著者
後藤 知子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

うつ病患者では、血清亜鉛濃度の低下、脳内セロトニン分泌の低下などが臨床報告されてきた。そこで、成長期からの潜在的亜鉛欠乏が精神発達・気分障害に及ぼす影響を明らかにするためラットを用いて検討した。睡眠時(明期)に対する活動時(暗期)自発行動量は、亜鉛欠乏食給餌12日目で有意に低下し、以降は低値を維持し、うつ様行動の可能性が考えらえれた。実験食給餌0~4日目のラットで、視床下部外側野におけるセロトニン・ノルエピネフリン放出量をマイクロダイアリシス法にて追跡した。その結果、亜鉛欠乏食給餌4日目の高カリウム刺激時におけるセロトニン・ノルエピネフリン放出量が低下傾向を示した。
著者
澤田 惠介
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

複雑形状を有する境界層埋没型ボルテックスジェネレーター(SVG)周りの圧縮性粘性流れ場解析のために,不連続ガレルキン法に基づく非構造格子法を構築した。既存の風洞試験結果の再現によって解析手法の検証を行ったのちに,ベーン型や2段直列のダブレット型とウィッシュボーン型SVGの解析を行ない,SVGで生成される縦渦の融合や渦核位置について検討した。2段直列型のSVGでは,初段で形成された縦渦が後段で生成された渦と融合することによって渦度を保つとともに,後段のSVGを乗り越える際に渦核位置が壁面からリフトアップすることによって壁面近くの強い散逸領域を逃れ,縦渦の効果が下流側に及ぶことを見出した。
著者
枇榔 貞利 宮田 昌明 鄭 忠和
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

我々は、サウナ浴を用いた温熱療法が臨床的に生活習慣病(高血圧症、糖尿病、高脂血症等)の患者の低下した血管内皮機能を改善させること、また、ハムスターを用いた動物実験において内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)を遺伝子・蛋白レベルで増加させることを明らかにした。そこで本研究の目的は、温熱療法の血管内皮機能改善効果が動脈硬化病変の発生・進展を抑制しうるかを検討することである。動脈硬化発症モデル動物としてapoproteinEのノックアウトマウスを用いた。まず、小動物用乾式サウナ装置を用いて、深部体温が約1度上昇する温度を設定するための予備実験を行い、41度15分間、その後34度で20分間のサウナ浴が至適条件であることを確認した。apoproteinEノックアウトマウスでは、12週令においては大動脈基部において動脈硬化巣が確認できるので6週令のapoproteinEノックアウトマウスに対してサウナ浴の効果を検討した。6週令のapoproteinEノックアウトマウス20匹を2群に分け、1群に対し上記の条件で1日1回、1週間に5回のサウナ浴を施行した。コントロール群に対しては、サウナ群と同じ時間だけスイッチを切った室温のサウナ装置に同様の期間入れることを行った。10週間のサウナ浴後に、麻酔下にsacrificeし、大動脈を摘出し、その標本に対し脂肪染色を行い、顕微鏡下に大動脈基部の動脈硬化巣の面積を計測し、両群間での比較を行ったところ、サウナ群では0.07±0.03mm^2であり、コントロール群では0.22±0.14mm^2と減少傾向が認められた。すなわち、アポEノックアウトマウスにおいて10週間の温熱療法が、大動脈の動脈硬化形成を抑制したことは、ヒトにおいても温熱療法が動脈硬化性疾患の発生・進展を抑制する可能性を示唆している。
著者
江村 隆起 古村 眞 渡辺 栄一郎 尾花 和子 佐藤 毅
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

