著者
渡邊 学 鈴木 徹
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

水産物の冷凍流通は、未凍結での冷蔵流通に比べて可食期間が遥かに長いため、船舶輸送による輸送エネルギーの低減や、食品廃棄の抑制など、環境面では優位性が期待できる。しかし、多くの消費者が冷凍品は美味しくないというイメージを持っており、冷凍流通品の地位は低い。本研究では、マグロとサンマを用いた官能評価を行い、環境負荷と美味しさを統合的に評価することを試みた。この結果、冷凍品は環境負荷が大幅に小さく、美味しさにはそれほど顕著な違いが無いことが示された。すなわち持続可能な社会を実現するためには、冷凍流通を上手に利用することが有効であると言える。
著者
村山 伸子 石川 みどり 大内 妙子
出版者
新潟県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、現代日本において家庭の経済状況は、子どもの食生活と栄養状態に影響するかについて明らかにすることを目的とした。母子生活支援施設と連携し生活保護受給世帯、NPOフードバンクと連携し生活困窮世帯の子ともの食生活について3つの調査をおこなった。その結果、家庭の経済状態は、子ども食生活に影響することが明らかになった。特に低所得(生活困窮)世帯の子どもの食事について、欠食が多く、主食に偏り、たんぱく質やビタミン、ミネラル等の栄養素摂取量が少ないという課題があることが示された。
著者
佐藤 香苗 山内 太郎
出版者
天使大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

包括的な栄養アセスメントにより、血液透析患者の栄養状態・ QOLの維持向上の方策として、透析日の生活活動と亜鉛摂取量の増加が重要であることを見出し、透析中に行う低強度運動プログラム(ストレッチ・マッサージ)を開発した。このプログラムは、患者の身体能力や意欲に応じて選択可能な段階的コースを用意するとともに、患者が自己の最適ペースで実施できるよう、教育メディア(DVD)を制作した。また、亜鉛強化菓子を考案し、透析後に提供して栄養指導の動機づけとするダイエットプログラムを開発した。これらのプログラムの介入効果として、患者の貧血改善や下肢の筋肉量の増加、身体機能の向上が示唆された。
著者
大森 義明 ライト オードリ
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

Han and Hausman(1990)とMeyer(990)により提案されたのと似た,柔軟なパラメトリック・ベースラインハザードを持つ比例ハザードモデル(PHM)にYamaguchi(198)の固定効果最大尤度法(FEML)を拡張する.この手法を用い,米国の若い男性のサンプルの勤続年数モデルを推定し,観察不可能な固定効果を考慮し損なうと,教育の負の効果に下方バイアスが生じることを示す.
著者
山下 暁美
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

日系ブラジル人就労者日本語上級話者のインタビューの収録結果を、好井裕明ほか(1999)と、BTSJ(宇佐美まゆみ、2007)によって文字化した。ただし、BTSJについては現在まだ分析中である。1.あいづちを、(1)感声的(エー・ソウ)(2)概念的(ホント・ナルホド)(3)あいづち的(アー・ウン・エーソウデスネ)(4)繰り返し、言い換え(5)先取り(6)その他の6分類で分類してみると、日系ブラジル人上級日本語話者のあいづちは「感性的」なあいづちが、母語話者にくらべて倍近くに増える。ただし、あいづちの回数は母語話者にくらべて少ない。なかでもfハイ」「ソウ」「フーン」「エー」がよく用いられる。「あいづち的」は、「アー」系に集中する。「概念的」あいづちは用いられなかった。「言い換え、繰り返し」は、聞き取れないとき、用いられる傾向があり、母語話者と内容がやや異なる。以上から、談話中の聞き役としての役割が十分に機能せず、主張ばかりの話し手という印象が強くなる可能性があるといえる。2.敬語は「デス」「マス」以外の表現が用いられない。初対面で日本語能力があっても、「デス」「マス」なしの頻度が高い。3.特定の表現の頻度が高い。例えば、強調は「すごい」、思い返しのポーズは「やっぱり」、説明したい気持ちは「ですよ」、「ますよ」、あいづちは「ア」系、仲間語「〜ちゃうのね」「〜じゃないですか」、古めかしい言い方「商売(ビジネス)」、「やる(する)」「おやっさん」、崩した言い方「どっか」、「来てた」、「ちっちゃい」、付け加え「〜あと」、理由「どうしてかていうと」などで、表現が限定されパターン化している、などの特徴が認められるが、まだ分析は数値化されていない段階である。以上のような結果が明らかになり、目本語母語話者と日本で社会生活を営む上で、日系ブラジル人上級話者は、さらにコミュニケーション能力を高める必要があると考えられる。特に、聞き手の立場の表現、仲間語と公的な場面での表現の使い分け等に重点をおいて教材を開発する必要がある。
著者
南 保輔
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

