著者
戒能 智宏
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

分裂酵母(S. pombe)のコエンザイムQ10の欠損株の生育には、システイン(Cys)やグルタチオンなどの抗酸化物質の添加が必要であるが、CoQ欠損が遺伝子発現に及ぼす影響は明らかにはされていない。そこで、CoQ合成不能株の遺伝子発現をマイクロアレイを用いて調べたところ、イオンや硫黄を含む分子種に関連するトランスポーターの遺伝子に発現の増加が見られた。また、システイン合成酵素遺伝子破壊株は、過酸化水素やパラコートに対して強い感受性を示し細胞内の活性酸素種(ROS)量が顕著に増加していた。
著者
島田 潤 渡辺 祐基 小峰 幸夫 佐藤 嘉則 木川 りか
出版者
独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

紙資料を食害するシミ類は、日本の博物館・美術館・文書館に広く分布しており、貴重書の保存において重要な害虫の一つである。これまで国内で知られているシミとは異なる種が博物館と文書館で相次いで確認された。いずれも生息個体数が多いという共通点があったことから、既知種とは生態が大きく異なり強い繁殖力を持つことが考えられる。本研究ではこの未知種に関して、全国の施設での分布状況の把握を行い、本種を特定し、食性や繁殖力などの生態学的な特徴を解明する。さらに、文化財IPMの考え方に基づく有効な新規防除方法の確立を目的とする。貴重書を始めとする紙資料の保存の観点から、早急な調査と対策が必要とされる。
著者
對馬 敏夫
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ヒト甲状腺腫瘍では幾つかの癌遺伝子の異常、あるいは成長因子受容体の過剰発現などが報告されている。しかし細胞増殖に関与する情報伝達に関する異常は明らかにされていない。MAPキナーゼカスケードは各種細胞において細胞増殖や分化に重要な役割を果たす。そこでヒト甲状腺腫瘍組織におけるMAPキナーゼ(MAPK),その上流に存在するMAPKキナーゼ(MEK),Raf-1の発現、その活性を正常組織で比較した。甲状腺乳頭癌とろ胞癌組織では大部分でMAPK,MEKの発現量、活性ともに正常部に比して数倍に増加しており、これは免疫組織学的にも証明された。Raf-1活性には差がなかった。一方、良性の腺腫やバセドウ病組織ではMAPK,MEK,Raf-1ともに正常と差がなかった。培養した正常甲状腺細胞にIGF-Iなど種々の成長因子を添加した場合にも増殖に先んじてよMAPKが活性化された。癌組織ではGF-I,IGFBP-2 mRNAの発現増加も観察された。以上よりMAPKカスケードは腫瘍発育に関与する可能性が示唆される。今後の方針としてはMAPK,MEKの遺伝子自体に異常があるか否かを明らかにしたい。
著者
朝田 郁
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、イエメン・ハドラマウト地方出身のアラブ移民ハドラミーに注目し、彼らの移住活動を支える現代的なファクターの解明を目的とする。特にインド洋海域世界の西側、東アフリカとアラビア半島の間に構築された、彼らのネットワークの多元的な理解を目指している。これまでの調査では、東アフリカ・タンザニア島嶼部のザンジバルと、アラビア半島の湾岸産油国アラブ首長国連邦のドバイ、アブダビ、そしてアジュマーンを対象として、現地に存在するハドラミーのコミュニティでフィールドワークを実施した。ザンジバルは東アフリカ沿岸部の中でも、20世紀の後半まで多くのハドラミー移民を集めた場所であり、アラブ首長国連邦は近年、ハドラミー移民の新たな移住先となっている場所である。調査においては、ホスト社会と移民の関係を使用言語、共有されたイスラーム的規範、そして移民の送り出しと受け入れに関わるエスニシティの役割を通して記録している。2020年度は、後述のように新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて、現地への渡航が不可能であった。そこで収集済みの調査資料から、移民とホスト社会で共有されているイスラーム的規範についての分析を進めた。ハドラミー移民は、独自のスーフィー教団をホスト社会に導入しており、ザンジバルのコミュニティではその活動が顕著に見られるようになっている。特に、長年にわたって現地政権が禁止していた公の場での宗教的祭事が、近年、スーフィー教団を中心に様々な形で復活している。一方で、アラブ首長国連邦におけるハドラミー・コミュニティでは、スーフィー教団の活動は認められるものの、その影響は限定的なものに留まっていた。また、東アフリカからの再移住者とイエメンからの直接の移住者の間でも、スーフィー教団の活動に対する関心に温度差があり、必ずしも同様のイスラーム的規範が共有されているとは言えない面があった。
著者
百武 徹 安井 学
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

