著者
松野 純男 松山 賢治
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

培養細胞を用いて、第2世代(非定型)抗精神病薬(SGAs)のメタボリックシンドローム(MS)誘発機序の検討を行った。神経細胞株を用いた検討では、運動神経系よりも交感神経系細胞株である PC12において、オランザピンが他の SGAよりも 5HT_<2C>受容体の mRNA発現を活性化することを認め、セロトニンを介した交感神経系の刺激により MSを誘発する可能性を示した。さらに、脂肪前駆細胞株 3T3L1を用いた検討によって、オランザピンが PPAR_γの活性化によって脂肪分化を促進することを認めた。以上のように、 SGAsのうち、特にオランザピンが脂肪細胞を直接刺激して脂質の取り込みを亢進させるとともに、交感神経系を活性化するという相乗効果によって肥満を引き起こすことを、培養細胞を用いて明らかにすることができた。
著者
斉藤 真一 浅尾 裕信 中島 修 武田 裕司
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

肥満に起因する慢性炎症は、インスリン抵抗性を惹起させ、2型糖尿病とその合併症(網膜症・神経障害・腎症・動脈硬化・認知症・易感染など)の基盤病態と考えられている。しかし合併症を発症する糖尿病後期は、必ずしも肥満を伴っていない。5-アミノレブリン酸合成酵素遺伝子破壊マウスは、肥満を伴わずに加齢依存的にインスリン抵抗性を発症し、5-アミノレブリン酸投与により糖代謝異常が改善される。このマウスで免疫学的解析により免疫異常(炎症惹起・免疫不全)の不可逆性の有無とその改善の可能性を検討でき、糖尿病合併症の発症制御の可能性を提案できることを期待している。
著者
加川 尚
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究ではメダカを用いて雄間競争時に攻撃行動をとる優位個体と逃避行動をとる劣位個体の神経ペプチドホルモン(バソトシン)の脳内作用機構を明らかにすることを試みた。優位個体と劣位個体において、バソトシンを高発現する神経の軸索の脳内投射領域が異なることが分かった。また、それぞれの軸索投射領域では、異なるサブタイプのバソトシン受容体が高発現することが明らかになった。さらに、これらの受容体のうち1つのサブタイプの遺伝子をノックアウトしたメダカを用いて2個体間の雄間競争を観察したところ、いずれの個体も高い攻撃性を示し、競争の決着がつかなくなる傾向がみられた。
著者
中山 周一
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2017年、2018年の国内梅毒トレポネーマ検体につき、分子型別、マクロライド耐性分布に関して検討を実施しMSM由来とheterosexuals由来とで大きな差異が有ることが判明し、報告した。2014~ 2018年の検体につき全ゲノム解析を試行し、計20検体で成功した。世界各国検体でのデータと比較解析を行い、日本株は中国株と最近縁の関係にあることを示すと同時にこの2国の株をほぼ細分化できる一塩基置換候補を抽出することに成功した。型別、マクロライド耐性分布で差異の見られた国内のMSM由来とheterosexuals由来株の差はこの全ゲノム解析によっても裏付けられた。
著者
柏村 征一 原 健二
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

