著者
大浦 清 東 泰孝 篠原 光子
出版者
大阪歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、白血球機能に対する化学療法薬の影響を評価する第一歩として、感染初期の非特異的な自然免疫機構において重要な機能的役割を演じているマクロファージおよび好中球機能に対するニューキノロン薬の影響について検討を行った。ニューキノロン薬はオフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、フレロキサシン、スパルフロキサシン、およびレボフロキサシンの6種類を使用した。平成10年度は、ニューキノロン薬のマクロファージ機能に対する影響について検討を行った。マクロファージ遊走能および貪食能は、用いたすべてのニューキノロン薬によって有意に減少することが明らかとなった。さらに、スーパーオキサイド産生能を検討した結果、用いたすべてのニューキノロン薬において産生能の有意な増加が認められた。平成11年度は、ニューキノロン薬の好中球機能に対する影響について検討を行った。好中球接着能に対する影響は、ロメフロキサシン、およびスパルフロキサシンでは好中球接着能を有意に増加させたが、他の薬剤では接着能に有意な変化は見られなかった。また、貪食能に対しては、オフロキサシン、ロメフロキサシン、フレロキサシン、およびレボフロキサシンにおいて有意な増加が見られたが、他の薬剤では貪食能に有意な変化は見られなかった。次に、スパーオキサイド産生能を検討した結果、トスフロキサシンでは、産生能の有意な増加を示したが、これ以外の5種類のニューキノロン薬においてはスーパーオキサイド産生能の有意な減少が認められた。さらに、過酸化水素産生能に対しては、トスフロキサシンによる有意な増加とスパルフロキサシンによる有意な減少が観察された。上記成績により今回検討した6種類のニューキノロン薬は、マクロファージおよび好中球機能に対して異なった影響を与えることが明らかとなった。
著者
水林 章
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「共和国の思想と文学-他者との出会い」を主題とする研究過程で,フランス啓蒙主義時代の文学の精力的な再読をおこなうと同時に,この主題に関係の深い現代フランス文学作品であるダニエル・ペナックの『学校の悲しみ』の翻訳をおこない,さらには,研究の一部をフランスのガリマール書店より刊行されたUne langue venue d'ailleursにまとめることができた.
著者
最上 善広
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

運動活性と酸素消費の同時測定を応用し、単細胞生物繊毛虫での「基礎代謝」を特定し、単細胞生物での、アロメトリー理論の生物界全般への普遍性の検証を行った。ゾウリムシに対して,コンピューター・トモグラフィーによる細胞重量の推定方法を適用することによって,細胞咽頭による餌の取り込みに依存するアイソメトリー関係と,細胞表面からの酸素の流入に依存するアロメトリー関係のふたつの基礎理論が導入された。測定精度を向上し,より精密な理論予測の検証を行うことで、アロメトリー理論の普遍性が検証される方向性が確立された。
著者
土屋 裕睦
出版者
大阪体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究の目的は、スポーツチームの競技力向上・試合での実力発揮に役立つ心理的サポートのあり方を検討することであった。5年間にわたる縦断的・実証的研究より、以下が明らかになった。①スポーツチームの競技力向上・実力発揮をもたらす心理要因には、集合的効力感と集団凝集性が強く関与している。②スポーツチームに対する心理的サポートでは、個別のカウンセリングのほかに、チームビルディングが有効となる。③そのためのプログラムとして、メンタルトレーニング技法を取り入れた構成的グループ・エンカウンターが開発され、世界大会優勝を目指す日本代表チーム等での実践からその有効性が確かめられた。
著者
桐山 孝信
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

日本では、平和主義に基づく法の研究は、第二次世界大戦後に始められたように見られているが、実際には、第一次世界大戦後に開花し、一九三〇年代半ばまでには世界的にも水準の高い研究がなされた。田中耕太郎の『世界法の理論』が著名であるが、後年、法理学者として有名になる恒藤恭は、社会科学的な方法論により、歴史的・社会的基盤を説き起こしながら、世界法の理論を展開した。これは当時にあっては世界的な水準を持つだけでなく、世界平和への一筋の道をさし示していたことを明らかにした。
著者
坂部 裕美子
出版者
公益財団法人統計情報研究開発センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

