著者
神田 由築
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本では18世紀になると、江戸や大坂などの大都市で芸能が都市民衆の生業と本格的に結びつき、いわゆる「芝居町」が成立する。また周辺町々には男色の売春宿も存在し、あらゆる意味で芸能の「商品」化が展開するようになる。こうした都市社会の成熟と教養文化の浸透とが交錯して、18世紀後半には、当時の社会状況を反映した歌舞伎や浄瑠璃の作品が数々生み出されるようになる。これらの「物語」は、芸能者の活動地域の拡大や個人単位の芸能者の存立をもたらし、地域・階層を超えて芸能文化が浸透する要因となった。この「物語」の成立こそ、その後も変容と持続を繰り返す日本文化の「伝統」性の起点である。
著者
李 良姫
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日韓における祭りの再生と観光資源化について観光学的な理解を深める研究目的を達成するため、日韓における幅広い現地調査及び文献調査を行い、以下の主な研究成果をあげることができた。①韓国の祭りの衰退の原因は、日本植民地支配による影響より、キリスト教及び近代化の影響が大きい②日韓において伝統文化の観光資源化が積極的に行われている。③祭り開催は、韓国は行政、日本は地域住民が主導することが多い④地域の伝統文化は地方のインバウンド観光の拡大につながる⑤少子高齢化時代には祭りの観光資源化が有効な手段になりうる。
著者
眞鍋 えみ子 和泉 美枝 岩佐 弘一
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

産後における適正体重、適正体脂肪率の維持を目的に、自宅における体重・体脂肪率維持の支援策としてのプログラムを作成し、その効果を検討した。プログラムは、日常生活習慣や精神状態のコントロールのセルフモニタリングとライフコーダーによる活動量のモニタリングから構成した。その効果を検討したところ、プログラム実施群には交感神経活動の活性化が認められたが、体重、体脂肪率、筋肉量などの身体組成では効果が認められなかった。本研究成果は、プログラム実施期間の再検討、実施されたセルフモニタリングへのフードバック方法の検討が課題であり、その展開が期待される。
著者
山本 早里 槙 究 熊澤 貴之
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

景観法の趣旨である地域再生を目論み、景観色彩を改良する手法を開発することを目的とし、地域の特性、合意形成、審美性の3軸から考察した。国内の景観計画において色彩を地域別に誘導していないところが多いことが明らかになり、仏国では協議システムが運用されていることがわかった。また、向こう三軒両隣の配色の重心を考慮した景観色彩設計法の有効性を検討した。被験者誘導の実験を行い、色彩規制の効果について考察した。以上から、日本の色彩誘導のあり方は景観法の趣旨が活かされているとは言い難く、そのため、様々な専門家が関わる協議システムが参考になり、街路景観はその特徴によって個別の対応が望ましいことを明らかにした。
著者
千賀 愛
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、1890―1920年代のアメリカで展開された新学校・進歩主義学校の理論と実践を特別な教育的配慮の観点から明らかにすることを目的とした。はじめに進歩主義学校の1つとしてジョン・デューイが娘のエヴェリンによる「明日の学校」(1915)で紹介したインディアナポリス第26公立学校の実践の検討を行い、子どもが主体的に取り組む活動が学業不振問題の解決に寄与していた。第二に、1896年にシカゴで開校したデューイ実験学校の体育と住居教育の実践を分析した。これはインクルーシブ教育の源流という観点から、様々な特性のある子どもが参加できる活動のカリキュラムをどのように創出するのかに関わる実践例であった。
著者
和田 壽弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

新ニヤーヤ学派の体系を確立したガンゲーシャ(14世紀)の『タットヴァ・チンターマニ』(Tattva-cintamani) の第4部「言語部」(Sabda-khanda) における「定動詞語尾章」(Akhyata-vada) の英訳・解説を作成した。テキストを分割して番号を付して議論の構造も明示した。初期のこの学派の言語分析の手法の特徴を明らかにし、ウダヤナ(11世紀)の影響が大きいことを解明した。併せて、2005年にオリッサ州で発見されたウダヤナ作『否定辞論頌』(Nan-vada-karika)の写本を分析し、著者問題を含めて初期新ニヤーヤ学派の研究に使用できるかどうか考察を試みた。
著者
内藤 通孝 加賀谷 みえ子
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

果糖は、安価で効率の良い甘味料として急速に使用が普及してきたが、一方では、肥満、メタボリック・シンドロームなどの生活習慣病を助長する可能性が指摘されており、健康に対する悪影響が懸念されている。本研究では、高脂肪食と同時に、果糖を多く含む飲料(コーラなど)を摂取すると、食後の脂質代謝が増悪・遷延し、食後の高脂血状態が長く続くことから、動脈硬化の重大な危険因子となり得ることを示した。これらの同時摂取は新たな「合食禁(食べ合わせ)」として注意すべきであり、高脂肪食を摂取する場合の飲料としては、高果糖飲料以外の飲み物、例えば日本茶、ウーロン茶、無糖の紅茶・コーヒー等を選択することが薦められる。
著者
織田 竜也
出版者
長野県短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

