著者
野村 由美子 野田 清仁 大橋 祐介 鹿野 真弓
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第48回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.S5-2, 2021 (Released:2021-08-12)

感染症予防ワクチンは、免疫反応の惹起を介して有効性を発揮する特徴があり、通常の医薬品を対象とした非臨床試験ガイドラインが適用可能とは限らない。日本では、「感染症予防ワクチンの非臨床試験ガイドラインについて」(2010年5月27日)により考え方が示されてきたが、近年はワクチンの開発環境が変化しており、ワクチンの改訂の必要性が認識された。 ワクチンの開発に係る困難な点を企業アンケートによって抽出したところ、非臨床試験に関して、投与経路追加時等の全身暴露毒性試験の要否や安全性薬理試験要否の判断基準等が指摘され、これらの課題について、開発品目における対応状況の調査や国内外のガイドラインの比較等を実施した。 投与経路追加に関しては、筋肉注射と皮下投与が可能な7品目について、いずれも反復毒性試験は一方の投与経路のみで実施し、局所刺激性試験を両方の投与経路で実施していた。また、WHOのガイドラインでは、経鼻投与に際しての脳神経系への影響など代替経路開発時の留意点が具体的に示されていた。 安全性薬理試験については、国内ガイドラインでは他の毒性試験であらかじめ安全性薬理のエンドポイントを評価できる必要があるのに対し、WHOガイドラインでは他の試験で生理機能への影響が懸念される場合に実施することとされていた。この違いを反映して、国内のみで開発されているワクチンの方が海外でも開発されているワクチンより、安全性薬理試験の実施率が高かった。 これらの結果に基づき、投与経路追加時等について全身暴露の毒性試験は必ずしも全投与経路で必要ないこと、安全性薬理試験については他の非臨床安全性試験で評価可能とする等の改訂を提案した。ワクチンについても、日本で遅滞なく新規ワクチンが導入されることが重要であり、ガイドラインの違いによる非臨床試験のやり直しを防ぐため、要求事項の国際整合性を踏まえた改訂の提案を行った。
著者
鹿野 嘉昭 Yoshiaki Shikano
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 = Keizaigaku-Ronso (The Doshisha University economic review) (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.159-186, 2007-09-20

江戸時代の日本では、藩札という事実上の不換紙幣が地方所在の大名領国における日常の交換手段として広く普及していた。この藩札の流通状況に関しては、その大部分は濫発とともに幕末にかけて価値が大きく下落し、領民の生活に悪影響を及ぼしたとされることが多い。仮にそうだったとした場合、明治政府が発行する不換紙幣を誰もが喜んで交換手段として受け入れたとは考え難い。しかし、明治通宝という政府不換紙幣がすんなりと受け入れられたほか、藩札と新貨幣との交換も順調に進んだのである。本稿は、藩札濫発論に問題があるのではないかという視点から、明治初年に作成された各種の資料などを利用して江戸後期における藩札発行高の推移を独自に推計のうえ、貨幣論の立場から改めて藩札濫発論の妥当性について検討しようとするものである。その結果、藩札濫発論あるいは価値下落論のいずれとも支持されえなかった。だからといって、藩札の増発自体を否定するものではない。むしろ、藩札の増発は、徳川幕府が万延の改鋳後に財政赤字補填を目的として採用した通貨増発政策、それに伴って生じた銀相場の大幅な下落や国内一般物価の騰貴に起因するものと観念される。
著者
鹿野 嘉昭 Yoshiaki Shikano
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 = Keizaigaku-Ronso (The Doshisha University economic review) (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1-2, pp.35-79, 2010-09-20

