著者
坂本 尚志
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
no.18, pp.53-63, 2012

This study aimed at clarifying the evaluation method used in the philosophy test for the French baccalaureate. Our approach did not consist of tackling the national curriculum, but in focusing on effective strategies used by students on a relatively lower level, through self-learning books, which allow the students to prepare for the test in a "pragmatic" way. The purpose for these students is simply to achieve a good score in the test. These books teach them what is important in composing copy for essays. The examination of these works has revealed the constituent elements of good copy: it is not about creativity or about philosophic originality, but a respect for the fixed argument form which the student has to assimilate during the year, as well as exact quotations from philosophic works, which means that memorization of such material is a key to success. The philosophy test in the French baccalaureate is thus an exercise which demands the art of memory, more than simple philosophic reasoning.
著者
赤澤 吉弘 明石 愛美 阿久津 征利 三上 公志 深澤 雅彦 春日井 滋 坂本 三樹 肥塚 泉
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.224-228, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
15
被引用文献数
2

若年型喉頭乳頭腫は多発性, 再発性で難治なことがあり, 取扱いの難しい疾患である. 今回, 喉頭乳頭腫により気道狭窄を来し, 緊急気道確保を要した症例を経験した. 症例は2歳4カ月の男児で, 1歳頃から嗄声, 1歳6カ月頃から陥没呼吸を認めていた. 前医で重度喘鳴を認め, 喉頭乳頭腫による気道狭窄が疑われ, 救急搬送された. 手術室で気管切開待機のもと, 麻酔科による気管内挿管が行われた. 喉頭は腫瘍で充満し, 声門は観察できなかった. 後日, 全麻下にマイクロデブリッダーを用いて腫瘍を除去した. 病理は乳頭腫で, HPV11 が検出された. 初回手術から早期に再発傾向を示し, 半年間に4回の手術を施行したが腫瘍の制御には至っていない.
著者
坂本 穆彦 廣川 満良 伊東 正博 長沼 廣 鈴木 理 橋本 優子 鈴木 眞一
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.265-268, 2021 (Released:2022-02-22)
参考文献数
18

筆者らの内,筆頭著者より6名は福島県県民健康調査の病理診断コンセンサス会議にて,各症例の病理組織診断を担当している病理医(病理専門医・細胞診専門医)である。福島第一原発事故(2011年3月)後の福島県民健康チェックのための福島県県民健康調査では,チェルノブイリ原発事故後の小児甲状腺癌の多発という教訓を踏まえた任意の小児甲状腺超音波検査などが施行されている。悪性ないし悪性の疑いとされた場合は,必要に応じて手術が勧められる。この県民健康調査については,調査対象の設定が不適切で,不必要な検査が行われている可能性があるという声があり,その立場からは,県民健康調査が過剰診断(overdiagnosis)であると批判されている。この過剰診断という語は病理医や細胞診専門家は良性病変を癌と診断する様な誤診を示す場合のみに用いている。このように,用語や定義の使用法にくい違いがあるままで用いられるため,種々の誤解が生じている。本稿では県民健康調査そのものの是非を論じることは目的としていない。筆者らの意図は,過剰診断および過剰手術/過剰治療についての定義・用法に関しての病理医と疫学者双方に立場の違いがあることを示し,今日の混乱の解決策を論じることにある。
著者
田中 智子 坂本 須美子 岩月 聡史 茶山 健二
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.375-380, 2011 (Released:2014-04-25)
参考文献数
29

セレンは必須微量元素の1つで健康増進作用や疾病予防作用,とりわけガンの発生や転移を抑制することで,注目を集めている元素である。食品中のセレン含有量を水素化物発生原子吸光法を用い測定した。測定条件は,NIST SRM-1568 aの米粉を用い認証値 380±40 ppbに対し,382±17 ppbで妥当性を確認した。41種類の豆腐中セレン含有量を測定した結果,国産と中国産大豆を用いた豆腐中セレン含有量は低く,カナダ・アメリカ産大豆を用いた豆腐は高かった。きな粉を測定した結果も,大豆の原産国がアメリカのセレン含有量は高く,国産大豆のきな粉は低くかった。
著者
田中 惠子 坂本 裕子 森 美奈子 中島 千惠
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.567-576, 2017 (Released:2017-10-07)
参考文献数
21

