著者
椨 瑞希子 小玉 亮子 赤坂 榮 Hevey Denise Ang Lynn Schoyerer Gabriel Riedel Birgit
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、日本、ドイツ、イギリスの3か国における家庭的保育の実態を明らかにすることを通して、子どもの視点が欠落しがちな3歳未満児保育の望ましい在り方を探ることにある。文献調査を通じて、3国いずれにあっても、①私的な営みとして存在していたものが過去20年の間に既存の就学前施設と同等の法的位置づけを得たこと、②家庭的保育法制化の誘因は緊急かつ大幅な保育拡充政策であったこと、③法制化の道程と到達点は各国における保育の歴史的背景によって異なること、④家庭的保育の衰退もしくは停滞が認められること、を明らかにした。日独、日英研究者による合同調査を通して、家庭的保育者の働き方や意識の異同も確認した。
著者
浦野 直人 石田 真巳 西沢 正文 西沢 正文
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は未利用資源である褐藻廃棄物から効率的にバイオエタノールを生産するため、褐藻糖化酵母を創出することを目的とした。酵母と酵素の活性温度を一致させるため、海洋低温菌由来のラミナラナーゼを探索し、相模湾由来のPseudoaltermonas haloplankitis LAを単離した。LAのラミナラナーゼPhLamは活性部位下流にX1, X2, X2の繰返し配列を持つ新奇酵素であり、活性発現にXが必要であった。PhLamを酵母Saccharomyces cerevisiaeで表層提示したところ、組換え酵母は褐藻ラミナランの分解活性を持ち、ラミナランから直接的にバイオエタノールを生産した。
著者
伊藤 正紀 本間 定 小井戸 薫雄 芝 清隆
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

細胞性免疫ワクチンには、アジュバントが必須であるが、副作用が指摘されている。アジュバントフリーワクチンを作成するため、これまでに抗原提示細胞への抗原取込能力(物理アジュバント機能)を包含した抗原を作成してきた。本研究では、物理アジュバント機能に加えて、抗原提示細胞を成熟化させる信号アジュバント機能を抗原自身に付与した。試験管内の実験では、抗原提示細胞の成熟化機能が発揮されたが、動物実験では信号アジュバント付与による物理アジュバント機能の低下が影響し、細胞性免疫の誘導が得られなかった。アジュバントフリーワクチンを作成するためにはアジュバント機能を最適化して抗原に導入する必要が明らかとなった。
著者
伊原 久裕
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究プロジェクトは、1930年代から50年代までの間の米国における世界地図を対象として、そのデザインと社会的意味について分析を行うことを目的としている。この時期の地図デザインを代表するものとしてRichard Edes Harrison, Erwin Raisz, Norman Bel Geddes, Buckminster Fuller, Herbert bayerらの仕事を取り上げた。その結果、遠近法による「視点」の強調、レリーフや地形鳥瞰図描画などによる「リアリティ」の追求が共通するデザイン傾向として認められ、その背後に「航空時代」に対する意識がほぼ一貫して通底していることが分かった。
著者
馬場 治 除本 理史 川辺 みどり
出版者
東京水産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

アサリの全国生産量は1980年代半ばまでは12〜14万トン程度で比較的安定して推移してきたが、それ以降一貫して減少を続け、近年では5万トンを下回る水準にまで低下している。その中にあって、かつて熊本県に次ぐ全国2位の産地であった千葉県は、東京湾の臨海部開発の影響等を受けて全国の産地の中でもいち早く生産を低下させてきた。しかし、1980年代前半に生産低下に歯止めがかかり、それ以降は1万トン前後で比較的安定し、近年では愛知県に次ぐ全国2位の生産を維持している。千葉県における生産維持の背景として、木更津沖合に比較的条件のよい干潟が残されていたことと、そこを利用した養貝事業(特定区域に稚貝を放流し、成長してから採捕する養殖事業)が、地元漁協によって積極的に実施されていることがあげられる。千葉県の東京湾沿岸部では古くからノリ養殖とアサリ漁業が地域経済を支える重要な産業であったが、沿海部埋立が進行した今日においても木更津周辺においては依然としてこれらの漁業が重要な位置を占めている。そこで、残された干潟の効率的利用と地域産業振興という観点から、漁協だけでなく地元自治体も種苗放流に対して財政支援策を講じてきた。また、木更津周辺では、干潟を利用た潮干狩り事業が各地区漁協の手で行われており、都市部に位置することから多くの都市住民の関心を集め、木更津漁協だけでも年間約8万人にのぼる潮干狩り入場者がある。潮干狩り事業は都市住民に貴重な自然環境の中でのレクリエーション機会を提供するとともに、漁協経営の維持にとっても重要な位置を占めている。このように、干潟の存在は、漁業者および漁協の経営維持という機能だけにとどまらず、都市住民に対するアメニティーの提供、そしてレジャー客の来訪にともなう地域経済への波及効果等、この地域にとっては極めて重要な意義を持っていることが分かった。今後は、干潟の持つこのような重要な意義に注目して、臨海部開発と干潟の保護のあり方を注意深く検討する必要があろう。
著者
小俣 昌樹 今宮 淳美
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,静止画や映像などの視覚刺激を提示された閲覧者の感情(感情価と覚せい度)と生体信号との関係および興味と生体信号との関係を実験・分析した.この結果から,感情価の評価された感情を喚起する写真を提示された閲覧者の脳血流のHEG率,脳波のα波およびθ波のパワー値とその感情価との間に関係があることがわかった.また,商品紹介の映像を提示された閲覧者の指尖容積脈波の高周波成分のパワー値,その高周波成分と低周波成分の比,および脳血流のHEG率と,その映像への興味の程度との間に関係があることがわかった.
著者
須田 文明
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