覚せい剤アンフェタミン、メタンフェタミンはそれぞれ2つの立体構造(光学異性)が存在する。乱用されているのはd-体であるが、治療薬セレギリンの代謝物のメタンフェタミンは1・体である。治療薬か乱用薬かの判別のため、中毒作用に関する情報を得るために、光学異性体の識別分析は重要である。我々は本研究において、2つの試料調製法をガスクロマトグラフィー・質量分析法に応用を検討した。これらの方法は1.光学異性体分離用誘導体トリフルオロアセチルプロリルを珪藻土抽出カラムを使って簡易調製、通常分析に使うキャピラリーカラムによる分析、2.通常分析に使うヘプタフルオロブチリル誘導体を、気化平衡法で行い、固相マイクロ抽出により試料導入を行い、光学異性体分離キャピラリーカラムを使って分離、というものである。光学異性体GC-MSに関する、従来からの欠点の一つに、測定時間が長くなることがある。そこで、本研究では、分析時間の改善に力点を置いた。方法1は、内径の小さいカラムを高圧キャリアガスで使用することで関連物質まで含めて5分以内で分析できる条件を作成した。方法2は光学異性体分離カラムの特性より4から5分の短縮にとどまった。また、実用化ということから、血液、体組織試料への応用を試みたところ、試料中の脂質を有機溶媒抽出で除くことで、方法2の高感度分析が可能になった。これらの方法は、簡素な試料調製、分析時間の短縮化ということで法中毒学に有用であり、今後、実務分野での応用が期待される。
著者
中江 花菜
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、近代日本における洋風額縁製造の第一人者である長尾健吉が製作した洋風額縁の着想源・製造法およびその意匠の全容について明らかにするものである。東京藝術大学では、長尾が明治期中葉に東京美術学校に額装・納入した作品を150点超収蔵し、その作品は納入当時の額装を今日まで保っている。これらの作品を研究対象の中心に据え、長尾が西洋製の額縁の意匠や製造技法を取り入れながらも、日本の展示空間や風土に見合う額縁をいかに生み出し、洋画の発展に貢献したかを実証的に検証する。
著者
山下 隆之
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2011年以降の円高の下で、日本の製造業者は、輸出における為替差損を避けるために、海外での現地生産を進めた。この傾向は、産業空洞化として知られる脱工業化現象に対する懸念をかきたてた。しかし、2014年後半の円安により製造業者の一部に海外の生産拠点を国内に戻す動きが見られるようになった。この国内回帰が産業空洞化による損失を埋めることができるかどうか注目される。本研究は、為替変動に呼応する対外直接投資の動向が国内の雇用と経済成長に与える影響を、シミュレ-ション分析により明らかにする。
著者
赤塚 俊隆 松浦 善治 神吉 泰三郎
出版者
埼玉医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

我々はC型肝炎ウイルス(HCV)の感染性RNAを接種して単一のウイルスによる感染実験に成功したチンパンジー、1535と1536のPBLをEBウイルス(EBV)でトランスフォームすることにより、HCV特異的IgG抗体産生B細胞クローンが感染後どの時点で出現するかを検討した。同時に血清のIgG抗体価も測定し比較した。その結果2頭のチンプともに、ALTの上昇がみられた20週には血中にC抗原に対するIgG抗体が出現したが、E1、E2抗体の出現は殆ど認められず、1536においてのみ45週以降になってE2抗体が出現、10週にわたる抗体価の上昇を認めた。しかしEBV-transformationの結果では、C、E1、E2いずれの抗原に対するIgG抗体産生B細胞も35週の時点で同頻度に認められた。これは54週になっても同じであった。EBV-transformationでは完全に成熟した抗体産生より分化段階の低い細胞が検出されると考えられるので、我々の結果はウイルス中和に関与すると思われるE1、E2抗体を産生するB細胞の分化が、何らかの機序により最終段階の一つ手前で押さえられていることを示していた。平成12年度は、1536において、感染後45週というかなり遅い時期に、ウイルスのE2タンパクの1つのアミノ酸に変異を生じたウイルスが出現し、その時期に一致して抗E2抗体の上昇が見られたので、そのアミノ酸変異を中心としたペプチドを合成し、ヘルパーT細胞の反応を検討した。変異アミノ酸配列のペプチドに対するヘルパーT細胞の反応が生じてE2抗体産生が引き起こされたという仮説を立てたが、結果は正常ペプチドも変異ペプチドも陰性でありその説明は成り立たなかった。更に検討を加えた結果、この45週という時期には,E2のみならず、C抗原に対してもIgM反応が急激に上昇していることが分かった。C抗体はIgGが感染初期にすでに出現上昇しており、これに遅れてIgMが出現するという、通常の免疫反応とは極めて異なる抗体反応パターンを示していた。この事は変異ウイルスが出現した時期に一致して宿主の免疫系にも新たな刺激が生じ、CとE2に対するIgM抗体産生が起こったことを示唆している。変異ウイルス自体には新たな抗原性はない可能性がので、変異ウイルスの挙動か何かにそれ以前のウイルスとは違うものがあって、それが免疫系の抗原認識に影響を与えたことが考えられる。その後我々は、この2頭のチンパンジーの感染後8週のB細胞がHCV抗原を発現していることをみいだした(未発表)。現在この抗原発現の詳細を検討しており、次に感染後期でのB細胞におけるそれと違いがないかを検討する予定である。
著者
副島 美由紀
出版者
小樽商科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ヴァイマール文化を準備した揺藍ともなったドイツ19世糸昧における生活改革運動に関する研究は、まずドイツ産業革命以降に始まった社会改革運動の様々な形態を把握することから始まった。つまり、住宅改革、土地改革、田園都市運動、菜食主義運動、禁酒運動、裸体運動、芸術教育運動など個別の改革運動の性質や背景、また各運動間の関連等についてまず概括を行い、その後「あらゆる生活改善思想が結実する場」と言われた田園都市運動に特に着目してその歴史に関する研究を行った。その結果として明らかになったのは、住宅改革の一種である田園都市構想はそもそもヨーロッパにおいて長い歴史を持つユートピア構想の一形態であり、イギリス、フランス、イタリアなど個々の国にはそれぞれのユートピア的社会改革構想の系譜が存在するという事実である。ドイツにおけるその系譜は、宗教的ユートピアや労働者コロニーの建設、またアフリカ植民コロニー構想等を経由しながら緑の党などの革新的政治運動にまで連なっている。13年度までの研究成果発表においては、それらユートピア構想の背景を概説しながらドイツ最初の田園都市であると同時に芸術家コロニーでもあったヘレラウ建設の歴史までをたどり、紹介することができた。これらの実績を踏まえ、今後はさらにヘレラウ以外の田園都市構想や芸術家コロニー運動を始め、その他の文化現象と生活改革運動との関連について研究を続け、成果を発表していくつもりである。
著者
堀江 俊治
出版者
城西国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

