著者
髙橋 摩理 大岡 貴史 内海 明美 向井 美惠
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-42, 2012-03-25 (Released:2015-03-15)
参考文献数
17
被引用文献数
3

自閉症スペクトラム(以下ASD)児の摂食状況の調査と摂食・嚥下機能の評価を行い,療育場面および家庭における食事の問題に対する効果的な医療的支援方法を検討することを目的に本研究を行った。地域療育センター摂食・嚥下外来を受診したASD 25 名を対象に,主訴,摂食・嚥下機能評価,指導内容と経過等の検討を行った。主訴は偏食,丸飲み,溜め込みが多く,年齢により差がみられた。低年齢では口腔機能の未熟さや食具操作の未熟さが食べ方の問題として表出し,高年齢ではASD のこだわりなどの特性が偏食として問題になったものと思われる。一方,主訴と摂食・嚥下機能の問題が一致しないケースもみられ,保護者が小児の摂食・嚥下機能を正しく理解していない様子も窺われた。また,食べ方が口腔機能に影響を与えている様子が窺われ,ASD の食事の問題に対応するにあたっては,摂食・嚥下機能評価を行い,それに基づき支援方法を検討する必要性が示唆された。指導が継続しているケースは発達レベルが低く,自閉症の特性が強い傾向があり,全体的な発達を促す対応が重要と思われた。
著者
尾髙 健夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.10-15, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
10

便秘は,量的にも質的にも生理的排便が障害され,「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義される.慢性便秘症は,その原因から器質性及び機能性に,症状から排便減少型及び排便困難型に分類される.機能性便秘の病態は多様であり,大腸通過正常型(normal transit constipation:NTC),大腸通過遅延型(slow transit constipation:STC)ならびに便排出障害の3タイプに分けられる.慢性便秘症の原因・症状・病態を理解することで,便秘症診療の質を高めることができる.
著者
髙橋 文子
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.313-326, 2017 (Released:2019-09-03)
参考文献数
18

小学生及び幼児を対象に,美術作品を記憶して描くことによる教育的効果を,形状ストックという観点から検討した。美術作品を見た後,作品を見ないで描く記憶画と,作品を見ながら描く観察画の2枚のスケッチを描写するプログラムを,4歳~12歳児を対象に行った。形状ストックという事物レベルで描かれた物を比較することで,児童の認識,感受の様子をリアルに検討することが可能であった。記憶スケッチには,児童のもつ絵画意識が強く反映されていた。記憶スケッチプログラムは,形や色,印象等の感覚の精度を高め,より質の高い認識や感受を生み出すことを確認した。
著者
大久保 淳一 長谷川 翔一 髙橋 梓 竹内 頌子 若杉 哲郎 鈴木 秀明
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.277-282, 2019 (Released:2019-04-13)
参考文献数
15
被引用文献数
1

当科における過去15年間の咽頭・頸部食道義歯異物症例について検討した。症例は26例で年齢中央値は79.5歳,クラスプ介在部位最深部は食道入口部〜頸部食道11例,下咽頭10例,中咽頭4例,上咽頭1例であった。全身麻酔を要した例は14例,気管切開術を要した例が4例,頸部外切開を要した例が1例,死亡例が1例あった。全身麻酔症例は,食道入口部〜頸部食道介在義歯11例中9例(82%),U型義歯14例中9例(64%)であった。気管切開症例の義歯は全てU型で,この中には死亡した1例が含まれていた。頸部外切開例ではU型義歯が食道入口部に介在していた。以上より,介在部位が食道入口部〜頸部食道の場合やU型義歯では重症化しやすいと考えられた。
著者
田中 博基 木村 泰己 松縄 哲明 三本木 省次 髙田 雅美 木村 欣司 中村 佳正
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:21888833)
巻号頁・発行日
vol.2020-MPS-129, no.3, pp.1-4, 2020-07-20

半導体製造において,リソグラフィシミュレーションモデルが重要である.このモデルを構築する際,大規模密行列の部分特異値分解が必要となる.部分特異値分解のための方法として,AIRLB(augmented implicitly restarted Lanczos bidiagonalization)アルゴリズムがある.本稿では,大規模密行列の部分特異値分解のために,AIRLB アルゴリズムの改良を行う.改良法では,計算途中で必要となる小さな行列の特異値分解のために,QR アルゴリズムではなく,OQDS(orthogonal-qd-with-shift)アルゴリズムを適用する.これにより,高精度な特異値を持つ特異値分解が行われる.数値実験の結果,既存の QR アルゴリズムを用いる AIRLB アルゴリズムと比較して,提案した改良が有効に機能していることが確認できる.精密な議論を行うため, 大規模疎行列と大規模密行列の両方を実験の対象としている.
著者
竹内 義真 紙本 篤 古地 美佳 関 啓介 髙見澤 俊 宮崎 真至
出版者
日本歯科医学教育学会
雑誌
日本歯科医学教育学会雑誌 (ISSN:09145133)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.42-49, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
7

