著者
髙橋 史子
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.563-582, 2019-03-29

This article examines the national identity of Japan, by using a mixed method approach: a comparative study of a statistical analysis of the International Social Survey Program and a qualitative analysis of data obtained from interviews with public school teachers concerning ethnic and cultural diversity. The study finds that (i) “Japanese” is imagined as an ethnic and cultural sense of belonging, (ii) however, it is not imagined and shared in a civic sense, as national identities in the other countries are, (iii) the school teachers who teach the immigrant children express three different types of national identities : civic, ethnic, and cultural, and (iv) most teachers expect the immigrant children to maintain the ethnic and cultural identities associated with their (or their parents’) home countries. Based on the findings, the article discusses the role of schools and teachers in a multicultural society, and whether respecting ethnic and cultural diversity promotes or hinders the immigrant children’s equal participation in the host society, particularly within the social context where the ethnic and cultural national identities are widely shared, but the civic national identity is not. In addition, the author argues that within an ethnically and culturally diverse context, school is a place where the traditional ethnic Japanese national identity is challenged and reconstructed, and a civic Japanese national identity (which may enable the children to have a “hyphenated Japanese” identity) emerges.
著者
浦 佑大 高井 秀明 平山 浩輔 髙橋 流星
出版者
日本体育大学
雑誌
日本体育大学紀要 (ISSN:02850613)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.3013-3020, 2020

Among the goal setting techniques in mental training, the mandala chart is often used as a tool to “visualize” the elements necessary to achieve the goal. However, there are not many studies on the analysis method and utilization method of mandala chart. The purpose of this study was to examine the analysis method and utilization method of the mandala chart. The subjects were female softball players at University A (N=47) and one coach belonging to that team. We conducted quantitative text analysis using KH Coder on the responses obtained from the players and managers. As a result, we were able to confirm the points that the current team places importance to achieve the goal. In addition, it was possible to confirm the degree of sharing of thinking between players and players and between players and coaches.
著者
髙柳 春希
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

