著者
田村 哲樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

まず、単著の研究書『熟議民主主義の困難――その乗り越え方の政治理論的考察』(ナカニシヤ出版、2017年5月)を刊行した。本書は、熟議システム概念の世界的な研究動向を踏まえつつ、その「システム」理解について、「入れ子型熟議システム」の概念の提起および自由民主主義と熟議システムとの関係の再検討を通じて、新たな問題提起を行うものである。また、海外の研究者2名との共著による論文「Deliberative Democracy in East Asia」を脱稿した。本論文も含むThe Oxford Handbook of Deliberative Democracyは、2018年度中に刊行予定である。また、9月には、ブラジル・ミネスジェライス連邦大学(UFMG)からの招待で熟議システムと自由民主主義の再検討に関する2つの報告・講演などを行った。この渡航費は招待者である同大学からの支出であるが、招待責任者の一人である同大学のリカルド・F・メンドンサ助教授との研究ネットワークは、本研究課題での活動を通じて深められたものであるため、ここに記しておきたい。さらに、熟議民主主義と政治概念の再検討に関する内容を含む、二冊の政治学教科書を、いずれも3名の研究者との共著で出版した。『ここから始める政治理論』(有斐閣ストゥディア、2017年)は、熟議民主主義を含む政治理論の現在の到達点を可能な限り平易な文体で伝えるものである。『政治学』(有斐閣、2017年)には、熟議民主主義を含む、「近代政治」の乗り越えをめぐる政治理論の研究動向や、経験的政治学と規範的政治学との関係についての説明も盛り込まれている。その他、熟議民主主義と政治の再検討に関するいくつかの学会報告や論文執筆を行った。特に日本比較政治学会の共通論題では、熟議システム論の再解釈を通じて分断社会への新たな政治理論的アプローチを提示した。
著者
前田 佳一 山本 潤 江口 大輔 桂 元嗣 木戸 繭子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本プロジェクトは文学作品において固有名が有する機能について、中世から現代までのドイツ語圏文学における人名、地名を対象に、個々の作品のケーススタディを通じて検証した。その際には、とりわけ<神話化>ならびに<錯覚形成>という機能に着目した。結論として、文学的固有名には<産出性>、<虚構性>、<否定性>という三つの契機が認められることが明らかとなった。
著者
宮岡 徹
出版者
静岡理工科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

宮岡は,対象表面の粗さ・滑らかさを触ることによって知る触微細テクスチヤー知覚について研究し,「振幅情報仮説」を提唱した.この仮説が正しいなら,触覚系はローパスフィルタ特性を示すはずである.本研究は,このローパスフィルタ特性を調べることを研究目的とした.1.数理モデルの作成:触覚系がローパスフィルタ特性を持つなら,どのような結果が導出されるかについて,その特性を記述する数理モデルを作成した.このモデルによれば,触覚系がローパスフィルタ特性を示す場合,心理測定関数に特定のパターンが観察されるはずであった.2.能動触による実験:本実験では,回折格子を刺激として用いた。回折格子に指で触れ,溝に対し直角方向に一定速度で動かせば皮膚には三角波状の振動が与えられる。この振動は,基本周波数がはっきり決まっており,それより低い周波数成分を含まない。従って,基本周波数成分が皮膚及び神経系のフィルタを通過できた場合にはじめて,その回折格子表面に何らかのテクスチャーが感じられるはずである。本実験では,刺激に触れている指を20mm/sの速度で能動的に動かし,2つ1組の刺激のどちらを粗く感じるかを,二肢強制選択法により判断した。その結果,触覚系フィルタの通過限界周波数は400〜600Hzの間にあることが明らかとなった。また,この能動触実験の結果得られた心理測定関数は,ローパスフィルタのモデルで予測された心理測定関数と一致した.3.運動制御装置の作成と受動触による実験:ローパスフィルタ特性測定実験をさらに正確に実施するために,刺激移動速度を機械的に制御して,固定した指に受動触の状態で刺激を呈示する装置を作成した.この装置により実験を行なった結果,能動触実験と一致する結果が得られた.受動触実験で得られた心理測定関数も,数理モデルの予測に合致した.本研究の結果,触覚系の微細表面テクスチャー知覚における「振幅情報仮説」は基本的に正しいことが明らかとなった.
