著者
呉 秀賢 常森 寛行 杉元 幹史 乾 政志 筧 善行
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

難治性・進行性腎癌、膀胱癌、前立腺癌に対する抗TRAIL受容体抗体併用抗癌化学療法の開発研究を行った。その結果、(1)抗TRAILデスレセプター2に対するモノクロナール抗体であるLexatumumabと臨床的投与可能な低濃度のアドリアマイシン、シスプラチン、エピルビシン、テラルビシンなどとの併用抗癌化学療法による相乗効果を発見した。(2)カスパーゼを阻害することにより相乗効果が抑制されることからカスパーゼカスケード、特にカスパーゼ8の活性化がこの相乗効果に重要であることを証明した。(3)PCR array解析で26個のアポトーシス関連遺伝子の発現変化を発見するなどの成果を得た。
著者
アスキュー 里枝
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本プロジェクト「もう一つの精神史」の目的は、明治以来、来日した外国人の中でももっとも日本の心をよく理解したとされるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の日本における受容・表象のあり方を検証し、近・現代日本の隠れた精神史を明らかにすることにあった。この目的は大体果たせたのではないかと思う。具体的な研究成果としては、期間内にテーマに関する論文を三本書き上げ、そのうちの一本はニュージーランドの査読付き学術誌に掲載された ("The Politics of Nostalgia in Vestiges of Japan", NZAS, 2012)。残りの二本は査読付き学術誌での掲載に向けて準備中である。
著者
木俣 元一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

12世紀末から13世紀中期にかけての西欧における聖顔(ヴェロニカ)信仰の成立及び展開の諸様相を『詩編』や『ヨハネ黙示録』等の写本をはじめとする美術作品やテクストに基づいて詳細に跡づけ、イギリスで発展した理由や意義を当時の歴史的背景である終末に関わる思想やアングロ=サクソン以降の地域的伝統との関連で考察して、ヴェロニカのイメージと祈祷文が位置づけられる個人的祈念における宗教的実践の諸相を明らかにした。
著者
小嶋 章吾 嶌末 憲子 大石 剛史
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、地域包括ケア推進に不可欠な多職種連携のために、とちぎソーシャルケアサービス従事者協議会の活動を研究対象とし、ソーシャルケア職能団体基盤型IPWのモデル構築を行なうことを目的とした。その結果、①先行研究より、IPWにとって葛藤対応の重要性が明らかとなった。②同協議会のコアメンバー及び介護支援専門員を加えた16名を対象として実施した連携スキル向上研修の前後比較により、7カテゴリー、18項目からなるIPWコンピテンシーのうち、合意形成の努力の増加が有意に確認できた。③グループワークのリフレクションにより、多職種連携強化のための職能団体基盤型IPWの政策提言機能を実証することができた。
著者
伏田 幸夫 原田 真市
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アンギオテンシンIIを介した細胞の増殖や間質の線維化および抗アポトーシスが胃癌の腹膜播種の成立に関与していると予想し、そのメカニズムの解明および治療への応用が可能か否かを検討した。その結果、胃癌組織中のアンギオテンシンII濃度は正常胃組織と比較して有意に高濃度であり、腫瘍周囲に浸潤した肥満細胞から発現されるmast cell tryptaseによって生成されることが明らかとなった。また、アンギオテンシンIIの受容体であるAT1は胃癌原発巣や腹膜播種巣に高率に発現していた。肥満細胞の機能を抑制し、かつTGFbの機能も抑制するトラニラストおよびAT1アンタゴニストのcandesartanを用いてマウス腹膜播種モデルにおいて播種が抑制されることを解明した。
著者
伊藤 淑子
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