目的 乳幼児の食のリスクの低減には,母親が正しい知識を身につけて家庭で合理的にリスクに対応することが求められる。本研究は,幼児を持つ母親のリスクの考え方,知識,意識および行動の実態を示し,母親への食の安全教育を行う上での基礎的な資料とする。方法 2014年10月に幼児の母親を対象にインターネットによる質問調査を実施した。主な調査項目は属性,有害微生物による食中毒等の11の食の問題から,幼児の食の安全の問題として危険性が高くその危険性を低くするため大人が家庭や保育所・幼稚園等で努力する必要性が高いと感じる(以後,幼児にとって危険性が高いと感じる食の問題と記す)上位3位までの選び方,リスクの考え方,知識,意識および行動である。解析対象者数は984人であった。結果 幼児の食の問題に対して,母親の約3人に1人が有害微生物による食中毒の,半数以上が食品の誤嚥・窒息の危険性認識が低い可能性が示唆された。一方,3割が食品添加物の危険性が高いと感じていた。生牡蠣や鶏の刺身を食中毒予防のために幼児に与えてはいけないという認識がない者が1~2割存在し,調理中の生の肉等を触った後の石けん手洗い等,交差汚染を防ぐための習慣がない者も少なくなかった。食品の誤嚥・窒息では,3歳頃までピーナッツや飴等を与えてはいけないことを知らない母親は「わからない」を併せて4割存在した。さらに,約7人に1人の母親が,食事中の食品による誤嚥・窒息に気を配っていないことが示された。幼児にとって危険性が高いと感じる食の問題に食品の誤嚥・窒息を選択しなかった者に,3歳頃までピーナッツや飴等を与えてはいけないことを知らない,この問題に気をつけていない,食品表示を参考にするという特徴が見いだされ,また,食品添加物に対して否定的な考えを有している割合が高かった。結論 幼児の食のリスクを低減するための知識や習慣が十分に身についていない者が少なくなかったこと,また食品の誤嚥・窒息の危険性の認識が低い者は,食品添加物に否定的な考えを持ち,表示を参考にする一方で,食事中の幼児の誤嚥・窒息に気を配っていない等の特徴が示されたことから,母親へのリスクの考え方をとりいれた食の安全教育の必要性が示された。
著者
坂本 勝志 西澤 秀男 眞鍋 昇
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.233-236, 2012-10-25 (Released:2012-11-16)
参考文献数
7
被引用文献数
1 9

コーヒーの残留基準値は生豆に設定されているが,実際には生豆を焙煎し,さらに熱湯で抽出したものを飲料としている.2008年5月にはエチオピア産コーヒー豆でγ-BHCが基準値(0.002 ppm)違反となり,現在も命令検査の状況である.しかし,加工してわれわれの口に入る場合の農薬の消長に関するデータは少ないので,γ-BHC,クロルデン,ヘプタクロル,過去に検出事例のあったアトラジンおよびピペロニルブトシシドの焙煎工程での消長を調べた.コーヒー生豆での残留濃度を2濃度設定し,焙煎前後の濃度を測定して,焙煎工程後の残存率を求めた.γ-BHCおよびアトラジンは,いずれの濃度でも焙煎により消失し,残存しなかった.一方,クロルデンおよびピペロニルブトキシドは2濃度とも焙煎工程後に残存が見られたが,90%以上は焙煎工程中に消失した.ヘプタクロルは高濃度で焙煎後に0.72%残存した.
著者
黒瀬 豊敏 坂本 文信 上土井 大助
出版者
宇宙太陽発電学会
雑誌
宇宙太陽発電 (ISSN:24321060)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-36, 2017-01-04 (Released:2018-04-05)
参考文献数
3