デジタルコンテンツの「舞台探訪」は、宗教的巡礼(聖地巡礼)とも観光現象(コンテンツツーリズム)とも称される面があるが、複数地域での調査から、コンテンツの世界観と現実世界を混交させることで楽しみを生み出す遊戯的活動だと確認された。現場では歴史的・民俗的フィクションを接合することで現実世界を変容させる工夫が施されていた。今後はコスプレやゲーム性を高めることでARG(Altenate Reality Game)へ展開すると推測される。
著者
高山 毅
出版者
尾道市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

携帯端末上でのソーシャルメディア向け超軽便レコメンデーションを行なう際に、最も適切なのは、「(1)コンビニ会社L社やファーストフードM社等に見られるような、商品販売側が開設しているコミュニティサイト」上でのやり取りに基づいて、レコメンデーションを行なうことである。「いいね!」ほか、好意的反応を示したユーザに対して、その商品そのものをレコメンデーションするのが良い。一方、「(2)商品販売側以外を含む個人開設のコミュニティサイト」等に基づく場合、具体的な商品の特定が容易とは限らず、種々の工夫を施しても、レコメンデーションの精度は、(1)より劣らざるを得ない。
著者
桜井 厚 岸 衞
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、戦後史の記述や継承において体験者の語りやオーラル資料が、有効な資源やデータとして活用されているのか、その現状を把握するとともに、その活用にあたってどのような特質があるのか、を検討することにあった。そのため戦後史のなかで複数の大きな出来事をとりあげ、それぞれのオーラル資料の収集、記録、保存の実践について施設、団体、個人を調査し、オーラルヒストリーの意義を、歴史的事実の証言というより、むしろ地域のまちづくりや現在や未来へつながる死活や人びとの生き方につながるものとして活用されていることを確認した。
著者
丹沢 安治 久保 知一 石川 伊吹 北島 啓嗣 大野 富彦
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

中国における産業クラスター/集積の育成政策に焦点を置いて研究を行った。2009年8月の西安市、2010年8月、成都市、2011年青島/武漢等の「高新技術園区」における調査を通じて、中国の地方政府と開発区管理委員会、現地中国企業、日系企業など各アクターによるイノベーションを生み出す活動が、産業クラスター/集積を生み出すメカニズムを明らかにした。イノベーションミックスという計画当初の視点は、地域間競争を軸とした開発区モデルが、地域経済の「重層的ガバナンス構造」を形成していることを明らかにした。
著者
岡田 匡史
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

次の課題4点,「図像体系の構築」,「テキスト研究」,「指導法研究」,「鑑賞題材開発」を,当初計画を適宜修正・調整しながら進めた。研究遂行に当たり,図像学的分析が進む西洋絵画を厳選し,選定作品を学習材とする鑑賞授業を基本的枠組として設け,その枠内で上掲4課題の重点的かつ相互連関的な探求を継続した。その結果,西洋絵画(特に宗教画)の読解に要す基本図像の体系的整理,絵を読むのに要す諸テキストの整理,段階型鑑賞プログラムに基づく各種鑑賞題材の提案,そして,授業検証が達成できた。最終的に図像学的読解メソッドの概念を拡張でき,「自由解釈,テキスト準拠型鑑賞,図像学的読解」で成立する学習モデルも明示できた。
著者
三浦 孝仁 中塚 茂巳 山田 眞佐喜 片山 敬子 株丹 恵子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

この研究は、障害者のための潜水指導方法を確立することである。その為に、(1)障害者ダイビング指導団体の現状と課題の調査、(2)潜水活動中の神経活動の推定、(3)障害者ダイバーの障害の種類、(4)障害者ダイバーの血圧及び肺機能測定、(5)障害者ダイバーの水中移動・停止のための泳法を水中ビデオにより撮影・画像分析、(6)障害者ダイバーの水面における回転技術、(7)水中におけるバランス確保のためのウエイト取り付け方法について調査・分析を行った。
著者
織井 秀文
出版者
姫路工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

扁形動物プラナリアに外来遺伝子を導入するために、プラナリア自身のもつ高発現遺伝子2種類(elongation factor 1αとelongation factor2)に着目した。それぞれの遺伝子のプロモーター及びターミネーターの相当する5'上流域と3'下流域をクローニングし3種類のレポーター遺伝子、β-galactosidase(β-gal),luciferase,green fluorescent protein(GFP)を挿入した計6種類のプラナリア発現ベクターを構築した。これらのベクターをマイクロエレクトロポレーション法でプラナリア個体へ、あるいはエレクトロポレーション法で解離細胞への導入を試みた。残念ながら個体への導入はいずれのベクターを用いた場合においてもまったく検出されなかった。また、プラナリア個体がGFPの出す蛍光と類似の自家蛍光を持つことが明らかになりGFPはレポーター遺伝子として不適であることがわかった。一方、解離細胞への導入においては、luciferaseベクターを導入後、細胞抽出液中におけるluciferase活性はほとんど検出できなかった。しかし、β-galベクターを用いて細胞レベルでの導入を調べたところ10^<-7>と極めて低頻度であるが導入細胞が確認された。このことは少なくとも単離したプロモーターが実際にプラナリア細胞中で機能したことを示している。今後はこれら発現プロモーターを基本にプラナリア用レトロウイルスベクターを構築し導入効率を高める等の改良が期待される。
著者
間瀬 玲子
出版者
筑紫女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