1981-2000年入門力士の現役期間の全平均は6.12年であるが、その大半は2年目までに辞めている。これを関取経験者に限定してヒストグラムで表すと、平均値(14.64年)付近をピークとした正規分布に近い形になる。地位との関連で見ると、最高位である横綱の経験者の現役期間は最長でも16年だが、幕下以下の番付でこれより長い期間現役を務めるものもいる。この中には、役力士の付け人として、依頼されて現役を務める者も含まれる。
著者
森 宣雄
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、戦後70年にわたる沖縄現代史をトータルに把握する歴史叙述・哲学をまとめるとともに、それを理論的に〈下から〉のグローバル・ヒストリーとして位置づけ、さらにそこで見出された歴史上の社会思想を現在のグローバルな社会実践へと展開する新たな方法論を開拓した。その成果は専門的研究に裏打ちされた学術一般書をふくむ8件ほどの著書、国内外での多数の講演、多くの新聞雑誌での論考によって社会発信することができた。
著者
石崎 泰男
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

男体火山の末期活動と沼沢火山の沼沢湖噴火の噴出物についての岩石学的解析により、これらの大規模火砕噴火が3つ以上の複数マグマ溜りに由来するマグマ間の相互作用を経て発生したことが明らかになった。末期噴火では、2つのデイサイト質マグマ溜りが比較的短時間で形成され、各々へ独立したマグマ溜りから供給された苦鉄質マグマが注入し噴火が発生している。沼沢湖噴火のデイサイト質マグマ溜りは、この噴火の約2万年前には形成されており、先行噴火期には溶岩噴火を起こした。その後、独立したマグマ溜りから供給された2種類の苦鉄質マグマが順次デイサイト質マグマ溜りに注入し火砕噴火を発生させた。
著者
飛田 博順
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ハンノキ属樹種は放線菌のフランキアと根で共生し大気中の窒素を利用する窒素固定能力を持つ。1984年に発生した木曽御嶽山の岩屑流跡地に更新したハンノキ属数樹種の窒素固定能力を、窒素安定同位体比を用いた手法により評価した。その結果、植生の回復が早い低標高(約1100 m)に生育するケヤマハンノキが、高標高(約2000 m)のミヤマハンノキとヤハズハンノキに比べて窒素固定能力が低いこと、高標高の2樹種間では窒素固定能力に差がないことが明らかになった。撹乱後30年たった現在、植生回復に伴う土壌の肥沃化の影響があるものの、依然としてハンノキ属樹種の窒素固定能力が高く維持されていることが示唆された。
著者
仲程 昌徳 前城 淳子
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ハワイへ移住した沖縄県人は数多くの琉歌を残している。また、那覇市、浦添市、恩納村等が主催する琉歌大会ではハワイの琉歌作者たちの詠歌が上位を占める。移民の表現を研究する上で、さらには現在の琉歌を研究する上で、ハワイ「琉歌」は見過ごすことの出来ないものである。ハワイで発行されている新聞『ハワイパシフィックプレス』(1977~2004年)、『ハワイ報知』(1980~2006年)に掲載されているハワイ「琉歌」の集成を行い、ハワイ琉歌の特質について明らかにした。
著者
玉井 由樹 西澤 昭夫
出版者
福山市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、東日本大震災で被災した中小企業の再建過程において疑似エクイティ型クラウドファンディングがどのような役割を果たしえるのか、その機能を明らかにすることである。本研究では主に以下の2点を実施した。第1に、クラウドファンディングに関する既存研究の整理、検討を通じて、定義、分類、分析枠組みを提示した。第2に、事例研究調査を通じて得られた定性分析を行い、震災時におけるクラウドファンディングの機能、資金調達企業に与えた影響、出資者の出資目的について明らかにした。
著者
脇坂 季繁
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

