著者
松山 雅子 畠山 兆子 土山 和久 田中 俊弥 香山 喜彦
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

最終年の本年度は、二度の予備調査を踏まえ、2003年2月〜3月にかけて、国語科メディア・エデュケーションを標榜した単元学習を開発、実施、検討を行った。また、前年度から継続研究である英国映画研究所教育部門開発の教授法の考察ならびにドイツにおけるメディア教育の検討を基礎研究として行い、教授法ならびに教材開発を多角的に行うよう努めた。合わせて、予備調査を踏まえた子ども用国語科学習ソフト作成への見通しをつけた。具体的には、大阪府下・兵庫県下の公立小中学校ならびに大阪教育大学附属中学校の計10校の協力を得て、大阪教育大学との連携システムを構築し、テレビ・アニメーションを用いた読解表現単元を構想し、指導法ならびに教材資料の開発、指導前、中、後指導を行い、実施、検証した。パイロット授業は、作り手の立場に立って読む・表現することを目的とした単元学習「新しい国語「名探偵コナン」の予告編を作ろう」(全8時間)で、「子どものメディア環境アンケート」を補助調査として実施した。授業展開の大要は、動画の基礎読解→動画粗筋の作成→粗筋と予告編の違いに気づく→予告編の意図、機能および視聴者を意識した予告編案の作成→大学において子どもの予告編案の映像化→相互批評会→オリジナル予告編の批評→アンケート調査であった。短編中心の物語小説教材を扱うことの多い国語科にあって、30分番組という中篇物語を作り手の立場に立って読解し、受け手を意識して予告編に再構築するという学習活動は、学習者にとって予想外の困難さを伴う、新鮮な活動と映ったようであった。動画リテラシーを全面に取り立てた授業に対する子どもの反応と学習のさまは、ワークシートの学習記録ならびに事後のヒアリングによって検証した。大学において映像化をサポートした本研究の授業法によって、設備面で困難な学校でも実施が可能になり、小中校の実践者の方々にとって具体的な意欲付けになった。
著者
古村 孝志
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本海下で起きる深発地震の広帯域地震波形を調査し、深さ400 km以深の地震においてS波初動部の波形が変化し、低周波数の先駆波が見られることを明らかにした。これをスラブ内部に相転移遅れにより生じた薄い、くさび形状の低速度層(MOW)によるものと考え、2010年2月12日に発生したウラジオストックの深発地震(578 km, Mw6.8)の地震波形を差分法に基づき計算し、MOWの存在を確認するとともに、その物性(低速度異常)を明確化した。スラブ深部のMOWは、周波数2-4Hzの地震波をスラブ上部に向け強く放射することで、MOWが無い場合の3倍の導波効果を生み出していることを確認した。
著者
北川 裕之
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

黒鉛製のスライドボートを用いた液相成長法によりp型熱電材料Bi_<0.5>Sb_<1.5>Te_<3>とn型熱電材料Cu添加Bi_<2>Te_<2.85>Se_<0.15>を作製した。ボートスライド方向が熱電変換に適した結晶方位を有していることを確認した。キャリア濃度制御を行った結果、室温付近で大きな出力因子を有する材料がp型n型ともに再現性良く得られた。
著者
櫻谷 眞理子 大橋 喜美子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、乳幼児を養育中の母親の意識や子育ての実態を把握し、適切な社会的支援のあり方を明らかにすることを目的としている。595人の親へ質問紙を配布したところ、365人から回答が得られた。その結果、親になるまで赤ちゃんの世話をした経験がある人は3割に過ぎず、経験がある人に比べ、経験の無い人の育児不安はより高い傾向がみられた。また、出産前のイメージと現実とのギャップがあったと答えた人は52.5%で、そのうち、76.5%が現実の子育ては思っていたよりも大変だと答えている。なお、イメージと現実とのギャップがあったと答えた人たちの方が育児不安は高い傾向がみられた。養育態度や意識について把握したところ、子どもを感情的に叱ったり、体罰を多用する傾向がみられた。例えば、大きな声で叱るが85.8%、叩いて叱るが55.1%(複数回答)という結果であった。子どもに苛立つことがあるという回答は68.4%、自分は育児に向いていないと感じることがあるという回答は53.4%であった。また、子育てに疲れるという回答は82.3%、時間的なゆとりがほしいという回答は91.9%であった。母親たちの自由時間はほとんど無く、専業の母でも平均2時間で、有職の母の平均1時間とあまり差がなかった。夫の家事・育児参加に満足している妻は、3人に1人に過ぎなかった。さらに、近隣からのサポートも受けられず、孤独な育児を強いられている実態が浮き彫りになった。なお、母親が育児に専念すべきと考えている人は、3.8%に過ぎず、28.7%の母親は保育所を利用したいと希望しており、48.7%は時々保育を受けたいと希望していることがわかった。これらのことから、親の不安や負担感の軽減を図るためには、必要なときにはいつでも利用できる保育システムを整え、養育技術を学習する機会等を保障することが不可欠になってきているといえよう。
著者
工藤 敏文 井上 芳徳 地引 政利 豊福 崇浩 横尾 聡 宮崎 英隆
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