無用の長物として扱われてきた虫垂は、安易に切除される傾向にあったが、虫垂の免疫学的な重要性が報告され、虫垂を失うリスクが知られるようになった。そこで、虫垂炎を予防し、虫垂を残していくことが重要である。近年、急性虫垂炎の虫垂内は、口腔内細菌であるフゾバクテリウム属菌が優勢であることが報告された。腸管内へ移行し難い口腔内細菌が、虫垂細菌叢で優性となる原因の究明が、虫垂炎の病態解明につながる可能性がある。そこで、口腔内細菌叢と虫垂炎の関連について検討し、口腔内環境改善による虫垂炎の予防法について検討する。
著者
中田 正範
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

概日リズムは摂食・エネルギー代謝に重要である。本研究では弓状核、室傍核を標的とした時計遺伝子BMAL1のKOマウスを4系統作成・解析を行ったが、いずれのマウスも過食と肥満を呈する事はなかった。一方、室傍核のNesfatin-1ニューロンの活動リズムが、摂食リズムを調節する事、Nesfatin-1ニューロンのリズム失調が肥満、糖代謝異常、高血圧を引き起こす事を明らかにした。さらに、Nesfatin-1ニューロンの活動リズム形成は、血糖上昇とFGF21により制御されていた。このことから、末梢代謝シグナルによるNesfatin-1ニューロンのリズム形成が、摂食リズムに重要であることが示唆された。
著者
細谷 実 海妻 径子 千田 有紀 高橋 幸 Lee Rosa
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

韓国では社会的地位を得た女性と草の根フェミニズムとの連携がうまくいかず、女性登用が保守主義・新自由主義への対抗となっていない。新自由主義の進展は、性役割やミソジニーを強化する一方、女性就業者を増加させ、就業機会をめぐる軍事主義と女性との新たな結びつき(ROTCなど)を生み出していた。軍事主義的保守団体の女性運動家へのインタビューにおいては、民族主義以上に反共主義が強調されていて、興味深い。他方英国では、プア・ホワイトとも結びつくと言われる排外主義勢力と、エスタブリッシュ層を基盤とする新保守主義勢力とは、必ずしも一致していないが、労働党勢力と多元主義的価値観支持層との結びつきは強固である。
著者
青柳 悦子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

現在、自由化と市民社会の構築がめざましい勢いで進展しているマグレブ地域(アルジェリア、チュニジア、モロッコ)で新たに展開されつつある、フランス語を中心とする表現活動に注目し、21世紀における社会変革と文化創出の関係を照らし出す。とりわけ、アルジェリアで近年活発化した、比較的若い世代による日本式マンガを用いた創作活動に注目し、グローバル性とローカル性を併せ持ちつつ社会的共生意識を涵養する新たな大衆的表現活動として、その特質と意義を分析する。さらに、文学など他の表現ジャンルとの関係も含めた総合的な研究と、現地の文化活動の発展への寄与をめざす。
著者
塩谷 英之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

食後、心拍数、血圧などの血行動態は大きく変化するため、しばしば生体に悪影響を及ぼす。従って食後の血行動態の詳細を明らかにすることは健康教育のために重要である。そこで本研究では食事が心拍数、血圧、自律神経活動等に及ぼす影響について(1)食事摂取量による影響(2)食事摂取時間による影響(3)若年健常者、壮年健常者、糖尿病患者における影響の違いの3つの観点から研究を行った。食事量の影響に関しては食事量の増大により、食後の心拍数の増大がより顕著になり、中心血圧が低下することを明らかになった。食事時間に関して特に夕食摂取時間が遅くなることが、深夜の心拍、血圧、自律神経活動のリズムを大きく障害することが明らかになった。若年健常者、壮年健常者、糖尿病患者における比較においては比較的軽症の糖尿病患者においても食後の自律神経活動の低下の結果、上腕血圧のみならず、中心血圧の低下が生じることが明らかになった。
著者
田中 義行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