著者
齋藤 長行 新垣 円
出版者
ビジネス・ブレークスルー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、「青少年保護バイデザイン」政策理念を念頭に置き、青少年のインターネット利用環境整備の為に、青少年のインターネットのリスクに対する知識や対処能力を可視化し、その評価結果を基にして政策の方向性を示すことを目指した。その為に、「青少年のインターネット・リテラシー指標(ILAS)」の調査で得られたデータを分析・評価し、政策提言を取りまとめた。その政策提言は、学術界のみにとどまらず、国際政策機関を通じて国際社会に共有することができた。
著者
大谷 卓史 村上 祐子 川口 由起子 川口 嘉奈子 永崎 研宣 坪井 雅史 吉永 敦征 芳賀 高洋
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究においては、①最新の社会・技術動向に照らして大学教養課程向けの情報倫理学教科書を改訂して基本的な情報倫理学概念を確認し、②情報倫理学の歴史を整理し、あわせて、③プライバシーと自己決定権に関する議論を概観したうえで、④ソーシャルメディアによる個人をターゲットとした世論操作の可能性や、⑤サーチエンジンの検索結果表示アルゴリズムなどによるプライバシーや自律への影響の問題などの考察を行った。これらの成果を踏まえ、研究成果の一部を書籍として刊行した。同書『情報倫理-技術・プライバシー・著作権』(みすず書房)は、公益財団法人電気通信普及財団第33回(2017年度)テレコム社会科学賞奨励賞を受賞した。
著者
池谷 博
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、 HBV と HCV の2種類の感染症と血液型を同時に判定する DNA チップの開発に成功した.また, 感染病原体が死後相当時間経過しても感染性を有することの証明や,各種体液特異的な mRNA を検出することに成功した。
著者
青山 謙二郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

砂糖に対しても薬物と類似した強い渇望を伴う“中毒”症状が生じ、健康な食生活の妨げとなると言われている。本研究では、砂糖に対する渇望が増強されるプロセスを、条件づけの観点から検討し、渇望を制御するための手法の開発を目指した。主として以下の3つの成果が得られた。第1に、カロリーの無い人工甘味料についても渇望の増強が生じることが見いだされ、渇望の増強においてカロリーは不要であることが示された。第2に、砂糖の間欠的な剥奪によっても渇望の増強が生じることが見いだされた。第3に、飼育環境の豊富化により、砂糖と結びついた刺激への反応性の増強は抑制されるが、砂糖の摂取量の増強は抑制されなかった。
著者
齊藤 修 橋本 禅 高橋 俊守
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、里山を対象として、供給サービス(木材、食料)、調整サービス(大気・水循環調整)、文化的サービス(レクリエーション、景観)、基盤サービス(生物生息地)の各生態系サービスを定量評価し、複数の将来シナリオのもとで生態系サービスが今後どう変化しうるかを政策立案者や地域住民に対して定量的・空間的・視覚的に伝え、協働を支援する対話型シナリオ分析ツール開発を行った。
著者
前濱 剛廣 曽根川 富博 比嘉 晃
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

シリコンをHF溶液中において臨界電流密度以下で陽極化成すると多孔質シリコン層が形成される.その多孔質層は,多孔度に対応して屈折率も変化し,多孔度は陽極化成電流密度で容易に制御できる.この性質を利用して,電流密度を低・高と周期的に変調し,第1層の多孔質シリコンの格子パターンを下層に自己クローニングして作製する,屈折率孔質シリコン3次元周期構造(PS3DPS)の作製手法を確立し,3次元フォトニック結晶作製に応用することがこの研究の狙いである.本枡究での具体的な目標は,赤外領域の光に反応する1辺が約1μmサイズのPS3DPSの作製である.1μmサイズのPS3DPSの作製の基礎データを得るため,1μm層厚の1次元周期構造の形成特性を,走査電子顕微鏡及びX線2結晶法で詳細に調べ,10mA/cm^2と50mA/cm^2を交互に流す周期的変調法でほぼ設計通りの1次元周期構造が形成できることを確認した.1μm〜20μmの正方格子ホトマスクを用いた選択陽極化成と,提案した自己クローニング法でPS3DPSの作製を行い,どこまでPS3DPSサイズの縮小化が実現できるか走査電子顕微鏡による断面観測で調べた.その結果,(1)選択陽極化成のレジストとしてポジ形フォトレジストは不適でネガ形フォトレジストが適していることがわかり,(2)PS3DPSのサイズは,5x5μm正方格子を1μmの層厚で7層目まで自己クローニングできることが確認できた.また、サイズの縮小化と自己クローニングの繰り返し数の増加の障害となっている主な原因は,多孔質シリコンが深さ方向だけでなく横方向へも成長するためであることがわかった.今後は,多孔質シリコンの成長メカニズムを解明して,深さ方向に対する横方向成長比が小さくなる陽極化成条件を探索して,1μmサイズのPS3DPSを実現する研究をさらに進める必要がある.