本稿は、明治初年に実施された旧藩札と新貨との交換(藩札整理)の実態について数量分析の立場から明らかにすることを狙いとしており、次のような興味深い事実を見出した。藩札の新貨との交換価格は各地における金銀銭相場を基準にして全国一律のルールにしたがって藩ごとに個別に決定されたが、届相場が九六銭12貫500文以下となった諸藩発行の銭札・銀札については、全国一律に1貫文8銭あるいは100文当たり8厘、市場実勢との比較において2~3割ほど割安な水準で新貨に交換された。明治政府が承継した藩札債務は3855万円から最終的には2493万円に更生減額されたが、その8割は先に掲げた交換価格の設定方法に由来する。そうであるがゆえに、大蔵省としても「官吏を派遣し精密な調査を行った結果、諸藩から報告のあった藩札の流通価格が大きく減額されたため」としか説明できなかったのであろう。
著者
鹿野政直責任編集
出版者
中央公論社
巻号頁・発行日
1971
著者
鹿野 祐嗣
出版者
早稲田大学演劇博物館
雑誌
演劇映像学
巻号頁・発行日
no.2012, pp.73-83, 2013-03-22
著者
山﨑 けい子 初鹿野 阿れ
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
no.57, pp.25-38, 2012

日本語学習者が日本語で会話を行うには,様々な問題が起こる。例えば,自分が言いたいことが言えない,相手の言ったことが聞き取れない,理解できない,などである。それらは日本語母語話者にも起こり得ることであるが特に日本語学習者にとって,このようなコミュニケーション上のトラブルへの対処のプロセス,つまり「修復」のフロセスを明らかにすることは,適切な問題対処法を学ぶ上で重要である。しかしながら,会話における「修復」のフロセスをどのように日本語学習者に示し得るか,学習者がどのように学び得るかという点においては議論の余地がある。そのような微細なプロセスは実際の会話の中で自然習得されるものだという考え方がある。一方,より現実に近い会話例を教材として示しながらその詳細なやりとりに焦点を当て示していくことが可能だという主張もある。もちろん二項対立の議論ではなかろうが,本稿では手始めとして後者の立場に立ち,どのように「修復」のプロセスを教材の中で示し得るのか,その可能性を探りたい。そのために,まず,既存の日本語教科書の聴解教材などにおいて実際に「修復」をどのように扱っているかを調べ,その傾向を明らかにする。それを踏まえ「修復」のタスク内での役割を考察し,今後の方向性を探る。
著者
倉田 信彦 蜂須賀 丈博 栃木 宏介 鹿野 敏雄 橋本 好正 森 敏宏
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.569-577, 2016-06-01 (Released:2016-06-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

腎移植後に悪性腫瘍の罹患率が上昇することがわかってきたが,手術や周術期管理に関する報告は少なく,周術期の最適な免疫抑制療法,腎機能への影響,術後合併症などはわかっていない.我々は腎移植患者における直腸癌3例,膵腫瘍1例(1例は同時性重複腫瘍)の手術を経験した.周術期に経口摂取が不可能となる消化器癌手術であっても,免疫抑制剤を周術期は静注とし,術後早期に経口へと切り替えることで,特に腎機能を悪化させずに管理可能であった.ステロイド長期内服に伴う創傷治癒遅延,縫合不全などは大きな問題とならなかったが,1例に回盲部炎,クロストリジウム腸炎を認め,免疫抑制剤が関与している可能性があった.感染に対しては,より慎重かつ迅速に対応する必要がある.また,通常とは異なる術後合併症が起こる可能性があるため,移植医療に従事していない科が手術を担当している場合は,密に連携をとって周術期管理を行うべきである.
著者
松井 克憲 鹿野 共暁 長橋 ことみ 大川 直子 有澤 奈良 成瀬 香織 鈴木 留美 稲本 裕
出版者
静岡産科婦人科学会
雑誌
静岡産科婦人科学会雑誌 (ISSN:21871914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.126-130, 2019-09

ペグフィルグラスチムは持続性のG-CSF刺激作用を保持し、末梢血中の白血数を増加させる働きをもつ。症例は55歳。再発卵巣癌に対して、DC療法 (ドセタキセル70 mg/m2+カルボプラチン AUC≓ 5) とペグフィルグラスチムを投与中であった。DC療法4コース投与後に発熱と全身倦怠感を主訴に来院した。抗菌薬投与を行ったが、解熱を認めなかった。精査目的に撮影した造影CTで胸部大動脈の壁肥厚と左側優位の両側胸水貯留を認めたため、大動脈炎と診断し、プレドニゾロンの投与を開始した。症状はただちに軽快し、大動脈の壁肥厚も改善した。がん化学療法時に発熱とCRPの上昇を認めた症例は、細菌感染症以外にも血管炎を考慮する必要がある。
著者
岸岡 正伸 柿野 純 井上 隆彦 多賀 茂 和西 昭仁 白木 信彦 山崎 康裕 小野里 坦 國森 拓也 宮後 富博 齋藤 秀郎 鹿野 陽介
出版者
山口県水産研究センター
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-45, 2016 (Released:2016-10-20)