我が国と同様、フランスにおいても、諸外国からの安価な農産物の輸入により国内生産が低迷している。例えば生鮮果実や野菜では、スペインやモロッコなどから安価な産品が輸入されている。こうした背景において、フランスでは育種研究を通じて、自国産品の競争力を高めるべく、嗜好的品質や地域的品質(地域特産品など)をもった産品の開発が進められている。本研究はフランスにおける遺伝資源を活用した育種研究を通じて、農産物の高付加価値化が、具体的にどのようになされているかを明らかにした。
著者
井上 好人
出版者
金沢星稜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

「書生」と呼ばれていた学徒たちはいかにして「学生」になったのか。明治初年から昭和戦前期に至るまで、エリートの卵としての「学生」のアイデンティティは、いくつかの節目ごとに変化をとげてきているが、その過渡期に焦点をあて、学歴エリートの代表たる旧制高等学校の学生を中心に、旧制中学・高等女学校の生徒も含め(彼らを総称して「学生」と表記する)、鍛錬、衛生、娯楽、趣味、恋愛、野心、運動、エリート意識、教養といった身体管理の技法や道徳観をめぐる様々な言説が「学生」たちにとってどのような"世界と自己とを意味づけるコード"として受容あるいは反発されてきたのかを、地方メディア(新聞、雑誌の報道や連載小説など)と「学生」側の校友会誌や日誌類、名簿類を相互に対照させながら分析した。
著者
佐藤 之彦
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フライングキャパシタ方式のマルチレベルコンバータは,キャパシタを小型化できる可能性を持つことから,実用化に向けた集積化に適している。本研究では,この方式に関して,キャパシタ電圧の挙動について詳細に解明し,これを安定に保つための条件を明らかにした。さらに,電磁ノイズの発生機構とその低減に向けた指針を明らかにするとともに,集積化に適したゲート回路方式やその絶縁電源の構成法を明らかにし,これらに基づいて試作回路を製作し,最近の2レベルインバータと同等以上のパワー密度(体積あたりの変換器出力)が得られることを実証した。
著者
畠山 兆子 松山 雅子
出版者
梅花女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「ハウス食品世界名作劇場」(1985年~1993年)放映の「小公女セーラ」と「ピーターパンの冒険」について、再話のあり方と映像表現手法の構造分析的研究は一応の成果をあげた。海外受容については、フランスで放映された「小公女サラ」の独自のオープニングを分析して、主人公像とオープニングの役割認識の違いを明らかにした。次の課題である、視聴者の映像による物語理解のあり方を国際比較するため、「ピーターパンの冒険」を使った予備調査を大学生と小学生で実施した。
著者
餅田 治之 大塚 生美 藤掛 一郎 山田 茂樹 幡 建樹 大地 俊介 奥山 洋一郎
出版者
(財)林業経済研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、日本の育林経営がビジネスとして経営されるようなるには、どのようなビジネスモデルを想定すべきか、またそのモデルを実現するためにはどうした条件が必要かを考察することである。世界の林業が人工林育成林業化している中で、わが国の育林経営だけが経営として成立しないのは、経営の仕方に問題があるからだと考えられる。現に、国内の育林経営も、速水林業のように近年急速に育林コストを低下させている事例、耳川広域森林組合のように受託経営している市町村有林を黒字化している事例、速水林業および住友林業のように育林をコンサル事業として展開している事例など、ビジネス化の条件が整いつつある事例が見られる。
著者
小林 寛
出版者
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

重合格子法は、互いに重合(オーバーラップ)する複数の格子ブロック間で計算領域をカバーし、計算時には物理量等を補間し合うことで流場を求める手法であり、部分的な物体形状の変更や、多体問題への適用性に優れている。各時刻ステップで重合情報(補間情報)を生成する動的重合格子法を開発し、移動格子法による非定常計算と組合せ、プロペラ周りの流れ場の計算を行うとともに、流場や積分値等計算結果の検証を行い、手法の妥当性を確認した。
著者
青木 和浩 河村 剛光
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、指導現場で活用できるフィールドテスト種目の提言という観点から簡易的に測定ができる立三段跳・立五段跳に着目し、大学陸上競技者と小学生を対象に跳躍能力の評価方法としてバウンディング能力の有効性を検証した。その結果、大学陸上競技選手だけではなく、小学生においてもバウンディング能力は跳躍能力の有効な指標になることが明らかになった。さらに、疾走能力とも関係のあるテスト項目であった。
著者
高橋 豪仁
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