著者
呉 繁夫 大浦 敏博 鈴木 洋一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

グリシン脳症は、グリシン解裂酵素系の遺伝的欠損により引き起こされる先天代謝異常症の一つで、体液中グリシンの蓄積を特徴とする。本症には、新生児期にけいれん重積や昏睡などの症状を示す古典型と乳児期以降に精神発達遅滞、行動異常、熱性けいれんなどを主な症状とする軽症型が存在する。本研究では、軽症型グリシン脳症モデルマウスを用い、治療法の開発を行った。軽症型モデルマウスは、野生型であるC57BLマウスと比べ、多動、攻撃性の亢進、不安様行動の増加、及び易けいれん性の亢進などの行動の異常を示す。本研究では、多動と易けいれん性を指標として有効な薬物を検索した。薬物としては、抑制性グリシン受容体のアンタゴニストとNMDA型グルタミン酸受容体のグリシン結合部位のアンタゴニストの2種類を検討した。これは、グリシンは、中枢神経系で大きく分けて2種類の神経伝達に関わっていおり、一つは、抑制性グリシン受容体を介した神経伝達で、もう一つは、NMDA型グルタミン酸型受容体のグリシン結合部位を介したこの受容体の興奮調節である事に基づいている。これらの薬剤をモデルマウスに腹腔内投与し、多動の改善を検討した。その結果、NMDA受容体のアンタゴニストでは、野生型の行動量を変化させない薬量で、増加していた行動量を正常化した。次に、けいれん抑制効果を電気ショックを与えた後の誘発されるけいれんの長さを指標に検索した。その結果、モデルマウスで延長していたけいれん持続時間が治療で正常化していた。この結果は、NMDA受容体のグリシン結合部位のアンタゴニストがグリシン脳症の治療に応用可能であることを示している。
著者
岩下 孝 関谷 紀子
出版者
(財)サントリー生物有機科学研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

膜タンパク質に^<19>F固体NMR法を適用して構造解析を行うためにフッ素化トリプトファンのバクテリオロドプシンへの取込み実験を計画した。バクテリオロドプシンには8個のトリプトファンしか含まれていないが、化学シフトの重なりが予想されるので分散性を期待して4-F、5-F、6-F-トリプトファンについて取込み実験を行い、それぞれのトリプトファンが標識されたフッ素化バクテリオロドプシンを得た。その中で6-F-トリプトファンを含むバクテリオロドプシンはスクロースグラジエントやMALDI-TOF MSの挙動からタンパク質と膜との複合的な構造に根本的な違いがある可能性が示唆された。そこで、これら3種のF-トリプトファン含有バクテリオロドプシンのX線回折実験およびCDスペクトルの測定を行ったところ、6-F-トリプトファンを含むバクテリオロドプシンについてはX線回折像が全く得られず、またCDスペクトルからも非結晶性であることが明かとなった。タンパク質内での核間距離の測定を目指してレチナールクロモフォアのシクロヘキセニル部分をCF3基を持つベンゼン環に置換した合成レチナールを調製し、5-F-トリプトファンを含むオプシンとの再構成を行った。トリプトファンのインドール環上にあるフッ素と天然レチナールと置き換えた合成レチナールのCF3基との間に双極子-双極子相互作用による磁化移動が起こるかどうか実験を行った。1次元RFDR実験と2次元CP_EXCY実験によって磁化移動が起っていることが示唆されたので、2次元MELODRAMA実験を行ったところ、両者の化学シフトが交差する位置にダイアゴナルピークとは逆位相のクロスピークを観測し磁化移動が起っていることを確認した。
著者
人見 裕江 中村 陽子 小河 孝則 畝 博 井上 仁 仁科 祐子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

グループホームやデイサービスにおける痴呆症高齢者ケアの実態と美容を取り入れたケアの効果について、事例分析、免疫機能、動脈硬化指数、家族に及ぼす美容の効果、およびスタッフをはじめとするケア提供者へ及ぼす影響について検討した。免疫機能、動脈硬化指数では変化が明らかではなかったが、認知症高齢者の表情が豊かになり、言語も増す傾向が示され、スタッフや家族への相互作用があることが示唆された。化粧が及ぼす生理・心理的反応に関する基礎的研究(北川・人見、2006)を行い、手軽にできる口紅について、心理的変化および脳活動・自律神経機能に与える影響について検討した。口紅をつけた結果、これまでの報告にもみられるように、化粧による気分の高揚や積極性の向上などの心理的変化が認められた。しかし、このような心理的変化では、脳活動。自律神経機能には有意な影響を与えないことが示唆された。