私たちの研究室では片麻痺モデルマウスに対してヒトiPS細胞から分化させた神経細胞の移植研究を行ってきた。Reelinは個体の発生過程において神経細胞の移動と運動皮質の層構造形成の制御を行う蛋白質として同定された。我々の実験系では脳内の炎症細胞と移植細胞はともにReelinを産生した。移植細胞はReelinの受容体を発現して移植細胞はReelinを受け取り損傷部皮質まで遊走しそこで神経ネットワークを再構築した。損傷部皮質まで移動した神経幹/前駆細胞は移動の過程で皮質運動神経への分化を伴った。片麻痺モデル動物への神経細胞移植ではReelinが組織学的な修復と機能回復に重要に関わる事が示された。
著者
加藤 雄二
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ゴシック的要素を扱った作家たちとその作品について、国際的な視野をもって学会発表、研究会活動、論文執筆活動を行った。2008年度には国際メルヴィル学会、フォークナー学会で研究発表を行い、外国人研究者とセミナーを開催した。2009年には日米のエドガー・アラン・ポー学会で研究発表を行い、論文を執筆した。2010年にはホーソーン学会、ディキンソン学会でゴシックを再検討した。ConradとMelvilleに関する論集に寄稿した。2011年にはメルヴィル学会、アメリカMLA全国大会に参加し、海外の研究者と成果の発表を行った。
著者
高橋 義行 小島 勢二 ブストス イッツエル
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

化学療法に抵抗性で予後不良な急性白血病に対して、HLAハプロ一致造血幹細胞移植が試みられている。移植後に白血病細胞がヒト主要組織適合抗原であるHLAを失うことが6番染色体による異常で起こり、それが再発のメカニズムの一つであることを解明できた。HLAを失った白血病細胞はNK細胞に攻撃されやすくなっており、移植後にドナーからのNK細胞を輸注することが再発予防につながる可能性が示唆された。
著者
久保 健一郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、日本中世の兵糧に関わる史料を収集して、存在形態、地域的特徴、時期的変遷等を多角的に検討した。その結果、ほぼ日本列島全域において、兵糧には、実際に食糧として消費される「モノとしての兵糧」の側面と、交換手段・利殖手段として用いられる「カネとしての兵糧」の側面があること、兵糧はこれらを示しながら、時代が下るにつれ、いよいよ戦争の中で重みを増していき、戦国社会においては、いわば戦争経済の中心となることを明らかにした。これらは戦争論・社会経済史の発展に寄与する成果と考える。
著者
助川 たかね
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

1.米国・欧州・アジアの有力専門職大学院で開発・出版された当該分野のケース教材800本のデータ分析によるベストセラー・ロングセラーケースの共通要因・構造の発見2.米国・アジア有力大学のケース開発者,利用者および出版社に対する聞き取り調査を基にした,ケースの開発,出版,活用方法の調査・分析3. 1)と2).の結果に基づく,メディア・エンタテインメント業界の高度職業専門人材育成に向けたケース教材の開発(開発中も含む)
著者
大森 巍
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

