著者
桐村 喬
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.176-186, 2021 (Released:2021-05-15)
参考文献数
6
被引用文献数
2

地域メッシュ単位で集計されたメッシュデータをGISソフトで地図に示すには,メッシュのポリゴンデータを用意したうえで結合する必要があり,場合によっては事前の加工が必要なこともある.そこで,これらの手間を省き,メッシュデータから簡易的にメッシュマップを描画する,ウェブブラウザベースの「MeshDataView3D」を開発した.本ツールでは,e-Statのデータも含めたメッシュデータを読み込むことができ,ポイントやポリゴン,3Dポリゴンでメッシュマップを描画できる.本ツールを使用することで,メッシュマップの描画に要する時間を大幅に削減でき,授業であれば,さまざまなメッシュマップから情報を読み取り,地理的思考を働かせることに十分な時間を割くことができる.また,インターネット接続と最新のウェブブラウザさえあれば動作することから,自宅学習などでも活用でき,GIS教育や地理教育に役立てることができる.
著者
長谷川 直子 横山 俊一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.202-220, 2018 (Released:2018-05-31)
参考文献数
18

本稿では,学生が主体となった雑誌の出版やテレビ出演などのアウトリーチ活動から,社会がそれをどのようにとらえ,また学生自身が社会の反応をどのようにとらえたのかについて考察した.当初は授業の成果を出版することで地理学をアウトリーチする意図があった.しかし社会からは,男性的なイメージの強い地理に女子がいることの意外性から女子の側面が取り上げられ,発信した学生の中には当初の意図と違うとらえ方をされたことに対する戸惑いがあった.結果的には,その意外性から多くのマスコミに取り上げられ多くの人にアウトリーチできた.学生主体のアウトリーチは,学術的専門性とはまた別の次元でその親しみやすさ,面白さを伝えられるという点で,学問に直接的な興味をもたない人々へのアプローチを可能にする.研究者が先端的な研究内容をアウトリーチするのとは対象者・目的・内容が異なり,一つの効果的な社会へのアプローチ方法であると考えられる.
著者
和田 崇
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.380-399, 2023 (Released:2023-09-21)
参考文献数
50

本研究は,2030年冬季五輪の招致を目指す北海道札幌市を事例に,Müller and Gaffney(2018)が提起したスポーツ・メガイベントの評価項目を用いて,五輪招致の推進派の説明と反対派の主張を比較分析した.その結果,推進派も反対派もその主体や活動が札幌市だけのローカルレベルにとどまらず,東京を中心とするナショナルレベルの組織,さらに欧米を中心とするグローバルレベルの組織と結びつき,各派でグローバルに共有される論理や戦略が導入されていることが確認できた.そのこともあり,札幌市における推進派の説明と反対派の主張は過去の五輪開催都市や立候補都市のそれと類似しており,推進派は五輪が市民に夢と希望を提供し,都市再開発と地域経済・観光集客の活性化に結びつくと説明し,反対派は国際オリンピック委員会(IOC)と五輪の祝賀資本主義的体質を批判し,市民生活に直結する政策の優先実施と招致決定過程への住民参加を求めていた.
著者
鈴木 奏到
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.75-78, 2006 (Released:2010-06-02)
被引用文献数
1

都市・地域政策の転換期を迎え,改めて地域を科学する地理学を学んだ人材の活躍の場面も広がっていくと思われる.そのためには,問題・課題を構造化するデザイン能力,地域空間上で定量化する解析・プレゼンテーション技術,そして,理解・合意形成のためのコミュニケーション技術をいかに高めていけるか.都市・地域政策にかかわるシンクタンクのプランナーの立場から,地理学の人材を育成していくための体制・環境づくりについて提言する.
著者
熊原 康博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.15-34, 2010 (Released:2010-08-23)
参考文献数
53
被引用文献数
1

