知られるようになった.明らかな原因は不明であるが, 軽度の末梢自立神経性ニューロパシー(部分的自律神経障害;partial dysautonomia)やβ受容体過敏性(β-receptor supersensitivity)が病態生理として示唆されている.POTSの診断には詳細な病歴調査と神経学的検査を含む理学的検査が必要で, 特にhead-up tilt試験における反応様式は重要である.本稿では, 体位性起立性頻拍症候群の歴史的背景, 臨床的特徴と診断, 治療法について概説する.
著者
内藤 結花 前田 真之 長友 安弘 宇賀神 和久 秋間 悦子 田中 道子 時松 一成 佐々木 忠徳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.142, no.5, pp.527-534, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

Antimicrobial stewardship (AS) intervention strategy is a critical process in promoting appropriate antibiotic use, thus preventing unnecessarily prolonged therapy and reducing antimicrobial resistance (AMR). Although limiting unnecessary carbapenem use by AS intervention is speculated to reduce AMR, there is a lack of specific data on the efficacy of AS team (AST) intervention regarding carbapenem-resistant Pseudomonas aeruginosa (CRPA). Consequently, this study aimed to evaluate the impact of our AS strategy on carbapenem use and CRPA. The AS intervention strategy was launched in July 2017 and consisted of daily audits and feedback on carbapenem use. We evaluated the 4-year prescription trend, including the rate of switching to other antimicrobials, and the rate of CRPA and the days of therapy required prior to and after the beginning of the AST intervention. The rate of switching to narrow-spectrum antibiotics and the discontinuation of carbapenem treatment were significantly higher in the pre-intervention period compared with the post-intervention period. (7.0% vs. 14.5%; p<0.001; 54.1% vs. 50.9%; p=0.027). However, there were no significant differences in the rate of CRPA prior to and after the beginning of the AST intervention. Furthermore, there was no correlation found between consumption and resistance rate (Pearson's r=0.123). Our results suggest that it is extremely important for AST to promote de-escalation and reduce unnecessary use, while the combination of process and outcome indicators other than antimicrobial consumption and resistance rate are required for the evaluation of the AS programs.
著者
長友 麻希子
出版者
同志社女子大学
雑誌
同志社女子大学生活科学 (ISSN:13451391)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.41-47, 2003

Tapioca (Cassava) is the staple food of more than 300 million people in the world. Though Tapioca is utilized in a variety of ways, it is generally known as an Asian sweet in Japan. In the Edo period tapioca was considered a medicine until the government opened the door to the world in the Meiji period. Tapioca had not been introduced as a foodstuff until it was important into Japan from France and the United Sates. But gradually ir turned out to be a substitude food during World War ll. This study explores how the new food-Tapioca was adopted and transmited into Japanese food culture between 1868 and 1945. And it also made clear Tapioca's potential connection with history.
著者
長友 信人 松尾 弘毅
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.325-334, 1968-04

太陽熱を動力源とした低推カロケットを,地球の近傍のミッションに用いる場合は,地球の日かげの部分でエネルギーの供給が停止する.とくに低高度の人工衛星として打ち上げられた太陽熱ロケットが,その速度方向に加速することによって,その軌道を拡大する場合は,日かげに入っている時間が長く,その飛行軌道に日かげの影響があらわれる.ここでは,この影響がもっともよくあらわれるようなケースについて軌道計算し,日かげなしの場合と比較した.すなわち,地球の公転によるかげの一の移動はなく,太陽熱ロケットは太陽と地球を含む面内を飛行し,しかも太陽ロケットの作動は,日かげでは停止し加速されないとする.ミッションとしては,500km高度円軌道から同期円軌道への遷移として,太陽熱ロケットの諸元としてのこのミッションに適した値とし考えられるものを用いた.解析結果を比較すると,日かげのある場合は,ない場合に比べてミッションに要する時間は25%多く,この値はロケットの比推力その他のパラメータの変化の影響をほとんどうけない.日かげなしのとき準円軌道で拡大してくる飛行経路は日かげありの場合,出発直後は比例的に長円となる傾向があるが,ミッション最終段階では,この傾向は鈍化し,そのときの離心率に相当する値はそれほど大きくなく,ここでの軌道修正は容易である.したがってエネルギー的損失も,ほとんど問題にならないくらい小さい.
著者
若山 照彦 岸上 哲士 長友 啓明 大我 政敏 水谷 英二
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は、クローンマウスの研究において念願だったF1以外の卵子からのクローン作出に成功した(Tanabe et al., Reproduction 2017)。最も安く購入できるICR系統の卵子が利用可能となっただけでなく、系統間で卵子の初期化能力を比較することが可能となった。また、核の保存限界を明らかにする研究では、国際宇宙ステーション内で宇宙放射線に長期間曝したフリーズドライ精子であっても顕微授精によって産仔を得ることが可能であり、精子核に対するDNA損傷はわずかであることを初めて証明した(Wakayama S. et al., PNAS 2017)。この成果は主要な全国紙およびNHKなどのテレビで報道されただけでなく、海外でも広く紹介された。またこの研究において、ダメージを受けた精子核は卵子内で修復されていることを明らかにした。糞由来細胞核からのクローンマウス作出の試みでは、安定した核の採取に成功し、卵子内で移植した核のDNA修復が確認されたが(投稿中)、現時点で初期発生には成功していない。一方、活性化した卵子内の核の変化および初期化については、今まで生きたまま観察することは出来なかったが、今回我々は、zFLAPという新技術を開発し、生きたままダメージを与えずに核の変化を観察することに成功した(Ooga & Wakayama PlosOne 2017)。核移植や胚移植のためには、卵子や胚を保護するだけでなく顕微操作において卵子や胚を固定するために透明帯が不可欠である。そこで、人工卵子が作出できた場合のために、人工透明帯の開発を行ったところ、アガロースで作られたカプセルであれば透明帯の代替品となることを明らかにした(Nagatomo et al., Scientific Reports 2017)。