要約 ゆざわジオパークの川原毛地獄の噴気孔付近にはヤマタヌキラン (Carex angustisquama) が生息し,特有の豪雪帯にはユキツバキ (Camellia rusticana) が生息する.これに対し「二種にとりそこが好ましい環境だからそこに生息する」という説明がよくなされるが,過去のいくつかの報告と照らし合わせながら考えてみると,二種の分布がその環境にのみ制限される理由についてうまく説明できておらず問題がある.本発表では,二種の分布が制限される理由を,ヤマタヌキランとタヌキラン (Carex podogyna),ユキツバキとヤブツバキ (Camellia japonica) といった同属近縁種間で引き起こされる繁殖干渉によるものと位置付け,その内容を説くとともに,学術的な信憑性を重んずるジオパークのガイド案内の難しさについても考えていく.概要 豊富な地熱や雪を有するゆざわジオパークでは,ジオ多様性の高さから,多様な生物が生息している.例えば,地熱および雪・天水等の影響で生じる川原毛地獄の噴気孔は,噴気ガスに含まれる硫化水素ガスにより,多くの動植物の生息を妨げる一方,希少種ヤマタヌキラン (C. angustisquama) を優占的に生息させる.また,ゆざわジオパークの豪雪は,雪圧による枝折れの少ないユキツバキ (C. rusticana) を生息させる.噴気孔付近など酸性の高い土壌でしかみられないヤマタヌキラン (辻村1982),日本海側の雪が降る地域でしかみられないユキツバキ (酒井1977) は,いわば,その地域の特色を語る上で重要な存在と言える. 一方で,劣悪と考えられる環境に二種が生息する理由を,「その環境が,二種にとっては好ましい環境だから」あるいは,「二種の生育がその環境に対してのみ適しているから」と説明する様子が散見されるが,果たしてこういった説明は正しいのだろうか.誤りや説明の不足する部分はないだろうか.確かに,二種がその地域のみに生息する様子を見ると,あたかもその地域が二種の生育に適した地域のように見える.しかし,ヤマタヌキランを畑の土で育てたところよく育つという報告 (湯沢市立須川中学校2011) や,ユキツバキが太平洋側の植物園で育成されている事例 (例えば,小石川植物園2019) を鑑みると,少なくとも人工的におかれた環境下においては,二種にとって,噴気孔や豪雪の存在は必ずしも必要ないように考えられる.湯沢市立須川中学校 (2011) が行った川原毛地獄におけるヤマタヌキランの生育調査によると,噴気孔から遠く,かつ土壌pHが中性に近くなるほどヤマタヌキランの生育が旺盛になると示唆されている.すなわち,噴気孔に由来する土壌の酸性化はヤマタヌキランの生育に対して良い影響ではなく悪影響を及ぼすと言える.このことから,噴気孔はヤマタヌキランに悪影響を及ぼすと言えるし,雪崩を引き起こすような豪雪もユキツバキにとってけっして好適なものとは言い難いだろう.以上の観点を踏まえ,二種はこれら悪影響を上回るような周囲からの悪影響を被っているためにそこでの生息を余儀なくされているのだと判断した.二種の分布はある要因によって不適な環境に追いやられているのだ. 二種の分布が劣悪な環境に制限される理由を,ユキツバキと太平洋側の陸地に生息するヤブツバキ (C. japonica,酒井1977),ないしは,ヤマタヌキランと広域分布種タヌキラン (C. podogyna,藤原1997) との強い負の種間相互作用,特に繁殖干渉 (高倉・西田2018) により説明できると考えた.本発表では,繁殖干渉の概念を説くとともに,学術的な信憑性を重んずるジオパークのガイド案内の難しさについても考えていく.引用文献藤原陸夫 (1997) 秋田県植物分布図.秋田県環境と文化のむら協会.小石川植物園 (2019) 花ごよみ:ツバキ園.URL: https://www.bg.s.u-tokyo.ac.jp/koishikawa/koyomi/camellia.html (2019年2月1日アクセス)酒井 昭 (1977) 植物の積雪に対する適応. 低温科學. 生物篇34: 47-76.高倉耕一・西田隆義 (2018) 繁殖干渉:理論と実態.名古屋大学出版会.辻村東國 (1982) 硫気孔原植物ヤマタヌキランの生態学的研究: I. コロニー形成. 日本生態学会誌 32(2): 213-218.湯沢市立須川中学校 川原毛地獄自然観察クラブ (2011) ジオサイト川原毛地獄の植生について.平成23年度斎藤憲三奨励賞金賞 (秋田県最優秀賞) 受賞報告書.
著者
髙橋 貴之
巻号頁・発行日
2011-09-27

名古屋大学博士学位論文 学位の種類:博士(経済学) (課程) 学位授与年月日:平成23年9月27日
著者
有本 梓 伊藤 絵梨子 白谷 佳恵 田髙 悦子
出版者
一般社団法人 日本地域看護学会
雑誌
日本地域看護学会誌 (ISSN:13469657)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.21-32, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
43

目的:地区組織基盤の世代間交流プログラムを開発し,1年後の高齢者の健康ならびにソーシャルキャピタル(SC)への評価を行い,今後の地域づくりにおける示唆を得る.方法:2015年2月~2018年3月にA市2地区で高齢者ボランティア(参加群)を対象に,園芸活動を中心とする世代間交流プログラムを実施した.世代間交流の不足,フレイルの地域の問題解決のために,住民・地区組織・自治体・大学などがアクションリサーチを展開した.定量的評価として,基本属性,健康指標(握力等),SC(地域コミットメント等)についてベースラインと1年後に測定し,地域在住高齢者(非参加群)と比較した.定性的評価として,フォーカスグループディスカッション(FGD)を実施し質的に分析した.結果:参加群(n=36)は72.6±5.6歳,非参加群(n=36)は74.7±4.6歳,両群ともに男性23人(63.9%)であった.参加群は非参加群に比べ,握力の改善傾向がみられた.非参加群では地域コミットメントが有意に低下したのに対し,参加群では維持されていた(p<0.05).FGDでは,【子どもたちと関わり合える喜び】【経験の伝承による子どもの育成】【内省による人生の価値づけ】【地域の人とのつながりの拡大】等が抽出された.考察:地区組織基盤の世代間交流プログラムにより,高齢者の健康およびSCに効果がもたらされる可能性が示唆された.
著者
髙野 宜秀
出版者
法政大学大学院 国際日本学インスティテュート専攻委員会
雑誌
国際日本学論叢 = 国際日本学論叢 (ISSN:13491954)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-38, 2013-03-08

