著者
中島 健二 中曽 一裕 古和 久典 YASUI Kenichi 安井 建一
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

我々はこれまでにParkinson病(PD)の発症要因および増悪因子を検討する中で,PD患者における血漿高ホモシステイン(Hcy)の存在を報告してきた(Yasui et al.,2000).今回高Hcy血症の生じる機序を検討するため,20例の未治療PD患者において,L-dopa内服前後の血漿Hcy及びメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)遺伝子多型を検討した.PD患者のL-dopa内服前の血漿Hcy値は11.0±4.5μMで健常対照群(n=55)の10.2±5.3μMと有意差を認めなかった.一方,L-dopa内服後の血漿Hcy値は18.8±13.5μMであり,内服前と比較して有意な上昇を認めた.さらに血漿Hcy値をMTHFR遺伝子多型別にみると,C/C型(wild)では10.9±1.6μMから14.6±2.4μMへ,C/T型では10.3±4.0μMから14.1±4.2μMへ,T/T型では11.9±7.1μMから29.3±21.8μMへと上昇し,いずれも有意な上昇であり,特にT/T型では顕著だった(Yasui et al.,Acta Neuro Sca in press).さらに,高Hcy血症は血管障害の危険因子であるため,L-dopa内服PD患者における動脈硬化性変化を頸動脈超音波検査で検討した.PD群(n=100)では健常群に比して有意に中内膜複合体厚が高値であったが,L-dopa非投与PD患者では健常群と有意な差を認めなかった.さらに血漿Hcy値,MTHFR多型を同時に検討したところ,MTHFR 677T/T多型を有するL-dopa投与PD患者においては高Hcy血漿を伴う頸動脈中内膜肥厚が認められた.以上よりPD患者群における頸動脈中内膜肥厚への,L-dopa内服に伴う高Hcy血症の関与が示唆された(Nakaso et al.,J Neurol Sci 2003).また,53例のPD患者においてHcy産生の中間代謝産物s-アデノシルメチオニン(SAM)およびs-アデノシルホモシステイン(SAH)を測定してSAM/SAH比を算出し,臨床型と比較検討した.同比は罹病期間が長くなる程,またwearing off現象を有するPD患者において低値であったが,有意差は無かった.
著者
岡田 健次 井上 大志 山中 勝弘 江本 拓央 山下 智也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

大動脈解離の発生機序は未解明であり、治療法も発症後早期の緊急手術が選択され、新規の予防法および進展抑制法の開発が急務である。本研究の目的は、ヒト大動脈解離手術サンプルの単一細胞遺伝子発現解析を行い、病変部の炎症細胞と血管細胞の単一細胞ごとの遺伝子発現を調査することで、大動脈解離発生メカニズムの一端を解明することである。解離病変に特異的な遺伝子発現から関連分子を特定し、蛋白レベルでの解析も加えて病態との関係を検証する。新規治療標的の可能性のある炎症細胞とその関連分子に対して動物モデルによる介入実験を行い検証する。
著者
伊藤 裕才
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

軟体動物頭足類(イカやタコ)の表皮色素胞は黄色から紫色までの様々な色素を含んでいる。これらの色素は着色料として利用できる可能性があるが、色素成分はオンモクローム類であること以外は不明である。そこで主にスルメイカを対象に表皮から色素を抽出し、それら全成分を分析するHPLC分析法を開発した。分析の結果、黄色、赤色、紫色といった複数の色素の観測に成功した。さらにスルメイカ抽出液から紫色色素をクロマトグラフィーによって単離精製した。組成分析の結果、紫色素は硫黄原子を含んでいることが強く示唆された。
著者
加藤 玄
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

アキテーヌ公領を当時の社会的諸関係や諸制度の投影=領域として捉える視点から、本研究は以下の3点を論じた。最初に、フランス学界における領域史の研究動向の整理を行った。次に、エドワード1世の大陸所領巡幸路を確定し、王が都市やバスティードに頻繁に立ち寄りつつ、支配領域をくまなく巡ったことを示した。最後に、領域横断的な貴族の活動を具体的に解明した。以上の研究を遂行する中から、アキテーヌ地方の領域的性格の歴史的形成と変遷の検討という視点を得た。この問題を明らかにするためには、中世から近世に及ぶ長期間を扱う必要があろう。
著者
伊藤 泰介
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