辛味はトウガラシ果実の重要形質である。辛味の強弱に関する嗜好性は、国・地域・用途で異なっており、辛味成分カプサイシノイド含量を制御できる育種技術が求められている。これまでに、生合成経路の一遺伝子であるputative aminotransferase(pAMT)遺伝子の機能欠損がカプサイシノイド含量を激減させることを示した。さらに近年、1.カリブ 原産の栽培種Capsicum chinenseには、トランスポゾンの挿入と転移を介した様々なpAMT変異が存在すること、 2.トランスポゾンの挿入位置が辛味の強弱と相関していることを明らかにしつつある。これら種々のpAMT変異を導入し、その遺伝子マーカーを利用することで辛味程度を簡便に調整できる育種技術を確立できる可能性がある。本研究課題では、pAMT遺伝子の構造変異がトウガラシの辛味低下を引き起こすメカニズムを解明し、それに基づいてカプサイシノイド含量の新規調整法を確立する。本年度は、辛味系統のレッドハバネロを元にした戻し交雑集団を用いて3種の変異型pAMTとカプサイシノイド含量に及ぼす影響を調査した。結果、戻し交雑集団においても異なるpAMT遺伝子型はカプサイシノイド含量を異なる程度に低下させることを明らかにした。さらに戻し交雑を続けることで、辛味程度だけ異なるトウガラシ系統を育成できると思われる。また研究の過程で、新規のpAMT変異アレルも発見し、塩基配列を調査し、その構造変異を明らかにした。新規アレルにおいてもトランスポゾン挿入が認められ、Capsicum chinenseのpAMTアレルの多様性にトランスポゾンが関与することが示唆された。
著者
白井 睦訓
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

細胞内寄生性細菌である肺炎クラミジア(我々が同菌日本株の全ゲノムを初めて解読し、種々のユニークな機能を解明)は、肺炎の主要原因菌で動脈硬化病変部にその感染がほぼ100%検出される。クラミジアは約3日間の生活環で動物細胞内で、封入体を形成した後、細胞外へ放出されることから、その生活環とアポトーシスとの関係も解明が期待される。また、同菌は感染細胞内で封入体膜を形成して、数日のlife cycleを経て増殖し細胞外に放出されるが、これまでに我々はアポトーシス制御因子Apaf-1欠失細胞ではクラミジア増殖が高度促進されており、この封入体膜タンパクの1つIncA2(カスパーゼをリクルートするドメインCARDを持つ)がcaspase-9の活性を増強したり、ミトコンドリアタンパクとの相互作用により宿主細胞アポトーシスを制御して菌の増殖を制御していることを発見している。21年度では封入体膜タンパクIncA2がApaf-1やcaspase-9などからなる宿主アポトゾームをいかなる機構により制御されていることがわかった。すなわちApaf-I欠失細胞で肺炎クラミジア感染増幅、caspase9欠失で感染低下があり、caspase9阻害剤による肺炎クラミジア増殖抑制機序の解明ができた。また、クラミジア封入体膜・IncA2と宿主アポトソームの相互作用も確認できた。22年度はさらにApaf-1のクラミジア感染抑制に機能するドメインの同定を試みたが、とくに特定の部位としてクラミジアに特異的に作用するものではなく、Apaf-1のもつカスパーゼ活性化の制御によるアポトーシスの制御によってクラミジアの増殖が影響されることが解明された。またクラミジア封入体内にcaspase9の存在が形態的にとらえることができ、クラミジアが増殖にcaspase9を利用しているか、細胞質内のcaspase9を減少させてアポトーシスを制御することがクラミジアの増殖に関係していることが示唆された。caspase3やcaspase8の変化は2時的なものでクラミジアの増殖に直接的に関与するものでないことも示された。
著者
上原 章寛
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

塩化カルシウム6水和物は、常温で液体の濃厚電解質である。濃厚電解質中でのイオンの挙動は希薄な電解質水溶液中と異なる挙動を示すため、本研究ではこの液体を「常温無機イオン液体」と名付け、次のことを明らかにした。ウランイオンはU(VI)からU(V)に電気化学的に還元され、その後不均化反応によってU(VI)及びU(IV)を生成する。また、希薄な電解質中では短寿命のU(V)は常温無機イオン液体中では比較的長寿命で同化学種を電解吸光分光法により検出することに成功した。U(VI)を含む水相と酸化還元体を含む有機相の界面において水相中のU(VI)の還元及び有機相の還元体の酸化に起因する電子移動電流を検出した。
著者
知見 聡美
出版者
生理学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