インタビューで収集された語りデータに基づいて、社会科学はなにをどこまで主張しうるのだろうか。これを根源的な問いとして研究を進めてきた。とりわけ、ひとの「変化」をどのようにとらえうるのかが関心であった。「いまここ」におけるインタビューやおしゃべりにおける談話が、過去の経験や思い出、その・それにともなう「変化」とどのような関係にあるのか。女性3人組に昔の写真を見ながら「思い出」おしゃべりをしてもらい、それを録画してミクロ相互作用分析するということを行った。20歳代2組、30歳代から60歳代までそれぞれ1組ずつの6組のセッションを行った。その結果、容貌などが「変わった」という発言は散見されたが、あるひとの「内面的」なものが変わったという発言はほとんど聞かれなかった。状況設定上の制約であろうという示唆が協力者から得られた。2度の学会発表を通じて研究成果を報告し、フィードバックを得ることができた。テレビのトーク番組を素材とするミクロ相互作用分析も行った。NHK総合の『スタジオパークからこんにちは』と『徹子の部屋』で、同じゲストが数ケ月の間隔で出演した番組を取り上げた。「同じ」話題の語られ方に違いが見られ、その「構築性」を感じることができたが、差異よりも類似性のほうが大きかった。「オリジナルなイベント」とその「語り」との関係については、「真」や「偽」といった二分法的な真理値というとらえかたが不適切であることが示唆された。この結果は紀要論文としてまとめ発表した。ビデオカメラを複数台使用してのミクロ相互作用分析の方法についても実績を蓄積し、方法的な検討も行った。技術と機器の進歩にともない、同期がやっかいな複数台使用ではなく、ハイビジョンカメラ1台での録画が便利で有効であることが判明した。(752字)
著者
吉田 毅
出版者
常葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