3年目は,以下の2つの研究項目を実施した.①異なる幅をもつ溝付きのマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,実際に精子が遊泳する卵管内の壁面には多くのマイクロスケールの溝が存在していることから,実形状を模擬したin vitro実験となる.実験では牛の凍結ストロー精液を用いて,チャネル内に設けられた溝の幅が遡上する精子分布に与える影響を調査した.画像解析した結果,溝が存在することで精子の分布には違いが見られた.具体的には,溝幅10, 20 μmの流路では,溝が存在する領域において精子分布が大きくなった.原因として,精子の走触性により,溝に近づいた精子の一部が溝にトラップされて溝に沿って遊泳しやすくなるためであると考えられる.加えて,溝が存在することで,精子の平均速度も大きくなった.このことは,卵管内を模擬したマイクロスケールの溝を応用することで,受精に適した高運動性精子を選別できる可能性を示唆している.②マイクロチャネル内に狭窄を設けることで,精子集積機能を有するマイクロ流体チップの設計・製作を行った.これは,狭窄をもつマイクロチャネルにおいて,走流性によって流れに逆らってきた精子は狭窄を通過できず,テーパ部分に運動性の良い精子が集積することを利用している.実験では,チャネル形状やチャネル内流速が,チャネル内の精子分布や精子濃度に与える影響について調査を行った.合わせてOpenFOAMを用いた流体解析によりチャネル内流体挙動の調査も行った.その結果,チャネル形状やチャネル内流速を変化させることで狭窄内の精子の集積場所や精子濃度が変化することが明らかになった.本マイクロチャネルは,実際の受精環境を模擬した高受胎性の体外受精用チップに応用できる可能性がある.今後はさらに異なる形状,流速で実験を行うことでより詳細な傾向をつかむ予定である.
著者
中妻 照雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、金融市場における資産価格形成の解明を目的とし、指値注文(売買価格を指定する注文)の発生メカニズムを説明するための新しいモデルを提案するとともに、提案モデルを推定するための新しいアルゴリズムの開発を行う。本研究で提案する新モデルの大きな特徴としては、注文発生間隔のモデルに1日の取引時間中の周期的変動パターン(日中季節性)、市場に出されている指値注文の状況(板情報)、さらには買い注文と売り注文の相互作用を反映させている点があげられる。
著者
田所 竜介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究代表者のライブイメージングにより明らかとなった色素細胞から表皮細胞へのメラニン色素の輸送の結果に基づき、輸送方法と色素輸送量の関係に注目して輸送の分子機構と普遍性多様性の理解に努めた。色素細胞内で働く輸送を制御する分子および表皮に発現して輸送を促す分子を同定した。また色素輸送を解析する新たな手法も確立した。加えて、輸送の普遍性を問うためにガン細胞についても解析をおこない、ガン細胞が多様な小胞を放出することも見出した。
著者
阪井 恵 酒井 美恵子 布施 光代
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

五線譜の判読が、障害により不可能な場合があることは十分に知られていない。本研究では、取材に基づきその実態を明らかにする。また当事者たちが音楽科授業への導入を望む「フィギャーノート(FN)」の有効性を探り、教科書に準拠した具体的な活用法の提案を行う。障害の実態調査に基づくビデオ作成、ビデオ視聴とFNの体験を含む実験的授業の実施、受講した児童生徒及び学生の、FN活用に関する意見調査と分析、学会における意見交換、などを通して「選択肢としてのFN」導入実現を目指すものである。
著者
清水 芳男
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

血液透析では血漿を濾過することにより、余剰体液が除去(除水)される。この間、間質液が血液循環へ戻るリフィリングにより血圧が維持される。リフィリングは、間質液のリンパ管からの吸収・輸送によって行われる。リンパ管の吸収・輸送能力は、運動や電気刺激などの外的刺激で上昇することが知られている。透析中に運動・下肢マッサージ・低周波電気刺激などの外的刺激を行うことにより、リフィリング速度を意図的に変化させることが可能であるかを検証し、血液透析中に生じる循環血漿量減少性ショックを防止する新しい方策を開発する。
著者
山崎 宏史 蛯江 美孝 稲村 成昭 柿島 隼徒
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、浄化槽を構成する各単位装置のGHGs排出特性を検証し、排出削減可能な技術を提案することを目的に検討を行った。その結果、CH4は嫌気処理部と汚泥貯留部を兼用する単位装置からの排出が多く、さらに夏季の水温高温期に排出が増大することがわかった。CH4排出は、後段の好気槽からの循環水量を多くし、循環するDO量を増大させることにより、削減できることを明らかとした。一方、N2Oは好気処理部からの排出が多く、さらに春季から夏季に至る水温上昇期における貯留汚泥の可溶化により排出が増大することがわかった。N2O排出は、流量調整機能を付加し、処理機能を安定させることにより削減できることを明らかとした。
著者
下田 好行 四方 義啓 吉田 武男
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ホリスティックな立場からの教材・授業開発の視点を研究した。垣内松三の形象と自証体系の理論とそれを授業で具体化した青木照明の「融合読み」の研究を行った。垣内松三は、文字の連なりの奥にある人間の相(象徴)の存在を強調した。読むとは、この象徴を直観し、それを言葉という形で記号化する行為である。ここから垣内は、直観ー自証ー証自証、という読みの理論を体系化した。この理論を授業場面で具体化したのが芦田恵之助である。また、最近では、小学校国語の文学教材の読みの授業で、青木照明が行っている。青木の授業では、児童が物語文を読んで、直観したことを自分の言葉で解釈し、自証していく様子を確認できた。
著者
所 正治
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