円形脱毛症病変部の毛包周囲には著明なリンパ球浸潤が観察される。今回の実験を通して、その機序がTh1細胞、Tc1細胞の集合を誘引させるケモカインであるCXCL10が毛包周囲に強く発現し、また円形脱毛症ではそれに対する細胞走化性が亢進していることが明らかになった。急性期のみならず慢性期でもCD8陽性Tc1細胞が持続的に浸潤していた。この走化性を阻害することが治療につながると考えられるが、治療ガイドラインにて推奨されている抗ヒスタミン薬にその阻害効果がみられることがわかった。
著者
山本 昌 勝見 英正
出版者
京都薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、インスリンに各種吸収促進剤を併用した際のインスリンの脳移行性について検討した。その結果、 N-アシルタウリンの一種である sodium methyl lauroyl taurate (LMT) や sodium methyl cocoyl taurate (CMT) の併用により、血漿中インスリン濃度は上昇したものの、インスリンの脳移行性は逆に低下することが認められた。また、他の吸収促進剤をインスリンと併用した際も同様の結果が得られた。以上のことから、これら吸収促進剤は、インスリンの脳移行性には効果が見られないものの、経鼻投与後の全身循環系への移行性を改善できることが認められた。
著者
工藤 大介 内田 雄介
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

ビジョントレーニングの効果を定量的に評価するため、バイオマーカーの導入を検討した。指標としてBDNF(Brain-derived neurotrophic factor;脳由来神経栄養因子)を用いた。自作装置で動体視力を測定、トレーニング前後の被験者の血清、血漿BDNF濃度を測定し、動体視力との相関を調べた。結果、トレーニング前後での血清および血漿BDNF濃度は、血清では増加したが血漿では減少し、統計的に有意であった。動体視力との有意な相関は認めなかった。(第119回日本眼科学会総会発表;2015年4月)トレーニング前後で変化することから、BDNFはバイオマーカーとして利用出来る可能性がある。
著者
中田 兼介
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

クモでは、交尾の際にオスがメスの交尾器を破壊して、その再交尾能力を奪う種類がいることが知られている。ゴミグモ属は、そのような種が最もたくさん見られると予想されているグループだが、その中でマルゴミグモ種群に属するクモでは交尾器破壊についてわかっていないことが多く、本研究では交尾行動とオスの交尾器の形を詳しく観察し、またこれまで知られている他の種とも比較することで交尾器破壊の進化について解明する。
著者
加茂 綱嗣 平舘 俊太郎 轟 泰司
出版者
国立研究開発法人 農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ヒマラヤシーダーの落葉は野外において著しく雑草の成長を阻害することから、その成分の同定、土壌中での活性評価等を試みた。各種機器分析により、活性成分はアブシジン酸と同定した。火山灰土壌、沖積土壌および石灰質土壌のいずれもこの化合物の植物成長阻害活性を低下させなかった。試験により土壌へ吸着されにくいことが判明し、その理由は極性よりは立体的な要因が大きいことが示唆された。また、年間を通して落葉量を測定した結果、春から夏に落葉のピークがあることが確認された。その時期は落葉直後のアブシジン酸濃度も最も高かった。このことから、野外においてもアブシジン酸が雑草の成長抑制に寄与している可能性が示唆された。
著者
野村 真理
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ナチ・ドイツによるユダヤ人迫害(ホロコースト)は、一般によく知られているが、その最大の犠牲者は東ヨーロッパのユダヤ人であり、また、そのさい東ヨーロッパ現地の住民が迫害に加担した事実は、ほとんど認識されていない。本研究の成果である著書『ガリツィアのユダヤ人--ポーランド人とウクライナ人のはざまで』(人文書院、2008年)は、現在ではウクライナに属する東ガリツィアを例に、文献資料の他、回想録や同時代の日記史料を用い、現地住民とホロコーストとのかかわりを人びとの心性にまで立ち入って解明した日本ではほとんど唯一の著作である。
著者
小林 良樹 神田 晃
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は、喘息を高率に合併する難治性好酸球性気道炎症である。治療抵抗性の鼻ポリープや膠状分泌物(ムチン)の発育・蓄積が問題となり、QOL (生活の質)を著しく低下させている。好酸球性ムチンの正体は好酸球細胞外トラップであるが、その病態との関連性は明らかにされていない。細胞外の病原体を傷害する好中球細胞外トラップの形成メカニズムから好酸球性ムチンの制御へのヒントを得て、好酸球ペルオキシダーゼ(EPX)に着目した。好酸球性ムチン中にEPXに対する自己抗体の存在を証明し、その病態への関与を明らかにすること、さらにEPX抗体を標的にした新しい治療戦略の開発を目指す。
著者
長瀬 洋之 杉本 直也 小林 このみ
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

気管支喘息では、白血球の一つである好酸球が関与した気道炎症によって症状が出現する。現在の治療薬の主軸をなす吸入ステロイド薬は優れた抗炎症作用を持つが、いまだにコントロール不十分な重症喘息が2万人以上存在する。気道炎症は免疫系で調節されているが、ストレス等を媒介する自律神経系も免疫系を調節することが示されつつある。我々は、自律神経である副交感神経が分泌するアセチルコリンが直接好酸球を活性化することを見出した。本研究では、神経系によって、好酸球を中心とした炎症がいかに制御されるかを検討し、神経系-免疫系の連関機構を明らかにすることで、自律神経を視野に入れた新たな喘息治療戦略の確立を目指したい。
著者
安渓 遊地
出版者
山口県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