抄録 日本大学歯学部付属歯科病院 (以下, 当院) は, 島しょ地区の各診療所 (以下, 離島歯科研修施設とする) を研修協力施設に設定し, 離島歯科研修を地域歯科医療分野の歯科医師臨床研修プログラムに導入している. 各離島歯科研修施設では, 当院の指導歯科医および研修歯科医が2人1組を編成して, 島民のニーズに応じた地域歯科保健や歯科医療を目的に1週間の研修を実施している. 研修歯科医の研修では, 離島歯科研修終了後にポートフォリオ作成の一環として研修体験シート, 総括的自己評価シート, 研修歯科医診療・介補記録, 離島歯科診療における自己評価チェックリストを作成する. また, 指導歯科医も研修歯科医に対する評価チェックシートを作成する. 離島歯科研修が歯科医師臨床研修に有益であることは, 2007年に日本歯科医学教育学会雑誌で報告している. 今回は, 2009年から2018年の研修歯科医138名の既存データをもとに, 離島歯科診療における診療内容, 研修歯科医の自己評価と指導歯科医の評価の比較および研修体験シートと総括的自己評価シートの自由記載を, テキストマイニングツールにてテキストマイニングを行い分析した. その結果, 離島歯科研修は研修歯科医が地域社会における歯科の役割を理解し, 医療人としての人格を育てる機会となり, 生涯研修の第一歩となることが示唆された.
著者
髙森 八四郎
出版者
関西大学出版部
巻号頁・発行日
1995-02-04

一 紛争解決と契約………………………………………………………… 一二 示談……………………………………………………………………… 一四三 和解と錯誤……………………………………………………………… 二八四 和解の基礎の錯誤……………………………………………………… 三九五 損害賠償と示談の拘束力……………………………………………… 五九六 示談における前提合意と錯誤………………………………………… 九三七 示談契約における免除の効力………………………………………… 一二七八 示談と共同親権………………………………………………………… 一六九九 和解(示談)と解除の遡及効………………………………………… 一八三附録一 和解………………………………………………………………… 一九二附録二 裁判上の和解の成立を前提とする裁判外の和解の効力……… 二〇六附録三 債権の効力………………………………………………………… 二一〇
著者
髙橋 悟
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.117-120, 2014 (Released:2014-12-25)
参考文献数
20

Rett症候群は, 主に女児に発症する神経発達障害である. その診断は, 臨床症状に基づいて行われ, 回復期や安定期が後続する神経症状の退行があることを必要要件とする. 病因遺伝子は, メチル化DNAに結合して遺伝子の転写を制御するmethyl-CpG-binding protein 2 (MECP2) をコードする. Rett症候群に類似するが異なった臨床経過を示すものを非典型的Rett症候群とよび, “早期発症てんかん型” や “先天型” が知られている. 前者の病因遺伝子は, 樹状突起棘に局在するリン酸化酵素cyclin-dependent kinase-like 5 (CDKL5) をコードしている. 後者の病因遺伝子は, 終脳の発生に重要な転写因子forkhead box G1 (FOXG1) をコードしている. このように非典型的Rett症候群の病態は, 典型的Rett症候群とは異なることを理解する必要がある.
著者
佐藤 綱祐 西田 惇 髙鳥 光 鈴木 健嗣
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.71-80, 2017 (Released:2017-03-31)
参考文献数
17
被引用文献数
2

In this research we propose a wearable suit for embodiment transformation, which virtually realizes a child's experience while preserving the user's interactions and perceptions. The embodiment transformation suit consists of a viewpoint translator and passive hand exoskeletons. The viewpoint translator simulates a child's point of view (POV) by using a pan-tilt stereo camera attached at the waist position and a head mounted display (HMD). The pan-tilt mechanism follows the user's head behavior. The passive hand exoskeletons simulate a child's tiny grasping motion by using multiple quadric crank mechanisms and a child-size rubber hand. Virtualized child's embodiment through our own body will provide opportunities to feel and understand a child's perception and recognition, to evaluate products and spaces such as hospitals, public facilities and homes from the aspect of universal design. This paper describes the system design and implementation of the viewpoint translator and the exoskeletons, and assessment of them based on user's feedback in exhibitions.
著者
ケビンサニー 岡﨑 三郎 髙桑 脩 松永 久生 船越 裕亮 沖田 耕一
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
M&M材料力学カンファレンス 2019 (ISSN:24242845)
巻号頁・発行日
pp.OS0319, 2019 (Released:2020-05-25)

Tension-compression fatigue tests were conducted on non-charged and hydrogen-charged additively manufactured Ni-based superalloy 718 to investigate the effect of solute hydrogen on the fatigue strength properties of the material. The surface condition of the specimens was either as-built or mechanically-polished, aiming to clarify the effect of process-induced defects and roughness on the property. Fractographic observations using a scanning electron microscope manifested that process-induced defects existed at the fracture origin of as-built specimens, whereas such defects were not observed in the mechanically-polished specimens. However, both the fatigue life and the fatigue limit of the specimens were neither affected by surface condition nor by hydrogen. The results revealed that (1) the defects were not detrimental to the fatigue strength of the material due to its large defect-size tolerance accounted to its coarse-grained microstructure, based on comparison with previous studies conducted on forged Alloy 718, and (2) hydrogen caused no remarkable influence on both crack growth rate and crack growth threshold of the material.
著者
上杉 雄大 伊原 良明 野末 真司 林 皓太 髙橋 浩二
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.70-74, 2020-06-30 (Released:2020-07-23)
参考文献数
12

