著者
三徳 和子 高橋 俊彦 星 旦二
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-10, 2006

主観的健康感の関連研究から,主観的健康感は死亡率に対し独立した寄与因子であることが指摘されている.そうであるなら死亡率に与える効果の大きさには,死因や性別,年齢および観察期間によって差異はあるのかという疑問が生じる.この問題は主観的健康感の意義を解釈をしたり保健活動への応用を議論する上で重要と思われる.本研究の目的は,主観的健康感と生命予後との関連性について,これまでの研究成果を整理し,今後の研究の方向と課題を提示することである. 主要な結果は以下のとおりである. (1)主観的健康感の低い者のその後の生存妥当性が低いことは,大多数の研究で確認されたが,そのメカニズムに関する詳細な研究報告は見あたらなかった. (2)主観的健康感と死亡との関連性の強さは,男女間で差がないとする報告と男性により強い関連性がみられたとするとする報告とがあった. (3)年齢は多くの研究で潜在的交絡因子として調整され,死亡率との関連性を年齢別に観察した研究は少なかった.いくつかの報告では関連性は高齢者のみではなく中年や若年者年齢層にもみられること,85歳以上では関連が弱いことが示されている. (4)主観的健康感の良否と死因とに関する追跡研究は,主観的健康感の低い者は高い者に比べて心血管疾患やがんによる死亡危険度が有意に高いことを明らかにしている.また最近では,死亡率に与える効果には,死因によって強弱の差があることも示されている. 以上の結果から,主観的健康感はその後の生存とその予測等に関連していることが明らかとなったが,主観的健康感が生命予後に対する予測効果をなぜ持つのかを明らかにすることが今後の課題である.
著者
南部 泰士 佐々木 希 南部 美由紀 佐々木 英行 桐原 優子 月澤 恵子 今野谷 美名子 高橋 俊明
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.76-84, 2011

秋田県南部前期高齢者女性の介護予防基本チェックリストと骨密度の関連を明らかにし,今後の介護予防支援事業における基礎情報の提供を目的に調査を行なった。基本チェックリスト『口腔』の症状がある前期高齢者女性は骨密度が低かった。また,特定高齢者判定基準で『口腔』に該当している前期高齢者女性は,『運動』,『うつ』の生活機能が低下していた。<br> 骨密度は前期高齢者女性の要介護リスクを判断する指標となることから,骨密度の維持および向上を図る,骨粗鬆症検診の受診率を向上させる必要がある。
著者
平野 和隆 梶山 雄太 高橋 俊守 山本 美穂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

栃木・茨城県境八溝地域の山間集落、栃木県那須烏山市大木須地区において木造古民家である長屋門が、農家のどのような土地利用との関連で存在し残されてきたのかを明らかにし、近世から近代への村落構造・農民層の変化を考察することを目的とする。大木須地区、那須烏山市、那珂川流域についての文献史料収集・整理、大木須地区の長屋門所有者13戸のうち11戸に対して、長屋門及び家屋の形状・木材使用状況、建築時期、土地利用、戦後経営史、文書の有無などについて聞き取り調査を行った。八溝地域で盛んであった葉煙草作の経済的優位性が長屋門を構える経済的な余裕を生んだこと、集落内の各戸に十分な林野面積が配分されており自家用材の備蓄林として大きな役割を果たしていたと共に葉煙草作の堆肥にもなっていたこと、大木須地区の立地条件上、木材輸送の拠点であった那珂川まで大木須地区から材を搬出する際の輸送上の困難さがありその搬出の必要性も見られず木材の集落内での使用に傾注できたこと、地域内で高い木造建築技術を有する大工が存在し継承されてきたこと等により、長屋門がこの地区で存在し残されてきたことなどがその理由として挙げられる。
著者
松本 玲子 山口 潔子 布野 修司 高橋 俊也 山根 周 安藤 正雄
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.69, no.582, pp.73-79, 2004

