著者
黒羽 雅子
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、米国と日本の産業革命期における金融機関行動を象徴する「インサイダー・レンディング」と「機関銀行論」に係る既存研究の論点整理・再検証をするとともに、それぞれの地域の金融機関行動の特質や類似点を析出する比較史的試みである。対象とした主な地域は、米国ニュー・イングランド地域と日本の山梨県である。これに加えて、独特の州法銀行制度の発展を見た米国ネブラスカ州についても、その経済的な発展における銀行等金融機関の役割と州法銀行制度の変遷を中心に分析を加えた。とくに、海外調査により膨大な一次資料の収集が実現したので、所蔵元との調整をしつつ、徐々に公開を進めているところである。
著者
本間 禎一
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本申請者(本間)が先に行なった「極高真空用材料の高度化に関する開発研究」の成果として、新しい表面改質法である、ステンレス鋼の表面に六方晶-BNを配向析出させる処理法は、表面からのガス放出率の低減をもたらすだけではなく、放出されるガス分圧の制御にもとづく“真空の室"の制御をも可能にし、ベ-キングの不要な表面の実現を可能にする。そこで本研究では、この表面の吸着不活性特性を利用するとともに、内部からの溶解気体原子(水素など)の拡散、放出へのバリヤ-ともなるBN層の最適析出条件を見出すことを目的として、研究を行なった。とくに、表面析出プロセスを、超平滑表面の平滑度および加工変質層の評価・制御と結びつけて解析する点に学術的特色がある。つぎの成果が得られた。1.BN析出のような表面付加加工において、加工変質層形成の影響を解明する目的で、各種の表面平滑加工(バフ研磨(BP)、電解研磨(EP)、電解複合研磨(ECB)、フロート・ポリッシュ(EP)を施したステンレス鋼(含B,N)の各加工面表層に生じる金属組織的変質の解析を電子チヤンネリングパターン法などで行なった。加工変質層の導入が少ない表面(EP,FP)に、強く配向したBNが析出することが明らかにされた。2.六方晶-BNの底面が表面に強く配向して析出した表面(EP,FP)は、昇温脱離法によるガス(H_2Oなど)の吸着・脱離特性の評価からガス吸着が極めて少ないことが示された。3.新しい真空用構造材料として注目されているチタンについても、H_2Oのガス放出特性が加工変質層と強く相関していることが明らかにされた。
著者
本間 禎一 本保 元次郎
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

配向組織をもつ結晶性金属材料の3次元配向情報を、高い空間分解能(目標≦1mm)で非破壊的に求める解析・評価法を開発するための基礎研究が行なわれ、つぎの成果を得た。1. 3次元結晶配向X線トポグラフ測定装置の開発先端材料の一つである一方向凝固共晶合金を対象として、その凝固組織の非破壊測定法を開発するために、金属単結晶の凝固一次組織の評価に応用された長隙ラウエ法による3次元結晶配向X線トポグラフ測定装置を改良して、新しい機能をもつ測定システムを試作した。長隙スリット[(1段)長さ200mm,幅10mm,厚さ5mm,(2段)長さ100mm,幅1mm,厚さ5mm]により近似的に平行に絞られた長隙白色X線平板ビームを試料に照射して、得られる回折像を写真フィルムに記録した。透過に加え反射像も得られた。2. 結晶配向組織情報の非破壊収集凝固速度を制御した条件(100,300,500mm/min)下で、大野式 Strip Casting(OSC)法で作成した、凝固組織の制御された板状アルミニウムを試料として用いた。凝固速度が遅い(100mm/min),強く配向した試料からは、凝固方向に平行にのびたラウエ線条が明瞭に観察され、凝固速度の増大に伴い、配向性の低下に対応する像の変化が観察された。これは、内部の金属組織情報(破壊法による)と一致する結果であった。
著者
東 利一
出版者
流通科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は,サービス・リレーションシップの創出プロセスの解明であった。「新規顧客をどのようにして固定客にするか」という問題意識のもと,百貨店・ブランド化粧品の新規顧客との関係において,以下の2点が明らかになった。①関係性構築のためには,新規顧客の接客当初から信頼の提供が重要である。②関係性構築のためには,新規顧客の接客当初から親近感というBCの魅力が重要である。
著者
高永 茂 小川 哲次 木尾 哲朗 田口 則宏 永松 浩 鬼塚 千絵 西 裕美
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究ではまず医療現場において画像資料を収集した。収集した画像データをRIAS、社会言語学、語用論の3つの方法を用いて分析した。さらに質的研究法と量的研究法に関して、多方面から検討した。RIASは基本的に量的研究法に立脚する分析手法である。もう一方の言語学分野の分析手法は、質的な研究を基本にすることが多い。この両者を融合させるためにマルチモーダルな研究法に注目して新たな分析手法を模索した。また、「医療コミュニケーション教育研究セミナー」を開催して多職種間の学術的交流を図った。なお、データの収集は各研究機関の倫理委員会の審査を経て行った。
著者
佐治 英郎 荒野 泰 前田 稔 井戸 達雄 大桃 善朗 中山 守雄
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