本研究では,江戸時代の五街道の一つである中山道の関東平野の範囲を対象に,平野地域における歴史的な街道の地形条件の特徴を明らかにした.研究の方法は,街道のルートを正確にマッピングし,第二次世界大戦直後の空中写真の実体視により街道沿いの地形を分類した.本研究で明らかになったことは,平野全体でみた場合,そのルートは比較的直線であり,台地をできるだけ通過し,山地や丘陵,沖積低地を避ける傾向があることである.また,地形分類でみた場合,以下の特徴が挙げられる.台地では開析谷を避け,面の分水界に沿う傾向があること,扇状地性の台地では等高線に平行する弧を描くルートをとること,沖積低地では自然堤防を伝い,旧河道や後背湿地,河川を可能な限り通過しないことである.これらの特徴からは,高低差を少なくする通行の容易性と,水害を避けるという安全性の両面に配慮していることが指摘できる.ただし,いくつかの地点では,安全性よりも容易性を優先したルートも認められる.
著者
小林 茂
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.52-66, 2006 (Released:2010-06-02)
参考文献数
63
被引用文献数
1 4

第二次世界大戦終結まで,日本がアジア太平洋地域で作製した地図を「外邦図」と呼んでいる.外邦図の多くは,旧日本軍が作製し,その性格からこれまで利用が限られてきたが,近年は景観・環境の長期的変化を考える上で重要な資料と考えられるようになってきた.ただしその利用にあたっては,東アジアの近代史を意識しつつ,作製過程や仕様,精度などを解明する作業が不可欠である.そこで本稿では,ここ数年間関係者の協力を得て研究を進めてきた成果を紹介する.外邦図の多様性に始まり,外国での秘密測量,台湾や朝鮮など旧植民地での地籍測量に伴う地形図作製,外国製図の複製や空中写真測量の発展など外邦図に関連する主要なトピックついて触れ,あわせて東アジア地域への技術移転にも言及する.
著者
宮澤 仁
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.69-85, 2010 (Released:2010-04-06)
参考文献数
26
被引用文献数
4 3

本研究では,介護保険の開始以降,民間事業者により急増をみてきた有料老人ホームの立地特性を全国と都市圏の二つのスケールで分析し,供給の拡大要因について地理学的観点から考察した.その結果,近年,有料老人ホームは大都市を中心に供給され,特に東京大都市圏には全国定員の約4割が集中していることが明らかになった.そこで,東京大都市圏を事例地域に分析したところ,有料老人ホームは既成市街地に立地する傾向とともに,供給量と入居費用には大きな地域差が確認された.また,供給量とニーズの関係は弱く,むしろニーズの大きな地域で入居費用が高いことや,企業のリストラにより閉鎖された社員寮等を転用した施設が多数みられ,その多寡が地域的な供給量を左右したことが明らかになった.以上の結果から,(1)有料老人ホームの供給は,不動産流動の活性化といった経済動向の影響を受けやすいこと,(2)有料老人ホームは,近年の急増によりはからずも行き場のない高齢者の受け皿となっているが,入居費用には大きな地域差がある,といった問題点が指摘される.特に後者の問題に関しては,生活困窮高齢者の周縁化を社会的-地理的に強化しかねないことが危惧される.
著者
有馬 貴之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.93-111, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
207

本稿は,東京2020後のオリンピック・パラリンピックと観光に関する研究視点を導出するために,日本国内において行われてきた研究の整理を行ったものである.その結果,日本においては主に「観光政策」「観光施策・計画」「都市アメニティ・インフラ整備」「ビジネス・制度・開発主義」「国民意識」「観光の多様化」「経済効果」「観光教育」の八つのトピックにおいて研究がなされてきたといえる.英語圏の研究と比較すると,日本の研究では「観光教育」に関するおもてなしなどの日本独特のホスピタリティ教育に関する言及が特徴的である一方で,オリンピック・パラリンピックと観光の視点を踏まえた観光マーケティングに関する議論は少なく,これらの点において国際的な議論への貢献が必要である.
著者
篠原 弘樹 坂本 優紀
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.253-266, 2020 (Released:2020-10-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本稿は,メキシコ合衆国テキーラにおける観光地の形成プロセスを観光に関わるアクターの取組みと景観整備に着目しながら明らかにした.1990年代後半にツアー会社主導で始まったテキーラの観光は,2000年代に入り行政の観光促進プログラム導入や世界遺産登録,テレビドラマの舞台化などの外的要因を受け観光地としての整備がなされていった.観光地化のプロセスではツアー会社やガイド,蒸留所など観光に関わるアクターが登場し,積極的に観光を促進した.当初,各アクターはテキーラのローカル性を強調する事物や事象を積極的に採用していったが,観光が発展するに従いメキシコを象徴するような対象も利用するようになった.現在は大手蒸留所が大規模な観光施設を建設し,観光客を誘引する主要なアクターとなっている.
著者
佐賀 達矢 野中 健一 ファン イッテルベーク ヨースト
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.350-362, 2022 (Released:2022-10-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