Clarifying the process of urban formation and the form of townhouses in Willemstad(Curacao, Netherland Antillen), this paper discusses the influence and modification of Dutch colonial City planning in Caribbean Region. Willemstad is one of the best preserved Dutch colonial cities in Caribbean region. With numerous historical buildings and houses,Willemstad was registered as UNESCO World Heritage site in 1997. The research project this paper is based on was launched under the title 'Field Research on Origin, Transformation,Conversion and Conservation of Urban Space of Colonial Cities' the major target of which are the Dutch colonial cities. To compare the colonial cities of all over the world is ambitious objective of our project. The Dutch is well known as a developer of high-densed settlements with townhouses. One of major focuses of this paper is what and how the Dutch designed the townhouse in Curacao. The paper is composed by historical analysis of the process of establishment and development of Willemstad and considerations on block formation and typology of townhouses. Analyzing the block formation and form of the house plan,the paper suggests the similar type of townhouse in Netherland might have been introduced in the beginning of establishment of the city.
著者
村上 恵一 花田 光雄 高橋 俊一 宮田 吉郎
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.64, no.718, pp.7-12, 1956-01-01
被引用文献数
1 1 2

The results are summarised as follows:<br>1. The chemical formula of Calcium sulphite was found to be CaSO<sub>2</sub>⋅1/2 H<sub>2</sub>O.<br>2. The heat of oxidation of crystalline and amorphous CaSO<sub>3</sub>⋅1/2 H<sub>2</sub>O are 60.51 kcal/mol and 62.95 kcal/mol respectively.<br>3. Crystalline calcium magnesium sulphite was discovered and its chemical formula was determined to be CaMg(SO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>⋅7H<sub>2</sub>O.<br>4. The dehydration temperature of crystalline and amorphous CaSO<sub>3</sub>⋅1/2 H<sub>2</sub>O are 400°C and 375°C respectively. The compound CaMg(SO<sub>3</sub>)<sub>2</sub>⋅7H<sub>2</sub>O dehydrates stepwise at 110°C and 200°C.<br>5. The calcium sulphite when suspended in water is easely oxidized with air bubbles to good gypsum crystals.
著者
藤田 悠記 高橋 俊介 那須 章人 下井 岳 亀山 祐一 橋詰 良一 伊藤雅夫
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.115-119, 2007-09

ウズラ胚体外培養法を応用し,卵殻を使わず人工容器でのニワトリ胚の発生能について検証した。ニワトリ胚は,白色レグホンを用い,孵卵器内で3日間培養した後,卵の内容物を100mlカップ内に空気透過性のあるテフロン膜を卵型に装着した人工容器に移し,ラップで封をした。再び孵卵器内で孵化までの18日間培養した。人工容器は空気の流通を完全に遮断したもの(Type 1),空気の流通を自由に行わせたもの(Type 2),さらに空気の流通量をある程度人工的に調節可能としたもの (Type 3) の以上3タイプを用いた。また,人工容器に移す際には卵殻粉末あるいは乳酸カルシウムを添加した。人工容器を用い培養した結果,孵化させるまでは至らなかったが,卵殻粉末の添加により孵化直前の20日目まで培養することに成功した。最も好成績であったもので培養16日目に76.0%,18日目に52.0%,20日目に12.0%の生存率が得られた。一方,対照として行った,二黄卵卵殻を代用卵殻に用いた場合は60%が孵化したが,人工容器を用いた場合と同様に培養初期(孵卵6日目)と後期(孵卵16日目)に生存率の低下が認められることから,この2つの時期がニワトリ胚の体外培養において重要な時期であると推察された。The developmental ability of chicken embryos in an artificial vessel without eggshell was investigated using the in vitro quail embryo culture method. After White Leghorn eggs were incubated in an incubator for 3 days, the egg content was transferred into an artificial vessel consisting of a 100-ml cup attached with an egg-shaped air-permeable Teflon membrane and sealed with wrap, followed by incubation in an incubator for 18 days until hatching. Three types of artificial vessels were used : Type 1 with complete blockage of air flow, Type 2 with air flow, and Type 3 with controllable air flow. Eggshell powder or calcium lactate was added when the egg content was transferred to a vessel. Although no hatching was obtained, the eggshell powder addition allowed the culture by day 20, immediately before hatching. In the group with the best outcomes, the viabilities on days 16, 18, and 20 of culture were 76.0%, 52.0%, and 12.0%, respectively. In contrast, in the control group using eggshell containing 2 yolks as surrogate eggshell, 60% of the eggs hatched, but the viability decreased at early (day 6) and late (day 16) time points, similar to the eggs cultured in the artificial vessel. These findings suggested that these 2 time points are important for in vitro culture of chicken embryos.
著者
一ノ瀬 友博 高橋 俊守 川池 芽美
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.123-142, 2002-01-30
被引用文献数
4

