著者
松井 謙二 中藤 良久 水町 光徳 加藤 弓子
出版者
大阪工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

喉頭がんなどにより発声困難になった方々が用いる電気式人工喉頭に関して、まず、手首や指のわずかな動きで抑揚を制御できるインタフェースを開発し、次に、装置を小型軽量化して手で保持することなく首に安定して装着可能な構造の人工喉頭を試作した。これらの結果を用いて、トータルシステムのユーザー評価実験を行った結果、新しい発声支援装置として使用が可能と思われるとの良好な評価結果が得られ、装置の有効性が確認できた。
著者
長尾 慶子
出版者
東京家政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

これまでに実施してきた種々の保形性食材を加熱した際に見られる食材内部の熱移動に関する実験研究の結果と対比させながら、今回の研究課題においては、各種の食材冷却時における内部熱移動の詳細を観測し、それを現象論的に記述することを試みた。すなわち、食材を一定温度にまで冷却する操作の開始直後に見られる試料温度の急激な低下は、やがて徐々に収束し続けるようになる。かかる状況は、試料の温度が一定になるまで続く。また、この現象は各食材内部における伝導伝熱により常に出現し、食材の種類や食材成分の相転移、あるいは食材中の水分量や冷却温度範囲等には影響されない。故に、食材の冷却現象は食材に内在する熱エネルギーを緩和させる現象として、時間定数である緩和時間を用いて束一的に取り扱うことができる。
著者
高橋 享子 木本 眞順美 木本 眞順美
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

卵白アレルゲン・オボムコイドは、酵素や熱に対して強い耐性を示し、低アレルゲン化が困難と考えられている卵白主要アレルゲンである。本報告者は、オボムコイドを独自の手法で低減化することに成功したが、調理や製菓作製への応用性の低いものであった。しかし、本研究の結果、卵白の応用性として最も有効と考えられるメレンゲ作製に成功し、低アレルゲン化したメレンゲを用いた加工品の作製に成功した。さらに、低アレルゲン化メレンゲを用いて、スポンジケーキを作製した結果、生卵白メレンゲを用いたスポンジケーキの9割程度まで膨化したスポンジケーキの作製に成功した。
著者
加藤 晃弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

染色体不安定性症候群の一つであるナイミーヘン症候群の原因遺伝子産物NBS1は、電離放射線などによって生じたDNA二重鎖切断(DSB)に素早く応答し、染色体の不安定化や細胞の癌化、細胞死を防いでいる。その分子メカニズムについては不明な点が多く残されているが、本研究では、DSBの主要な修復経路の一つである非相同末端結合でNBS1タンパク質が機能していることを証明し、NBS1のある特定の領域がそれに特化した機能を担っていることを明らかにした。
著者
千森 幹子 DAME Gillan beer CLIVE Scott
出版者
山梨県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ポストコロニアル的観点から、19世紀から20世紀イギリスで出版された文学挿絵における、日本、中国、中東にいたるオリエント表象の分化と変遷を、政治(帝国主義と植民地主義政策)社会(オリエント諸国への西洋観)および、文化(ジャポニズムに代表される美術様式や万博などにみられる西洋の東洋文化理解)を通じて検証する学際研究である。
著者
モラスキー マイク
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究で実施した日米両国の中小都市での現地調査から明らかとなった課題は、以下のように分類できる。(1)日米間におけるジャズ音楽の文化的位置づけの差異、(2)米国内の地域間によるジャズ音楽の文化的重要性の差異、(3)日本のジャズ文化における主要都市(東京・横浜、京都・大阪・神戸)と地方都市との間にみられるジャズの文化的位置づけ及び意義の差異、(4)日本国内の地方都市間(地域間)にみられるジャズ音楽の文化的存在の差異、(5)地方都市の復興事業における音楽の一時的な活用(恒例のイベント等)vs.音楽を提供する個人経営のライブスポットや飲食店など永続的・営利的な空間が生み出す効果の差異。
著者
西野 康人 中川 至純 谷口 旭 韓 東勲
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では定着氷に着目し、道東オホーツク沿岸域にある能取湖で2013―2015年の結氷期に調査を実施した。本研究の結果、結氷期にも水柱では高濃度のクロロフィルaが分布すること、そして、その分布動態は年により大きく変動することが明らかとなった。また海氷中のアイスアルジーも積算値では水柱より少ないものの、下部に集まることで、効率良く一次消費者に一次生産物を伝える機能を有することが推察された。すなわち、海氷は一次生産を活性化させる機能を有することが示唆された。
著者
伊藤 俊洋 宇田 郁子 伊藤 佑子
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