細胞殺傷性の強い高エネルギーβ線を放出する放射性核種を結合した化合物を体内に投与して癌細胞周辺に送達・集積させることにより、その放射線が透過する範曲内で癌細胞を直接死亡させることが可能となる。この『内用放射線治療薬剤』の開発するために、本研究では、有効な放射性核種の選択とその製造方法、充分な治療効果を得られる放射能のデリバリーシステムの構築・担体分子への旅射性核種の効率的結合法、放射線量に関する放射線生物学的評価等について総合的に調査し、以下の結果を得た。1.癌の治療に十分な飛程、線量などを与える放射性核種の選択を行い、放射性ヨウ素-131、レニウム-186、 188、ルテチウム-177、銅-64等のβ線放出核種が有効であることを認めた。2.1での選択された旅射性核種の製造のための核反応の選択、製造方法、他施設への運搬、院内サイクロトロンによる製造系について、時間、方法を含めてシュミレーション的に調査し、これが可能であることを見出した。3.放射性同位元素を用いた癌の治療には、癌細胞自身あるいはその周辺に多量の放射能を集積させること、および非標的組織からの速やかな放射能の消失を達成するために、放射能のキャリア分子を探索し、抗体、リポソーム、核酸、腫瘍部位に発現受する容体結合物質などにその可能性があることを認めた。4.「がんの内用放射線治療薬剤の開発に関するシンポジウム」を開催し、上記の結果を報告すると共に、それに関して、他の薬学、臨床放射線治療分野、核医学診断分野などの医学、核反応と放射性核種の製造分野の研究者と癌の内用放射線治療薬の有効性について討議した。この結果は今後の内用放射線治療薬の開発研究に有益な情報となった。
著者
横山 俊治 柏木 健司
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

四国山地では付加体の硬岩が滑っている.四国山地の尾根は、至る所で、約100年に一度発生する南海地震によって裂けている.この裂け目に流れ込んだ雨水が特定の岩相の地層を劣化させ、劣化した地層には初生地すべりのすべり面が醸成されていく.付加体地すべりは尾根の裂け目から滑り出し、地すべり末端の侵食がなくても滑動を続ける.
著者
井川 克彦 長谷部 弘 阿部 勇 奥村 栄邦 西川 武臣 小林 延人 高橋 未沙 土金 師子
出版者
日本女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

江戸後期において上田小県地方は生糸主産地の一つであり、その生糸は前橋の生糸市に集荷され、桐生などの絹織物の原料となった。横浜開港後にその生糸生産はさらに拡大して明治を迎えたが、この地方では器械製糸業がなかなか勃興しなかった。上田商人や生糸流通構造の実態を明らかにすることに努めた結果、養蚕と結合した農家小商品生産の部厚い存在、買い集める上田生糸商人の資本基盤の小ささを見通すことができた。
著者
坪井 秀人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