途上国の健常学童の糞便内に存在する細菌叢、原虫叢、真性菌類などによる腸内微生物叢の種構成の豊かさを定量的に評価し、遺伝子レベルでの多型をも評価することで、先進国ではすでに失われてしまった腸内原虫叢の存在が、宿主であるヒトにもたらす有益な効果を明らかにし、その臨床応用の可能性を探索する。これは、人類がこれまでの共進化をとげてきた本来の腸内環境を明らかにするアプローチであり、衛生仮説におけるX因子として、非病原性の種を含む腸内原虫叢を仮定した試みでもある。
著者
新倉 謙一
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

抗原や核酸を輸送するためのワクチン粒子の開発を目指す。ワクチン粒子は生体内で分解することで、輸送した抗原や核酸を細胞内で放出できるようになる。本研究では細胞内で分解しやすいように、低分子を組み合わせることで粒子をつくる手法を開発する。通常低分子は、高分子と比べるとお互いの相互作用が弱いため安定した粒子が作りにくい。しかし多点での結合が可能な低分子を用いることで、それらの課題を解決していく。
著者
多田 一臣
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究「『日本霊異記』の総合的研究において、最大の目標はわが国最古の説話集である『日本霊異記』の総合的注釈書を完成させることであったが、昨年度の段階で、ひとまずその完成を見ることができた。その成果は、筑摩書房から『日本霊異記 上・中・下』(ちくま学芸文庫)として刊行した。本年度は、その継続として、上記注釈書をもとにした事項索引の作成をおこなった。研究補助者の助力を得て、作成本文にもとづくデータ整理を行い、その結果『ちくま学芸文庫版『日本霊異記』語注・補説索引』を完成することができた.この索引は、科学研究費補助金の研究成果報告書として刊行した。同時に、昨年度からの継続として、二度にわたり沖縄諸島の祭祀儀礼の調査を行った とくに死者の霊魂を呼び寄せるシャーマン的巫者の活動に関する資料を収集した その結果、死者の霊魂の問題が、『霊異記』など本土の古代文献に見える信仰と深いつながりをもっていることを、あらためて確認することができた。この問題については、不充分ながら上記注釈書の中でも言及した.しかしながら、依然として残された問題は大きく、とくに鹿児島県奄美諸島のマブリワーシなどの事例について、来年度以降も調査をできるかぎり継続して、理解を深めていきたいと考えている。『霊異記』の本文調査も、昨年同様、いくつかの図書館・文庫等を訪れることで、写本類を披見、本文確定のための有益な情報を得ることができた。所期の目的は、おおむね達成できたと考えている。
著者
萩岡 松韻 久保田 敏子 野川 美穂子 長谷川 慎
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

地歌箏曲の楽曲アーカイブを目的とした研究。稀曲等次代への伝承が危ぶまれている楽曲について、音源の収集、楽曲の伝承者に指導を受けることで、楽曲の音源化・楽譜化を試みた。地歌箏曲では口頭伝承が昭和の初めまで行われていた。現在は作品の多くが楽譜化されているが、楽譜化できない口頭伝承の部分を知る実演家の多くは没し、口頭伝承を受けた実演家の存在は貴重である。本研究はそうした実演家より直接指導を受け、楽曲をアーカイブすることを目的とした。地歌箏曲の喫緊の課題といえる現存する古典曲の調査、楽曲の楽譜化、録音等による伝承者の演奏の保存、稀曲等の公開演奏を行うことで無形文化財ともいうべき楽曲の保護保存を進めた。
著者
山本 憲志 橋本 眞明
出版者
日本赤十字北海道看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