末梢動脈疾患(PAD)がある患者の下肢の局所循環を評価することは重要である。PADは下肢切断も免れない重症虚血を招きやすく、このため血行再建を必要とするのか否かをある一定の基準から決定することが肝要である。本研究において、PAD、特に下腿・足部潰瘍が多く認められる重症虚血肢の局所(末梢)循環に対して、新たな局所(末梢)循環の計測法の開発およびより詳細なアンギオサムの解明を行った。
著者
日野川 靜枝 高橋 智子
出版者
拓殖大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、サイクロトロンの発明地バークレーのカリフォルニア大学を対象にして、放射線研究所の184インチ・サイクロトロン開発を契機に産業界、ロックフェラー財団、そして科学行政官らがどのように相互の関係を構築していったのかを明らかにしました。しかし、軍産学複合体の形成につながる科学・技術の戦時動員体制づくりにおけ Alfred Lee Loomisの役割は、必要な資料入手が不十分であったために、残念ながら満足には解明できませんでした。引き続き、資料入手に努めたいと考えております。
著者
安田 美弥子 新井 信之 岡本 隆寛
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

近年、急増しているアディクションに対し、従来の看護観、看護技術では対応できず、地域でも臨床現場でもとまどいが大きい。そこで、アディクション看護の特性を明らかにするために、日本アディクション看護学会を設立し、年1回の学術集会を開催し、そのほか事例検討会や、病棟見学スタッフとの話し合いなどを行い、従来の看護との相違やアディクション看護の専門性、アディクションという病気の特性を検討した。その結果、アディクション看護には再飲酒が予測されても本人の意志によっては失敗を容認したり、患者の話すことを傾聴し受容するよりより突き放すことが必要とされるなど、従来の看護のカウンターカルチャー的なところがあり、臨床現場で困惑や陰性感情を生じやすいことが明らかになった。アディクションは人間関係の病、家族の病、生き方の病、喪失の病であるので、看護師は人間、家族、人生、生き方などに深い思索を行い、他職種、他機関と連携しながら、セルフヘルプグループなどにも出席するなど自らの成長をはかり、当事者・家族を共に見守っていかなければならないという特性があり、やってあげる看護ではなく、当事者・家族の自己決定を促す見守る看護にアディクション看護の専門性があることを確認した。アディクションの急増する社会では臨床現場での教育だけでなく、看護基礎教育からアディクション看護を教育する必要がある。そこでアディクション看護のテキストブックの作成にも携わり、近日出版されることになっている。
著者
樋口 勝
出版者
日本工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

一般的な規格の階段を含めた人間の移動環境内において,安定かつ高効率な移動を可能とする4足歩行ロボットとして,階段のような不整地を移動するための広い作業領域を有する2つのモードと,水平面を移動するための移動効率に優れた1つのモードの合計3つの歩行モードを自由度を追加することなく切り替えることのできる歩行ロボットを提案し,その具体的な関節機構やブレーキ機構,小型実験機および試作機の設計・製作を行い,その有効性について検討した.
著者
前川 要 五十川 伸也 千田 嘉博 亀井 明徳 天野 哲也 狭川 真一
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