戦時期および敗戦期に刊行された少年雑誌、朝日新聞社刊行の『週刊少国民』および日本少国民文化協會が刊行した『少国民文化』、さらに朝日新聞社の関連する雑誌『アサヒグラフ』その他のグラフ雑誌や『科学朝日』など戦時期の関連雑誌を収集し、本研究の主たる対象である『週刊少国民』については戦時期までの大部分は収集を終え、戦後期についても収集や調査を行い、全国的にも完備されていない同誌の資料整備と調査を行った。また同誌が後継した『コドモアサヒ』及びその戦後のその後継誌『こども朝日』についても調査を行った。『週刊少国民』の戦時期の収集分すべての号について内容目次のデータベースを作成し、グラビア記事を中心に(一部は全頁)スキャニング作業によってデータファイル化した。この資料調査とデータベース化によって『週刊少国民』とそれに関連する戦時期の少年雑誌およびグラフ雑誌の性格を位置づけるとともに、グラビア記事の写真表現と文学者らによる文学表現とが緊密に相関し、子どもの読者に対してどのようにプロパガンダとして機能したのか、あるいは戦時期の戦局に対してどのような葛藤を生じていたのかを分析した。これらの作業と平行して、戦時期の少国民文化、特に少年少女の歌謡文化や綴方等に関する分析を行った。以上の研究の成果の一部は単著『戦争の記憶をさかのぼる』(筑摩書房)に組み込まれた(同書は第14回「やまなし文学賞」を受賞した)。また、本年度(2005年8-9月)ウィーン大学で開催されたEuropean Association for Japanese Studies(ヨーロッパ日本学会)の大会でもパネル発表を行い、「Structuring Desire through Poetry and Photographs in Shukan shokokumin」と題してその成果を報告した。
著者
南方 かよ子
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

銅の高感度で簡便な定量法を開発し発表した(Clin Chem,2001,Jpn J Forensic Toxicol,2001)。5μlの血漿、1.5mlの水道水で定量が可能である。この方法を用いて餌中にパラコート250ppmを投与して中毒をおこしたラットの組織中の銅を定量した。その他の金属は当補助金で入手した島津AA-6200原子吸光光度計にて定量した。中毒ラットでは、銅は肺、肝、血漿で2倍に、腎では半分に変動していた。鉄は肝、脾で2倍、血漿では半分に変動していた。マグネシウムは腎で2倍となり、肝ではマグネシウムと亜鉛が有意に上昇していた(J Toxicol Environ Health,2002)。マグネシウム半減食中にパラコート125ppmを投与したラットの上記金属レベルはパラコート中毒の場合と同様であった(Jpn J Legal Med,2001)。しかしながら、カルシウムは腎で10倍となっていた(法医学会総会,2002発表予定)。マグネシウム半減食のみでこのような高濃度のカルシウムの蓄積をおこすには通常35日以上を要する。マグネシウム半減食中に125ppmのパラコートを投与したラットではパラコート中毒とマグネシウム欠乏がともに促進されていた。カルシウムとマグネシウムの比を保つために全ミネラルを半減しパラコート125ppm投与ラットではカルシウムは腎で20倍となっていた(ISALM,2002発表予定)。
著者
陶久 利彦 荒木 修 新井 誠 宮川 基 佐々木 くみ
出版者
東北学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

