著者
渡辺 伸治
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は,ダイクシスの観点から日独語のフィクションの考察をおこなうことであったが,具体的には,ダイクシス(表現)の体系の構築とそれに基づいたフィクションの考察をおこなった。ダイクシス(表現)の体系は次のような分類として提示された。すなわち,ダイクシス表現の観点から記述すると,まず,ダイクシス表現は,指示ダイクシス表現と非指示ダイクシス表現に分類された。前者は,「私」,「今」などの発話場面同定依存ダイクシス表現と,「あそこ」などの非言語的指示行為依存指示ダイクシス表現に下位分類された。後者は,「行く/来る」,「たい」などの使用条件非指示ダイクシス表現と,モダリティ表現と感動詞などの意味解釈非指示ダイクシス表現に下位分類された。続いて,ダイクシス(表現)の体系に基づき,日本語が原文のフィクションの構成要素がどの様に分類されるか考察された。まず,語り手モダリティ文と登場人物モダリティ文が分類された。前者は登場人物非内省的意識文と地の文に下位分類され,後者は発話文と内省的意識描写文に下位分類された。また,登場人物非内省的意識文は登場人物知覚文と登場人物感情文に下位分類され,内省的意識描写文は自由間接話法と自由直接話法に下位分類された。また,分類と同時に,問題になったダイクシス表現が独訳ではどの様に訳されているかが考察された。
著者
M・A Huffman 川本 芳 ナハラゲ チャーマリ A. D.
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は分類に使われてきた形態変異と糞試料で検出した遺伝子変異の比較で認められたちがいから、トクモンキーおよびラングール類の亜種分類を再評価し、スリランカ霊長類の系統地理的特性を総合的に理解することである。トクモンキーでは海抜2~2,129メートルの間に明瞭な尾長の地理的勾配が認められ、尾率は標高に従い有意に小さくなった。この形態変異は亜種境界には厳密に対応せず、むしろ本種が標高と寒さに対しアレンの法則に従う適応をもつことを示していた。新しいPCRプライマーを作成し、ラングール類の亜種の違いを試験した。これら霊長類2種の亜種の違いをさらに調査するためこれらのプラマーを利用していく。
著者
吉村 あき子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

様々なレベルの類似性に基づくメタファー発話の解釈プロセスには、ソースをプロトタイプとし、ターゲットをその要素に含むように最小労力で抽象化された上位スキーマの構築が関わっていること、ストーリーレベルのメタファー発話は、制約を課せられた帰納的推論によって導出される推意を伝達することを明らかにし、演繹規則による2種の推意のみを主張する、現時点で最も有望視される発話解釈理論「関連性理論」を修正発展させた。
著者
澤田 敬人 長瀬 久子 榊 正子 青山 知靖
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

英文学を学ぶ大学生が段階的な英文学の習熟を可能にするために精選した文学史の知識、作家・作品の知識、社会文化の知識、批評方法・文学理論の知識から成る英文学の基礎知識を構成した。この目的の達成に向けて、配列する基礎知識が標準の保証を得るように、通常講義によって英文学者であれば暗黙的に共有している知識を土台とする視座を定めつつ、英文学を通観した概説書、網羅的な辞書の最新版を利用し、さらに批評やペダゴジーに関する理論の研究成果を集め、基礎知識の標準化を進めてこれをe-learning の試験出題の形でデジタル化して、CD-ROM に収めた。次に、基礎知識の習熟を測定する観点から、英米文学史を学ぶ大学生が検定試験としてコンピューター実習室で受験した。これを受験する際、習熟の意欲、英文学のイメージをアンケートの手法で尋ねてデータを集めた。これら一連の研究を評価するための企画審査会を開催した。
著者
上園 昌武
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