スペクテーター・スポーツの魅力を権力作用の観点から検討した。(1)女子プロ野球の観客を対象とした質問紙調査を実施したところ、選手との交流が満足度を規定していた。またゲームやそれに伴う儀礼的行為において、「球児の直向きさ」と「かわいさ」が演出されていた。(2)プロバスケットボールリーグの観戦者を対象とした質問紙調査を実施したところ、チームへ投影する地元意識が満足度を強く規定していた。(3)新聞を資料として、プロ野球のイーグルス優勝の物語について検討したところ、優勝というスポーツの出来事を被災という実生活に関連づけた物語が紡がれており、それは生活世界を受容可能にする概念装置であることが示唆された。
著者
村田 勝幸
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1960年代以降、アメリカ合衆国、なかでも特にニューヨークへと渡ったハイチ人移民とその子孫を対象に、かれらの特殊な社会的な位置や、かれらと人種を同じくするアフリカ系アメリカ人との関係、さらには他の西インド諸島系住民との関係を、ディアスポラという概念を軸に多角的・学際的に分析することを目的としている。
著者
岡田 あおい
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、宗門改帳を史料とし、ここからデータベースを構築し、徳川後期の農民世帯の家族構造を明らかにすることが目的である。本研究で用いる史料は、東北日本2地域(会津山間部4か村・二本松平野部3か村)と中央日本2地域(美濃平野部6か村・信州山間部2か村)である。結果的には、当初予定していたデータベースの完成には至らなかった。データベースの完成にはまだ時間を要するが、完成度の高い東北日本の一農村のデータを用いて、徳川後期農民社会の家族構造を解明するための基本的指標の分析を試みた。
著者
長谷川 まゆ帆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

この研究課題のねらいは、アルザス・ロレーヌの国境地帯に17~18世紀に存在したという慣習「産婆を教区の女たちの多数決によって選ぶ」をとりあげ、この時代に王権による助産婦の確立/養成の投げかけた波紋とその現象の意味を、ミクロな社会分析を通じて解き明かすことにあった。研究成果としては、これまでの研究蓄積を踏まえて、問題の所在を明らかにし、この研究を一つのモノグラフとしてまとめ上げるための包括的な枠組みを構築しえたことにある。
著者
上久保 敏
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本文化講義は文部省が教学刷新事業として昭和11年(1936年)に帝国大学や官立大学、高等学校、専門学校などの直轄諸学校に必修科目として実施を求めた官製講義である。本研究では、日本文化講義の実施事例をできるだけ多く収集することによりその諸相について考察を行った。また、戦時期における経済学者の思想善導への動員・関与について明らかにするとともに日本文化講義を担当した経済学者と日本諸学振興委員会経済学会との関わりについても考察した。
著者
米山 秀 THOMAS Olding
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、経済史上もっとも古典的な研究テーマの一つである農業賃金労働者の形成過程を、農民層分解論としてではなく賃金労働者の家族史として考察することにあった。すなわち小農民の土地所有の分解論としてではなく、若い男女の独身の奉公人が、小農民になるかその世帯内に奉公人のまま生涯包摂されるというライフサイクルの在り方が、若い奉公人の大半が結婚して賃金労働者となるというライフサイクルの在り方へ変化する過程として住民台帳で捉えることにあった。本研究においては、こうした想定を研究史の再構成によっていくつかの具体的な仮定にするとともに教区簿冊や住民台帳類でその検証を試みた。その結果、本研究の範囲内では賃金労働者家族自体の増加は直接的には検出できなかったが、短期奉公人(ライフサイクル・サーヴァント)は決して近世イギリスの奉公人の一般的な特徴ではなく、賃金労働者の結婚前のライフサイクルの特徴であり、しかも近世後半に急増したという形で、農業賃金労働者家族の形成過程が間接的には論証されたといえる。
著者
山崎 誠 柏野 和佳子 田嶋 毓堂 山元 啓史 内山 清子 砂岡 和子 薛 根洙 韓 有錫
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本語研究におけるシソーラスのより一層の活用を図るため、人文系日本語研究者の間でもっとも普及している『分類語彙表増補改訂版』に研究に有益な情報を付与する作業を行った。多義語として複数の分類項目に出現している見出し語27171語について、一定の基準に基づいて「代表義」を1つ決定し、その情報を付与した。作業結果は、2015年7月を目指してウェブ上で公開する予定である。これにより、意味解析上の精度が向上し、異なる分析結果の間の適切な比較が可能になることが期待される。また、旧版の分類語彙表との異動の比較を行い、結果の一部を「語彙研究」12号に発表した。