伝統的な昆虫食文化を理解することは環境と人間の関係を含めた生物資源利用の本質的な理解につながると考え,高校生を対象に昆虫食の試食を伴う講義を行った.ここで得られたアンケート・感想から高校生の昆虫食の経験やとらえ方,講義の効果を分析した.昆虫食が食料問題の解決策になるという国連食糧農業機構(FAO)の提言を知っている生徒は多かった一方で,昆虫食文化がある地域の人々は食料不足だから昆虫を食べるという誤った見方も見られた.講義後には,多くの生徒が昆虫食を肯定的にとらえ,社会文化的な視点を身につけられた.予想に反し,現在も伝統的な昆虫食文化が残る岐阜県東濃地域の高校生の方がそうでない地域の高校生よりも昆虫食に対して抵抗感をもっていた.講義後には,日々の食生活を充実させるために昆虫食文化があることに気付いたという感想が多く,生徒に単なる異文化の理解だけでなく,自他の文化を尊重する態度をもたらすことができた.
著者
成瀬 厚
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.280-293, 2017 (Released:2017-12-16)
参考文献数
8
被引用文献数
1

大学非常勤講師の処遇に関する議論は1990年代以降なされており,2007年前後に盛り上がりをみせていたが,大きな改善がみられないまま現在に至っている.2013年には労働契約法が改正され,非正規の有期労働契約を無期契約へと転換する道が開かれたが,逆にそのことが「雇い止め」という事態を拡大させる契機となっている.本稿で筆者は,そうした議論を整理し,大学で地理学関連科目を担当する本学会員の大学非常勤講師にアンケート調査を行った.回答者15人の属性として,講師歴15年以上および年齢46歳以上が回答者の半数以上を占めた.かれらの収入は週1コマ当たり月額で30,000円以下がほとんどで,かれらは4校程度を掛け持ちしている.大学の非常勤講師で生計を立てている専業非常勤講師は,平均週8コマを担当しているという状況が確認された.
著者
中山 修一 和田 文雄 高田 準一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.57-64, 2012 (Released:2012-04-09)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

新学習指導要領に盛り込まれた持続発展教育の推進と地理教育の在り方に関し,国際地理学連合地理教育委員会の取組み,さらに,その推進母体であるユネスコの教育革新運動の系譜の考察を通して,日本における持続発展教育としての地理教育の進むべき道を検討することは喫緊の課題である.
著者
岩間 信之 浅川 達人 田中 耕市 駒木 伸比古
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.70-84, 2016 (Released:2016-06-23)
参考文献数
39
被引用文献数
1 3

本研究の目的は,住民の買い物利便性(食料品アクセス)および家族・地域住民との繋がり(いわゆるソーシャル・キャピタル)を基にフードデザート(以下FDs)を析出するとともに,FDsの特徴を地理学的視点から明らかにすることにある.研究対象地域は,関東地方の県庁所在都市A市の都心部である.分析の結果,低栄養のリスクが高い高齢者は,全体の49%に達した.地区別にみると,都心部のなかでも市街地中心部と市街地外縁の一部において,低栄養高齢者の集住がみられた.なかでも,市街地中心部において食生活の悪化が顕著であった.市街地中心部ではソーシャル・キャピタルの著しい低下,市街地外縁では食料品アクセスとソーシャル・キャピタルの相対的な低さが,高齢者の食生活を阻害する主要因であると考えられる.従来,FDs問題研究では買い物先空白地域に注目が集ってきた.しかし本研究から,ソーシャル・キャピタルが希薄な大都市中心部でも,FDsが存在することが明らかとなった.
著者
成瀬 敏郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.47-51, 2010 (Released:2010-04-06)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

2009 年8 月8 日に島根県出雲市多伎町に発達する海洋酸素同位体ステージ(MIS)5e の海成段丘堆積層を覆う古土壌3(VIb)から玉髄製の剥片1点を発見した.さらに同年8 月22 日から3 日間の予備調査において露頭面に表れた同層中から5 点の人工的に打ち欠いた石片が確認されたのを受けて,同年9 月16 日~29 日にトレンチ掘削による本調査が実施された.この結果,約12 万年前のMIS 5e に形成された古土壌層中から流紋岩や石英製の石器,石核,砕片,破砕礫など15 点が出土した.これらは日本で最も古い石器である可能性がある.今後,出土遺物の年代や古環境復元など,さらなる調査・分析が急務である.
著者
穂積 謙吾
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.160-175, 2021 (Released:2021-05-15)
参考文献数
32
被引用文献数
2