緊急発掘に伴う中世遺跡の発掘調査資料は膨大である。まず、土器・陶磁器を中心とした詳細な編年体系ができつっある。時間軸はおおよそ、最低50年単位で理解できうる状況になってきている。また、一方では遺跡整備に伴い、全国で城館・城下町遺跡・港湾都市遺跡の資料が急激に増加してきている。さらに、加えて高速道路など大型開発に伴い広域を空間的に認識できる遺跡も増加して、中世村落構造を認識できるようになってきている。しかしながら、研究はそれぞれが分断されており、様式論的に同時期の様相を把握する機会は従来全く無かった。ここで総合的研究を実施することにより、日本史側から投げかけられた問題提起を受け止め、民衆史のみならず、海運史、北方史、周辺民族史などに関連して考古学から歴史像の再構築を行うことが可能となる。以上のような現状において本課題は、研究の発展段階の観点からみて成長期にあり、総合研究を実施することにより研究の一層の発展が期待で切る領域と予想されるため企画調査を実施することを目的とした。特に、2回の会議を通して次の3項目について検討した。1.特定領域として研究申請する意義についてさらに申請が可能か否か、2.研究項目が適切か否か、3.追加あるいは削除する項目があるか否か(1)平成14年6月15・16日:総括班が東京御茶ノ水で集まり、研究領域の目的・意義、研究項目の妥当性について検討した。(2)平成14年9月29・30日頃:国立歴史民俗博物館にて全体会議の招集。共同研究者から、意見聴取。(3)平成14年10月初旬頃:特定領域研究へ申請のため、総括班が東京近郊で集まり書類作成のための意見聴取を行った。(4)同下旬頃:申請書類提出のため平成15年度発足特定領域申請書および特定領域申請書概要の印刷準備。(5)平成14年11月頃:特定領域研究(A)「中世考古学の総合的研究」として申請書類を提出した。
著者
櫻井 進 谷川 武 岡 靖哲 中田 光紀
出版者
天理医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ホノルル在住日系人および日本人計29名(男31%、平均70歳)を対象に、SASスクリーニング検査、家庭血圧測定、ハーバード大睡眠問診票(日本語版)等を実施した。平均3%ODI値は男20%、女13%であった。舌骨-顎先端長と睡眠呼吸障害の重症度、就寝前後の心拍数の間にそれぞれ有意な関連を認めた。SASが疑われる者に精査勧奨したところ、SAS治療中または受診嫌悪者であった。受診嫌悪の理由は、検査および治療費用が高額であることだった。
著者
嶋津 格 藤井 俊夫 戸田 善治
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

千葉大学の付属中学校、同小学校、および千葉県立千葉南高等学校の協力を得て、法学の基礎的体験を初等・中等学校でさせることを目的として、実験的な研究を行った。それまで2年間行ってきた研究の継続の側面もある。題材として「カイワレ裁判」(大腸菌O-157によって堺市の多数の小学校で集団食中毒が発生し、原因としてカイワレ大根が疑われ、国によるその発表によって全国のカイワレ農家が風評被害を受けた、という国家賠償請求事件)を採用することにした。平成15年度は、主に教材の作成を行った。判決の収集と概要の作成、事件を担当した弁護士(録画)、国の代理人であった法務省の担当者(録音)へのインタヴューと、米国の陪審裁判の調査、などを行った。16年度は、実際の授業を行うことが中心であった。高等学校と中学校で各1回、小学校では、以前作成した別の題材を使って2回の授業を行った後、同じクラスでカイワレ裁判による授業を行った(子供たちの飲み込みの早さに驚かされた)。授業では、当初の予定を変更して、事前に作成した台本を二人の大学院生が原告と被告の主張を述べる方式を採用することとした(使用した台本は報告書に収めているので、他でも利用可能)。教育学で使われる方式に則って、「授業案」を作成して実行するとともに、授業全体を録画した。授業の方法は、2時間続きの授業のうち、前半を事件の概要の説明にあて、後半を6人一組にクラスを分けて、それぞれで判決に対応する判断を出させる、というものである。結果はかなり満足のゆくものであった。クラスでは、高校・中学校・小学校のどこでも、活発すぎるほどの討論があり、生徒たちはかなり充実した体験をしたと思う(ワークシートの結果や感想などを参照)。長期的には、法的思考と裁判制度が日本社会で占める位置の変化への対応などの大きな課題を視野におくが、法学授業の初中等教育への導入実験という当面の成果は得られたと思う。
著者
徳山 道夫 寺田 弥生
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