炭酸泉浴(CO2 ≥1000 ppm)は浸漬部皮膚の紅潮、皮膚血流の改善などが観察されている。炭酸泉浴の応答において、交感神経活動の減少が筋疲労回復の促進される可能性がある。我々はレジスタンス運動後の筋硬度や筋肉痛といった疲労回復に人工炭酸泉浴が影響を与えるか否かを検討した。レジスタンス運動後3日目に筋硬度は最大となり、その後漸次低下した。水道水浴における筋肉痛は運動後2日目にピークとなり、その後漸次低下した。炭酸泉浴において筋肉痛は3日目に消失した。人工炭酸泉浴は筋疲労からの急速な回復に貢献できる可能性を秘めていることが示唆された。
著者
後藤 晃 帰山 雅秀 前川 光司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、北海道の水系に定着したブラウントラウトの生活史と回遊性、また本種の食性と近縁サケ科魚類との種間競争の実態を解明し、本種による在来淡水魚類への影響を評価する目的で、北海道南部の戸切地川、および中央部の支笏湖水系において生態的・集団遺伝学的調査を行い、以下の成果を得た。1.戸切地川において、ブラウントラウトは河口から約7km上流地点に位置する上磯ダム湖で主に生育し、雌では2歳で尾叉長275mm以上に、雄では2歳で172mm以上に達すると性成熟し繁殖に加わることが示された。2.本種の一部の個体は、秋季に尾叉長210-270mmの成長すると、スモルト化し、翌春に川を下って降海型(シートラウト)になること、また降海型は沿岸域で成長・成熟した後、繁殖のために河川に遡上することが確認された。3.本種は尾叉長200-300mmの個体ではトビケラ目幼生、陸生落下動物の他にフクドジョウなどの底生魚類を主に捕食することが示された。4.本種とニジマスが定着している支笏湖水系において、流入河川の美笛川ではブラウントラウトは主に底生型動物、ニジマスは遊泳型動物を摂餌し、2種は餌資源を分割利用していることが示された。一方、支笏湖内では、ブラウントラウトは陸生落下動物が少ない時期に、イトヨ、アメマス、ヒメマスなどの魚類を捕食することが明らかになった。5.餌ニッチの幅では、ブラウントラウトはニジマスより低い傾向を示した。6.ブラウントラウトによる特定魚種への捕食圧が大きくはなかったため、在来魚類の遺伝的集団構造に変化は認められなかった。
著者
中島 正洋 吉浦 孝一郎 柴田 龍弘
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

被爆者腫瘍組織を用いて分子病理学的特徴解析を推進している。ヒトでは完成した腫瘍を対象とするため発がんまでの経時的変化を網羅的に解析することは難しく、動物モデルでの検討が必要である。ラット放射線誘発甲状腺発がんモデルにより、被ばく後がんに至るまでの分子変化を経時的に解析し特異的異常を探索中で、mRNA発現ではがん発症以前からDNA損傷応答や細胞周期調節系の有意な変化を認めることを確認した。本研究では、発がんまでの甲状腺組織でのmiRNA発現を網羅的に解析し、放射線誘発甲状腺がんの遺伝子変異シグネチャーを明らかにすることで、被ばくがんリスク診断への展開と、被ばくリスク推定の科学的根拠につなげる。
著者
安元 隆子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

明治時代に日本の同化政策により民族存亡の危機に瀕したアイヌ民族を取り上げ、これまで文学の中にどのようにアイヌが描かれてきたのかを検証する。その際、アイヌ人の文学だけでなく、日本人が描いたアイヌの文学を含め、近・現代を通して文学におけるアイヌ像の変容を追い、「滅亡の民」から最近の「生のエネルギーに満ち自然と共に生きるたくましい民族」へのイメージ転換の契機と理由を、漫画、映像作品も含めて考察する。また、日本に隣接するロシアの文学の中のアイヌ表象や、米・豪の文学に著された先住民族との対立、反省、和解、共生への道程と日本の場合とを比較し、文学の立場から真の多民族共生への道を模索する。
著者
有井 敬治 橋 逸郎 大脇 裕子 三ツ井 貴夫
出版者
独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

パーキンソン病関連疾患では構音・嚥下機能障害は予後を左右する極めて重要な因子であるものの、特別な対策は取られていないことが多い。我々は同疾患に対する独自のリハビリテーションとして、気功の要素を取り入れることで喉頭機能の増強を介した呼吸機能の向上を目的にした、発声を伴う太極拳を新たに考案した。本研究では、パーキンソン病の種々の運動症状、特に発声・嚥下・呼吸機能に対する効果を検討した。具体的には5週間のリハビリテーション入院したパーキンソン病患者について、専門のインストラクターを招いて週1回、1時間の太極拳運動を導入した。その結果、太極拳を導入した群では4週間後にパーキンソン症状は著明に改善した。