宇宙太陽光発電衛星に用いる大型構造物として,展開トラス構造物の研究開発を進めてきた.この構造方式は,シンプル/軽量で組立に高度な装置を必要とせず,数kmに及ぶ大型構造物を自動で軌道上に構築できる.現在は地上実証をほぼ終えた段階であるが,この技術により,これまでにない宇宙機を実現できる可能性がある.本論文では,展開トラス構造物の技術を用いたレーダ衛星の可能性,及び現在検討を進めている次世代降水レーダ衛星について概要を報告する.
著者
勝谷 紀子 岡 隆 坂本 真士 朝川 明男 山本 真菜
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.107-115, 2011

本研究は,日本の大学生が「うつ」に対してどのような素朴な概念(しろうと理論)をもっているかについて,自由記述データに対するテキストマイニングおよびKJ法で検討した.首都圏の313名の大学生が調査に回答した.「うつ」という主語を用いて,文章完成法による自由記述を求めた.305名分の自由記述の内容について3名の評定者によるKJ法を用いた内容整理,および形態素レベルに分割してテキストマイニングを用いた内容分析をおこなった.その結果,うつの一般的な特徴,うつの人々へのイメージ,うつの特徴,うつの原因,うつの治療法についての記述がみられた.うつのしろうと理論を検討することの理論的示唆について考察した.
著者
青木 実枝 坂本 祐子 神谷 直由
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
山形保健医療研究 (ISSN:1343876X)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.39-46, 2003-03-01

昼夜逆転の生活パターンとなり午前中の講義を欠席しがちな男子学生に対して、睡眠に焦点を当てた行動療法的アプローチを試みた。現状の生活パターンの原因を探索する面接による支持的介入を行った。次に対象者自身が設定した生活改善目標と方法に対して、1週間のセルフモニタリングを行った。さらに、セルフモニタリング前後の睡眠の質をOSA(小栗・白河・阿住)睡眠調査票を用いて評価した。その結果、対象者が目標としていた、二度寝の習慣が消失し昼夜逆転の生活パターンが改善した。対象者の意思を尊重した支持的介入による原因探索と自身で設定した目標に対するセルフモニタリング法は、役割意識を自覚し自律性を生み出したと考えられる。また、セルフモニタリング後のOSA睡眠調査票のスコアが向上しており、睡眠の質も向上していることが明らかとなった。
著者
坂本 治也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.5-17, 2021 (Released:2023-11-16)
参考文献数
41

既存研究では,新自由主義の進展が市民社会の活性化をもたらすことは通説的見解とされてきた。しかし,新自由主義を政策パッケージではなく人々の間で共有されるイデオロギーとして捉えた場合,本当に新自由主義の進展が市民社会の活性化に結びつくといえるのであろうか。この点を検討するために,本稿では自己責任意識と市民的参加の関係を定量的に分析する。本稿では,独自に開発した指標を用いて,2つの異なるタイプの自己責任意識を測定する。分析の結果,2つの自己責任意識は市民的参加に対してそれぞれ負の関係性をもつことが明らかとなった。自己責任意識が強ければ強いほど,人々は市民的参加を忌避する傾向が見られる。イデオロギーとしての新自由主義の進展は,市民社会の活性化につながるどころか,むしろ市民社会を衰退させる可能性が高い,という通説的見解とは真逆の結論が得られた。
著者
善教 将大 坂本 治也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.74-89, 2013 (Released:2017-12-06)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本稿の目的は,日本維新の会への支持態度の特徴ならびにその背景にある有権者の論理を明らかにすることである。先行研究では,維新あるいは橋下への支持は,有権者の政治的・社会的疎外意識に基づく熱狂的なものであることが述べられてきた。これに対して本稿では有権者が抱く橋下イメージの違いという観点から,維新が支持される理由を説明する。実証分析の結果,明らかとなったのは次の3点である。第1に維新は多くの有権者に支持されているが,その支持強度は弱い。第2に政治的・社会的疎外意識等と維新支持に関連があるとはいえない。第3に橋下をリーダーシップの高い人物だと認識する人は維新を弱く支持し,保守的な人物だと認識する人は強く支持する傾向にある。つまり維新への支持が弱い理由は,彼のリーダーシップへの評価が弱い支持にしか結びつかないという点に求められる,というのが本稿の結論である。
著者
坂本 治也 秦 正樹 梶原 晶
出版者
関西大学法学研究所
雑誌
ノモス = Nomos (ISSN:09172599)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-20, 2019-06