コロイドガラス転移現象を理論およびスーパーコンピュータを用いた大規模計算機実験の両面から研究し,下記の成果を得た.1)中性コロイド分散系のガラス転移近傍において,コロイド粒子間に働く流体力学的相互作用が如何に重要な役割を演じるかを研究代表者が提案した分子場理論および二種類の計算機実験(分子動力学およびブラウン動力学)を通して間接的に示唆し,その相互作用無しではガラス転移は起こりえないことを初めて理論的に明確にした.2)研究代表者は,コロイドガラス転移を理解するモデルとして,第一原理より密度揺らぎに対する非線形確率拡散方程式を2001年に提案した.その式を数値的に解くことにより,ガラス転移近傍では,時間スケールに応じて異なった不均一空間パターンが形成され,そのクラスター形成過程のダイナミクスが密度揺らぎの非線形緩和に影響を与え,従来知られている,二段階緩和(α,β緩和)の原因となることを初めて示した.3)理論的に提案された非線形確率拡散方程式を数値的に解くことは,現段階では近似的にしか可能ではなく,密度揺らぎの全緩和時間スケールでの議論には到底使用出来ない.そこで研究代表者は,非線形確率拡散方程式を分子場近似の下で平均し,平均二乗変位に対する新たな非線形方程式を導いた.この式には,未定の静的構造因子に起因する自由長が含まれており,その意味で分子場方程式である.この自由長は,粒子同士が相互作用するまでに自由に動ける距離を表し,実験やシミュレーションのデータから決定されるべき重要な物理量である.実際,ガラス転移点近傍では,どのような体系においても,自由長,長時間拡散係数,特性時間(代表例,α,β緩和時間)などのパラメーター依存性には類似性および普遍性が存在することを,この分子場理論を用いて示すことができ,ガラス転移の理解に必要な枠組みを見出した.実際,この理論は原子・分子系でのガラス転移のダイナミクスの研究にも有効であることが示され,これからのこの分野での発見科学としての役割を演じて行くものと確信する.
著者
岡崎 美智子 道重 文子 梶谷 佳子 中橋 苗代 仲前 美由紀 那須 潤子 石垣 恭子
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新人看護師の臨床判断力を高める目的で開発した学習支援システムの第三者評価を行った。システムは、学習理論(Steinaker and Bell's:1979)に基づき5段階で構築した。対象者は、新人看護師、中堅看護師、専門看護師、看護系大学の学生、大学院生、教員であった。結果は、現任教育および看護系大学の実習指導に有用であった。課題はステップ3の事例内容をシンプルにし、事例数を増やすことであった。
著者
岩根 典之
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

デジタル教材への書込みを利用してクイズを生成し,eラーニングシステムで出題することで繰り返される学習(書込み学習)を自動支援することの可能性について調査した.そのような学習環境を実現するための枠組みと基本機能について検討し,書込み学習の効果を書込みの変化や意識から確かめた結果,書込み学習による個別学習支援の可能性が示唆された.
著者
高橋 和久 大鳥 精司 高相 晶士
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

椎間板性腰痛の基礎研究は1970年に教室の篠原がヒト変性椎間板内へのdeep nerve ingrowth を報告して以来、椎間板内の炎症性サイトカインの上昇や、後根神経節(DRG)における炎症性疼痛ペプチドの増加が報告された。しかし、神経栄養因子であるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)と椎間板性腰痛に関連に関しての報告は無い.本研究の目的はラット腰椎椎間板傷害モデルにおける痛みに対し,抗BDNF抗体を投与することにより,その疼痛マーカーは抑制が可能であった.
著者
滝沢 宏光 近藤 和也 先山 正二 梶浦 耕一郎
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

術中の胸膜浸潤診断に自家蛍光を用いることで正診率が向上することを示した.蛍光内視鏡所見とHE染色標本の蛍光顕微鏡所見は,胸膜浸潤部位において同様の所見を呈しており,肺癌の胸膜浸潤部における自家蛍光減弱は癌の浸潤性を反映している可能性を組織学的に示すことができた.胸膜の自家蛍光の変化にcollagenⅠ, fibronectinが関与している可能性がある.肺癌切除症例を対象とした後ろ向き検討では,リンパ節転移は胸膜浸潤症例で有意に多く,胸膜浸潤症例にスキップ転移も多いことが示された. 術中に胸膜下に注入したICGの蛍光を観察することで,スキップ転移経路を可視化できる可能性も示すことができた.
著者
高木 英明 高橋 豊 李 頡 張 勇兵 北島 宗雄 後藤 邦夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