近年、日本では、若者の科学嫌いが進行しており、この傾向は大学生にも及んでいる。われわれは、大学一年生の化学教育コースに、興味深く楽しい内容が盛り込まれた教材を提供することを目指し、演示実験を取り入れることを試みた。本研究では、講義担当者が基礎的な自然科学の講義をするときに、学生に興味をもたせ、科学の本質に迫ろうとする意欲を引き出す道具として有効な演示実験キットを作成した。25の実験項目のほとんどは、ノーベル賞と直接または間接的に関係をもっているが、ノーベル賞創設以前の業績の中で、すべての自然現象の根幹と関わる業績の一部も対象とした。演示実験に必要な器具と試薬をコンテナにまとめて実験キットを作成し、テキストとDVDを付けることにより、初めての人にも取り入れ易い教材とした。テキストの各実験項目は、ノーベル賞との関連、実験の概要、材料と方法(器具・試薬、準備、演示)、注意事項、チェックリスト(観察ポイント、原理または解説、日常生活との関係、歴史、参考文献)にわけて記述した。以下に実験項目を示す。1.セルロースとニトロセルロースの燃焼の比較2.都市ガスシャボン玉の燃焼3.都市ガスの爆発4.トリチェリの真空:大気圧の測定5.水の沸騰6.卵の吸引7.ペットボトルの圧縮8.復氷の現象9.表面張力の観察10.s-p軌道による水分子の三次元模型11.金箔からの吸収光の漏光12.中間子による陽子と中性子の相互変換13.加速器の原理14.フラーレン15.ナイロンと電気伝導性ポリマーの違い16.無機陽イオンの系統分析17.鉄粉の発火18.化学平衡の移動19.有機染料による染色20.カラムクロマトグラフィーによる色素の分離21.脂質二重膜モデルの検証22膜を通過するリポタンパク質:保護コロイドの観察23.DNA二重らせんモデルの作成24.チマーゼによる発酵の観察25.酵素の結晶化
著者
高橋 義人
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

ヨーロッパの精神史ではキリスト教と並んでグノーシス思想が大きな役割を果たしてきていること、グノーシス思想を知らなければ、ヨーロッパの哲学や文学も真に理解することはできない、と近年しばしば言われるようになってきた。本報告書の目的は、グノーシス思想をもとに、ヨーロッパの哲学や文学を読み直すことにある。しかしグノーシス思想の全体像について知らなければ、グノーシス主義と近代ヨーロッパの哲学や文学との関係を知ることはできない。そこで本報告書の前半では、グノーシス主義の概要について記した。第1章(失楽園)、第2章(二元論)、第3章(ソフィアと「男・女」)、第4章(救済された救済者)、第5章(黙示録と終末思想)、第6章(アウグスティヌスとマニ教)、第7章(スコラ学派とカタリ派)、第8章(聖杯伝説とグノーシス)、第9章(マイスター・エックハルトとグノーシス)、第10章(ヤーコプ・ベーメとグノーシス)である。本報告書の後半は、全11章からなる。ファウスト伝説がグノーシス主義者シモン・マグスに関する逸話に由来するのではないかと推測した第11章、ウィリアム・ブレイクがベーメの影響の下にグノーシス思想に親しんでいったことを跡付けた第12章、ピエティスムスの指導者エーティンガーの有するグノーシス主義的思想がドイツ観念論にいかに大きな影響を与えたかを論じた第13章、フィヒテの『浄福なる生への導き』のなかにグノーシス思想を探った第14章、シェリングの『人間的自由の本質』における善悪の問題の追究がグノーシス主義的であると論じた第15章、ヘーゲルの「キリスト教の精神とその運命」に見られるグノーシス思想が彼の「弁証法」を生み出し、さらに彼のグノーシス的思想はヘーゲル左派を通してマルクス主義へとつながり、またヘーゲル右派を通してナチズムにつながっていった経緯を明らかにした第16章、さらには自分ではグノーシス主義者とは述べていないものの、『罪と罰』などの見られる思想は明らかにグノーシス的と認められるドストエフスキーについて論じた第17章、同じく自分ではグノーシス主義者とは洩らしていないものの、『パルジファル』には明白なグノーシス思想が認められると論じた第18章、ユング派の医師によって精神病の治療を受け、グノーシス思想に接近したH・ヘッセの記念碑的小説『デミアン』について論じた第19章、タルコフスキー監督の映画『ノスタルジア』や「」サクリファイス』のなかにグノーシス思想を認めた第20章、20世紀後半のSF作家フィリップ・ディックがいかにグノーシス思想に近づいたかを論じた第21章である。
著者
福嶌 教隆 長谷川 信弥 浅香 武和 吉田 浩美
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