再エネや省エネ事業は、エネルギー大転換を実現するためにも一層の拡大が求められている。本研究の調査事例によると、エネルギー自立地域づくりは、経済効果や過疎化・高齢化対策などの諸効果をもたらすことが明らかとなった。再エネや省エネ事業は、生じた利益を地域内に環流させて地域社会の発展につなげることが肝要である。再エネ事業は、電源によって地域付加価値が大きく異なる。省エネ事業は、エネルギー消費量の削減にとどまらず、居住性や快適性の改善、社会福祉の増強など様々な効果があり、地域や国が直面する社会問題をも同時に解消するように政策統合が進められている。
著者
秋葉 昌樹
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

質的調査法の新しい流れのひとつであるパフォーマンス・エスノグラフィを通して、養護教諭のヘルスプロモーションの実際的問題に支援的に関わる臨床教育社会学的研究のモデルを構築した。その結果、成果発表としてのパフォーマンスは、研究に参加してもらった実践家とともに遂行することで、成果発表もそれ自体として「支援的」に機能しているという知見が明らかになった。
著者
佐久間 雅 柏原 賢二 八森 正泰 中村 政隆 篠原 英裕
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

①:Cornuejols, Guenin and Margotの予想を解くためのスキームを提示し、Cornuejols,Guenin and TuncelのOpen Problemの類似を証明した。当該論文は、Springer monograph(Indean Statistical Institute Series)として出版予定である。②:コードダイアグラムの展開式を用いてTutte polynomialの(x,y)=(2,-1)における値の組合せ論的意味付けを与えた。③:グラフにおける新しいパラメータである安全数を定義し、その様々なグラフ理論的性質および計算量的評価について明らかにした。
著者
岩瀬 由未子 弓田 長彦 定本 清美 梅村 晋一郎
出版者
横浜薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、pyrrolidine tris-acid fullerene (PTF)と超音波により誘発される抗がん作用とその機序におけるアポトーシスの関与を調べた。生成された活性酸素種が殺細胞効果に与える影響を4oxoTEMPOの生成で調べた。この結果、一重項酸素の生成を確認し、その殺細胞効果への関与を認めた。次に、固形腫瘍にPTFと超音波の併用処置を行い、腫瘍増殖の抑制を確認した。さらに、HL-60において抗腫瘍効果におけるアポトーシスの関与を検討し、アポトーシスの特徴的な形態学的変化およびDNA断片化が認められた。これらから、音響化学的なアポトーシスのがん治療への応用が示唆された。
著者
山田 宏 坂田 則行
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

プラークの発達に伴って形成される頸動脈と胸部大動脈の線維性被膜を正常領域と比べた結果,管軸方向の単軸引張りについて伸展性の顕著な低下と応力の顕著な増大が見られ,これはコラーゲンとI型コラーゲンの顕著な増大とエラスチンの顕著な減少と関連付けられた.また,プラークを有する頸動脈モデルの有限要素解析より,液体状の脂質コア内の圧力は血圧に比べて顕著に小さい結果が得られた.さらに,生理的内膜肥厚の生じた環状の頸動脈について,3層に分離して残留応力を解放して伸展試験と有限要素解析を実施することで各層の影響を評価する手法を併せて確立できた.
著者
楠本 良延 稲垣 栄洋 平舘 俊太郎 岩崎 亘典
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

静岡県の茶産地では茶畑にススキを主とした刈敷を行う農法が広く実施されている。この刈敷の供給源となっている半自然草原を茶草場という。空中写真とGISの解析から掛川市東山地区では茶畑の65%に相当する半自然草地が維持されていた。わが国の半自然草地が減少しているなかで茶草場は重要で貴重な草原性植物の生息地として評価できる。茶草場は伝統的な里山景観と農業活動によって維持される生物多様性保全の良い事例だと考えられるため、その成立・維持機構を明らかにする。
著者
寺尾 敦 飯島 泰裕 宮治 裕 伊藤 一成
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は,(1) 携帯端末を利用した授業のための学習環境の開発, (2) 携帯端末を利用した新しい教育方法の探求, (3) モバイルラーニングに適した学習ウェブサイトあるいはアプリケーションの開発,であった.スマートフォンやタブレットなどの携帯端末を利用した学習を行うための環境(学習管理システム)を開発した.デザイン科学のパラダイムに基づき,携帯端末を用いた授業のデザインを繰り返して,環境,教材,授業の改善を行った
著者
福智 佳代子 金澤 直志
出版者
神戸海星女子学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