2年度にわたり沖縄県西表島の西部地区を中心に研究をおこなった。古くからの在来集落でありながら、まとまった記録がほとんど作成されてこなかった星立(干立)集落で民俗や方言の記録づくりに意欲をもつ住民の方(与那国茂一氏)との共同作業をおこなった。執筆者との密接な連係の上で、1)下原稿の校合、2)目次の作成、3)訂正・増補、4)追加執筆すべき項目の確認をへて、5)ワープロ入力へ進めた。その後、集落の最大の祭である節祭に合せて滞在し、執筆部分の多くをしめている節祭の実際を参与観察した。初年度に、400字づめ原稿用紙150枚分の下原稿をつくり、2年度には、それを200枚相当の印刷用の版下として話者に贈呈した。こうした地域誌づくりは島の住民の大きな関心を呼び起こした。例えば、祭の中のある芸能の台詞に細部で食い違う複数の伝承がある時、どれを記録に収録すべきかをめぐって激しい議論が公の場でも闘わされることを知った。「記録」とそれにともなう「撹乱」の問題は、文化人類学をはじめとする野外科学の研究倫理の中心的なテーマのひとつであるが、調査期間中に干立集落では、祭の撮影等の取材について「1、取材許可の腕章を付ける、2、ともに祈りをささげる、3、立ち入り禁止区域を守る、4、公表の前に許可を求める」の4条件を住民が主体となって決定した。2年間の研究の結論としては、1)たとえ、話者が筆をとるにしても、「記録」という行為はそれにともなう「撹乱」について事前に十全の配慮を要すること。2)「記録」のガイドライン作りも、住民が主体となって進めるものであって、外部の研究者の役割は、あくまでそのための助言程度に止まるべきであると考えられた。
著者
田崎 晴明
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

トポロジカル物質や強相関量子多体系の基礎理論に数理物理学的な方法と視点からアプローチし、長期的には、数学と物理学の新たな交流とそれに伴う発展の基盤作りに資することを目指す。具体的には、量子スピン系、相互作用する多粒子系などの量子多体系におけるトポロジカル相、特に対称性に守られたトポロジカル相(SPT 相)の理解を深めるため、厳密な指数定理の拡張と開発、非自明なトポロジカル相が出現する条件の探索、Lieb-Schultz-Mattis 型の定理の拡張などに取り組む。平坦バンド系などを手がかりに超伝導状態、超固体、トポロジカルな量子相を実現する可解模型を考案することも射程に入れる。
著者
森川 友義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

公共選択理論やゲーム理論に基づいて政治に関する仮説をたてる場合、人間は経済的利益を追求する利己的な動物との前提条件を付するのが一般的である。しかし、複数の人間の自己利益と公共利益が並存するような「社会的ジレンマ」等の研究で分かってきたことは、人間は必ずしも自己の利益を追求するばかりではなく、自己を犠牲にしてまでも協力関係を築く可能性があるというということである。研究者の間では、このような人間は例外的としてとらえられてきた経緯がある。しかしながら、本研究では、このような協力的な人間が存在するという至近メカニズム(proximate mechanism)における事実を進化過程にまでさかのぼった根源的メカニズム(ultimate mechanism)からしたところ、条件が整えば、むしろ人間の進化過程では、遺伝子に組み込まれた資質として存在することができることを、数学的手法とシミュレーションを用いて検証した。その条件とは、(1)囚人のジレンマでは、通常の二択ではなく、ゲームに参加しないという選択を持つこと、(2)うそをつく能力を持つこと、(3)うそを見抜く能力を持つこと、(4)できれば、タカ派ハト派ゲームやゼロサムゲームといった別のゲームの選択肢が存在すること、であり、このような条件のもとに2万世代でどのように進化してきたのかについてコンピューターシミュレーションを行って検証したところ、うそをつく能力とうそを見抜く能力は拮抗しつつも、協力関係を促す遺伝子は確実に増殖することを発見した。この二年間に著者の関心は、政治脳へのシミュレーションアプローチから、紛争における自己犠牲の可能性、政治知識と政治脳の関係、男女間の配偶者選択における政治脳の可能性と広がった。特に現在の世界情勢を見るとき、紛争地域における自爆テロは頻繁に発生しており、おそらく遺伝子レベルにおいて戦争状態における自己犠牲の傾向がみられる点における関心が強くなってきている。
著者
守 健二
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