1970年代にバイエルン州で初めて作製された生物空間地図は,その後ドイツの自然保護において,必要不可欠な資料として位置づけられ,ドイツ各地で作製されるようになった.地図作製手順には,当初から大きな変更がないものの,具体的な作業方法は大きな変化を遂げた.一般的だったカラー空中写真にかわり,最も重要な基礎資料として赤外カラー空中写真が利用されるようになった.地理情報システムの活用によって,情報はすべてデジタル化され,コンピュータ上で地図が作製されるようになった.本論では,最新の地図作製方法とその応用について紹介するとともに,我が国における生物空間地図を生かした生物多様性保全のあり方について検討した.
著者
齊藤 修 橋本 禅 高橋 俊守
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、里山を対象として、供給サービス(木材、食料)、調整サービス(大気・水循環調整)、文化的サービス(レクリエーション、景観)、基盤サービス(生物生息地)の各生態系サービスを定量評価し、複数の将来シナリオのもとで生態系サービスが今後どう変化しうるかを政策立案者や地域住民に対して定量的・空間的・視覚的に伝え、協働を支援する対話型シナリオ分析ツール開発を行った。
著者
川井 啓市 劉 輝雄 施 壽全 楊 國郷 翁 昭紋 林 肇堂 王 正一 王 徳宏 渡辺 能行 山口 俊晴 土橋 康成 高橋 俊雄 CHUAN Shin-Shou YANG Kuo-Ching MIN Weng-Chao LIN Jaw-Town WANG Cheng-Yi WANG Teh-Hong LIU Hui-Hsiung 青池 晟
出版者
京都府立医科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

十二指腸潰瘍が胃潰瘍よりも多く,かつ胃瘍が少ない沖繩県に隣接する台湾でも十二指潰腸瘍が胃潰瘍より多いといわれており,台湾における胃癌や大腸癌の実態を明かにし,その発生要因を検討するのが本研究の目的である。記述疫学的に死亡統計をみてみると,台湾では,男で胃癌の漸減傾向,直腸癌と結腸癌の増加傾向が,女で胃癌の減少傾向,結腸癌の漸減傾向,直腸癌の漸増傾向がみられたのに対して,日本では男で台湾と同様の推移が,女で胃癌が減少傾向,直腸癌が漸減傾向,結腸癌が増加傾向を示していた。また,日本では結腸癌の増加傾向が著しいが,台湾では過去15年間に一貫して結腸癌の方が直腸癌よりも高率であり,いわゆる欧米的なパターンを呈していたことが強調される。臨床統計として台湾大学医学院内科において1992年1年間に診断したすべての胃癌患者は男52例,女30例,合計82例であった。同様に大腸癌は男22例,女18例,合計40例であった。大腸癌の部位は結腸癌23例(男11例,女12例),直腸癌17例(男11例,女6例)と,男では結腸癌と直腸癌は同数であったが,女と合計では結腸癌の方が多かった。1990年1年間の京都府立医大・第一外学教室で新たに診療したすべての胃癌患者は男73例,女38例,合計111例であった。同様に大腸癌は男20例,女13例,合計33例であった。その部位は結腸癌15例(男8例,女7例),直腸癌18例(男12例,女6例)で,直腸癌の方が多かった。台湾におけるこれらの胃癌の組織型をみてみると,well differentiated adenocarcinoma10%,moderate differentiated adenocarcinoma15%,poorly differentiated adenocarcinoma45%,signet ring cell carcioma11%,その他9%不明11%であった。同様に台湾の大腸癌の組織型は,well differentiated adenocarcinoma 5%,moderate differentiated adenocarcinoma48%,poorly differentiated adenocarcinoma3%,詳細不明のadenocarcinoma38%,その他8%であった。このような組織型はわが国における実験と大差なかった。1991年12月より台湾大学医学院内科他3施設において内視鏡検査受診者に対するライフスタイルなどの調査を開始した。1993年1月末現在で上部消化管内視鏡検査受診者7856人と大腸内視鏡検査受診者589人分の資料を収集した。最終的に胃癌患者は約100例,大腸癌患者は約50例になる予定である。このうち,既に整理の終わった胃癌患者30例と大腸癌患者24例の資料を用いて分析疫学の症例・対照研究の手法で台湾における胃癌と大腸癌のリスク・ファクターの検討を行った。解析に用いた胃癌症例は男18例,女12例,合計30例である。対照は上部消化管内視鏡検査で著変なかった男47例,女156例,合計203例である。これらの対象の既往歴,癌の家族歴,飲酒,喫煙及び食餌習慣について性・年齢階級の絞絡を補正するためにMantel-Haenzel法によって各要因単独の暴露ありのオッズ比を求めた。その結果,統計学的に10%以上の有意水準で有意であった要因について,相互の絞絡を補正するために多変量解析のunconditional logistic regression analysisを用いて解析した。高血圧の既往があることとのオッズ比は0.02であり,香辛料を週に2-3回以上摂取することのオッズ比は0.07でともに有意に胃癌のリスを下げていた。同様に大腸癌症例男13例,女11例,合計24例と大腸内視鏡検査で著変なかった対照の男47例,女60例,合計107例について単独の要因について解析した。牛肉を週を1-2回以上摂取することは有意に大腸癌のリスクを0.30に下げ,塩からい食品を毎日摂取することは有意に大腸癌のリスク3.52倍高めていた。なお,大腸癌については少数例であり多変量解析は行えなかった。この結果の評価については,最終的に収集できた全胃癌症例と大腸癌症例を用いて行う予定である。また,背景の遺伝子の解析としてPGC RFLPパターンは台湾の胃潰瘍では前庭部と他部位で異なっていた。
著者
吉開 範章 栗野 俊一 飯塚 信夫 神田 大彰 高橋 俊雄
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2011-GN-79, no.7, pp.1-6, 2011-03-10