京都、イスタンブール、ベルリンにおける第20-22回アルツハイマー病協会国際会議に参加し、世界の認知症ケアに関する情報を得た。A老年性痴呆疾患治療病棟における攻撃的行動のある認知症高齢者に対するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係をパイロットスタデイとして調査した。攻撃的行動を否定的に捕らえるスタッフはバーンアウト傾向にあることが示唆され、認知症ケアにおける看護介入の方策、およびスタッフ教育について、検討する必要性が急務であることが示めされた(人見・中平・中村・他、2006)。そこで、大阪および山陰地方の介護施設のスタッフ約1、500人を対象に、調査研究を行った。また、代替療法を用いた介入研究を地域の病院における療養型治療病棟や特養において実施し、本人だけでなくスタッフおよび家族への波及効果がある傾向が示された。今後、全国の痴呆症ケアに関わる病院や施設および事業所等に勤務するスタッフの態度とバーンアウト症候群との関係を明らかにし、介護提供者の教育システムを構築に関する示唆を得ると共に、提言をする予定である。
著者
笹川 寿之 浜 祐子 GIGA-HAMA Yuko
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)のHPV16が子宮頚癌の発生を誘発することが明らかになっている。したがって、HPV16に対して有効な免疫を誘導することが感染防止や将来の癌発生防止に有効であると考えられている。米国のグループがHPV16型L1蛋白を酵母で発現させて作成したウイルス様粒子(VLP)をワクチンとして人に免疫したところ、100%その感染は抑えられたと報じられた。このワクチンは注射ワクチンで、精製したウイルス様粒子を計3回の注射を行っている。効果はみとめられたが、このワクチンは単価が高く、また、低開発国など医療設備が充実していない地域において、このワクチンの保存や注射そのものが難しいなどの問題点がある。そこで、安価で経口投与出来るワクチンの開発が期待されている。最近、我々はHPV16型様粒子を産生する酵母を経口投与した後にごく少量のVLPを鼻粘膜に投与することで、HPV16型特異的な抗体が誘導されることを発見した。本研究では、この研究を発展させ、HPV16型感染の防御のみならず、HPV16型特異的なキラーT細胞を誘導し、治療を目的としたワクチンの作成を試みた。S.pombeの発現ベクターにHPV16L1-E7(L1を短くしたC-末に全長のE7を導入したもの)を組み込んで発現させたところ、57kD,63kD,67kDの蛋白発現に成功した。このHPV16L1-E7を発現する酵母を凍結乾燥させ、マウスに食べさせたところ、HPV16様粒子(VLP)に反応することを確認した。このことから、この融合蛋白がL1だけで構成される粒子と同じような粒子を形成し、それによって抗体産生が誘導されることが示唆された。E7に対するキラーT細胞が誘導されているかどうかについて今後検討する予定であり、もしこれが誘導されれば、予防的かつ治療的ワクチンとして有望となる可能性がある。
著者
内藤 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

通常、連続体力学(流体力学)では、数千個程度以上の分子群を巨視的にみて流体粒子と呼んで、その運動を記述している。生命体においそ、例えば、塩基分子の運動をみてみると、塩基の周囲に多数存在する水分子群と相互作用があるので、これらの分子群をひとつの仮想的な"粒子"と考えて、連続体力学によって分析することを試みた。まず本研究では、事前に、以下の知見を得て、それをキーとした。・塩基分子は大別して、プリンとピリミジンである。プリンのサイズはピリミジンの1.5倍程度である.塩基分子以外でも、例えば、細胞サイズにも分布があり、1.5倍程度までサイズに差異があることがある。そこで、サイズ比が1.5付近である理由とそのメカニズムの解明を目指した。その結果、・理論、コンピュータモデルと実験を総合すると、1.5付近が必ずしも最適というわけではなく、1.0〜約1.5の間で単純な優劣はつけにくい.このことが、サイズ比、つまり、分子種の多様性を生み出し、環境変化への対応能力をあげている.・様々なRNA分子の構造の必然性が明らかにされた.RNAの複雑なクローバー構造は、プリンとピリミジン塩基分子のサイズに由来している.・n次のルートnという数列のすべての値が1.0〜約1.5の間にあり、この数列で、生命に見られるサイズ比を表すことができる可能性がある.・この研究で対象としていた微生物研究の中から、80℃以上を好む好熱菌が同レベルの温度で作動する燃料電池で増殖する可能性が見出された。各種燃料電池材料の微生物劣化に関する評価法を提示するといったことなどの成果も生まれた.