大脳基底核と小脳はどちらも、随意運動を行う上で非常に重要な役割を果たしており、変調を来すことによって運動が著しく障害されることが広く知られている。運動の指令は、大脳皮質の一次運動野、補足運動野、運動前野などの運動関連領野から脊髄に送られるが、大脳基底核と小脳もこれらの皮質領域から運動情報の入力を受け、情報処理を行ったあと、視床を介して大脳皮質に情報を戻すループ回路を形成することにより、これらの大脳皮質領域の活動調節に寄与している。本研究は、大脳基底核から視床への情報伝達と、小脳から視床への情報伝達が、随意運動を制御する上で果たす役割について明らかにすることを目指す。
著者
渡部 洋 松川 節 古松 崇志
出版者
大谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

元代から明代初期までの多言語史料(碑文華夷訳語)を解読分析し、史料の1つ達魯花赤竹公神道碑銘の注釈書(「漢文・モンゴル文対訳「達魯花赤竹君之碑」(1338 年)訳注稿」2012 pp107-238)を『大谷大学真宗総合研究所研究紀要』第29号に掲載した。
著者
高久 暁
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ドイツの音楽家・音楽学者エタ・ハーリヒ=シュナイダー(1894~1986)は、日本における職業的で本格的なチェンバロ演奏の祖となった古楽演奏のパイオニア、外国人による日本伝統音楽研究の先駆者、シェイクスピアの全ソネットや日本の昔話を翻訳した翻訳家、著名なスパイ、リヒャルト・ゾルゲと親密に交際し、東京裁判の傍聴記録を残した「時代の証言者」など、音楽家や音楽研究者の枠を超えたさまざまな側面を持った人物であるが、その業績の全体像はいまだに明らかになっていない。当研究は彼女の再評価を目的として、彼女の業績と経験の総体を書誌を作成してまとめ、現代における彼女の存在の重要性を社会に問うものである。
著者
吉村 均
出版者
(財)東方研究会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

チベット仏教各宗派はラムリム(菩提道次第)に基づき学習・実践をおこなうが、それはインドのナーガールジュナ(龍樹)による苦しみからの解放の方法としての仏教の体系化に基づくもので、無我とトンレン(自分の楽を与え他の苦を受け取る)の瞑想を核とするロジョン(心の訓練法)はそのエッセンスである。近年の欧米での仏教への関心はその実践性にあるが、上記の理解を踏まえて日本仏教の道元や親鸞の教えを読み直すことで、現代社会における可能性を探った。
著者
窪田 香織 桂林 秀太郎 岩崎 克典
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

抑肝散には神経栄養因子様作用があり、神経保護や神経突起(軸索)伸展・神経新生作用を持つ可能性が示唆されていたが、変性神経に対する保護・機能改善効果の詳細は未だ不明であった。そこで当研究では、ニューロン・アストロサイト共培養系オータプス培養標本を用いてAβ処置による神経変性モデル、Sema3A処置による軸索特異的変性モデルなどの新規神経変性モデルを構築した。次にこの神経変性モデルを用いて神経変性や軸索伸展に対する抑肝散の効果を確認した。抑肝散には軸索変性に対して改善作用があることが示唆された。さらにこの効果には神経栄養因子BDNF, NGFのほか軸索伸張阻害因子Sema3Aの関与も示唆された。
著者
上杉 繁 玉地 雅浩
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