性風俗産業の法的問題性を、憲法・行政法・刑法という個別法分野から分析・検討すると同時に、法を支える感情面や倫理面との関連性を法哲学の見地から研究した。ただ、性風俗に含まれる行為や営業は多様であるから、共同研究者の関心にも沿うような形で専ら売買春と所謂風営法に対象を限定した。フェミニズムに加担するのではなく、かといって実態調査に埋もれるのでもなく、性風俗関連の立法史、特に行政的規制の在り方、そして風営法の憲法論的位置づけなどを検討したことは、性風俗産業への法学的アプローチとして大きな成果を上げた。
著者
小秋元 段
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、17世紀初頭の約40年間に流行した日本の活字出版(古活字版)の展開の様相を明らかにしたものである。主な研究成果は、第一に、慶長年刊の角倉家のネットワークが古活字版の出版活動に広く影響を与えたことを明らかにしたこと、第二に、高野山における古活字版出版の経緯を書誌調査を通じて明らかにしたことである。そして、第三に、近年、古活字版の起源をキリシタン版に求める学説が強まっているが、その問題点を学界に提起したことも、重要な成果であると考える。
著者
渡来 仁 小岩 政照
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、免疫担当細胞への抗原提示能に優れるリポソームを、ウシ乳房炎の発症予防のための経鼻ワクチンに応用し、ウシの乳房炎予防に有効なリポソーム型経鼻ワクチンの開発を目指した基礎的研究を目的として行われた。1、経鼻ワクチン用リポソームの開発ならびに最適化:経鼻免疫用リポソームの脂質組成についてマウスを用い検討した。モデル抗原として卵白アルブミン(OVA)を封入した。その結果、ジパルミトイルフォスファチジルコリンとジオレオイルフォスファチジルエタノールアミン、モル比1:1の脂質組成に、サクシニル化ポリグリドールを全脂質の30%加えて作成したリポソーム(SucPGリポソーム)で経鼻免疫することにより、OVAに対する免疫応答が誘導できた。また、誘導される免疫応答について解析した結果、液性免疫のみならず細胞性免疫の誘導が確認された。2、粘膜吸着性リポソームによる免疫応答:SucPGリポソームを1.5%キトサンと反応させ、粘膜吸着性リポソーム(SucPG-キトサンーリポソーム)を作製し、免疫応答について検討した。モデル抗原としてOVAを封入した。その結果、SucPG-キトサン-リポソームでマウスを経鼻免疫することにより、OVAに対する免疫応答が強く誘導できることが示された。また、誘導される免疫応答について解析した結果、液性免疫ならびに細胞性免疫の誘導が確認された。3、ウシにおける免疫誘導実験:SucPGリポソームにOVA抗原を封入し、ウシに経鼻免疫を行った。その結果、乳汁中にOVA抗原に対するIgA抗体の有意な産生が確認された。さらに、粘膜吸着性リボソームにOVA抗原を封入し、ウシに経鼻免疫を行った。その結果、血清中ならびに乳汁中にOVA抗原に対するIgG、IgA抗体の有意な産生が確認された。このことから、ウシの乳房炎予防に有効なリポソーム型経鼻ワクチン開発の可能性が示された。
著者
八木 文雄 倉本 秋 瀬尾 宏美 大塚 智子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

成人型学習に対する取り組み,医療スタッフや患者さんとの円滑なコミュニケーションなどをはじめとして,医学部医学科に入学した学生に求められる態度・習慣領域の課題は数多く存在する。また一方では,入学後における態度・習慣領域の教育には大きな限界があることは,医学教育に携わる誰もが認識していると思われる。しかし,ほとんどの全国大学医学部・医科大学における現行の入学者選抜方式は,高校各教科の学習内容に関する記憶にもとづく知識(想起)偏重型であり,長期間にわたる家庭教育および自己の努力により獲得した,医師となるのに基本的に不可欠な態度・習慣領域の能力が,入学者選抜の段階でほとんど評価されていないのが現状である。このような観点から,本研究では,AO方式と学士編入学方式による入学者選抜において,態度・習慣領域の能力評価を目的とする評価尺度を新たに構築した。そして,これらの各方式で入学した学生を対象として、他の方式で入学した同学年の学生および教官によるピア・レヴューを実施し,入学後における態度・習慣領域の能力を,多変量解析にもとづき調査・分析することにより,この評価尺度の妥当性について追跡的に検討した。その結果,選抜段階と入学後における態度評価スコアとの間に有意な相関(r=0.7)が認められ,新たに構築した態度評価尺度の入学者選抜における有効性が検証された。なお,これらの入学者に関する追跡調査を,卒前6年間および卒後臨床研修段階まで長期的・継続的に実施することにより,この態度評価尺度の妥当性に関する調査・分析をさらに推進し,望ましい医師養成のための第一歩としての入学者選抜の更なる改善を図る予定である。医学科の入学者選抜における,このような態度・習慣領域評価の導入は,サイエンスとしての医学・医療の急激な発展に伴い,価値観の変動に直面している現代社会に対する説明責任を果たすものである。
著者
杉谷 祐美子 白川 優治 小島 佐恵子
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、50%の進学率に達する現代日本の大学・大学生・大学政策へのイメージや社会的期待を明らかにするため、90年代以降の大学・大学生に関する雑誌記事の変遷を分析するとともに、一般市民を対象に大学・大学政策等に関する質問紙調査を行った。その結果、雑誌によって大学の問題点が過度に強調される反面、一般市民は大学の効用を認め、進学への潜在的需要に対応できるよう公的財政支援の増大を望むことを明らかにした。
著者
鳥居 和之 奥田 由法 久保 善司 川村 満紀
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「泰平橋」(平成12年8月撤去)の解体では,PC・T桁の一般図及び配筋図(PC鋼線,スターラップ筋,横締め構造など)を完成するとともに「泰平橋」で使用したコンクリート及びPC鋼線(直径5nmのピアノ線)の品質を調べた.その後,平成12年10月に(株)ピー・エス七尾工場(現(株)ピーエス三菱)にて,PC桁の曲げ及びせん断載荷試験を公開試験として実施し,50年が経過したPC・T桁の耐荷力及び変形性能を明らかにした.次に「長生橋」(平成13年8月撤去)の解体では,「泰平橋」と同様にPCスラブ桁の一般図および配筋図を完成するとともに,「長生橋」で使用したコンクリート及びPC鋼線(直径3mmのピアノ線)の品質を「泰平橋」と比較検討した.その後,'平成13年10月に(株)ピーエス七尾工場(現(株)ピーエス三菱)にて,PC桁本体及び合成桁の曲げ及びせん断載荷試験を公開試験として実施した.「長生橋」は移設検討委員会(座長:金沢大学工学部川村満紀教授)が設置され,復元の方法および移設の場所が検討された,移設検討委員会の方針に従って,平成14年4月に建設当時の欄干や電気灯などを復元し,「長生橋」は七尾市の希望の丘公園に移設された.また,「泰平橋」,「長生橋」に関する調査資料を整理し,歴史的価値の高い両橋梁の記録を冊子としてまとめるとともに,平成14年11月に特別講演会「コンクリートは本当に丈夫で長持ちか」を主催し,「泰平橋」,「長生橋」の調査結果を多くの土木関係者に報告した.さらに,解体調査の記録を2本のビデオ(金沢大学工学部編集,(株)ピーエス三菱編集)にまとめた.
著者
落合 邦康 今井 健一 田村 宗明 津田 啓方
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