1.Eコマースサイトのウェッブページのデザイン評価ウェブページに表示されるリンクを逐次選択しながらターゲット情報が提供されているページにたどり着く過程をMarkov連鎖確率過程としてモデル化した。各リンクが選択される確率は、認知工学の技法を用いて計算された百科事典の見出し語間の類似度データベースの検索から自動的に計算して決めることにした。例として、現実の3つの航空会社のiモード航空券予約サイトをMarkov連鎖でモデル化し、予約完了までに要する平均クリック数と操作時間を計算した。その結果、ユーザの習熟度に応じて、3社のサイトの効率の特徴に違いがあることを示した。2.セルラ移動体通信網におけるハンドオーバ数の評価と最適端末位置管理セルラ移動体通信網において、1つの通話中に横切るセルの数(ハンドオーバ数)を評価するモデルを再生過程という確率過程の理論を応用して構築した。また、セルラ移動体通信網においては、基地局が移動端末の位置を時々刻々に記録しておくことが必要であるが、そのコストを節約するために、端末が一定数のセルを横断するごとにページングにより位置を報告させるものとする。端末が通話中に横断するセルの数を遅延再生確率過程でモデル化し、位置管理のコストを最小にするような更新頻度を決定する方法を研究した。3.波長分割多重方式の光通信網における波長割り当てと経路選択の高速解法大規模な波長分割多重方式の光通信網において、送受信の要求が静的に与えられていると仮定するとき、波長割り当てと経路選択を高速で行なう2つのアルゴリズムを開発した。これらを、茨城県および関東地方のNTT電話局の位置から構成した仮想網に対して適用し、既存のアルゴリズムと比較すると、実行速度が格段に短いことが示された。
著者
諏訪部 仁
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

結晶系太陽電池ウェハーのスライシング加工には,マルチワイヤソーが用いられている.本方法には遊離砥粒方式と固定砥粒方式があり,ダイヤモンド砥粒を固着したワイヤ工具を利用した固定砥粒方式が注目されている.本申請課題では,固定砥粒方式のワイヤソー切断において,ワイヤコスト低減,切断性能の向上や切断代の減少を目指して,ダイヤモンドワイヤ工具の高速作製法の開発並びに固定砥粒方式の加工精度等の加工特性に与える影響因子を実験的に検討し,高能率切断の可能性を示した.
著者
太田 秀樹 齋藤 邦夫
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

降雨後の駿河湾地震 (2009年8月) で崩壊した東名高速道路牧の原盛土の盛土材料を実験に供したうえで現場データと比較照合したところ、現場で崩壊せずに残った盛土がおおむね1200kPa程度の定体積せん断強度を持っていたと判断された。崩壊した盛土の強度が120kPa程度であったことが分かっているから、崩壊した盛土は水がしみ込んで泥濘上になり強度が120kPa程度にまで低下していたと推定できる。永年の浸水による盛土の劣化・強度喪失のメカニズムを一連の実験によって推定したところ、崩壊前後の現場状況と定量的に整合し力学的に妥当と思われる結果がえられ、水による盛土の経年劣化機構が明らかになった。
著者
土肥 直美 篠田 謙一 米田 穣 竹中 正巳 西銘 章 宮城 弘樹 片桐 千亜紀
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、南西諸島先史時代人の地域差の問題に、形質、遺伝子、年代、生業、考古などの側面から総合的な解明を目指した。南西諸島の先史時代人については、先島諸島の保存良好な人骨が未発見という課題が残されているが、本研究ではまず、沖縄諸島を中心に形態変異の解明に取り組んだ。沖縄先史時代人の基礎データ収集と整理が進んだことが成果である。また、石垣島では更新世人骨の他、縄文時代相当期(下田原期)、弥生~平安相当期(無土器期)の人骨が発見され、今後の分析によってさらに地域性の解明が進展する可能性が広がった点は大きな成果である。