スペインでは,一般に「スペイン語」と呼ばれている「カスティーリャ語」以外に,カタロニア語,ガリシア語,バスク語などが用いられている。本研究では,これら4つの言語の基礎語彙約 4000 の対比一覧を作ってその比較を容易にし,またそれぞれの言語の借用語についての論文を発表して,多言語国家の言語使用状況の理解と語学教育に貢献した
著者
工藤 哲洋 横山 央明 松元 亮治 工藤 祐己 那須田 哲也 町田 真美 鈴木 昭宏
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

太陽は恒星の集団である銀河に属し、恒星間には希薄な星間ガスが存在しています。そして、星間ガスには磁場が存在し、太陽のような恒星が星間ガスから誕生する時に大きな影響を与えています。しかし、星間磁場がどのように維持されているのかはよくわかっていません。私たちは、星間磁場の維持増幅機構(銀河のダイナモ機構)に興味を持ち、その機構に重要な不安定性を研究しました。特に、星間空間に存在する宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子に着目し、それが不安定に寄与する事で、銀河の中における星間ガスの密度や磁場の分布が大きく変化を受けることを発見し、それがダイナモ機構に影響を与えうることを確認しました。
著者
中野 正俊 神山 保 糸乗 前
出版者
滋賀県立琵琶湖博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

これまでにも国内各地で、防災ならびにエネルギー活用に関する教育は行われてきた。ただ、それらは学校あるいは地域や民間それぞれが単独で実施してきた。社会教育施設等が学校や地域と連携して実践する例はなかった。そのために、当該学校では効果的な学習ができても、他へ広められなかった。そこで今回、博物館・学校・地域の3者が連携し、モデルを作った。このモデルは、全国のあらゆる学校や地域で活用できる。それは、学習指導要領にもとづいたモデルだからである。また、学校教員と話し合い、子どもの実態にそって実践したからである。総合的な学習の時間は減った。これを乗り越えて実践する手だてや工夫が必要である。
著者
苦瀬 博仁
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、歴史的にみた鉄道などの大量輸送機関が、都市の産業発展に果たした役割を明らかにすることである。都市の産業振興上必要だった物資輸送のために輸送機関の変遷を明らかにするとともに、環境負荷の小さい輸送機関である水運と鉄道が、都市の物流システムとして過去に成立した理由が明らかとなった。これにより、都市の物流システムとしての利用可能性が明らかとなった。
著者
齋藤 昌利 松田 直 菅原 準一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

早産の主要原因である子宮内炎症がどのように胎児に波及し、どのように影響するかは未だ不明な部分が多いが、我々は妊娠ヒツジを用いて子宮内炎症モデルを作成し、子宮内炎症環境下に胎児皮膚組織が炎症メディエータとして働くことを明らかにした。また、Polymyxin Bという抗生物質を用いて、胎児皮膚組織において炎症性サイトカインのメッセンジャーRNA発現が抑制されることを示した。この結果は、進行しつつある子宮内炎症を沈静化する治療方法の開発の一助になると思われる。
著者
小野 貴史
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

