著者
高橋 真聡
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ブラックホールが作る曲がった時空における高エネルギー天体現象の理解のため、ブラックホール周辺の磁気圏の構造についての研究を深化した。銀河系中心やコンパクトX線天体の中心では激しい天体現象が発現しているが、その活動性の原因にはブラックホールが深く関与していると考えられている。ただし、そのようなブラックホールの存在は直接観測的には未だに確認されてはいない。私は、観測されているような激しい活動性を引く起こすようなブラックホールの周辺環境モデルを構築した。また、その様子をどのように観測的に確認できるのかについて、電波VLBI天文観測および近赤外線天文観測の分野と協力して、方策を検討した。
著者
片山 貴文
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、避難所での災害看護の知識や技術を習得することを目的として、体験型の新しい教育方法を開発した。この教育では、看護師と被災者のシナリオを用いてロール・プレイ(演技)を行い、受講者が看護師と住民の両者の役割を演じながら、擬似的に被災者支援を体験するものである。この教育の効果を調べた結果、98%の受講者が被災者の気持ちを知ることの大切さを理解できていた。同様に、87%が避難所での救護・輸送・トリアージ以外の役割があることを理解できていた。以上より、この教育によって、災害看護の支援活動の場面で、被災者に不快な思いをさせたり、彼らの心を傷つけたりするような失敗が減らせるのではないかと思われる。
著者
森棟 公夫 金谷 太郎 末石 直也
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ボラティリティとは収益率の分散(あるいま標準偏差)の事を言うが,金融データの時系列分析では収益率の系列を調べても,通常,何ら特性が見つからない事が一般に知られている.特に,効率的な市場だと,収益率はランダム・ウォークに従うとされる.この研究では金融時系列におけるボラティリティの分析法の研究を行う.特にティック・データが利用できる状況において,効率的かつ実際的なボラティリティの推宿法を求めてきた.ティック・データを用いたボラティリティ分析でよノイズの処理が理論的には大きな関心を持たれているが,時系列処理で,ノイズをフィルターする手法を考案してきた.ボラティリティは自在に変化し,ノイズは独立同一分布を持つという通常の仮定の下ではボラティリティは観測個数にのみ依存する値となる.この1生質を使って,間引き標本などの手法を用いてノイズを除去しようとする試みは行われてきたが,本研究では二次モーメントを基礎とするノイズ除去法を追求した.理論的な研究を進めてきたが,数系列を用いたシミュレーションも行った.しかし,このようなシミュレーションは常に理論的な結果をサポートする事になるので,実際の金融データを使った実証的な検証も行った.この手順は非常に重要で,理論的な分析がもたらすある種のモデル・スペシフィケーション・バイアスを除去することができた幅の広い誤差分布においても従来の分析法が維持できるか否かを検討したが,明確な結果は得ることができなかった.代表的な系列に限定してもデータ購入の費用が高額であった.データについてはこれからも利用していく.
著者
林 茂彦 山本 聡史 手島 司
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

イチゴの循環式移動栽培における効率的な栽培管理を目指し、非破壊非接触で群落の3次元情報、果実情報(数、大きさ)を推定し、栽培ベッド毎に個別管理可能な計測システムを開発した。各情報は、カラー画像と距離画像を組み合わせた画像処理アルゴリズムによって抽出を行った。イチゴ群落の3D再構築により任意の断面で草高や幅を推定でき、2.5ヶ月間経時的に計測した結果、推定値から経時変化の観察が可能であった。果実の情報に関しては、赤色果実同士の重なりを距離情報によって分離することで着果密度によらず約95%の精度で計数できた。さらに、果実の大きさを推定した結果、推定精度はRMSEP12%であった。
著者
狩野 太郎
出版者
群馬県立県民健康科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、味覚変化を抱える化学療法患者に対するICTを活用した支援システムの開発と、対処法に関するナレッジデータベースの構築である。筆者らが開発した味覚変化症状評価スケールCiTASを、タブレットPCで回答できるWebアプリケーションシステムを開発し、回答結果に基づき過去に同様の症状を体験した患者が行っていた工夫や対処法をデータベースから表示する支援システムを構築した。本支援システムは、UMINサーバ上に開設しているが、タイムリーな情報提供や双方向コミュニケーションを目的にFacebookページも開設した。現在250名程度の閲覧者を維持し、運用を継続している。
著者
金子 友厚
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