申請者は「炎症性腸疾患モデル動物の結腸粘膜における知覚過敏性には、熱感を感受するTRPV1チャネル発現神経線維の数の増大が関与している」ことを明らかにした。当該研究では、機能性消化管疾患である過敏性腸症候群および非びらん性胃食道逆流症のモデル動物を作製し、その消化管組織において、TRPV1チャネルおよびTRPM8チャネル発現神経の数が増加しているか、その増加に関連して知覚過敏反応が亢進しているかどうかを明らかにしていく。さらに、その知覚過敏にマスト細胞や好酸球の関与を検討する。この研究成果によって、微細炎症を抑える薬物は機能性消化管疾患の知覚過敏を改善するという新たな治療法を提案できる。
著者
綿引 宣道
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

新潟県の明治25-44年における会社間で役員の兼任ネットワークは、地域性があることが分かった。必ずしも富裕層が多いあるいは人口規模や密度が高ければネットワークが作りやすいいとは言えず、ネットワークつながり方は各地域の産業の種類、街道や汽船や鉄道といった交通手段に大きく依存する。ネットワークの形成のきっかけについては、士族が多く、異業種交流あるいは学校を通じた繋がりの影響が大きいことが分かった。
著者
武本 京子 伊藤 康宏 石原 慎 川井 薫 飯田 忠行
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

これまでの研究結果をもとに、新たにソルフェジオ音階を用いた楽曲を作曲し、これを実験に供した。ソルフェジオ音階とは174Hz、285Hz、396Hz、417Hz、528Hz、639Hz、741Hz、852Hz、963Hzの9種の音を指す。これらの音を用いた楽曲は、聴き心地が良く心身に何らかの良好な影響をもたらす可能性がある。近年、何の根拠もなくソルフェジオ音(単音)が身体に良いというマスメディアによる誇張が広がり、商品化さえされている。しかし、消費者に受け入れられること自体が何らかの効果を生じている証拠ではないかとも考えられる。したがって、本研究課題を進めるのにあたり、本年度はソルフェジオ音階による楽曲を用いた。実験方法は「イメージ奏法」を用いたイメージファンタジー(イメージ画像+演奏)を実験参加者に供与し、これまでと同じ実験方法により質問紙による状態不安得点と、唾液中生理活性物質の濃度変化を指標にソルフェジオ音階の効果の解析を行った。今回は新たに実験参加者の一部に目隠しをし、聴覚のみの入力と視聴覚入力との差異も含めて検討した。その結果、気分(mood)に関しては、目隠しした方が負の感情・気分が低下しなかった。一方、陽性の気分「活気」、「友好」については視聴覚対聴覚に差はなかった。すなわち、負の感情である「怒り」、「不安」などの亢進は音楽による誘導ではなく、色彩・言語による知覚感情効果であったと考えられた。逆に、陽性の気分は音楽だけで誘導されたことが示された。これは、音楽が喜びや幸福感をもたらすことを意味しており、個人の持つ記憶やそれらに裏打ちされた共感性に基づくものと考えられる。
著者
竹谷 裕之
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

