著者
土井 研人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

心腎連関症候群は、急性および慢性心不全が腎障害を惹起する、あるいは急性腎障害と慢性腎臓病により心疾患が発症・増悪する、という臨床的な観察に基づいて定義されているが、心臓と腎臓という二つの臓器をつなぐ病態メカニズムについては十分明らかにされていない。特に、急性腎障害が原因で心機能低下を呈するとされるType 3心腎連関症候群については基礎的な検討がほとんどなされていなかった。本研究では、腎虚血再灌流モデルを用い、急性腎障害が心臓組織におけるミトコンドリア断片化とアポトーシスを惹起すること、ミトコンドリア制御蛋白の一つであるDrp-1がこの現象において重要な役割を示していることを見出した。
著者
大平 剛 馬久地 みゆき
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アメリカザリガニの造雄腺ホルモンをコードするcDNAを単離し、アメリカザリガニ造雄腺ホルモンのアミノ酸配列を明らかにした。次いで、アメリカザリガニ造雄腺ホルモンを化学合成した。そして、合成造雄腺ホルモンを、アメリカザリガニの近縁種で単為生殖する全雌のザリガニ(以下、ファラクス)に週1回の頻度で14回注射した。注射を開始してから20週目に雌性生殖孔が消失し、第1腹肢が雄性化したファラクスが見出された。生殖腺を観察したところ、精巣と輸精管が確認された。その個体の生殖腺を組織形態学的に観察したところ、精原細胞や精子形成が確認された。ホルモン処理による完全な性転換の誘導は、本研究が世界最初の例である。
著者
内藤 隆文 川上 純一 佐藤 聖 石田 卓矢
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

がん悪液質を有する患者では、うつ、傾眠、せん妄などの中枢症状を生じる。これらの中枢症状にはがんの組織浸潤に伴い分泌されたサイトカインによる影響が関連することが推測されている。さらにはサイトカインの濃度上昇は、肝臓のチトクロムP450(CYP)の活性を低下させる。しかし、がん悪液質の病態時におけるオピオイドの薬物動態、中枢症状の発現および血中サイトカインとの関係は十分に明らかにされていない。本研究ではCYP3A4により代謝を受けるオピオイドのオキシコドンをモデル薬物として、がん患者における悪液質の進行度に基づきオキシコドンの薬物動態、中枢症状の発現およびサイトカインの血中動態について評価した。
著者
東本 裕子 天木 勇樹 白須 洋子
出版者
横浜商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究は、国際的志向性が低い学生の異文化感受性を育て、英語力と共に自己効力感を向上させる英語・異文化理解教育に貢献することを目指す。具体的には次の項目について研究を行う。1つ目として、国際的志向性が低い学生の異文化や英語に対する心持ちや背景に関する調査を行う。2つ目は、異文化感受性発達モデルによる各段階の学生への効果的な異文化理解指導法を考案する。3つ目は、異文化協働学習等コロナ禍でも可能なオンラインを含む交流学習を通し、異文化への興味喚起と英語学習への意欲変化を検証する。4つ目は、既存の発達尺度と英語・異文化理解指導法の見直し、教育理論の改善、高度化を図る。
著者
内田 聖二
出版者
奈良大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

伝統的に転移修飾(transferred epithet)と呼ばれている修辞表現は文語的、詩的と言われてきたが、コンピューターコーパスなどで確認すると、現代英語でも同じような現象が観察される。本研究では、この「文語的」な言語現象を認知語用論の視点から見直すことによって、転移修飾、メタファー、連語などにおける修飾関係は基本的に同じで、それぞれが独自の分布をしているのではなく、段階的な言語現象であることの説明を目指す。
著者
萩原 昭広
出版者
大阪人間科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

フリースクールやたまり場に代表される「居場所」の定義は多義かつ曖昧なため確立されていないが、近年では物理的側面・心理的側面の両方を併せ持つものと理解されつつある。起立性調節障害を理由とした不登校は中学生全体の約1割を占めると言われる。登校できないことによって他者や社会との関わりが減り、対人面や学習・体力面で大きなハンデが生じている。これらを踏まえ、疾病の特徴を踏まえた居場所支援を定期開催し、他者との交流の場の確保ややってみたいことの提案・企画・運営を学生ボランティアとともに行うなどの仕掛けを講じる。この居場所が対象児にとっての有用性や自己肯定感の向上に寄与するのかについて検証を行う。
著者
塩川 茂樹
出版者
神奈川工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