ウイルスに感染した状況は、緊急 (パニック) 状態の一種と考えられ、心理学の対象となる領域であるが、これまでに報告された例はない。また、情報セキュリティ分野において、個人が対策する意思があっても、対策行動はとらない等の現象が知られており、個人の振る舞いや意思決定などに関する研究が始まっている。今回、感染 PC を有するユーザーの情報セキュリティに関する意識を、集合知をベースとする集団仮想ゲームを使って実験的に調査し、ウイルス対策への協調行動を誘発させる方策についてにアンケート結果も交えて検討したので、報告する。
著者
高橋 俊守 加藤 和弘 上條 隆志
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態學會誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.167-175, 2011-07-30
被引用文献数
2

時系列的に観測した衛星画像を用いて、三宅島2000年噴火後の植生の変遷をモニタリングした。1994年から2009年にかけて、JERS-1/0PS及びTerra/ASTERによって観測された16時期の画像を用い、噴火前1時期および噴火直後2年まで、噴火後3~5年、噴火後6~9年の3時期分のNDVI画像に集成した。これらのNDVI画像をもとに、ISODATAクラスタリング法により教師無し分類を行った結果、NDVIの変遷パターンを分類することができた。分類された画像では、噴火後もNDVIの値が相対的に高く、噴火に伴う植生被害が相対的に少ない地域が認められた。これらの地域は樹林地を示しているが、NDVI値は徐々に減少する傾向が続いていた。一方で、噴火後にNDVI値が著しく減少し、その後増加に転じている、草地を示すグループが認められた。NDVI値の変化が植生のどのような変化に対応しているか検証するため、三宅島南西部の阿古地区において、噴火後に継続して実施されている11地点の植生調査の結果をもとに対応関係を評価した。植生構造を高木層、亜高木層、低木層、草本層に分け、それぞれの階層の植被率を合計した値とNDVIとの相関分析を行った。この結果、それぞれの階層の植被率を合計した値とNDVIにはいずれの時期においても有意な相関関係が認められた。ただし、それぞれの階層の植被率とNDVIの相関関係は、植生変遷の過程とともに変化し、一定でなかった。
著者
山本 美穂 高橋 俊守 大貫 いさ子
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

流域圏という範域、およそ150年間という時間タームを対象として、農村の木造古民家という具体的事物を材料に近代農山村遺産の再評価を行った。単なる事例研究の域にとどまらず、具体的な時間軸と空間軸の中に事例を位置づけて評価する歴史地理学的視点を通して、近世を射程に入れた地域研究の課題と重要性がより明確となった。