歯髄組織再生においては、血管新生も重要な因子と考えられるが、これに関与するバイオマーカーは多数あり、その関与の実態に関する詳細は不明である。そこで、ラット臼歯の歯髄腔内で血管新生関連バイオマーカーが歯髄再生に対して果たす役割を、免疫組織化学、分子生物学的手法を用いて検索したところ、血管内皮細胞増殖因子や線維芽細胞増殖因子が、歯髄組織を速やかに再生するための重要な因子であることがわかった。主な研究成果 第35回日本歯内療法学会ワカイ賞受賞。第140回日本歯科保存学会優秀ポスター賞受賞。
著者
佐々木 健一郎
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

虚血下肢骨格筋組織は高度の酸化ストレスに暴露しており、そこへ筋注投与された血管内皮前駆細胞の多くが、その血管新生能力を発揮することなく細胞死を迎えていた。虚血性骨格筋細胞のミトコンドリア機能、炎症系血管新生作動タンパク分泌機能、糖エネルギー輸送機能は障害されていた。薬用化学物質プロピオン酸塩をマウス下肢虚血組織に噴霧投与し、低酸素傷害骨格筋細胞の機能回復を図ったところ、血管内皮前駆細胞投与後の血管新生効果が高まる傾向にあり、細胞投与組織の環境改善を図るという次世代型血管新生療法開発への有用なヒントとなった。
著者
金 徳男 高井 真司
出版者
大阪医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

PTFEグラフト移植後の外膜側から線維芽細胞の遊走がその管腔内内膜肥厚の形成に関与する可能性が示唆されてきた。本研究では現在広く使用されてきた多孔構造を有するPTFE人工血管と近年日本で開発された中層無孔体からなるグラシル(Grasil)人工血管を用いて比較検討し、PTFE人工血管移植後の血管内膜肥厚にはその外膜側からの線維芽細胞の遊走が非常に重要な役割を果たしていることを証明した。
著者
中川 泰宏
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

まず,Einstein・Kaehler 計量の一般化である,Kaehler・Ricci ソリトンを反標準類とは限らない一般の Kaehler 類の場合に一般化することに成功し,さらにその非自明な例を構成した.次に,トーリックでない Einstein・佐々木計量の例を構成することができた.そして第三に Nill・Paffenholz による非対称な Einstein・ Kaehler トーリックFano 多様体の例を高次元の場合へ一般化することに成功した.
著者
山本 雅代
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

産出能力が言語間で極端に不均衡な受容バイリンガルが行う言語混合の特徴や機能を、(1)言語混合要素の類別、(2)言語混合の文法的適正、(3)劣勢言語の語彙拡張を促進する機能の有無を課題に考察した。その結果、(1)では大半が名詞等活用しない形態素であることがわかったが、(2)と(3)では統計的検証を可能にする量のデータが得られず、更なるデータ集積を待つこととなった。産出量寡少の受容バイリンガルの研究では避け難い課題と言える。
著者
古川 一郎
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、日系ブランドに対する中国消費者の「嫌いだけど買う」という、言説と行為の矛盾を説明する論理的フレームを構築し、データによる検証を行った。結論は以下の通りである。(1)嫌いだけど買うという言説と行為の矛盾は、反日という社会規範が引き起こしている。(2)実際は、中国消費者は日系ブランドが好きだから購入しているが、言説と行為の矛盾にほとんど無自覚である。(3)人々の対話は、社会規範の影響を受けている。この社会規範は対人関係の性質により大きく異なり、したがって対話の内容は相手により大きく異なる。「面子」という中国社会の規範の影響が大きく作用するとき、常に相手によって対話の内容が変わる。
著者
西海 理之
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