19世紀フランスの作家ジェラール・ド・ネルヴァルの全文学作品における視覚芸術に関する記述及びネルヴァルが作品内で言及している他の作家たちの著作の図版の検証作業を行った。その結果ネルヴァルが視覚芸術や他の作家たちの著作物の図版から影響を受けて、文学世界の構築を行ったことを立証した。
著者
林 勉 伊藤 一男 岩下 武彦 遠藤 宏 小野 寛 内藤 明 山崎 福之 鈴木 美弥 八木 京子
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

新校本底本とすべき西本願寺本複製翻刻の文字の再確認と誤脱訂正を続け『校本萬葉集』等にないヲコト点・返点・合符等の校異も他の古写本にも試みた。古写本中仙覚新点本の青色書入の他に他本との校合を示す朱・赭筆書入のある京都大学曼朱院本の原本調査を終了した。また次点本で平安中後期写本で極めて年代古く極めて歌数多く校異も朱の他赭筆書入の多く価値高い元暦校本の調査も東京国立博物館のご助力頂き開始出来た。また萬葉歌を分類再編した古葉略類聚鈔の調査は進めたが平安末期書写の類聚古集の調査も始めたい。五代簡要等歌学書、古今和歌六帖等撰集、契沖等萬葉研究も続けて進めたい。
著者
間瀬 玲子
出版者
筑紫女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

19世紀フランスの作家ネルヴァルの全文学作品における演劇、オペラ、見世物などの視覚芸術に関する記述の検証作業を行った。特にネルヴァルが雑誌や新聞に発表した劇評に注目した。またネルヴァルが自分の作品内で言及した視覚芸術の作品の台本及び研究書を検討した。その結果ネルヴァルが視覚芸術の諸作品を鑑賞して劇評を発表することにより、自らの作品において視覚芸術的な要素を持つ文学世界の構築を行ったことを立証した。
著者
谷口 進一 青木 克比古 中 勉 高 香滋 石井 晃 大林 博一 大林 博一 中村 晃 中江 友久
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

組織的教育力の効果を数理の基礎学力・ジェネリックスキルの観点から、入学から卒業までのスパンで定量的・質的に検証を行った。学力に関しては、同一の学力診断において、入学時に比べ1年後学期では成績が向上し授業効果が確認された。しかし、4年次では専門教育に力点が移り、授業効果は低下した。ジェネリックスキル自己評価では2年次で一旦多くの評価項目の自己評価が低下するが4年次では回復しほとんどの項目で最高点となることが確認された。
著者
呉 文文
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

細胞周期を通して、BRCA1の蛋白複合体を網羅的に解析した。HERC2がS期特異的にBRCA1と結合し、分裂期ではBRCA1から迅速解離する現象を見出した。HERC2はBRCA1のユビキチンリガーゼで、BARD1から離脱したBRCA1を不安定させると同時に、pre-RC複合体のMCM蛋白質の活性化を誘発し、異常複製開始点を発火させる。HERC2はClaspinとともに複製フォークの進行や安定を制御し、最終的にG2/Mチェックポイント応答に機能する。HERC2はBRCA1が司っている細胞周期のG2/Mチェックポイント制御機構には重要な役割を担い、BRCA1の細胞周期調節機構には必須因子であることを明らかにした。
著者
田久保 憲行 石井 正浩 鳥居 央子 加藤 チイ 横山 美佐子 大津 成之 木村 純人 田久保 由美子 陶山 紀子 伊東 真理 壬生 和博 亀川 大輔 依田 綾香 佐藤 里佳
出版者
一般財団法人脳神経疾患研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では3年間にわたり、中等度~重度肥満児で同意が得られた延べ11名(5歳~12歳、男5名/女6名)(OB群)と健常小児12名(NOB群)ならびにその家族に対し、肥満解消のための実践的な介入を実施した。運動生理面で握力と等尺性膝伸展筋力の検討では、OB群はNOB群と比べ全身の筋力が低下している可能性が示された。また血管内皮機能の検討では、OB群はNOB群と比べ有意に低値を示し血管拡張能が低下している可能性が示された。栄養面では、野菜摂取量を増やす実践的な手法を考案し、介入後に野菜摂取が増える傾向を認めた。家族看護の介入では、小学生版QOL尺度を用い、介入後の子どものQOLが上昇傾向を認めた。