1.自動車関連企業の海外進出や部品の海外調達の進展に伴う、雇用・労働市場への影響について、各種統計調査結果の解析を進めた結果、1991年以降は年を経るに従い、雇用指標は悪化し、特に95年から96年にかけ、東海などが有効求人倍率の落ち込み、製造業の労働時間の非自発的圧縮、パート労働者比率の増大、倒産の増大など、深刻であった。2.愛知県の県内2000の事業所アンケート結果等によれば、最近3年間で、非海外シフト企業の余剰人員発生状況は、海外シフト企業より遙かに深刻な事態にあることが判明。農村部に多い非海外シフト企業における雇用環境の悪化は顕著である。3.3次以下の下請を対象にヒヤリングを進めた結果、受注量の減退や単価の押し下げが顕著であり、今後5年間では事業規模の拡大や高付付加値生産への転換を進める下請もあるが、規模を縮小し、或いは転・廃業する企業が1/3を越えそうなことが判明した。4.農村部の下請雇用の再編に伴い、農村労働力の農業回帰という形での就業再編が、新規参入にも刺激され起こっているが、量的には多くない。高齢者の農業就業の増加が目に付く。定年退職者が従来であれば再雇用されるケースが多かったのと対照的である。5.雇用条件悪化の中、終了機会を自ら創出する起業活動の展開は多様である。村興しと結合させ、定年、間近な壮年層、女性を中心に「百年草」、「山紫庵」などの保護・加工販売・文化を結びつけた交流型 施設経営、「荷互奈」などの生産・加工産直施設経営、名古屋市農業文化圏と提携した食材提供の「つくばね」「ひこばえ」グループなど、都市農村交流型のものが多い。経営管理面は概して脆弱であり、地域差も大きく、農村就業の新機軸を担う点からみればまだ補完的である。
著者
佐藤 雅俊
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

廃棄バイオマス資源の一つであるケナフ心材部の有効利用の一つとして、バインダーレスボードの開発について検討し、製造条件、特に圧締温度が高いほど耐水性が向上し、最適条件下では、ユリア・メラミン共縮合樹脂接着剤と同等かそれ以上の性能を有することが認められ、さらに、一年間の暴露試験においても材料の劣化は少なく、バインダーレスボードが耐水性に劣るという概念を覆す結果となった。一方、ケナフコアボードを用いたバインダーレスボードの自己接着機構に関する検討を、化学的手法と物理的手法を用いて実施した。化学的分析結果から、自己接着には、熱によるリグニンの軟化及びリグニンの縮合型構造の形成が確認された。また、カルボン酸類によるエステル結合の生成の可能性も示唆され、このような変化を生ずる要因は、製造時における圧締温度であり、適切な温度条件下において自己接着機構が発現していることが推測された。また、廃木材および竹を爆砕処理したパルプ等の化学分析あるいは走査型電子顕微鏡を用いた分析からは、爆砕によりパルプ表面に析出し遊離したリグニンが自己接着に関与していることが明らかとなり、この結果からも上述したリグニンの関与が明らかとなった。バインダーレスボードの製造条件に関しては、圧締圧力および圧締温度が木質系ボードの製造条件と比較しても差異がないことから既存のボード製造装置を用いたバインダーレスボードの製造が可能であり、今後、各種のバイオマスの有効利用に適用可能と思われる。
著者
谷口 歩 今村 亮一 阿部 豊文 山中 和明 玉井 克人 新保 敬史
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