This paper considers the Iwamatsu Tsuneie clan trend by comparing and examining Taiheiki and historical records. In the conventional history, it was the principal axis to research of the capability of the politics and the military affairs of a Nitta Yoshisada individual, the Southern Dynasty, meaning, etc.Moreover, in Nitta clan research in Taiheiki, it was the mainstream to consider Yoshisada's person image which led comparison with other generals. Then, I would like to clarify the Iwamatsu clan image in the view to the Iwamatsu Tsuneie clan of the Tiheiki author, or Taiheiki by performing contrast of Taiheiki and historical records.The ancient documents of houses, etc. are used for historical records. I utilize Taiheiki,the Seigenin-bon made old also in Taiheiki.A prologue shows way return of a previous work, the meaning of its research, a viewpoint, and a measure plan.This paper, I focus on the influential branch, Iwamatsu. Although the lwamatsu were not important figures in Taiheiki, I have considered what kind of activity there actually was using the historical records related to lwamatsu Tsuneie and Iwamatsu Tsunemasa. As a result, although Iwamatsu branch was represented by only one general in Taiheiki, it is shown clearly in fact that two had participated at the level of general class in the Kamakura attack.In the last chapter, I described the result and subject of this paper and the view of future research.
著者
髙木 明
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.219-224, 2019

<p>先天性重度難聴に対する人工内耳の手術年齢は日本では2014年より1歳以上とされているが世界的にはますます低年齢化が進んでいる。低年齢化は生後の脳の発達の見地から望ましいものの円滑な音声言語獲得には術後の母子への適切な介入が必須である。欧米では乳幼児難聴の専門職(Audiologist)が保護者への指導,児への介入を実施し,特に豪州では就学までの適切な介入により大多数が通常校への進学が可能となっている。我が国おいては乳幼児難聴に適切に対応できる専門家は極めて少数である。多くは聾学校幼稚部に在籍する。そして通常校に進級しても中学で聾学校に戻る児が多い。日本の乳幼児難聴への取り組みが今後は医療のみならず,保健・福祉,教育と連携して行われ,かつ,専門家の育成と実践の場の整備が急務であることを述べる。</p>
著者
髙山 耕二 原 裕 石井 大介 柳田 大輝 冨永 輝 飯盛 葵 松元 里志 片平 清美 大島 一郎 赤井 克己 中西 良孝
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学農学部農場研究報告 = Bulletin of the Experimental Farm Faculty of Agriculture, Kagoshima University (ISSN:03860132)
巻号頁・発行日
no.39, pp.7-10, 2018-03

肥育牛舎におけるイノシシ害防除法の確立に向けた基礎的知見を得ることを目的とし, 嗅覚刺激として市販のオオカミ尿(以下, 尿) を野生イノシシに提示し, その効果を調べた. 2012年12月に野生イノシシの誘引餌として市販の濃厚飼料を置いた誘引場所(6.0m2) の入口に, 1) 容器および尿のいずれも設置しない(設置前), 2) 容器のみを吊るす(空容器) および3) 容器に尿を入れて吊るす(容器+尿) の3つの処理を行った. オオカミの1日平均侵入頭数は, 設置前で70頭/日, 空容器で50頭/日および容器+尿で67頭/日となり, 処理間差はみられなかった. 空容器では, それに野生イノシシが強い警戒心を示し, 鼻先を使って探索する状況がみられた.しかしながら, 通過時間には3処理間で有意差が認められなかった. また, 容器+尿に対して, 野生イノシシが忌避する状況はみられなかった.以上より, 市販のオオカミ尿に対して, イノシシは忌避しないことが示された.
著者
髙島 千鶴
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.169, 2015 (Released:2015-09-03)