著者
中橋 和博 大林 茂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、亜音速場でよく用いられる縦渦導入による境界層剥離制御法が超音速流中の境界層剥離に対しても有効かどうかを数値解析でもって調べること,およびそのための効率よい数値計算手法の構築を目的とし,研究を以下のように進めて大きな成果を得た.1.超音速流中のボルテックスジェネレーターまわりの詳細な数値計算を効率よく行うための数値解法の開発を進めた.従来の差分法計算法に生じる計算特異点等の問題点を解決するため,非構造格子法によるナビエ・ストークス計算コードの開発を進めた.その結果,計算特異点等の問題が解決されたことにより計算時間は従来の計算法に比べ数分の1に減らすことが可能になり,その有効性を確認した.この計算法は,世界的に現在主流の差分法に基づく計算法に取って代わりうる能力があり,数値流体力学研究への貢献は非常に大きい.2.平板上に三角錐状の突起をつけた場合および同様の形状の空洞を設けた場合について,それらが超音速流中において誘起する流れ場をナビエ・ストークス数値計算により調べた.その結果,突起形態および空洞形態ともその後流に対の縦渦を誘起することを確認し,かつその誘起渦度の強さは三角錐の開き角と一様流のマッハ数との関係で大きく変化することを見いだした.また,空洞型ボルテックスジェネレーターは超音速場での衝撃波発生および空力加熱問題点で有利であるが,生成された縦渦が下流では壁面へと進んで平板境界層と融合し,境界層外の運動量を境界層に導く効果は弱くなってしまうこと,また,三角錐開き角とマッハ数との関係も上流境界層が厚い場合は明確ではないとの結果を得た.以上の研究において,備品として購入したコンピュータはプログラム開発および計算前処理と後処理端末として非常に有効であった.
著者
本間 哲哉
出版者
芝浦工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

廃棄プラズマ・液晶ディスプレイパネル、ブラウン管、プリント配線板、蛍光管、集積デバイスなどからの有用金属リサイクル技術の開発を行った。各種金属・金属酸化物の各種酸水溶液への溶解性、電気化学的測定、析出・回収物の結晶構造解析、不純物分析などを行った結果、①金属、金属酸化物は、HF、HF/H2O2、などの酸水溶液に可溶で、廃棄物の室温同時一括処理が可能であること、②貴金属、レアメタル等の金属、金属酸化物を、金属ごとに分離・回収できること、③析出したAu、Ag、In、Cuの濃度が72~95 重量%であること、などがわかった。また、リサイクルInの透明導電薄膜への応用可能性が高いことがわかった。
著者
鋤納 心 坂根 直樹 大原 こころ
出版者
独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,低AGEs食レシピの開発を目的に,血中AGEsと食事の要因を探索するため食習慣の改善を中心としたダイエットプログラムにおいて,AGEsの変化と栄養素の変化を検討し,また調理方法の違いにおいて血中AGEs濃度の影響を調べた.栄養素の変化ではビタミンD,食物繊維,不溶性食物繊維に負の相関が見られ,体重とは関係なく独立してビタミンDの変化が血中AGEsの変化と関連した.血中CMLは食事摂取より増加が見られたが,その増加量は一般食と低AGEs食で同程度であった.一方,食後2時間の血糖値やインスリンは一般食よりも低AGEs食の方が低かった.