腎不全は腎の線維化を中心とした不可逆な臓器不全である。間葉系幹細胞移植が腎に対して保護的に作用することが注目されているが、その臨床応用においては幹細胞移植に伴う取り扱いの煩雑さが問題である。我々は骨髄間葉系幹細胞を血中さらに障害部位に動員させる物質を特定し、これを利用した再生誘導医薬を開発した。化学合成された薬剤を静脈へ注射するのみで骨髄間葉系幹細胞を障害された腎臓に集められることが予測されるため、煩雑な幹細胞移植を伴わずに腎再生医療を臨床に応用できる可能性がある。本研究では腎障害動物モデルに対する再生誘導医薬の効果に関して、病理学的評価、分子生物学的評価および次世代シーケンス解析を行う。
著者
宮岸 哲也 李 紹恩
出版者
安田女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、チベット=ビルマ語派のゾゾ語について、民話の音声データと、基本動詞と授与補助動詞構文の用例データを収集した。これらのデータに基づき、ゾゾ語の格助詞、名詞句構造、連体修飾構造、体言化、授与補助動詞構文について詳細に記述した。特に、ゾゾ語の授与補助動詞構文については、与益・与害の用法のみならず、非意図的な事態を表わす非能動的用法があることを見つけた。更に、これらを同様の授与補助動詞構文を持つ他の諸言語と対照した結果、授与補助動詞構文における文法化の過程の類型的規則性を示すことができた。
著者
佐川 公矯
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

有明海周辺はビブリオ・バルニフィカス感染症の多発地域である。我々は2001年の1年間、有明海のビブリオ・バルニフィカスの生息状態について疫学調査を行い、分離されたビブリオ・バルニフィカスの菌株について、細菌学的、および遺伝子学的解析を行った。2001年の1月より毎月2回、大潮の日に、有明海の3定点で海水と干潟汚泥を採取し、ビブリオ・バルニフィカスを分離同定し、最確数を算定した。さらに、柳川市沖ノ端漁港の特定の鮮魚店より有明海産の魚介類を購入し、その内臓より同様の検索を行った。海水からのビブリオ・バルニフィカスの最確数は、1月から5月までは数は少ないが検出され、6月より徐々に増加し、7月、8月、9月にピークに達した。そして、10月から徐々に減少したが、最確数が0の月はなかった。干潟汚泥からも、年間を通して分離同定された。また、調査したほとんどの魚介類からビブリオ・バルニフィカスが分離同定された。季節的には夏期に分離される数が多かったが、夏期以外でも分離された。分離されたビブリオ・バルニフィカス菌株の溶血活性は、夏期に分離された菌株ではすべて溶血活性が高く、夏期以外の分離株は溶血活性の高い株と低い株とが半々であった。87菌株について薬剤感受性を調べたところ、CAZ, CP, MINO, IPM, OFLXが良好な感受性を示した。パルスフィールド・ゲル電気泳動法による遺伝子解析を行ったが、酵素活性が高いためか、バンドがスメア化し判読不能であった。これに、チオ尿素を50マイクロモル加えると鮮明なバンドパターンが得られた。なお、特有のバンドパターンは認められなかった。有明海には夏期だけではなく、夏期以外にもビブリオ・バルニフィカスは生息していることが確認できた。また、溶血活性の高いものと低いものとの2種類が存在し、溶血活性の高いものは、数の増減はあるものの年間を通して生息していることが確かめられた。この事実は、慢性肝疾患、あるいは免疫不全状態の人は年間を通して、有明海産の生の魚介類の摂食を控えるべきであることを示していると考えられた。
著者
藤村 幹 冨永 悌二 新妻 邦泰 麦倉 俊司 坂田 洋之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

もやもや病は小児や若年成人に多い原因不明の脳血管障害であり、基礎病態として病的異常血管網発達あるいは代償的な側副血行路を含めた血管新生能を内在する特有の疾患である。本研究は、もやもや病における内因性多能性幹細胞に着目し、血行再建術後の血管新生における多能性幹細胞の役割について検証する。さらに、もやもや病に対して日常診療で汎用されている抗血小板剤シロスタゾールを用いて内因性幹細胞由来の血管新生を誘導することにより血行再建術の効果を促進するという新しい試みである。細胞移植という手段によらず間接血行再建術からの血管新生を誘導する手法の開発により、もやもや病の治療成績の飛躍的な向上が期待できる。
著者
佐藤 匡 瀬山 邦明 田島 健
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる呼吸器疾患である。一方、近年本邦において急速に普及している加熱式タバコの毒性に関する評価は定まっておらず科学的実証の社会的ニーズが高まっている。本研究では、従来のタバコ煙に対する肺傷害の解析システムを用いて、加熱式タバコと従来のタバコ煙曝露との比較検討を行い、長期的な加熱式タバコ使用の呼吸器系に与える影響についての新しいエビデンスを創生することを目的とする。