女性の知性と論理性が美徳であるとは認められなかった時代に、果敢な声を挙げたマーガレット・フラーの著作を丁寧に分析することが本研究の目的であった。フラーの主著であり、アメリカのフェミニズムの先駆的な本であるにもかかわらず、屈折した論理展開と引用を多用する英語表現の難解さによって、日本ではあまり読まれてきたとはいえない『19世紀の女性』を日本語に訳し、研究期間中に出版した。フラーの主張には矛盾がないわけではない。本質主義的な性差を否定し、徹底した個人主義を貫きながら、フラーは理想的な人間関係の構築と社会改革を唱える。『19世紀の女性』以降の仕事も含め、フラーのキャリア形成を分析した。
著者
浦川 宏 綿岡 勲
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

諸外国からの商品と差別化できる繊維染色加工技術の開発をめざし、インクジェット染色法における基礎研究から技術開発までの一連の検討をおこなった。従来の蒸気で蒸す染料固着の代替として、2枚の熱した鉄板で固着処理をおこなう乾熱固着法での染色機構を明らかにし、天然染料では処理時間の短縮だけでなく従来法よりも濃色に染めうる手法であることを見いだした。またインクジェットを用いた天然染料の金属媒染の検討もおこなった。
著者
岩清水 伴美 鈴木 みちえ 三輪 眞知子
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

A市をモデル地区に保育者の認知的スキルに働きかける虐待予防と支援技術向上プログラム開発とその評価をすることを目的に研究を実施した。教育プログラムは、保育者への調査をもとに作成した。プログラム内容は、虐待への理解、虐待による子どもへの影響、保護者への支援方法、子どもへの支援方法、事例検討である。教育プログラムを受講した40名の保育者は、受講前後の調査により虐待の知識と虐待対応の意識は有意に高くなり、子どもへの対応の視点も具体化した。
著者
陸 君 田浦 秀幸
出版者
京都文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

この4年間、両研究者は前回科研費の調査方法を改善し、毎年の9月に一週間ほど、上海師範大学・外国語学院の英語学部にて、英語師範専攻の学生を中心に、入学から卒業まで、現地の縦断調査(TOEFL模試、教室内でのエスノグラフィカル・スタディー、学生と教員にインタビユー、学部長らとの会談等)を4回行った。また、最後の2年間は、学生の小・中・高校での実習現場も見学し、教員らとの懇談も実施した。最も印象的のは、見学した授業は全部英語で行い、教科書も系統的てした。調査結果は、二つの共著研究論文(立命館大学言語教育情報研究科に第1号と第2号)と一つの単著論文(京都文教大学人間学研究第14号)に掲載された。
著者
家中 茂
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

沿岸域資源管理と「里海」再生の活動及び放置された人工林の再生と「小さな経済」創出の活動について考察した。そして、多様なステークホルダーの関与をつうじて里海の多面的機能が生み出されているプロセスについて示した。また、専業化・産業化とは別に、副業的な関わりを多様に生み出すことで、森林と人との関係性が再創造されるプロセスについて示した。資源管理論から生業論へ、そして「ローカルなマーケット」論への展開が重要である。
著者
久保 桂子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

共働き夫婦に関する質問紙調査を行い、以下のような結果が明らかになった。夫の長時間労働や職場の労働時間などの柔軟性の欠如は、夫の育児参加と強い関連が認められた。また、男性の家庭参加を肯定する意識が高い父親ほど、育児を分担しており、父親の性役割意識も関連がみられた。また育児に積極的な夫は、家庭参加のために職場に働きかけを行っているが、そうした夫の職場はすでに働きやすい職場であり、働きかけとの因果関係は明確に示されなかった。
著者
大谷 竜 名和 一成
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

GPS連続観測網と歪計ネットワークによる歪観測を長期に比較することで,歪計による数週間以上の時間スケールでの歪場変動の計測特性を調べたところ,場所によっては歪計とGPS歪との間に相関が見られるところがあるものの,広域的に離れた7点の異なる観測点において,歪計とGPSとの間にははっきりした相関は見られず,歪計に不規則な大きな変動があることが分かった.また先島諸島で繰り返し発生しているゆっくり地震による歪場について,断層すべりの発生間隔を同定するとともに,ゆっくり地震に含まれる様々な空間成分の時間変動を明らかにした.
著者
前川 寛和
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