以前の研究から、高圧処理による筋肉内コラーゲン並びに結合組織の脆弱化には筋肉内デコリンの分解もしくはコラーゲン線維からの解離が関することを予想し、ウシ骨格筋から実際に単離・精製したデコリン分子の高圧下での立体構造を解析し、高圧処理に伴う筋肉内結合組織の脆弱化との関連性を検討し、以下のようなような結果を得た。(1)高圧処理はデコリンコアタンパク質の分解、GAG鎖の解離及びGAG鎖の分解を引き起こさなかった。(2)高圧下蛍光スペクトル測定及び表面疎水性測定により、400 MPaまでの高圧処理で可逆的にデコリン分子の立体構造が変化した。(3)デコリン分子表面のSH基量は高圧処理に影響されなかった。
著者
杉浦 正晴
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

O-モノアシル酒石酸が、アルケニルボロン酸、アリルボロネート、ジボロンなどのホウ素化合物を活性化し、不斉共役付加反応やアリル化反応を促進する有効な不斉有機触媒となることを見出した。選択性や触媒活性の改善のために、触媒のアシル基およびカルボキシル基の効果を検討すると共に、計算化学による触媒の作用機構の究明を行った。また、触媒の回収・再使用に関する知見を得ることができた。
著者
長谷川 智子 福田 一彦 今田 純雄 川端 一光 川端 一光
出版者
大正大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,幼児の食・睡眠と母親の育児行動との関連性を検討するため,2つのインターネット調査を実施した.1次調査では,1000名の母親を対象に,幼児の生活時刻と規則性から5クラスターに分類し(①:夜更かし朝寝坊,②やや夜更かし朝寝坊,③やや夜型,④早寝早起き,⑤週末朝寝坊),母親の育児行動,食行動等に関する違いを検討した.2次調査では42名の母親を抽出し,5日間の子どもの生活時刻と写真法により母親の食事を検討した.その結果,夜更かし朝寝坊の子どもの母親は子どもの夜更かしを促進する行動を行い,母親の外食・偏食が多いこと,極めて簡便な朝食を摂取していることが示された.
著者
中村 卓
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、「おいしい」食感の感性表現を客観的な機器を用いた食品構造の破壊過程の解析から食品属性に翻訳するシステムの開発を目的とした。タピオカ澱粉ゲルを用いて「もちもち」食感表現を構造と物性に翻訳し、タピオカ澱粉の伸展性が寄与することを明らかにした。パスタの「モッチリ/プリッ」、うどんの「つるつる」、プリンの「とろ~り」のおいしい食感表現を構造と物性に翻訳した。以上の様に、咀嚼破壊の過程を (イ)知覚の意識化(官能評価)、(ロ)機器破壊による単純モデル化することで、硬・柔のレベルではない「おいしい」食感の感性表現を、知覚に対応した食品属性の変化に翻訳するシステムを確立することが出来た。
著者
井上 剛 木村 和美
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

岡山県内遠隔地域の脳卒中診療支援のため、遠隔地病院の脳卒中患者の頭部MRIやCT画像を、都市部岡山市の脳卒中専門医が携帯するiPhoneやiPadへ配信し、専門医が診断や治療を遠隔地病院の医師へ電話する、24時間365日対応のシステムを考案した。平成25年9月より遠隔地の岡山市内の榊原病院と新見地区3病院と、都市部の川崎病院脳卒中専門医師でシステムを導入した。岡山県内の脳神経系医師不在の133病院へのアンケート調査では、脳卒中患者は脳神経専門病院へ搬送され、5割弱の病院が遠隔医療は必要ないと回答した。現在は10病院が導入、準備中。本システムは地域の脳卒中患者へ最新医療を提供できる可能性がある。
著者
齊籐 純
出版者
サレジオ工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ものづくり教育とエネルギー教育を融合した課題解決型教育として、電動カートをテーマにした実習の教材キットと教育プログラムの開発および評価を行った。本教育プログラムでは電動カートを学生らが設計して製作する。またこの電動カートを運転する際の加速感と消費電力の計測値から電気エネルギーの定性的かつ定量的な理解を促す。実習実施後の学生のアンケート結果では9割を超す積極的な参加と、エネルギーの体感的理解の達成を示す結果が得られた。また本教育プログラムを過去に受講した上級生を対象に調査したところ、平均して6割以上が継続して教育効果を実感しているという結果が得られ、本教育プログラムの有効性が明らかとなった。
著者
平田 和明 長岡 朋人 澤田 純明 星野 敬吾 水嶋 崇一郎 米田 穣
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