後天的身体障害者がスポーツへの社会化を遂げていくプロセスで寄与する他者について、車椅子バスケットボール男女競技者および車椅子バスケットボールと車椅子マラソンの男子競技者の差異に着目し、インタビューで得た語りに基づき具象的レベルで解明することを試みた。ここで導出された他者は主に、スポーツに参加できる状態になるまでは、気を許せる他者、かけがえのない他者、癒す他者であった。その後スポーツに励むようになるまでは、スポーツ活動へ誘う他者と導く他者、それにスポーツ活動のサポート役というべき仲間であった。このうち誘う他者は、車椅子バスケットボール女子と車椅子マラソンでは数少なく上記のような差異が認められた。
著者
政岡 伸洋 岡田 浩樹 小谷 竜介 加藤 幸治 蘇理 剛志 沼田 愛 遠藤 健悟 大沼 知
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、民俗学の立場から、以前の暮らしや他地域の事例も視野に入れつつ、東日本大震災の被災地で起こるさまざまな現象を調査検討し、新たな理解と課題を提示するものである。今回得られた知見として、①震災後の早い段階から民俗行事が行われ注目されたが、これは混乱の中での必要性から、震災前の民俗を活用し、新たに創出されたものであったこと。②暮らしの再建という点からみれば、4年経った被災地の現状は、やっと出発点に立った段階であり、今後もその動きを注視していく必要があること。③被災体験の継承については、災害のみならず地域の歴史や暮らし全体に関心を持つ地元研究者の育成が必要である点などが明らかとなった。
著者
柳本 哲 渡邉 伸樹 大竹 博巳 深尾 武史 谷口 和成 安藤 茂樹 河崎 哲嗣 佐伯 昭彦 池田 敏和 松嵜 昭雄
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本で初めての中高生を対象とした数学的モデリング・チャレンジのプログラムを京都で開催し,その教育的効果を検証するとともに,実施上の問題点について考察した。1回目は2013年2月に中学3年生8名が,2回目は2014年2月に高校1年生21名が,3回目は2015年2月に中高生33名が,それぞれ参加し,ボブスレー問題や電力会社収支問題などの現実問題に数学を使って挑戦した。その結果,参加した生徒は数学の有用性を再認識するとともに数学を使った問題解決に挑む楽しさを感じ取っていた。そして,このプログラム実施によって,周辺の数学科教員に数学的モデリング教材についてより明確に認知してもらうことにも繋がった。
著者
浅井 清文 加藤 泰治
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1、ヒトGMFB、GMFGの特異的抗体の作製。大腸菌で発現させたヒトリコンビナントGMFB、GMFGを、ウサギに免疫しポリクロナール抗体を得た。さらに、GMFB、GMFGは相同性が高いため、通常のポリクローナル抗体では互いに交差反応を示した。そこでGMFB、GMFGを固定化したアフィニティーカラムを利用し特異的に反応する抗体だけを精製した。ウエスタンブロットで検討したところ、ヒトGMFB、GMFGに対しては、特異的に反応したが、ラットについては、反応しなかった。2、ラットGMFB、GMFGのcDNAのクローニング。ラットGMFB cDNAについては、すでに報告されている塩基配列をもとにRT-PCR法を用いてタンパク質をコードしている部分のみクローニングした。ラットGMFG cDNAについては、ヒトGMFG cDNAをプローブとして、ラットBrain cDNA Libraryをスクリーニング、クローニングした。ラットGMFG cDNAは、ヒトと同様142アミノ酸をコードしており、アミノ酸レベルで91.5%の相同性があった。3、ラットGMFB,GMFGリコンビナント蛋白の発現。ラットGMFB、GMFG cDNAを発現ベクターpAED4に組み込み、大腸菌BL21(DE3)に導入した。発現したタンパク質は、カラムクロマトグラフィーにて精製した。4、ラットGMFB、GMFGの特異的抗体の作製。大腸菌で発現させたラットリコンビナントGMFB,GMFGを、ウサギに免疫しポクローナル抗体を得た。ヒトの時と同様にして交差反応を示す抗体成分をアフィニティーカラムを利用し除去し、特異的に反応する抗体だけを精製した。ウエスタンブロットで検討したところ、ラットGMFB、GMFGに対して特異的に反応した。5、ユーザンブロット、ウェスタンブロットによる検討。ラット臓器におけるGMFB、GMFGの発現を検討するためにノーザンブロットおよびウェスタンブロットを行った。ノーザンブロットは、市販のMultiple Choice Tissue Northern Blotを購入し検討した。GMFBは、脳に特に多く、他の臓器にも一様に発現していた。一方、GMFGは、胸腺、脾臓、睾丸に多く発現していた。ウェスタンブロットには、妊娠ラットより、大脳皮質、脾臓、胸腺を採取し、蛋白を抽出し使用した。GMFGは、胸腺、脾臓に発現しており、ノーザンブロットの結果とほぼ一致した。
著者
徳山 美知代 田辺 肇
出版者
静岡福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

里親と里子を対象としたアタッチメントに焦点をあてたプログラムを作成し、その有効性の検討を行った。4組の里親と里子を対象に測度と内省報告による検討を行った結果、里子の問題行動の減少と里親のストレス軽減などに肯定的な変化が見られた。さらに、里親のプログラムへの内省報告と里子の行動との関連を検討した結果、プログラムの要素である里親の敏感性の向上と、里子に対する安全感・安心感を高める働きかけによって、里子の里親を安全基地とした自律的な探索行動が促進されたこと、そういった肯定的な変化がアタッチメントに関連する問題行動の減少につながる可能性が示唆された。
著者
窪田 隆裕 渡辺 正仁 森 禎章 相馬 義郎 竹中 洋 相馬 義郎 竹中 洋
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

