著者
Satoru SAITO
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.120-132, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
83

Working memory underpins the transient retention of information in the service of cognitive processes within a variety of tasks. As this memory function restricts our ability to regulate mental processes, it potentially characterizes our learning and educational activities. This article reviews three lines of working memory research in cognitive psychology : Short-term retention of verbal information, the relationship between storage and processing in working memory, and the role of working memory in learning activities. These three research areas constitute promising directions in working memory research. Although the present paper limited its scope to relatively basic studies, the findings reported here could lay the foundation for applied working memory research in educational settings.
著者
佐々木 保行
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.137-146, 1996-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
88
被引用文献数
2

本論文は, 父親の育児関与とそれが父親におよぼす影響についての概観を試みたものである. これまでわが国の発達研究者の多くは, 父親の子どもへの影響についてほとんど考慮してこなかった. 親子関係に関する大部分の研究は, 主として母子関係の研究に集約されている. そのため父性や父子関係の研究は, 大変少ないのが現状である. 他方, 欧米の研究者では, 家族を社会システムとしてとらえる見方が次第に濃厚になっている. その理由は, 母親, 父親, 子ども, の家族メンバーが, お互いに直接あるいは間接に影響しあう存在だからである. 近年, 父親の文化的イメージは, 養育する父親として, また子どもと同様, 発達する父親としてとらえられている.
著者
南風原 朝和
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.122-131, 1995-03-30
被引用文献数
2

This article is intended to provide an overview of the methodological issues in the use of statistical tests in educational and psychological research. First, an exposition is made of those basic aspects of the theories which are not covered in typical applied statistics textbooks and which are often misunderstood. Then such recent efforts to improve the use of statistical tests as power analysis and effect-size estimation are summarized. The fainal section of the article discusses issues concerning the assumptions and interpretations of statistical tests, generalization of research results, and statistics education for prospective researchers.
著者
遠藤 利彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.150-161, 2010-03-30 (Released:2012-03-27)
参考文献数
85
被引用文献数
4 2

ボウルビーの主要な関心は, 元来, 人間におけるアタッチメントの生涯にわたる発達(すなわち連続性と変化)と, 情緒的に剥奪された子どもとその養育者に対する臨床的な介入にあった。近年, 幼少期における子どもと養育者のアタッチメント関係が, 子どもの, アタッチメントの質それ自体を含めた, その後の社会情緒的発達にいかなる影響を及ぼすかということについて, 実証的な知見が蓄積されてきている。本稿では, まず, 児童期以降におけるアタッチメントとその影響に関する実証研究と, 乳児期から成人期にかけてのアタッチメントの個人差の安定性と変化に関するいくつかの縦断研究の結果について, 概観を行う。次に, アタッチメント理論の臨床的含意について, 特に, 無秩序・無方向型アタッチメントとアタッチメント障害, そして, そうした難しい問題を抱えた事例に対するアタッチメントに基づく介入に焦点を当てながら, レビューし, また議論を行う。最後に, 日本の子どもと養育者のアタッチメント関係の特異性をめぐる論争とそれが現代アタッチメント理論に対して持つ理論的含意について批判的に考察し, さらに日本におけるアタッチメント研究の現況が抱えるいくつかの課題を指摘する。
著者
菊池 哲平
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.92-101, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本稿は,2007年の特別支援教育の開始以降,わが国の教育心理学的研究がどのようなエビデンスを提供してきたのかについて,エビデンス・レベル分類(案)による概括を行うものである。2007年以降に学会誌に掲載された585本の研究論文について,研究デザインを基にしたエビデンス・レベル分類を行った。論文発表数としては「自閉症スペクトラム障害」と「発達障害全般」が多かったものの,「聴覚障害」「言語障害」「ADHD」のエビデンス・レベルが高かった。「自閉症スペクトラム」及び「発達障害全般」に関する研究は,シングル・ケース・デザインに基づくものが多いため,これらの研究に対してシステマティック・レビューを行うことでエビデンス・レベルを高めていくことが考えられた。さらに2007年以降は「通常の学級」をフィールドとした研究が多く発表されており,エビデンス・レベルも比較的高かった。一方,「特別支援学級」をフィールドとした論文は少なく,これからの取り組みが期待される。結果として,教育心理学的研究が特別支援教育の有益なエビデンスを提供していることが示唆された。
著者
谷 伊織
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.30-44, 2015-06-30 (Released:2015-08-25)
参考文献数
85
被引用文献数
1