本研究は、2017-18年度関西大学若手研究者育成経費において、研究課題「NPO・市民活動への参加意識の実証研究 : サーベイ実験による因果効果の検証 」として研究費を受け、その成果を公表するものである。
著者
坂本 照正 高坂 和彦 井上 巌
出版者
Japanese Society of Water Treatment Biology
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.47-52, 1991-12-25 (Released:2010-02-26)
参考文献数
22

In mid-Autumn 1983, the outbreak for the hairworm to be discharged through a tap with drinking water occured within a certain district of Kanagawa prefecture in Japan.After microscopic examination this worm was recognized as a kind of parasite belonging to Gordioidea, Nematomorpha.The specific characters of this worm were as follows.1) This worm, preserved in 70% alcohol, was darkbrown in color and about 280mm long by 1.2 mm broad at the thickest portion.2) The body surface was covered with a smooth cuticula assumed the crossed light fibrous lines.3) At a short distance anterior to the point of bifurcation were found a crescent-shaped ridge and the round cloacal opening.By the chazacteristic signs mentioned above the specimenwas identified asGordiussp. (Family; Gordiidae) .It appears to be the first report that the hairworm was detected from drinking water in Japan. Regarding the same case of the hairworm, other 4 cases have been recorded up to now in Japan and all worms were also identified as Gordiu ssp..This article describes the biology of the hairworms, the cases found in drinking water, the parasitological and clinical aspects of the human infection, and the preventive measures inremov ing them.
著者
島 文子 坂本 拓 塩野 真弓 東出 善史子
出版者
京都大学附属図書館情報管理課APC ワーキンググループ
巻号頁・発行日
2014-12

本学において多額の購読費を支払っている電子ジャーナルについて、従来は購読費を出版社に支払い、閲覧する形が主流であった。しかし、「オープンアクセス費」というものを著者が出版社に支払い、電子ジャーナル掲載論文を無料公開とするケースが急増している。従来からの購読費は減少していないにも関わらず、オープンアクセス費を支払うことにより、総額として研究者(大学)の研究発表にかかる費用が増加しているなどの課題が顕在化してきている。本ワーキングループでは、本学教員によるオープンアクセス費の支出や、オープンアクセス費をめぐる状況を予備的に調査した。
著者
坂本 文徳 大貫 敏彦 香西 直文 五十嵐 翔祐 山崎 信哉 吉田 善行 田中 俊一
出版者
Atomic Energy Society of Japan
雑誌
日本原子力学会和文論文誌 (ISSN:13472879)
巻号頁・発行日
pp.1111290030, (Released:2011-11-30)
参考文献数
12
被引用文献数
8 10

The environmental behavior of radioactive Cs in the fallout from the accident of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant has been studied by measuring its spatial distribution on/in trees, plants, and surface soil beneath the plants using autoradiography analysis. The results of autoradiography analysis showed that radioactive Cs was distributed on the branches and leaves of trees that were present during the accident and that only a small fraction of radioactive Cs was transported to new branches and leaves grown after the accident. Radioactive Cs was present on the grass and rice stubble on the soils, but not in the soils beneath the grass and rice stubble, indicating that the radioactive Cs was deposited on the grass and the rice plant. In addition, the ratio of the radioactive Cs that penetrated into the soil layer by weathering was very small two months after the accident. These results indicate that trees and other plants are the reservoir of the fallout Cs and function to retard the fallout Cs migration with rain water.