緒言:今回,進行性核上性麻痺(PSP)の既往を有し,食道癌放射線治療後の摂食嚥下障害によって全量経管栄養管理となった患者が,複合的な嚥下訓練が著効し,全量経口栄養摂取可能となった症例を経験したので報告する。 症例:患者;76歳男性。既往歴;PSP。現病歴;2016年4月,胸部食道癌に対し,陽子線化学療法を実施。2016年9月,胸部食道の狭窄を認め,内視鏡下バルーン拡張を三度施行するも,食道裂創を認めた。胸部食道の狭窄は残存。以降誤嚥性肺炎を繰り返したため,嚥下訓練目的より当科紹介受診。現症;体重:52.7 kg,modified Rankin Scale 4,舌振戦あり,栄養摂取状況:藤島の嚥下Lv1。VF検査よりかき込み食い,口腔期の運動障害,上部食道狭窄を認めたが,咽頭期には大きな問題は認められなかった。当科診断;食道癌放射線治療後,PSPによる摂食嚥下障害。 経過:上記診断の下,口腔衛生指導,頸部ストレッチ,咀嚼訓練と並行し,嚥下調整食学会分類2013の1jより直接訓練開始した。食事ペースに注意するよう指導し,段階的に食形態の調整を続け,藤島の嚥下Lvは7まで改善した。 考察:本症例における誤嚥性肺炎の原因として,ペーシング障害,口腔期の運動障害,上部食道狭窄が原因と考えられる。各原因に対し,複合的な摂食指導・嚥下訓練を継続したことから,藤島の嚥下Lvが1から7まで改善したと考える。
著者
佐保 美奈子 入江 真行 古山 美穂 山田 加奈子 髙 知恵 島田 憲次 松本 富美 位田 忍 小杉 恵 岡本 伸彦 石見 和世 松尾 規左 鶴丸 礼子
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

総排泄腔遺残症の思春期女性の学業・就労・恋愛・結婚への支援について研究した。①性の多様性と理解 性分化疾患については、医療者も対応に苦慮しているのが実状で、社会全体で理解促進が必要である。②障がい者の就業支援 排泄障害を持つほとんどの者が上司や同僚からの配慮を必要としている。職場・社会全体の理解促進が必要である。③障がいをもつ女性のエンパワメント 総排泄腔遺残症の女性とパートナーのもつ思いやり・やさしさ・強さなどを社会に発信していきたい。研究成果物として、『膣拡張用樹脂製ダイレーター』『総排泄腔遺残症ってこんな病気』『総排泄腔遺残症の就労支援』『DSDの子どもをもつご家族の皆様へ』などがある。
著者
鈴木 和男 髙橋 啓 岡崎 富男 小林 茂人 Jayne David Merkel Peter A.
出版者
帝京大学 アジア国際感染症制御研究所
雑誌
ADC Letter for Infectious Disease Control (ISSN:21895171)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.39-49, 2020

川崎富作先生が、2020年 6 月 5 日に95歳で逝去されました。 ADC 研と関係の深い 6 人の先生方に川崎先生を偲んで、想い出の文章やお手紙をいただきましたので、以下に掲載いたします。 また、川崎富作先生の偉業と死亡についての記事がThe Washington Post: June 14, 2020 にも掲載されました。
著者
藤田 吾郎 大髙 愛子 浦島 崇 中村 高良 中山 恭秀 小林 一成 安保 雅博
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11724, (Released:2020-05-21)
参考文献数
36

【目的】先天性心疾患術後遠隔期の学童期から青年期の患者と健常者の健康関連QOL(以下,HRQOL)を比較し,HRQOL と運動耐容能や身体活動状況との関係を検討する。【方法】対象は先天性心疾患患者22 例と健常者22 例。HRQOL,運動耐容能,身体活動水準,運動習慣を評価し,両群のHRQOL の比較と,各指標との関連を分析した。【結果】HRQOL 尺度のうち,先天性心疾患群の身体的幸福感(以下,PW)が有意に低かった(p <0.05)。先天性心疾患群において,PW と嫌気性代謝閾値の間に相関を認めたが(rs = 0.472,p <0.05),最高酸素摂取量にはなかった。また身体活動水準とPW の間には相関があり(rs = 0.504,p <0.05),運動習慣のある先天性心疾患患者は習慣がない患者に比べてPW が高かった(p < 0.05)。【結論】先天性心疾患患者のHRQOL は嫌気性代謝閾値レベルの運動耐容能や身体活動状況と関連がある。
著者
髙橋 隆博
出版者
関西大学出版部
巻号頁・発行日
2010-03-31