音楽は音価、音高、音強、音色のパーラメーターのみならず、水平/垂直な音の蓄積(広義には和声と定義づけられる)や、より大きな枠組みによって構成される楽曲形式など様々なファクターによって時間軸上に構築され展開されるものである。本研究では複雑な楽曲構造を構造方程式モデリング(共分散構造分析)を援用することによって数理的整合性を算出し、これまで分析が困難とされてきた楽曲に内包される様々なファクターの因果関係に対してパス解析図を用いて可視化させる方法論を導き出すことに成功した。
著者
熊澤 恵里子
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

越前松平家3代(慶永・茂昭・康荘)にわたる家譜並びに康荘海外留学関係書類、慶永日簿等の国内史料と英独墺の国外史料を収集・リスト化し一部翻刻を行い、大名華族の伝統的な子弟教育に翻弄された康荘の実際を辿ると共に、康荘の留学が衆議により旧領地福井の地域再生の方途として、私有地(城址)活用による試農場経営に生かされ、併設された園芸伝習所も含め民間モデルの先駆けとなったこと、及び、康荘随伴の旧臣にとって渡欧は「変則的な海外留学」であったが、自由闊達な学問研究と藩閥を越えた在外日本人ネットワーク形成を可能とし帰国後の近代化の一翼を担ったことを明らかにした。
著者
佐山 敬洋 牛山 朋來
出版者
独立行政法人土木研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、世界各地で発生する大規模洪水を対象に、洪水の現象を明らかにして、予測精度を向上させることを目的とした。本研究の結果、(1)地下水や蒸発散の影響も考慮して降雨流出から洪水氾濫までを一体的に予測するRRIモデルの開発が進んだ。(2) またRRIモデルで再現する河川流出や洪水氾濫の時空間起源を分析する手法の開発が進み、降雨の時空間起源や流出経路の観点から流出や氾濫水の成分を推定できるようになった。(3)さらに、2011年タイ洪水を中心に、降雨の変動が流出や氾濫に及ぼしている影響や、氾濫原に降った雨が流域全体の氾濫に及ぼしている影響などが明らかになった。
著者
惠木 浩之 栗田 雄一
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

内視鏡手術用デバイスを持ちながら施行したところ、振動していることを感じる最低値に対して50-75%の振動を与えた場合に触覚が向上した。次にOSATS endoscopic suturing scoreで評価したところ、Total score で有意に高得点が得られ、なかでも針を把持するという最も触覚が反映される項目で有意に高得点であった。病理組織学的検討では組織損傷に関しては、同等であった。 以上より、確立共鳴理論に基づいた微細振動を術者に伝えることで、内視鏡外科用デバイスを操作中の触覚向上が得られることがわかった。さらに手術パフォーマンスを向上させる可能性も示唆された。
著者
齋藤 君枝 青木 萩子 藤原 直士 富山 智香子 岩佐 有華
出版者
千葉科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東日本大震災後、応急仮設住宅居住に居住する高齢被災者に対し、睡眠障害とその関連要因を検討した。睡眠の悪化は体調、受診状況が有意に関連していた。また、抑うつの有無と睡眠の質、睡眠困難、体重の減少が関連していた。生活環境では居室、風呂、トイレ、買い物の不便が睡眠に影響していた。避難に伴う心身の不調や疾患、生活環境が睡眠の悪化に影響を及ぼすと考えられた。包括的睡眠ケアには、早期からの睡眠障害のスクリーニング、情報収集の継続、ハイリスク者に対する定期的なアウトリーチ、多職種による連携介入が必要である。
著者
織田 芳人
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、1回の操作で折り畳みが完了する多面体を用いて、幼児用の知育玩具を開発することである。サイズとして、幼児が手に取って形体の変化・動きを体験できるような小型遊具と、幼児が内部に入って空間感を体験できるように開口部を設けた大型遊具を想定した。小型及び大型の試作モデルを用いて、幼児による操作実験、及び、保護者に対するアンケート調査を行った結果、小型及び大型の試作モデルは幼児用玩具として有効であると考えられた。幾何学形体に対する幼児の認知に関して2種類の実験を行った結果、小型及び大型の試作モデルは教育的有効性を有すると考えられた。したがって、この研究によって、1回の操作で折り畳みが完了する多面体を用いた小型及び大型の試作モデルは、幼児用玩具として有効であり、知育玩具としても有効であることを明らかにすることができた。