本稿では,この1年間に発表された日本のパーソナリティ心理学領域における研究のレビューを行った。過去1年間の研究動向をみると,以下の動向と問題が明らかとなった。まず,研究について分類・整理を行ったところ,研究される内容には一定の偏りが存在しており,パーソナリティそのものの構造や発達に関する研究が比較的少ないことが課題であると考えられた。一方,ライフステージごとのパーソナリティの機能や,パーソナリティと不適応・適応との関連については盛んに研究が行われていることが示された。ただし,これらは一時点の横断研究が多く,因果関係を明らかにするためには縦断研究や無作為化比較実験が求められよう。パーソナリティの測定については,質問紙法による尺度構成の研究が多く見られたが,既存の尺度と類似したものが多く,それらの分類や整理が必要であると考えられる。一方,Implicit Association Testやバウムテストといった質問紙法以外のアプローチはさらなる展開が期待されるだろう。
著者
速水 敏彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.176-186, 2011-03-30 (Released:2011-11-25)
参考文献数
61
被引用文献数
2 1

ここでは現代の若者の心性を表現する概念として我々が創出した「仮想的有能感」に関する約 10 年間の研究を概観した。まず, この概念に関わる重要な3つの問題について触れた。第1に仮想的有能感に自尊感情を組みあわせ, 4つの有能感タイプをつくることで, 本来の概念規定により近似した個人の選択を可能にした。第2に本来無意識的な仮想的有能感は他者軽視の傾向を測るACS-2 によっているが, その尺度に潜在的自尊感情が反映されていることを潜在連合テストを使った研究で実証した。第3に仮想的有能感が若者だけのものなのかについても横断的研究により明らかにしようとした。 他に様々な領域で展開した研究をまとめた。仮想的有能感の高い人の特徴として, (1)日常的に負の感情を持ちやすいこと, (2)負の対人感情を形成しやすいこと, (3)受容的な養育を受けず, 勤勉性も発達していないこと, (4)競争的ではあるが, 努力志向でなく, 学習を嫌うこと, (5)問題行動を生じやすいこと, (6)就労への意欲が希薄なこと, (7)外国と比較すればアメリカや韓国では仮想的有能感も自尊感情も我が国より高いこと, などが示された。最後に問題点や今後の研究の必要性について討論された。
著者
高橋 雄介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.38-56, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
103
被引用文献数
3

本稿の目的は, 2014年7月から2015年6月までの間に発表・報告された人格(パーソナリティ)特性をはじめとする個人差変数が取り扱われた研究について概観し, その動向と課題についてまとめたうえで, 今後の展望や展開を論じることである。ジェームズ・ヘックマンの研究以来, パーソナリティ特性(非認知能力)の発達及び教育的介入の可能性に関する研究に焦点が当たっている。本稿では, まずBig Fiveとそれに並ぶ個人差変数(知能や自尊感情など), そして自己制御とそれに類する心理学的構成概念(衝動性や満足の遅延など)に関する研究について, 次に, パーソナリティ特性や個人差変数と身体的・精神的・社会的健康との関連に関する研究について概観して, それらの成果をまとめた。最後に, 「あ・い・う・え・お」に準える形で(あ : Anchoring vignettes, い : Interactions, う : Unique relationships, え : Environmental Effects, お : Other reports), 5つの観点から今後のパーソナリティ特性研究の展望と展開を考察し, 3つの視座から課題と期待を論じた。
著者
川端 一光
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.137-157, 2017-03-30 (Released:2017-09-29)
参考文献数
124
被引用文献数
3