新しい原理にもとづく身体動作支援ツールも射程に捉え,全身に張力を伝播する機能をどのように拡張することで,身体のある部分から身体全体へ,身体全体から部分へという関係に作用して,運動機能の向上へつなげることができるのかという問題に取り組む.そこで,身体内部で生じている筋膜の作用を身体表面に外化し,その機能を操作・計測可能とする独自の方法を考案する.そして,①実験用張力伝播スーツの開発方法を明らかにし,②張力伝播が効果的な運動の抽出とそのメカニズムの解明を行い,その成果に基づいて,③運動用張力伝播スーツの開発と効果検証を行う.
著者
成澤 知美 松岡 豊 越智 英輔
出版者
国立研究開発法人国立がん研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ライフスタイルの欧米化、がん治療の進歩により長期生存が期待される乳がんサバイバーは増加の一途である。心理的負担(がん再発不安と抑うつ)は、がんサバイバーにおいて最も頻繁に経験される未だ満たされていないニードであり、その対策が急務である。本研究課題は、乳がんサバイバーの全身持久力向上を目指して申請者らの研究チームが開発した運動プログラムによる介入の心理的負担に対する効果をランダム化比較試験で検討することで、従来の心理療法及び薬物療法を中心とした医療から当事者のライフスタイル変容を介した新しいヘルスケアモデルの基盤作りに挑む。
著者
室寺 義仁
出版者
高野山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究代表者は、サンスクリット文学の黄金期を迎えるグプタ朝期のサンスクリット仏教文化圏における伝統的アビダルマ教学と教義解釈の研究を遂行中である。研究対象は、主として当時の仏教思想界を代表する学匠であるヴァスバンドゥ(ca.400)の諸著作である。当該研究課題にかかわる研究として、まず「経部-初期Sautrantika-」と題する論考を公表し(『高野山大学論叢』39巻、2004年)、近時の「経量部(Sautrantika)」研究に対して新たな観点から根本的な問いかけを行った。その本格的研究として、初年度、ヴァスバンドゥの主著たる『阿毘達磨倶舎論』に表れる「経部」〔真諦・玄奘に共通する漢訳語。一方、「経量部」の語は荻原雲来に始まる和訳語〕の人々が主張する諸見解について、加藤純章(『経量部の研究』1988年)が行った、サンガバドラ(ヴァスバンドゥと同世代の後輩)が著した『順正理論』との比較考察を、再検証し、先行諸研究では十分には検討されて来なかった漢訳のみで伝わるアビダルマ教学の注解論書である『毘婆沙』3本(大正Nos.1545-1547)との比較吟味を行った。成果の一部は、「『阿毘達磨倶舎論』における'utsutra'」(『印佛研』54巻2号,2006年)と題し公にした。次年度(平成18年度)は、加えて、代表的大乗経典である『華厳経』「十地品」に対する現存する唯一の論、ヴァスバンドゥ作『十地経論』を参照しつつ、「金鉱石の比喩」解釈について分析を行い、成果の一部を、『望月海淑博士喜寿記念法華経と大乗経典の研究』に公表した。また、9月に高野山大学で開催された国際密教学術大会(ICEBS)において、華厳経研究パネルでパート発表(英文)を行った。最終年度(平成19年度)には、これらの成果を研究成果報告書(全106頁)としてまとめ得た。なお、本研究遂行の一環として、京大人文研における「真諦研究」会に参加し、『倶舎論』の漢訳初訳者でもある真諦を取り巻く5・6世紀の中国仏教界について多くの知見を得つつある。
著者
花山 奨
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究の成果は以下の3点である。1)初期の土壌含水量によって、土壌から田面水へのリン溶出量が異なり、また田面水中の植物プランクトンの増殖に違いが生じた。2)田面水中の水流が、大気―田面水間のガス交換を促進し、藻類の増殖に正の影響をおよぼした。3)巻貝の濾過摂食による緑藻類からの無機態リンの回帰率は、約0.2と低かった。また、巻貝による土壌表面の付着藻類の摂食は無機態リンの回帰を促進し、リン回帰量は巻貝の種類によって違いが生じた。