テクネチウムおよびレニウム放射性同位体標識医薬品の合成を念頭において,テクネチウムおよびレニウム錯体の配位子置換反応を平衡論的および速度論的に検討した。テクネチウム錯体を用いて研究する際に問題となるテクネチウムの定量を,過テクネチウム酸イオンの還元・配位子置換反応による錯体合成の過程を必要としない過テクネチウム酸イオンをトリス(1,10-フェナントロリン)鉄(II)イオンとのイオン対抽出によってニトロベンゼンに抽出して,そのまま分光光度定量する簡便な方法を確立した。テクネチウム錯体で最近注目されているテクネチウム-ニトリド錯体についで,テトラクロロアルソニウム(TPA)イオンを用いての溶媒抽出法で検討した。テトラクロロニトリドテクネチウム(VI)酸イオンの加水分解反応機構を解明し,加水分解化学種の生成定数を求めた。Tc≡N結合のトランス位の置換活性度について,3,5-ジクロロフェノール(DCP)を用いて検討したが,有機相についてはニトリド基の著しいトランス効果は認められなかった。またDCPはTPAとのイオン対形成の為に,その協同効果も認められず,むしろニトリド錯体の抽出を阻害することがわかった。ビス(アセチルアセトナト)ニトリドテクネチウム(V)の塩基加水分解反応をアセトニトリル溶液中で速度論的に検討し,錯体へのアセトニトリルの置換に伴う水酸化物イオンの攻撃によって,アセチルアセトン錯体は分解するという機構を確立し,それぞれの速度定数を求めることができた。テクネチウム(III)錯体合成の出発物質として注目されているヘキサキス(チオウレア)テクネチウム(III)イオンの過テクネチウム酸イオンからの生成反応機構を,ジメチルチオ尿素,ジエチルチオ尿素など一連の化合物を用いて速度論的に比較検討した。さらにヘキサキス(チオウレア)テクネチウム(III)イオンとジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)との反応を速度論的に検討し,テクネチウム(III)-DTPA錯体の生成機構を確立した。ヘキサキス(チオウレア)レニウム(III)錯体の加水分解反応機構を,分光光度法により検討し,テクネチウム(III)錯体のそれと比較した。この結果からヘキサキス(チオウレア)レニウム(III)錯体のレニウム(III)錯体合成の出発物質としての可能性に関して考察した。これらの結果を基にテクネチウムに関する置換反応について,レビューし,「第1回テクネチウムに関する日ロセミナー」において発表した。
著者
岸本 宏子 羽石 英里 ERICKSON Donna エリクソン ドナ 細川 久美子 鈴木 とも恵 河原 英紀 竹本 浩典 榊原 健一 藤村 靖 新美 成二 本多 清志 中巻 寛子 長木 誠司 八尋 久仁代
出版者
昭和音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

音楽学の学際的な研究の試みとしてとりあげた「ソプラノの声の特性」の研究は、音声学、音響学、物理学、医学、声楽演奏、声楽指導、音楽学、音楽療法等の関係分野それぞれに、有益な収穫をもたらした。しかしそれにも増す成果は、研究の進行と共に個々の分野内の研究成果の枠を超えて、「学際的研究」としての総合的な研究への興味が高まって来た。そして、新たな研究代表者の下、本研究の成果を礎とした新たな研究へと発展的に継承されることである(基盤研究C25370117「歌唱時の身体感覚の解明:MRIによる発声器官の可視化と音響分析を中心とした試み」)。
著者
田中 圭 森 拓郎 井上 正文
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2011年3月11 日の東日本大震災では、多くの木造住宅が津波による浸水を受けたものの構造的な被害は免れた。また、東海・東南海・南海連動地震の新しい被害想定では、東海から九州に至る太平洋沿岸で最大36m もの津波到達が予測されている。この地域は、平野部に都市圏を抱えるため、仮設住宅で対応できる規模を大きく上回る住宅が浸水することが予測される。これを踏まえ、数時間から数日間水没を経験した木造住宅が余震の続く状況下で再使用が可能か、学術的に検証した。この結果、壁倍率は、1日養生後にわずかな低下が見られたが、3か月経過後は養生環境にかかわらず、コントロール試験体と同等の値まで回復する結果となった。
著者
大石 誠 平石 哲也 北浦 弘樹
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳組織において「てんかん原性」がいかに発現し獲得されるかは,いまなお解明されていない.本研究では,脳神経外科手術摘出直後の生きた大脳組織標本を実験に活用し,当施設で開発された蛍光イメージング(フラビン傾向反応)による組織の生理学的反応,特に刺激の易伝播性と,免疫組織学的所見・病理組織検索による抑制ニューロンの脱失所見が相関すること,しかもてんかん発症初期にすでにこの所見が見られていることを明らかにすることに成功し,てんかん原性の発現と獲得の過程の一部を視覚化し得ることができた.