(1)蝸牛内リンパ腔電位(endocochlear potential, EP)の発生源は辺縁細胞の側基底膜のNa^+拡散電位である。(2)EPの変化は、主として内リンパ腔周囲細胞における種々のCa^<2+>チャネル(主としてL型Ca^<2+>チャネルやTRPCチャネル)から細胞内へのCa^<2+>流入によって引き起こされる細胞間タイト結合の電気抵抗の低下によるものである。(3)EP変化の一部は辺縁細胞内のCa^<2+>濃度の上昇による側基底膜のNa+拡散電位の低下によって引き起こされている。以上、EPの発生機序とその調節におけるCa^<2+>の役割に付いて研究成果を得た。
著者
堀 勝彦 桑原 史郎 石澤 末三 土居 潤子 山田 克宣
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、経済環境の変化がもたらす技術革新(および経済成長)と企業退出への影響を分析することを目的として、企業の「市場への参入→生産活動と技術開発→市場からの退出」というライフサイクルを明示的に導入した経済成長モデルを構築した。この枠組みの下で、新技術を開発した企業の参入が直接既存企業の退出を意味する従来の見方では捉えることができない、より多様で複雑な技術開発と企業退出の関係を示すことができた。
著者
玄 武岩 渡邉 浩平 金 成玟 鈴木 弘貴 崔 銀姫 北見 幸一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、メディアコンテンツの流通における生産および受容の二つの側面から、東アジアにおける越境的な放送空間の構築について実践的に考察した。生産面においては、2001年に始まった「日韓中テレビ制作者フォーラム」に直接かかわりながら調査を行い、その意義と可能性を考察した。受容面においては、東アジアにおける大衆文化コンテンツの越境を、産業、文化、消費、歴史認識など包括的なアプローチをとおして考察し、その過程における排除と変容、現地化と再創造の文化的意味を明らかにした。
著者
西尾 久英 竹島 泰弘 西村 範行
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

脊髄筋萎縮症(SMA)患者の 95%以上に、SMN1 遺伝子のホモ接合性欠失が認められる。このような SMA 患者では、SMN1 遺伝子とつよい相同性を有する SMN2 遺伝子が残存していて、かなりの程度 SMN1 遺伝子の欠失を補償しているものと考えられている。実際、SMN2 遺伝子のコピー数は、SMA の臨床的重症度と逆相関の関係が認められている。SMN1 遺伝子と SMN2遺伝子のプロモーター領域の塩基配列はほとんど同一であると報告されているが、c.-318 GCC 挿入多型は SMN1 遺伝子プロモーター領域に特有のものであると考えられてきた。今回の研究プロジェクトにおいて、私たちは、SMN2 遺伝子のコピー数が少ないことから重症であると予想されたのにもかかわらず、意外にも軽症であった SMN1遺伝子欠失患者の SMN2 遺伝子プロモーター領域を解析し、c.-318 GCC 挿入多型を見いだした。私たちは、この多型の SMN2遺伝子転写に与える影響を解析し、脊髄性筋萎縮症治療法の開発を目指した。しかし、このc.-318 GCC 挿入多型は SMN2 遺伝子プロモーターの転写活性を上昇させず、白血球中の SMN2 遺伝子転写産物は他の 5 人の SMN1 遺伝子欠失患者より少なかった。c.-318 GCC 挿入多型を有するプラスミドを使ったレポーター遺伝子アッセイでも、この多型が転写効率に対してわずかではあるが負の効果を持っていることが明らかになった。結論として、SMN2 遺伝子プロモーターの c.-318 GCC 挿入多型は、意外にも軽症であった臨床像には関係がなかったものと思われる。また、このことは、非 SMN2 遺伝子関連症状修飾因子がSMA の重症度に関わっていることを示唆している。また、c.-318 GCC 挿入多型は SMN2 遺伝子の転写活性を低下させることが明らかになった。このことは、SMA 治療の際には、SMN2 遺伝子の転写活性にかかわる薬剤の種類や量を、c.-318 GCC 挿入多型の有無によって変える必要があることを示唆している。
著者
足立 俊明 大塚 富美子 前田 定廣 包 図雅
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