iPodと電子黒板を組み合わせたデジタルコンテンツの開発プロジェクトを行ってきた。RPGゲームで、Listening内容の理解度を測る診断テストを作成、ICT開発会社ヴォルテックに、ゲームソフトの開発、端末機器(iPod)と電子黒板相互通信システムの開発を依頼、動作確認を行った。診断テスト内容に関しては、テスト内容の検証、ウェブ上の画像、音声・効果音を組み込んだRPGゲーム1ユニット分の試作版の検証を小学校で行った。その結果を参考に、最終編集(出版社ニュートンプレス)を行ったものを、独自のイラスト・動画(村田氏)と共に、ゲームソフトに組み込み、RPGゲームによる評価システムの実証実験を行う。
著者
長井 隆行
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、子供と自律で遊ぶことのできるロボットを実現するために、まずロボットの開発や子供と遊ぶための遊びモジュールの開発を行った。また、保育士と子どもの遊びを観察することで、子どもと長く遊ぶために必要な要素を検討した。その結果、子どもの表情や行動から子どもの内部状態を推定し、その結果に基づいて行動を決定するモデルを構築した。実際に幼稚園の子どもを被験者とした大規模な実験を行い、その有効性を検証した。また、ロボットと子どもの物理的な接触が関係構築に有効であることや、子どもの性格に応じたインタラクション方法があることを実験的に明らかにした。
著者
村山 良之 八木 浩司
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

以下のような事業を行い,標記のテーマに関する成果を得た。(1)東日本大震災時と以後の学校等実態調査(宮城県,岩手県内) (2)2007年に仙台市立北六番丁小学校での防災教育実践の大震災経験をふまえた評価 (3)石巻市立鹿妻小学校の復興マップづくり(津波被災地の学校における防災ワークショップ) (4)鶴岡市教育委員会と共同の学校防災支援(教員研修会,学校訪問,マニュアルひな形) (5)ネパールにおける斜面災害・土石流災害に対する防災教育支援(学校防災教育支援および専門家,大学院生教育支援) (6)その他の防災教育関連の取組(数多くの講演等および山形大学地域教育文化学部での科目新設提案)
著者
沖原 巧
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

多糖のひとつであるプルランをリン酸化したリン酸化プルランと抗菌性を持つカチオン性界面活性剤との複合体を骨や歯の硬組織への接着する薬剤徐放体として開発し、その構造および物性を解明した。この複合体では、界面活性剤の正の電荷とリン酸基の持つ負の電荷の中和と、リン酸化プルランの糖鎖と界面活性剤のアルキル鎖の間での疎水性相互作用のバランスで成り立っていることがわかった。リン酸化プルランのリン酸化率を制御することにより徐放期間を制御可能であることがわかった。さらに他のリン酸化多糖との比較からプルランが、最も徐放させる担体として優れていることが明らかとなった。
著者
中岡 俊裕 荒川 泰彦
出版者
上智大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、まず、研究蓄積の深いInAs自己量子ドットを用いて、コンパクトな実装に不可欠であるだけでなく、光の回折限界を超えた集積化、量子もつれを用いる集積化に重要な電流注入型サイドゲート素子の開発を行った。素子の作製プロセスおよびゲート制御に必要なフリップチップ型の実装及び測定手法の確立に成功した。達成したエネルギー変化量0.3meVは、これまでに量子もつれ状態作製に用いられている光励起型と同等であり、コンパクトな実装に適した電流注入型において集積化への道筋が開けたと考えている。さらに、集積化への次ステップとして、高密度集積化可能なナノコラムからの単一光子発生を実証し、その有望性を示した。
著者
坂内 太
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ジェイムズ・ジョイスの初期の各短編から、『若き芸術家の肖像』『ユリシーズ』に至る諸作品を研究対象とし、この作家が膨大な人間群像の描写を通じて特殊な身体表象を展開したことを明らかにした。特に<変容の失敗>のモチーフが多様な文体的テクニックの変遷の根底に持続的に存在し続けたこと、また、同時代の他の詩人・劇作家達が取り組んだ浄罪と変身のモチーフを批判継承しながら、人間の身体的・精神的変身のモチーフを肯定的に飛躍させたことを明らかにした。
著者
十代田 朗 津々見 崇
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は、昨年度末に現地での空間調査・資料収集を行った米国グアム・サイパンを対象にリゾート再生に関する分析を行った。両リゾートについて、日本人のリゾート志向を考慮したいので、下記のような日本側の資料により、調査分析を進めた。グアムについては、旅行業の業界誌「トラベルジャーナル」を用い、1974年から2017年までの記事を抽出し、現地で得た“tourism2020”やアニュアルレポートなどの情報を加味し年表を作成した。その上で時代区分を設定した。次に、代表的旅行ガイドブックである「るるぶ」と「地球の歩き方」をバックナンバーを含めて購入し、キャッチコピーやアクティビティの記載を元に時系列変化に注目して分析した。現在、前者と後者のクロス分析中である。サイパンについても、1976年から2016年までの記事を抽出し、“2017 Sustainable Tourism Development in the Marianas”を加味し同様の作業をした。こちらも分析の途中。
著者
根本 明宜 水落 和也 大西 正徳
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