マリアナ海溝西側に位置する前弧域には、海溝軸に沿って海山群が存在する。この海山群の岩石試料を用いて、沈み込み帯境界における地学現象を岩石学的側面から追求した。プレート境界では、沈み込むプレートがもたらした水を含む形質堆積物とすぐ上にあるマントルかんらん岩とが反応し、元素移動を引き起こす交代作用が生じていること、高温型の蛇紋石であるアンティゴライトを伴う蛇紋岩科作用が鉄に富む流体を生み出し、初生かんらん石の組成を改変するという特異な現象が起きていることを明らかにした。
著者
寺内 直子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究は、日本の宮廷音楽・雅楽が、海外においていかに発信・受容され、定着、展開しているかを分析する、音楽学的、文化人類学的考察である。本研究は、海外の雅楽を1)日本からの「渡航型」と2)現地在住者による「滞在型」に分け、国際的に活躍する日本の雅楽演奏者やプロデューサーに聞き取りを行うとともに、日系移民の多いハワイ、ロサンジェルス、日系移民が少ないニューヨーク、ケルンでフィールドワークを行い、海外における雅楽実践を、実践者の活動と意識、聴衆の反応、実際の音楽内容、演出等の観点から分析し、その展開のメカニズムと社会的意義を学術的に分析した。
著者
羽生 毅 小川 奈々子 大河内 直彦
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

炭素を含む揮発性成分の地球表層とマントルの間の循環過程はよく分かっていない。マントルに地球表層由来の炭素が存在するかどうかを検証するために、火山岩に含まれる炭素濃度と同位体を分析する技術開発を行った。二酸化炭素は火山岩が噴出するときに容易に脱ガスするため、ガスを保持していると考えられる海底噴出急冷ガラス試料を対象とした全岩分析と、火山岩中の斑晶に含まれるメルト包有物を対象とした局所分析を行った。この手法をマントル深部由来の海洋島玄武岩に応用した結果、一部の海洋島玄武岩には地球表層由来の炭素が含まれている可能性が示唆された。
著者
桜井 洋
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の成果として、『社会秩序の起源』と題する書物を準備し、この秋頃には完成する予定である。その章立ては、1.存在と同一性、2.モーフォジェネシス、3.自己の起源、4.心の秩序、5.心のフィジックス、6.社会秩序の起源、7.力と自由、である。社会学ではすでに社会システム論が一般理論として存在するが、本研究は社会システム論に代わる一般理論の構築の試みである。社会システム論がその基盤とするシステム論に対して、本研究は物理学における非線形力学における複雑性あるいは自己組織性の概念を理論の基礎とする。また、システムの概念に対して現代物理学における場の概念を使用する。社会学は西欧起源の学であり、その思考は同一性の概念によって組み立てられている。周知のように20世紀の思想はこの同一性の概念に対する批判を中心として展開した。だが脱構築の思想に見られるように、同一性に対する代替案はいまだ提示されていない。私は自己組織性の概念が主体と同一性の思想に対する代替的な思想となると考える。自己組織性とは形態形成であるから、これをモーフォジェネシスと呼ぶ。本書はまず主体と同一性をめぐる現代の思想的状況を概観したのち、2において自己組織性の理論を定式化する。この応用として、3において生命の概念を検討する。そののちに心と動機付けの概念を、自己組織性の概念を使用して説明する。本研究は心は自己組織的に動機付けられる、という仮説から他の命題を演繹する、仮説・演繹型の理論として構築されている。
著者
山森 邦夫
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