近年,eスポーツが急速に世界中で普及し始めている.場所や時間を問わずオンラインで実施可能なeスポーツは今後ますます注目を集めると思われる.しかしながら,基盤となるネットワーク技術からゲーム依存症問題まで幅広い分野で多くの課題が存在するものの,急激な普及にそれらの解決が追い付いていない.本研究では,eスポーツ競技のコンテンツ配信に適したネットワーク技術課題に着目し,無線ネットワーク技術を発展させたコンテンツ配信プロトコルの開発を行う.データ管理および送信,動的通信経路構築,多重経路制御などを駆使したプロトコル開発により,eスポーツコンテンツの低遅延配信および同期配信の実現を図る.
著者
渡邉 恵一
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

ヒルベルト空間の原点を中心とする開球は,A.A.Ungarによって定義されたメビウスの和,メビウスのスカラー倍,ポアンカレの距離によって,メビウスジャイロベクトル空間をなし,関数解析学的に空間としてよく分かってきている。メビウスジャイロベクトル空間の間の写像で,ヒルベルト空間の間の有界線形作用素に相当するものの法則を解明することが補助事業期間全体の研究計画の概要である。
著者
久塚 純一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

昨年度までの調査・研究によって、コミュニティー・ケアの実施にあたっては、「画一性や平等性」の重視と「多様性や地域特性」の重視という二つの価値軸の衝突が見られることが明らかとなった。これは、施策に限らず、担当者の意識面においてもみられるものと推測されることから、最終年度の調査・研究は、実施段階に入った「介護保険事業」を対象とし、「事業」のありようと担当者の意識の関係を析出することを主な狙いとした。この手法により、コミュニティー・ケアの理念がどのような形で具体化するのかについての一定の「解」が得られると考えた。調査・研究対象を、「広域連合的実施」と「単独実施」の混在している「福岡県」と「佐賀県」としたことは正しい選択であったといえる。調査・研究はアンケートとヒアリングという形態を基本とした。担当者の意識を析出するねらいから、アンケートは、自由記述を多く含んだものを使用した。配布は、福岡県、佐賀県を中心としていたが、最終年度のみは、福岡県内の97市町村と広域連合(本部と支部)とした。最終年に限れば、37市町村より回答を得たものの、広域連合関係からは、一切の回答を得ていない。解析は定性的なものを中心とした。ヒアリングは、「福岡市」、「北九州市」、「久留米市」、「筑後市」、「中間市」、「大牟田市」、「水巻町」、「芦屋町」、「豊津町」等で、担当者と専門職に対して実施した。コミュニティー・ケアの実施にあたっては、具体的な施策の内容においても、担当者の意識の面においても、「画一性や平等性」を重視するものは「他者に依存する」傾向が強くあらわれており、「多様性や地域特牲」を重視するものは「自己責任」の傾向が強くあらわれるという傾向があることがわかった。
著者
久塚 純一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