欧米で20年ほど前より施行されていたバクロフェン髄腔内治療が本邦に導入され、欧米並みの痙縮治療がようやく可能になった。しかし、高価な治療法であり、治療効果を確実に評価する必要性も高まっている。欧米では痙縮の評価にターデュースケールという、他動運動の速度を加味した評価法が見直され2000年頃より論文での使用が増えているが、本邦ではまだ一般的とは言い難い状況である。今回の研究の目的はターデュースケールを日本語化し、他動運動の速度に依存するという痙縮の生理学的な特徴を評価できる評価法を導入することが目的である。今年度については、ターデュースケールの日本語化をほぼ終え、妥当性を検討するための計測系の確立を行った。計測系の充実のため、本学附属病院が有する3次元動作解析装置のキャリブレーションキットの更新を行っている。角速度計を用いた痙縮の計測を行い、ターデュースケールの妥当性を検討する基礎実験を行った。角速度計での計測と標準的な方法である3次元動作解析装置とほぼ同等の結果が得られた。計測系について2007年6月10〜14日に韓国で行われた第4回国際リハビリテーション学会(ISPRM)で発表した。ターデュースケールに日本語化については、共同研究者の意見も参考にしながら行った。角速度計での計測と臨床での評価を比較する準備を行っていたが、計測系の問題が見つかり、計測系の見直しを行った。計測系を見直す中で、角速度計の計測機器の特質による誤差が生じており、一定の動作を繰り返す際には補正が可能であるが、いくつかの方向の計測を行うと、誤差が補正仕切れなくなることが判明した。計測系をビデオを用いた計測に切り替えることとし、計測を行ったが、開始が遅れたこと、本務が多忙になり十分な症例数が確保できず、論文としてまとまった形にできていない。現段階ではターデュースケールの日本語化が終了し、妥当性の検討が一部行えた。日本語化については痙縮の総論、学会でのシンポジウム、教育講演などで報告を行い周知した。
著者
梶原 克教
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

イングランド、アイルランドから、カリブ海諸島を経て北アメリカにまで広がる英語圏の文化、とりわけ植民地主義以降の文化を、環大西洋圏文化として位置づけ、そこに見られる共通性として、おもに以下の2点が挙げられることを立証することができた。(1) 1960年代以降の当該文化圏文化においては、形式・媒体を通じて伝えたい意味を表現するのではなく、特定の形式・媒体自体を利用すること自体に重点が置かれている点。(2) 表現形式において俗に身体性と呼ばれるものが、言語においては「比喩的」次元と異なる「形体的」次元と関係がある点。