本研究は,愛媛県宇和島市宇和島地区の養殖業者における出荷対応の実態を,ブランド品の生産ならびに中間流通業者との取引関係に注目して解明し,一連の対応を可能とする要因を考察した.ブランド品は事業収入の安定化を目的に,労働力規模が大きい一部の養殖業者により生産されていた.ただし,宇和島地区においてブランド品は副次的であり,大多数の養殖業者は負担が軽いノンブランド品に特化していた.安定的な価格よりも経営上の負担軽減を優先する出荷対応は,ノンブランド品の流通形態である市場流通を中間流通業者が重視しているため可能になっていると考えられる.ノンブランド品を生産する養殖業者は,取引を行う中間流通業者の数を選択し,取引により得られた情報を経営に活用していた.これらの対応は,出荷先の中間流通業者を問わず一律であるノンブランド品の出荷価格や,中間流通業者との相互依存性により可能になっていると考えられる.
著者
山内 啓之 小口 高 早川 裕弌 瀬戸 寿一
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.288-295, 2019 (Released:2019-08-28)
参考文献数
13
被引用文献数
1

筆者らは,大学の学部や大学院のGISの実習授業を充実させるための教材を開発し,オープンな活用ができるコンテンツとして広く公開するためのプロジェクトを実施している.教材は,既存プロジェクトの成果である書籍『地理情報科学GISスタンダード』と対応するように構成した.GISを用いたデータの処理には,フリーかつオープンソースのソフトウェアを利用した.これらの教材は,GIS実習の課題や使用するソフトウェアの特性を考慮し,二次利用しやすいようにオープンライセンスのパッケージとして整備し,GitHubを用いて試験公開を行っている.本稿では,開発中の教材の設計と初期の構築の経緯をまとめ,既存のGIS教材との比較を行い,本教材の有用性について評価した結果を解説する.
著者
村田 陽平
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.165-190, 2012 (Released:2012-03-26)
参考文献数
139

本稿の目的は,現代日本の地域政策において主要な課題の一つである喫煙問題に対して,受動喫煙に苦しむ当事者の視点から,身近な環境問題としての受動喫煙被害の実態を明らかにすることである.2007年から2008年にかけて,タバコ問題に取り組む市民団体等の紹介を経て,東京,名古屋,大阪の三大都市圏において受動喫煙被害の当事者に対する聞き取り調査を実施した.その結果,現代の日本では,さまざまな日常空間において受動喫煙の被害が生じており,それにより少なからず生活に支障をきたしていることが明らかになった.本稿の調査を通じて,日本の受動喫煙対策が不十分であることが導出されるとともに,早急な法的整備などによる社会環境の改善が望まれる.
著者
森野 友介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.88-101, 2014-07-04 (Released:2014-07-10)
参考文献数
23

スクリーンスケイプはスクリーンの映像だけではなく,その背後にあるさまざまな事象とその構造を含んだ概念である.この概念を用いることで現実の空間とサイバースペースの垣根を越えた研究が可能であり,双方の空間にわたる情報化社会にアプローチすることができる.映像の背後には技術,マーケティング,社会状況,コミュニケーションの4種類の要素がある.本稿では2Dのビデオゲーム空間の視点に注目した分析と聴き取り調査を行うことで,主に技術やマーケティングに関する調査を行った.その結果,コストと技術の制約の中でクリエイターは性能を最大限に活かす努力を行ってきたこと,技術の発展に伴い,ビジネスモデルが複雑化し,マーケティングの影響が徐々に強くなり,ビデオゲームの内容も変化したことが分析できた.このように,技術とマーケティングの影響を受けつつビデオゲームのスクリーンスケイプが発達したことが明らかになった.
著者
戸井田 克己
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.19-26, 2012 (Released:2012-04-09)
参考文献数
6

2009年3月,新学習指導要領が公示され,高校では引き続き地理が選択科目にとどまることになった.この危機的状況を前に,新学習指導要領地理の内容を分析するとともに,高校地理歴史科において,あるべき地理カリキュラムの方向性を提言する.