地域で、実際に計画策定を担当している者が、計画策定や地域特性に対してのアイデンティティーを持てる条件が備わっていることが「策定された計画についての満足度」と深く関わり、したがって、「マニュアル」や「指針」の存在や国からの指導は、かえって、地域特性を反映した計画に結実しないとの仮説のもとに、「福岡県」・「佐賀県」・「熊本県」・「兵庫県」・「神奈川県」と五県内の全市町村、および関係団体について、アンケート調査とヒアリングを実施した。アンケート調査の結果については、(1)策定された計画についての満足度と、(2)アンケートに回答した担当者が、評価を下す際に「自己責任」という観点から回答を導き出したか、「他者責任」という観点から回答を導き出したかをクロスさせ解析した。その理由は、コミュニティーケア自体が、「普遍性」と「個別性=地域特性」という二つの価値軸を持っているからである。仮説の通り、(1)「策定された計画についての満足度」と(2)「地域に対してのアイデンティティー」や「実感としての主体性発揮」の有無が密接に関係していることが分かった。地域を比較すると、「福岡県」と「兵庫県」に類似した傾向が見られる。同様のことは、介護保険導入後の市町村の実施計画作成についても想像できることから、今後とも、計画作りの「マニュアル」や「指針」と、計画作りにおける「自由度」や「地域特性の重視」との関係は大きな課題となろう。いずれにしろ、地域で、具体的に計画策定を担当する市町村職員の「ローカルなものに対するアイデンティティーの確保」が重要な鍵を握っているものと考えられる。
著者
守屋 貴司 橋場 俊展 中村 艶子 岡田 行正
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2016年度には、研究代表者と研究分担者によって、当該研究テーマ関連の研究論文・文献・資料を網羅的に収集すると同時に、それ以降の調査研究設計をおこなった。そして2016年度中に、研究協力者を募り、共同研究会を組織した。2017年度中に、調査・分析をおこない、二回にわたり共同研究会を開催し、報告・討議をおこなうことができた。そして2018年度には、本共同研究の最終研究報告を研究書の一つとして編集し、ミネルヴァ書房より守屋貴司・中村艶子・橋場俊展編著『価値創発(EVP)時代の人的資源管理 Indstry4.0の「働き方」「働かせ方」』と題して、2018年 10月に刊行することができた。
著者
谷岡 由梨
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

人口増加により2050年には世界人口は93億人に達すると推測されている.しかし,急激な人口増加に見合った食糧増産が見込めない状況の中,昆虫や微細藻類が食糧資源として検討されている.本研究では,遺伝子工学的手法を用いて,微細藻類であるラン藻スピルリナが産生するシュードB12の合成経路をB12合成経路に改変する.B12は,動物性食品が主要な供給源であるため,ラン藻スピルリナがヒトにおいて生理的に機能しないシュードビタミンB12からB12を合成することが可能になれば,食糧問題の一助になるとともにスピルリナにおける形質転換技術はスピルリナに含まれる他の有用物質にも応用できると考える.
著者
小山 大介 露口 尚弘
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

「生体組織の違いを鮮明に表現できる」「脳神経活動を直接的にイメージングできる」などの新しいMRI(磁気共鳴画像)として、地磁気程度の大きさの磁場を利用する超低磁場MRIが注目されている。超低磁場MRIは現在主流の高磁場(数テスラ)MRIと比べて装置の簡便さや安全性の高さ、幅広い計測対象への応用などの利点も有し、MRIの新しい計測手法として期待が高まっている。しかし、超低磁場MRIは計測手法が未確立であり、実用に向けた加速度が十分でない。本研究では超低磁場MRIの実用を目指し、新しい計測プローブや撮像シーケンス、磁場空間制御手法の開発を通し、超低磁場MRI計測の高解像度化と高速化を実現する。
著者
南部 保貞
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在の宇宙の大規模構造は,宇宙初期のインフレーション膨張期に生成された量子ゆらぎが進化したものであると考えられている.しかしながら,量子ゆらぎが宇宙の構造につながる古典ゆらぎ に転化するメカニズニムについては十分な理解がされているとは言い難い(原始量子ゆらぎの古典化問題).本研究では,インフレーション起源のゆらぎの量子性並びにその古典性の意味を,量子状 態の持つエンタングルメントのモノガミー性に基づいて解明する.また,観測的に初期宇宙の量子性を検証する手法として,強度相関の方法の可能性について検討を行う.
著者
岡崎 裕之 布田 裕一 師玉 康成 荒井 研一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、形式的定理証明系Mizarとモデル検査器ProVerifを用いて、計算機援用による暗号システムの安全性形式的評価システムを開発した。Mizarでは暗号理論に関わる形式化数学ライブラリを開発した。本成果は確率、統計、関数解析、計算アルゴリズムや計算量等の計算機科学の基礎の形式化であるので、暗号理論以外にも応用できる。一方、ProVerifでは、基本的な暗号プロトコルのみならず、従来より抽象度が低くより現実のシステムや実装に近いモデルでの安全性検証手法を提案した。これにより暗号学的ハッシュ関数やブロック暗号の利用モード等の開発時の設計支援や形式的安全性検証を行うことが可能となった。
著者
田中 淳
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