Epstein-Barrウイルス(EBV)再活性化や感染細胞の異常増殖がおこり伝染性単核球症や上咽頭がんなどが発症する。われわれは、歯周病原細菌の代謝産物である酪酸がEBVの再活性化に必須である最早期遺伝子ZEBRAの発現を転写レベルで誘導する事を見出した。ZEBRAは他のウイルス蛋白やRNAの発現を誘導しEBV関連疾患を引き起こすことから、歯周病がEBVを再活性化し口腔毛様白板症やがんおよび重度の歯周病の進展に深く関与している可能性を示唆している。また、ラットを用いた実験により、歯肉に接種した酪酸が長時間組織に停滞し、ミトコンドリアに強い酸化ストレスを誘導することが判明した。
著者
西村 正宏 牧平 清超 二川 浩樹 浜田 泰三 中居 伸行 熊谷 宏
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

根面齲蝕の発生・進行に関与する微生物学的要因として、微生物の根面への付着、定着、酸あるいは酵素の産生による基質の分解が必要であり、我々は、カンジダアルビカンスは他のカンジダや齲蝕原性細菌と比較してコラーゲン及び変性コラーゲンへの付着能、定着能が著しく高いことを見出した。次にコラーゲンスポンジをカンジダアルビカンスと共培養すると、スポンジが完全に溶解することを見出した。このコラーゲン分解能をより定量的に検討するために、アゾコラーゲンやコラーゲン様配列をもつ合成ペプチド(FALGPA)による分解活性測定を行い、このコラゲナーゼ活性の性質について様々な検討を行った。その結果、1.アゾコラーゲンの分解能は嫌気的中性状態で血清アルブミン存在下の時に最も高かった。2.カンジダアルビカンス周囲のコラゲナーゼ活性の検討としてFALGPAの分解能を検討すると、同一ATP当たりではストレプトコッカスミュータンス、アクチノマイセスよりは弱く、ラクトバチラスよりは高かった。また血清アルブミンが存在するときに活性が高かった。3.FALGPAの分解活性はEDTAによって抑制されたが、セリンプロテアーゼインヒビター(APMSF)やアスパラギンプロテアーゼインヒビター(ペプスタチン)では抑制されなかった。また熱によって失活した。4.ゼラチンザイモグラフィーによる分子量検索の結果、培養上清中には約116kDa,150kDaの2本のバンドを検出し、このバンドはサンプルの熱処理によって消失したがEDTA処理では消失しなかった。以上の結果から、カンジダアルビカンスは細胞周囲と培養上清中に少なくとも2つ以上の異なるコラゲナーゼ様の酵素を産生し、この活性は他の細菌と比較して十分に強力なコラーゲン分解能を持つことが示された。したがって、カンジダアルビカンスは根面齲蝕におけるコラーゲン分解に十分に関わりうることが示された。
著者
井内 敏夫
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