2011~2013年度にかけて,山口市秋穂湾の遊休化したクルマエビ養殖池(50×100m,面積0.5ha)を用い,池に施肥することで餌料生物を増殖させながらアサリを大量育成する手法を開発するため,年間300~600万個のアサリ人工種苗(殻長2mm)を池内に収容し,実証レベルの試験を行った。研究初年度は,施肥を行った直後からアオサの急激な増殖が見られ,2ヶ月の間に池の大半を覆った。このため移植した種苗の成長,生残とも極めて低かった。また,攪水機によって流速4cm/sec. 以上になる場所が成育場所として適していると考えられた。2年目以降,種苗池入れ前に池内の大型藻類や食害生物を可能な限り除去するとともに,日常管理として週3~4回,小型の底びき網で池全体を引き回し,夾雑物を排除しながら海底を攪拌した。3~7月にかけて,毎週200kg(海水トンあたり27g)の半有機肥料を池に散布することで,栄養塩の供給と微細藻類の増殖を維持することができた。この結果,2年目以降は池内での大型藻類の繁茂が抑制され,3月に平均殻長2mmで移植した種苗は60%以上の高い生残率で急速に成長し,7月に殻長20mmに達した。施肥した試験区と施肥しない試験区を設けてアサリの成長及び生残状況を比較した。その結果,施肥による成長促進効果は,無施肥による場合と比較すると6月以降に顕著に現れた。試験期間中に,魚類の卵稚仔や甲殻類の幼生などが多数侵入・成育したが,アサリを回収するまでの間,これらの魚介類がアサリを食害した痕跡はほとんど見られなかった。最終年度は,11ヶ月の育成期間中に,1m2あたり平均3kg(500万個,15.7トン)のアサリが成育し,事業として実施するのに十分な高い生産能力を有することを確認した。生産した20~25mm貝を県内のアサリ漁場に保護放流したところ,調査を実施した3箇所の干潟で成長や生残に違いが見られたものの,母集団としての機能は果たしていると考えられた。また,試験池で生産したアサリは,肥満度の上昇する4月~6月であれば,自然浜のアサリとほぼ同じ一般成分,コハク酸,遊離アミノ酸を含有していた。
著者
鹿野 利春
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.663-664, 2019-06-15

2019.3.16に開催された情報処理学会初等中等教育委員会主催としては,初めての「中高生ポスターセッション」には日本全体から42の発表があった.これは,学問への誘い,さまざまな交流,研究・教育力の向上,学会のプレゼンスの向上など,多くの効果があった.今後は,運営の改善による効果の最大化と,若い世代の才能についての指導と環境の提供が期待される.
著者
鹿野 和彦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.10, pp.781-803, 2018
被引用文献数
28

<p>グリーンタフは主に本州の日本海沿岸に沿って分布する火山岩主体の地層群で,最近明らかになってきた特徴的な岩相の時空分布に基づけば,下位から順に上部始新統~下部漸新統(44~28Ma),上部漸新統(28~23Ma),下部中新統下部(23~20Ma),下部中新統中部(20~18Ma),下部中新統上部(18~15.3Ma),中部中新統下部(15.3~12.3Ma)に区分できる.これらの層序単元は,1)陸弧内リフティング,2)リフティングと火山活動を伴う地殻のドーム状隆起,3)背弧盆の拡大とリフティングの周辺地域への伝播,4)背弧盆拡大とリフティングの急速な進展,背弧側への暖流の本格的流入,5)日本海東縁での急激なリフティングと日本海盆などにおける熱的沈降の始まり,6)フィリピン海プレートの衝突と沈みこみ,火山前線の太平洋岸への移動,短縮変形の始まりを反映している.</p>