赤星直忠博士を中心とする横須賀考古学会は,1967~1968年に神奈川県三浦市所在の雨崎洞穴遺跡(弥生~古墳期)において発掘調査を行った。本研究で出土人骨の整理を行なった結果,非焼骨について,大腿骨がもっとも残存する部位であり,その最小個体数は19体であった。死亡年齢や性別の構成を見ると,本人骨群には少なくとも成人男性3体,成人女性1体,性別不明成人11体,未成人5体の20体が含まれた。焼成人骨について,各部位の出土点数に基づく個体数の算定と焼成状況の復元を試みた。人骨は少なくとも33体からなり,主体は成人であるものの,未成人骨が複数確認された。
著者
森本 伊知郎
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、まず、第1部「近世陶磁器の研究史」で、近世考古学と近世陶磁器の研究史について略述した。第2部「消費地遺跡における近世陶磁器の研究」では、第1章で江戸遺跡の事例をあげ、陶磁器の出土状況を検討した後、陶磁器の生産年代から遺構の廃絶年代を推定する方法を述べ、産地組成、器種組成から江戸における陶磁器流通とその背景を考察した。第2章では陶磁器の数量把握の方法を論じ、望ましい数量把握の方法を示した。第3章では江戸から京都、大阪にいたる東海道の消費地遺跡を多数取り上げて産地組成を比較し、近世陶磁器の流通には地域差が存在したことを明らかにした。第4章では、消費地で少数ながら出土する茶陶や鍋島藩窯製品などのやや特殊な高級陶磁器の出土状況を検討した。第3部「生産地遺跡出土の陶磁器」では、生産地の窯跡、物原から出土した陶磁器について、多変量解析など統計的な手法を含む型式学的な分析を行った。第1章では肥前広東碗の器形と文様の変化について検討し、量産品が多い近世陶磁器についても、微細ながら器形の形態変化が捉えられることを示した。第2章では有田と瀬戸の磁器端反碗の容量と規格性を論じ、ふたつの産地にみる販売戦略の違いを検討した。第3章では、器形の微細な差異から生産した窯や陶工個人を識別する可能性を論じた。第4部「近世陶磁器と文字資料」では、紀年銘資料、暦を記した陶器碗、関口日記の事例などから、文字記録を考古資料の関係について論じた。以上のような分析から、遺跡から出土する近世陶磁器は編年や年代推定の資料になるばかりではなく、近世の文化や社会を解明する上で有益で重要な遺物であることを示した。
著者
野間口 雅子 宮崎 恭行 足立 昭夫
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

HIV-1 Vif とAPOBEC3Gとの拮抗はウイルス複製にとってcriticalである。HIV-1の馴化・適応研究から、SLSA1を含むスプライシングアクセプター1近傍の領域(SA1prox)に自然に存在する1塩基置換によりウイルス複製能が変動することを見出した。本研究では、このようなウイルス複製能の変動が、Vif発現量の増減により起こることを明らかにした。さらに、Vif低発現変異体の馴化実験により、vif mRNA産生に関与するSA1prox以外のゲノム領域が存在すること、また、APOBEC3Gにより強力に複製が抑制される環境下でも、HIV-1が極めて高い適応能力を持つことが示された。