岩手県越喜来湾には夏〜秋に毒性の高いフグ科魚類稚魚が出現する。そこでフグの毒化原因は天然餌生物中にあると仮定し、無毒の養殖クサフグ稚魚を籠に収容して同湾の海中に吊るし、籠目から入る天然餌生物を同稚魚に摂食させて飼育し、毒化が起こるかどうかを調べた。実験は同湾内の鬼沢漁港と袖の沢沖の2ヶ所で、2001年〜2003年に実施した。体重0.1〜1.6gの稚魚数十尾をプラスチック製魚籠(80×56×37cm)に収容して上記2ヶ所の水面下1mに吊るし、7月頃〜11月頃まで2週間〜1ヶ月間の飼育実験を繰り返した。回収後の供試魚の毒性はマウス試験で調べた。袖の沢沖では3年間、計14回の飼育実験で1回も毒化しなかった。一方、鬼沢漁港では計14回中、年により異なるが8月11日から10月3日までの期間内の5回の飼育実験で毒化した。毒化個体の毒性は、4.0〜76.5MU/gであった。以上から養殖クサフグ稚魚は特定の時期に特定の場所で海中籠飼育することにより毒化することが分かった。上述の海中籠飼育実験で無毒の養殖クサフグ稚魚を毒化させる原因となった餌生物を特定する目的で次ぎの実験を行なった。鬼沢漁港の陸上に養殖クサフグ稚魚飼育水槽2個を設置した。水中ポンプを使用して汲み上げた海水(流量120l/m)を0.335mmおよび0.1mmの2段階のプランクトンネットで濾し、大型および小型のプランクトン部分に分けて濃縮し、それぞれを稚魚飼育水槽に流した。2003年7月から11月まで両水槽に各数十尾の養殖クサフグ稚魚を収容して2週間-1ヶ月間飼育し、飼育終了後の稚魚の毒性を調べた。両水槽中のプランクトンの一部は毎日採集・保存した。大型プランクトン水槽では10月1日-10月15日飼育の9検体中2検体が毒化した。小型プランクトン水槽では8月12日から10月15日までの期間内の4回の飼育実験で25検体中13検体が毒化した。毒性は4.3〜7.3MU/gであった。以上はプランクトン摂食による養殖フグの毒化を示唆する。毒化原因プランクトン種の絞り込みは進行中である。
著者
佐藤 由美
出版者
埼玉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

かつて日本の植民地であった台湾と朝鮮に公布・施行された教育令には、植民地教育の思想的な根幹が示されているはずである。しかし、日本政府が両植民地を視野に入れ、その教育方針を共通化したのは1922年のことだった。それ以前は両総督府の学務官僚により、それぞれの状況に応じた学校制度が整備されていたため、台湾では朝鮮と合わせるために制度が後退する事態にもなった。一方、第一次朝鮮教育令で示された綱領はその後、教育令の条文から姿を消すが、「忠良ナル国民ノ育成」は水面下で強化され続けた。
著者
濱崎 考史 新宅 治夫 梅澤 明弘 豊田 雅士
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小児神経伝達物質病は、シナップスでの神経伝達物質の異常によって起こる遺伝性疾患群である。当教室が中心として行ってきた全国疫学調査により、臨床症状および臨床検査所見が明らかとなってきた。従来の血液検査、髄液検査等では、神経症状の病態を説明できない症例も存在している。また、個々に希少疾患であるため、体系的な治療法の開発手段は存在しない。今回、小児神経伝達物質病患者由来iPS細胞を樹立し、神経系細胞へ分化することで、細胞レベルでの病態の解明を目指すた。患者由来iPS細胞からの神経分化誘導を行い、細胞レベルでの機能解析、増殖能、神経突起をリアルタイムで解析し病態を解明する系を確立できた。
著者
高木 信宏
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,フランスの作家スタンダールの死後,その従弟で遺言執行人のロマン・コロンが出版したエッツェル版『パルムの僧院』,ミシェル・レヴィ版『アルマンス』と『カストロの尼』のテクストとそれぞれの初版の本文とを照合してヴァリアントの有無を精査し,『パルムの僧院』についてはエッツェル版に含まれる異文が,1842年2月26日に作家が行った修正を採録したものであることを,書簡,備忘,同小説の作家の手沢本などの網羅的調査をつうじて解明し,その成果を日本スタンダール研究会,フランスの国際スタンダール研究誌等で発表した。