著者
國安 弘基 傳田 阿由美 笹平 智則 大森 斉 藤井 澄 バワール ウジヤール 傳田 阿由美 笹平 智則 大森 斉 藤井 澄 バワール ウジャール
出版者
奈良県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本課題ではアンギオテンシン系の腫瘍における作用を総合的に検討した。高血糖は大腸癌細胞にレニン発現を誘導し、キマーゼとともにアンギオテンシンを活性化し、肝転移を促進した。アンギオテンシン分解産物のアンギオテンシン1-7受容体であるMAS1の発現は乳癌特にスキルス癌で顕著に低下しstage、リンパ節転移、HER2発現と逆相関した。MAS1は乳癌における新たな癌抑制遺伝子と考えられた。このように、癌におけるアンギオテンシンの役割に応じた標的治療が有効であると考えられる。
著者
松浦 雅人 大久保 起延 泰羅 雅登 小島 卓也
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は日本大学医学部倫理委員会の承認を受け、対象者はすべて文書と口頭にて研究の主旨を説明し、インフォームドコンセントの得られたpaid volunteerである。視標誘導性サッケード、アンチサッケード、視標追跡眼球運動、注意喚起時の追跡眼球運動の4課題を、健常者21例、統合失調症18例、てんかん16例、てんかん性精神病9例に行い、課題遂行中の機能的MRIを撮像した。課題呈示と眼球運動のモニタリングにはVisible Eyeを用い、MRI装置は通常の1.5T臨床用装置を用い、EPI法を用いて3mm厚で全脳を撮像した。各40秒間の課題遂行と40秒間のbaselineを5回繰り返すbox-carデザインとし、画像解析にはSPM99を用いた。健常者は,サッケード課題遂行時に前頭眼野,補足眼野,頭頂眼野が賦活され,アンチサッケード課題遂行時にはさらに前頭前野,および線条体-視床の賦活が増加した.これは,要求される課題負荷量の増加に応じて脳賦活量も増大した結果で、生理的賦活増加現象と考えられる.追跡眼球運動遂行時には左側の前頭-頭頂眼野が賦活され,注意喚起時には右側前頭-頭頂眼野の賦活が増加した.統合失調症は、サッケード課題遂行時にすでに前頭前野を含む前頭葉皮質の過剰賦活がみられ、前頭葉の機能効率低下あるいは容量低下があると考えられた。また、アンチサッケード課題による線条体-視床の賦活はみられず、皮質下の機能低下が示唆された。さらにアンチサッケードで左半球皮質の賦活増加がみられず、注意喚起で右半球の賦活増加がみられず、左右半球側性化障害も示唆された。一方、てんかん群でも皮質の過剰賦活や生理的賦活欠如がみられたが,てんかん性精神病群ではこのような所見は明らかでなく,てんかん性精神病の神経回路障害は統合失調症のそれとは異なると考えられた.
著者
小川 久雄
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

最近、不安定狭心症患者の末梢血中のリンパ球や単球が活性化していることが報告された。冠攣縮は不安定狭心症および急性心筋梗塞などのような虚血性心疾患の病態において重要な意義をもつ。一方、nitric oxideは冠攣縮において重要な役割を果たす。以前に、我々は冠攣縮性狭心症患者の冠動脈においてnitric oxideの欠乏があることを報告した。また、nitric oxideは免疫応答に影響をおよぼすことが報告されている。本研究では、Th1 cellが産生するinterferon-gammaとTh2 cellが産生するinterleukin-4といった細胞内サイトカインを測定することで虚血性心疾患患者の循環血液中のT helper cellのTh1 cellとTh2 cellへの活性化について検討した。50人の冠攣縮性狭心症患者、23人の不安定狭心症患者、36人の安定狭心症患者、21人の対照患者から採血を行った。その血液をphorbol myristate acetateとionomycinを用いて活性化させた。そしてフローサイトメーターを用いて患者の血液中のT細胞のinterferon-gammaの産生とinterleukin-4の産生を検討した。冠攣縮性狭心症と不安定狭心症の患者のT細胞では対照者に比べinterleukin-4の産生亢進はなくinterferon-gammaの産生亢進状態が認められた。すなわち、これらの患者ではT細胞のTh1 cellへの活性化があることが明らかとなった。また、安定狭心症患者のT細胞では冠動脈病変の多少によるinterferon-gamma産生の差は認めなかった。最近、nitric oxideがTh1・Th2のサイトカイン産生に関与することが報告された。そこで患者血液をnitric oxideとともに培養してみたが、T細胞のinterferon-gammaの産生はnitric oxideにより抑制されることが分かった。これらにより冠攣縮性狭心症および不安定狭心症の患者においてT細胞のTh1 cellへの活性化があることおよびTh1 cellへの活性化はnitric oxideの作用にて減じることが証明された(Circulation 2003 in press)。