まず1つの軌道に対してその始点と軌道上の各点を測地線で結んで構成される軌道ハープについて、構成された測地線分の長さやそれらの初期ベクトルが作る天頂角を考え、ケーラー多様体の断面曲率が上から評価されているという条件の下で長さと天頂角の下からの評価を与えた。次に、磁力がアダマール・ケーラー多様体の曲率に比べて小さいとき、軌道の非有界性と、磁性指数写像の微分同相性を示した。更に、1つの測地線に対してその始点と各点とを結ぶ軌道で構成される軌道ホルンを考え、磁力と断面曲率との関係を満たせば多様体上の点と理想境界上の点とを結ぶ軌道がただ1本存在し、理想境界の異なる2点を結ぶ軌道が存在することを示した。
著者
平川 澄子 仲澤 眞
出版者
鶴見大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

女性スポーツに少なからぬ影響を及ぼしているメディアとジェンダーの関係を中心に研究をすすめた。メディアで醸成される身体や運動・スポーツに関わる言説は、筋肉に象徴される逞しい男性の身体と、無駄な脂肪の少ないしなやかな女性の身体という、性によって異なる理想の身体像をつくりだした。その背景には、スポーツの産業化の進展によるフィットネスクラブの急増、テレビメディアを介してのスポーツの氾濫があった。「フィットネス」は、より積極的に理想の身体を獲得するための営みとなり、改造可能な身体観がもたらされた。1980年以降のBMIの推移をみると若い女性のスリム化傾向は著しく、男性は体格向上ないしは肥満化傾向にある。身体のジェンダー化は着実に浸透している。身体を重要な要素とするスポーツはジェンダー化された身体像の影響を大きく受けている。スポーツを題材としたテレビコマーシャルの映像分析を行った結果、男性が主人公となるCFが64.8%で女性の14.3%を大きく上回っていた。質的にも異なる描写がなされ、男性スポーツ選手はメディアを介してより偉大に描かれていくのに対して、女性スポーツ選手は矮小化されていくことが明らかになった。女性スポーツ発展のためには、ジェンダーにとらわれない個性ある身体を見直すこと、メディアを批判的に読み解き、是正する声をあげることの重要性が示唆された。また継続して考察を進めてきた女子サッカーリーグの運営と観戦者に関する日米比較研究からは、女性ファンの開拓、スター選手のメディア露出、女子サッカーのプレイ環境の整備などの課題が示唆された。
著者
若杉 雅浩
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

多くの地域において増え続ける救急患者に対して「緊急に治療が必要な患者を、適切な時間内で、的確に診断治療」できる安全な社会基盤を確立するために、救急外来において普遍的に使用できる標準化された患者トリアージシステムを確立し、システムを用いた救急患者のトリアージ結果を一元化して集積するために看護師向けの教育コースを開発し提供するとともに、地域においてトリアージ結果のデータ収集ができる体制を構築した
著者
江原 由美子 左古 輝人 鶴田 幸恵 林原 玲洋 須永 将史
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

学問の世界において生み出された概念である「ジェンダー」は,広く一般に使われる言葉として普及した.だが,その使用が政治的に批判されるようになると,「科学・社会・政治」が交錯し,相互に影響を与える状況が生じた.このような状況は,どのようなコミュニケーション齟齬を生み出したのだろうか.学問の世界における「ジェンダー」概念は,もともとかなり限定された文脈において創案されたものであるが,その文脈から切り離されることで,かえって広範な応用可能性を持つことになった.だが,その一方で,学問的であるか否かにかかわらず,「ジェンダー」概念の使用が批判されるという,複雑な政治的状況を招くことにもなったのである.
著者
稲葉 美由紀 杉野 寿子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

私たちの日常生活は自然災害、新たなテクノロジーやグローバル化の影響を受けている一方で、様々なリソースは減少しています。そのような状況を背景に、本研究は貧困や格差の問題が深刻化している「豊かな国」において、従来の救済的・治療的な社会福祉の枠組を超えた社会開発的なコミュニティワークモデルづくりへの手がかりを模索することを目的とした。社会開発的なアプローチとして、社会企業・ソーシャルビジネス、少額融資、コミュニティガーデン、認知症カフェなどの地域を基盤とした新たな活動が展開されていることを確認することができた。研究成果は日本社会福祉学会などを含む国内外学会で発表し、論文として出版した。