初期中世ポーランドの国制・社会制度についての見方は、1960-70年代に開始されるK・ブチェクとK・モゼレフスキの大論争を通じて、大きく塗り替えられた。二人の基本的な視点はよく似ており、論争を通してブチェク=モゼレフスキ理論と呼び得るような史観が形成され、その到達点がモゼレフスキ著、chlopi wmonarchii wczesnopiastowskiej,1987といえる。これに対する批判の代表が、S・ガウラス著、O ksztalt zjednoczonego Krokestwa,1966とJ・マトゥシェフスキ著、Vicinia id est...,1991である。モゼレフスキ理論の方法は遡及にある。ポーランドでは13世紀に幾千通のインムニテート文書が現れるが、そこで読み取り得る構図を12世紀の少数の文書と年代記、ならびにゲルマンや周辺スラヴの部族期の史料を参考にしながら、インムニによって崩れていく古い体制の要素と新しく誕生する要素を選り分けていく。彼によれば、前者が公の権利体制、後者が土地領主制ということになる。つまり、公の権利体制とは、君主としての公に象徴される国家に農民と戦士が総服従の状態にある制度であり、わが国の公民制に似ている。この初期国家は、地方行政機構を整え、部族期の一般自由民から分化した農民を様々な義務を持つグループに分けて、食料貢租や役務だけでなく、手工業製品、サーヴィスなどを徴収し、自足体制を築き上げた。しかし、その一方で、国家として機能していくためには、農民に部族時代の一般自由民としての基本的な権利を認め、またオポレと呼ばれる古来からの隣保共同体の協力を必要とした。それゆえ、農民から土地への権利や移動の自由を奪い、土地領主制と農奴制へと転換するにはほぼ200年に及ぶ時間を必要とした。このようなモゼレフスキ理論に対し、ガウラスは、10世紀末から12世紀末まで変化のない体制というのはありえないとし、マトゥシェフスキはモゼレフスキ理論の根幹の一つであるオポレ組織の存在を否定する。私には今後、史料の検討が必要となる。
著者
伊藤 寿啓 喜田 宏
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

インフルエンザウイルス(IFV)は哺乳動物や鳥類に広く感染する。すべてのIFVは野生水禽のウイルスに由来すると考えられている。しかし、ウイルスが異なる動物種間を伝播する機序が解明されていない.IFVはHA蛋白を介して細胞表面のシアル酸を末端にもつ糖鎖レセプターに結合して感染する。そこで、本研究ではIFVのレセプター特異性と宿主域との関連を解析し、さらに感染実験によってその異動物種間伝播のメカニズムを解明することを目的とした。宿主の細胞表面上にあるレセプターの種類をレクチンを用いて解析した結果、馬、鯨、アザラシの呼吸器にはシアル酸がガラクトースにα2-3結合している糖鎖(α2-3)のみが存在し、豚、フェレットにはα2-3およびα2-6の両者が存在することが判明した。これらの成績はα2-3親和性の鳥IFVが馬に直接伝播可能であるという疫学的知見を裏づける。また、鯨およびアザラシのウイルスが鳥由来ウイルスであるという遺伝子解析結果をも支持する。一方、豚やフェレットでは、α2-6親和性の人ウイルスもα2-3親和性の鳥ウイルスも共に増殖するという以前の感染実験の成績に一致する。一方、人ウイルスから選択された、α2-3親和性変異株のHAのみを有し、他の遺伝子は全て馬のウイルス由来のハイブリッドウイルスを作出した。このウイルスのHAは226番目のアミノ酸がLeuから鳥ウイルスと同じGluに変化していた。しかし、このウイルスは馬では増殖しなかった。さらに228番目のアミノ酸も鳥ウイルスと同じGlyに変化したHAをもつハイブリッドウイルスを作出したところ、馬でよく増殖した。即ち、IFVが馬の気管で増殖するためには226番目に加えて228番目のアミノ酸も重要であることが判明した。現在、このアミノ酸がIFVのレセプター特異性にどのような変化をもたらすのかをレセプター結合試験により解析中である。