マルクスの初公表の経済学研究の中には、分配の変化あるいは技術変化に起因する古い均衡から新しい均衡への収束・非収束という、『資本論』の既存の論理には解消されない中短期的な変動分析があり、それは新オーストリア学派のトラヴァース分析に接続可能な豊富な内容を有していた。本申請は、『新マルクス・エンゲルス全集(MEGA)』に基づいて、未検討の経済学草稿を網羅してマルクスのトラヴァース分析の全体像を再構成し、さらにその理論的意義と限界を、新オーストリア学派のトラヴァース分析と比較検討することによって解明する。
著者
齋藤 真木子 水口 雅
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本人の急性壊死性脳症(ANE)の病態としてサイトカインストームが推定されているが、欧米の家族性反復性急性壊死性脳症(ANE1)のように単一遺伝子疾患であるかどうか、未だに不明である。ANE1原因遺伝子RANBP2の産物であるRANBP2の結合蛋白に着目し、ANE患者24例においてCOX遺伝子群の変異・多型解析を行った。COX11遺伝子の全エクソンに変異は認められなかったが、1例にCOX10exon3のヘテロ接合一塩基置換c.260C>T(T87I)があった。また、COX15にはMAF<0.01であるrs2231682のマイナーアリルを有する症例が3例あった。COX群はミトコンドリア電子伝達系に関わっており、エネルギ-産生に必要である。また、COX遺伝子群はANEと病態の類似するLeigh脳症の原因遺伝子として報告されている。ANE患者で認められたこれらの一塩基置換がミトコンドリアエネルギー産生に影響を及す可能性が示唆された。
著者
原 清治 山内 乾史 浅田 瞳
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

いじめはこれまでにも子どもたちや社会の様態にあわせてさまざまに深化してきた。今日では「匿名性」を特徴とするネットやケータイを利用したいじめが多く発生している。本研究ではネットいじめの発生要因にについて分析し、ネットいじめの新たな視点を提供することを目的とした。結果として、ネットいじめの要因として(1)ケータイの依存度の高さ(ケータイの使用時間、メールの送信回数)、(2)性別、といった従来の要因だけではなく、(3)学力移動によってネットいじめの被害に大きな差異が生じることが明らかとなった。また、(4)学校によってネットいじめの被害に大きな差異はみられず、学校文化による影響をネットいじめは受けにくいことも明らかとなった。
著者
乾 博
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

ビタミンB12酵素であるメチルマロニル-CoAムターゼの活性、発現レベルについて、B12欠乏の影響について欠乏ラットを作製し検討した。その結果、肝臓におけるポロ酵素活性は、正常なラットにおいてもトータル活性(ホロ+アポ酵素活性)の5%以下であった。一方、B12欠乏ラットではホロ活性はほぼ消失したが、トータル活性の異常な上昇が観察された。ウエスタンブロッティングを行ったところ、このトータル活性の異常な上昇は、本酵素タンパク質の異常な増加によることが確認された。一方、real-time PCR法でmRNAレベルを調べたところ、欠乏ラットでは正常ラットに比べむしろ低下していた。したがって、B12欠乏によるメチルマロニル-CoAムターゼタンパク質の異常な増加は、転写レベルによるものではなく、おそらく翻訳レベルもしくはタンパク質の安定性などの変化に起因するものと考えられる。COS-7細胞を用いて培養細胞系でも検討したが、どうようにB12欠乏によるメチルマロニル-CoAムターゼタンパク質の異常な増加が観察された。B12欠乏ラットにおける肝臓機能について検討した。その結果、血漿アラニンアミノトランスフェラーゼが異常に上昇しており、肝障害の発症が示された。また、細胞増殖の指標であるproliferating cell nuclear antigen(PCNA)の発現レベルを調べたところ,欠乏ラットでは肝臓の細胞増殖が異常に活性化していることが示唆された。これらの原因についてしらべたところ、肝障害はメチルマロニル-CoAムターゼホロ活性の低下に起因すること、一方細胞増殖の異常な活性化はもう1つのB12酵素であるメチオニン合成酵素が関係していることを見いだした。
著者
山本 真 飯島 典子 三浦 哲也
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

日中戦争前期(1937-1941)、中国からの短波ラジオ、教科書、抗日宣伝雑誌、映画、歌曲などを通じて、サラワク華僑に対して、民族意識や祖国の抗戦が宣伝された。これに応え、華僑は救国義捐金運動を展開した。太平洋戦争時期(1941-45)には、サラワクは激戦地とはならず、華僑を含む現地住民への大規模な虐殺は概ね発生しなかった。しかし、日本の軍政は「ビンタ」や犯罪容疑者に対する酷刑などにより威圧的様相を強く呈した。また、資源の収奪、既存の流通網の寸断、統制経済は、民生を混乱に陥れた。中国から注入された抗日戦争のイメージと太平洋戦争での経験が複合することにより、華人の対日歴史記憶が形成された。