本稿では, 本邦の測定・評価領域において, 2015年7月から2016年6月までの1年間で報告された主要な研究を, 「因子分析による尺度構成」「項目反応理論による尺度構成」「教育評価」「関連する統計理論」の4つに分類し, それぞれ概観した。また, テスト理論の観点から各研究領域の課題について論じた。「因子分析による尺度構成」領域の課題として, 一部の研究において, (a) 尺度構成研究における妥当性検証が不十分, (b) 内容的妥当性の確保に関する記述が薄い, (c) 確認的因子分析が活用されていない, ということが指摘された。また「項目反応理論による尺度構成」領域の課題として, (a) モデル適合や尺度得点の精度に関する研究, (b) 安定的な等化を実現するための研究, (c) CTTやIRTの指標に関する研究, のそれぞれについて報告が少ないことが挙げられた。「教育評価」領域では, 教育測定・心理統計学の専門家が不足していること, 「関連する統計理論」では, 近年注目されているベイズモデリングの研究への生かし方に関する議論の必要性について, それぞれ論じられた。
著者
山本 博樹 深谷 達史 高垣 マユミ 比留間 太白 小野瀬 雅人
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.209-230, 2020-03-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
70

2020年度より順次実施の学習指導要領からは「主体的・対話的で深い学び」が目指されることになる。これに対して,教師や生徒同士の説明実践に期待が寄せられるが,説明とは説き手の「説く」と受け手の「明らかになる」から成る言語活動だったはずである。ところが,一方的に「説く」だけで決して受け手自身が「明らかに」ならない言語活動が授業に紛れ込むことがある。説明という言語活動の特徴や構造を取り違えたり,短絡的に「深い学び」に直結すると誤解する場面に出会ったりもする。実は,説明活動は受け手の「明」に関わる認識論上の難題を含むのであり,これに対する教育心理学サイドの貢献を時に振り返る機会があってもよい。ここから児童生徒の「深い学び」を実現する説明実践が耕されていくからである。そこで,本論文では,説明の原義に由来する難題に研究者がいかに立ち向かってきたかを振り返り,説明実践に対する教育心理学の貢献を議論したい。想定した論点は以下の3点である。(1)説き手である教師や児童生徒は受け手の理解不振を把握できているか(論点1),(2)同じく受け手の理解不振を本当に改善できているか(論点2),また受け手の理解不振の把握・改善を基点とした説明力の育成は進んでいるか(論点3),である。
著者
渡邊 芳之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.79-97, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
122
被引用文献数
2 3

2016年7月から2017年6月にかけての日本におけるパーソナリティ研究の現状と動向を分析するために,120件の学会誌論文と375件の学会発表をパーソナリティ関連研究として抽出して分類し,いくつかの量的な側面から調べた。日本におけるパーソナリティ関連研究は,この期間に主要な学会誌8誌に掲載された論文のうち48.0%を,2つの学会における発表のうち47.2%を占めている。1年間の研究協力者の総数は222,986名にのぼり,132個の新しい個人差測定尺度や項目が開発されている。こうした研究にはSEMに代表される統計的因果分析の技法が広く用いられている。研究テーマの動向や,パーソナリティ関連研究のこうした動向がパーソナリティ心理学や「個人差科学」に対して持つ含意についても検討した。
著者
犬塚 美輪
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.162-172, 2013 (Released:2013-10-30)
参考文献数
56
被引用文献数
2 1

本稿では,まず,読解方略の定義とその効果に関する知見を整理した。その上で,読解方略の指導実践および読解方略指導の研究について,国内外の現状をまとめた。国内の研究においては,読解方略指導に関する研究自体が少ないこと,中でも客観的な効果の測定を行った実践研究があまりなされていないことが大きな課題であると言えた。また,学校現場での指導の実態について見てみると,有効性が指摘される方略の一部はよく指導されているものの,指導が不足している方略もあることや,明示的な方略指導が行われにくいことが示唆された。最後に,読解方略指導における新たな課題として,マルチメディア題材の読解や批判的読解における方略の検討とその指導を取り上げた。
著者
宇佐美 慧
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.83-100, 2016 (Released:2016-08-12)
参考文献数
131
被引用文献数
7

本稿の目的は, 本邦の最近1年間の教育心理学に関わる測定・評価・研究法についての研究動向を, 『心理尺度』, 『試験・テスト』, 『量的研究法』, 『統計分析・統計理論』, 『心理統計教育』, および『その他の研究』, の計6つの観点に分けて整理し, 関連する諸問題について幅広く取り上げることである。また, 教育測定・心理統計の専門家(教育者・研究者)の人材不足と心理統計教育の問題は, 本邦の測定・評価・研究法に関する研究および実践上の諸問題の根幹であることを指摘し, 「専門家による専門家の育成」の重要性についても多面的に論じた。