温泉成鉄質沈殿物は先カンブリア紀に形成された縞状鉄鉱層(BIF)と組成的・組織的に非常に類似しているため,BIFのモダンアナログとしてのポテンシャルが高い.入之波温泉の鉄質沈殿物に見られる縞状組織は炭酸塩鉱物の基質と上方に向かって枝分かれしたフィラメント状鉄水酸化物で構成されている.鉄質沈殿物から中性環境で生息する鉄酸化細菌や他の生育するために溶存酸素が必要な独立栄養化学合成細菌が検出された.おそらく,これらの微生物群集の競争により縞状組織が発達したと考えられる.奥々八九郎温泉の鉄質沈殿物にも縞状組織が認められ,鉄酸化細菌とシアノバクテリアが検出された.奥々八九郎温泉水には溶存酸素を全く含んでおらず,おそらく奥々八九郎温泉の鉄質沈殿物は,シアノバクテリアの光合成により発生した酸素を沈殿物表面で鉄酸化細菌が利用することにより,沈殿したと考えられる.
著者
髙尾 耕平 北原 あゆみ 森岡 研介 高崎 恭輔 大工谷 新一
出版者
関西理学療法学会
雑誌
関西理学療法 (ISSN:13469606)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.73-76, 2013 (Released:2013-12-28)
参考文献数
4

The purpose of this study was to examine the influence of a knee and ankle foot orthosis (KAFO) on normal gait. The subjects were 9 healthy males with a mean age of 23.2 ± 1.1 (range 20-31) years. Alterations in the angles of the trunk, hip, knee, and ankle were examined during walking with and without a KAFO using a three-dimensional motion analysis system (UM-CAT II). From the results, three patterns were defined, all of which could be considered types of compensation for the limitation of motion caused by KAFO.
著者
石原 健吾 髙石 鉄雄 伊藤 廉子 澤田 祐子 辻 沙奈恵 森友 理絵 脊山 洋右
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.71-77, 2012-02-15 (Released:2013-09-30)
参考文献数
8

This study compares the physiological work load between two ascending patterns, single-step (SS) and double-step (DS), when climbing a public staircase at the two different climbing rates, controlled speed (105steps/min) and free speed. The SS pattern involved climbing one step at a time, while the DS pattern involved climbing two steps in a single stride. Thirteen female subjects climbed a typical 7-storey building, giving a total of 168 steps and vertical movement of 27.7 m. The results for perceived exertion (RPE), blood lactate level, oxygen consumption and muscle EMG activity were significantly higher (p < 0.05) with the DS than SS pattern at a controlled speed. The results also showed that the ascending speed, heart rate, blood lactate level, respiratory quotient (RQ) and RPE were significantly higher (p < 0.05) with the DS than SS pattern at a free speed. These results clearly indicate the higher physical workload involved with the DS than SS pattern at both free and controlled speeds.
著者
髙橋 治男
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.33-39, 2018-01-31 (Released:2018-02-27)
参考文献数
42

1. マイコトキシン汚染玄米粒では侵入菌糸とマイコトキシンの分布は,ほぼ一致し,主として,胚芽部付近に集中した.汚染カビは胚芽部付近に生じる空隙で増殖した.マイコトキシンは精白過程で糠区分に除去されたが,汚染が進むと完全に除去されず,白米区分に残存した.2. 南西諸島のサトウキビ畑にはAspergillus parasiticus,A. nomius,A. flavusの多様なアフラトキシン産生菌が生息した.分離株の分子生物学的な解析はA. parasiticusとA. nomiusがタイプ種とは系統的に異なり,サトウキビと特異的な関係にあることを示した.