現在、世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、エアロゾルによる感染のリスクがあるためP3施設にて細心の注意をもって取り扱う必要があり、その研究には多くの制約と危険を伴う。SARS-CoV-2の研究を P2施設で安全に行うことが出来る実験系を樹立することで抗ウイルス薬、ワクチン開発をより多くの研究施設で進めることが可能になる。本研究は、これまで応募者らが独自に開発、使用してきたアルファウイルス遺伝子発現ベクターをプラットフォームとし、SARS-CoV-2シュードウイルスベクターや、ウイルス様粒子(VLP)発現ベクター等を作製しP2施設で使用可能な実験系を構築する。
著者
山浦 克典 諏訪 映里子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

アトピー性皮膚炎をはじめとする、痒み症状を伴う慢性皮膚疾患では、長期間にわたる外用ステロイド療法は必要不可欠となる。一方、申請者は、ステロイド外用剤を反復塗布すること自体が、痒みの原因となり得ることを報告してきた。ヒスタミンの4番目の受容体を阻害するH4受容体拮抗薬は、ステロイド外用薬の抗炎症作用を高め、且つ、ステロイドが引き起す痒みを改善することを本研究により明らかにした。H4受容体拮抗薬は、長期ステロイド外用療法をより安全に実施する上で有効な治療薬となり得ると考えられた。
著者
日置 幸介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

GNSS衛星を利用した観測によって地震に伴う電離圏全電子数の異常に関する総合的な研究を行った。本研究では地震十分後に生じる異常の振幅と背景となる電離圏全電子数と地震のモーメントマグニチュードの関係を定式化した。また地震直前に電離圏全電子数に異常が生じることが2011年東北沖地震によって発見されたが、本研究では数多くの地震のデータ解析から、異常が始まる時間がM9クラスで40分前、M8クラスで20分前であること、全電子数の変化率でみた異常の大きさがMwと背景全電子数の関数として表されることを明らかにした。また異常の空間構造から、地震前に地表に発生する正電荷が原因である可能性が高いことがわかった。
著者
藤原 保明
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

young や week などの語頭の「入りわたり」は一般に子音であり、day, cow, go などの二重母音の第二要素 [i, u] は母音の「出わたり」とみなされている。しかし、これらの「出わたり」を英語の正書法、音韻上の機能、語源、および語彙借用の時期などの情報を統合して分析した結果、いずれも子音であり、「出わたり」は語中や語間での「母音連続」の回避のみならず、中英語期の「母音の割れ」、「語末のあいまい母音の消失」、中英語末期から近代英語期にかけての「大母音推移」などに深く関わっていることが明らかとなった。それゆえ、これらの成果は英語の主要な通時的音韻研究の見直しを迫ることになる。
著者
藤代 節 庄垣内 正弘
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究課題はヤクート(サハ)語の英雄叙事詩オロンホの調査研究である。2年間に集中的に英雄叙事詩およびヤクート語について帝政ロシア、旧ソ連邦、現ロシア共和国の各時代を通じて著された関連文献の調査、整理、テキスト等の基礎的データの入力作業を行った。初年度にはロシア科学アカデミー東方学研究所にて帝政ロシア時代のサハ語資料の閲覧、検索などをおこなった。また機会を得て、サハ共和国内の共和国立図書館などにおいてもオロンホ資料に関連する文献調査を行い、ヤクート語話者あるいはヤクート語周辺の言語の話者等に研究協力を依頼し、オロンホに関連しての調査研究を行った。本研究課題の成果としては研究代表者の藤代、研究分担者の庄垣内がともに各自学術論文、出版物、また研究発表等を通じて随時、発表してきた。本研究課題の実施期間を通じて、サハ(ヤクート)共和国内で出版されたヤクート語学や文学に関連する文献も多く収集することが出来た。これらは特にここ2、3年に飛躍的に入手が容易になった出版物である。本研究課題を遂行して、研究成果全体、特にオロンホのデータを蓄積じたものを刊行すべき必要性を強く感じている。これらの学術文献におけるオロンホの扱い方及び未だ数量的には大量とは言えないがオロンホテキスト資料を今後も有効に活用して、オロンホのデータ蓄積を大きくしていきたい。研究代表者等は近い将来にオロンホデータに言語学的分析を加えたものを出版することを目指している。