著者
小玉 亮子
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、1920年代において、家庭教育がどのように議論され、どのような役割が求められたのかを、明らかにすることを目的とした。このことは、列強の競合する時代に、国民国家としてのアイデンティティの強化が求められるなかで、近代家族がどのような役割を果たしたのかを分析するものである。本研究におけるキーワードは<母の日>である。1920年代という時代に、国際的にどのように議論されたのか、また国民国家内部でどのように議論されたのか、多くの国家で母の日が制度化されていく際の議論をその相互の関連性を検討した。母の日が創出されたアメリカでの議論、国民国家の再建という課題をおったドイツにおいて母の日が果たした役割を、ドイツとアメリカとの緊張関係に注目しながら分析し、国民国家と近代家族の緊張関係を明らかにすることを試みた。研究成果は大きく分けて二部構成となっている。第一部では、1920年代前後における母の日と家族に関する議論をまとめた。Kodama, 2003のMather's Dayの論文は、2003年にミネソタ大学比較女性史ワークショップにおいて報告したものを、ワークショップ参加者の助言をふまえて再構成した。小玉2006の「母の日」の論文では、議会資料を追加して議論をすすめ、小玉2007の「父の日」の論文は、父の日の成立過程を明らかにすることにより、いっそう母の日の役割が浮かびあがることから執筆されたものである。さらに、小玉2004の「少子化」に関する論文は、ドイツで母の日が普及する背景となった、出生率低下という社会問題を検討したものである。さらに、小玉2007の「ヴァイマル憲法」の論文は、母の日がドイツで普及したヴァイマル期の国制のなかで、家族と母性に関する議論を分析した。第二部では、親子関係、家族関係に関する、現代日本における言説分析をおこなった。1920年代の比較家族史研究は、現代日本における家族分析を考慮することによりいっそう現代的意義が浮き彫りになると考えている。今日的問題を射程にいれて歴史を検討する、その試みのための現代分析の論文も執筆した。
著者
雙田 珠己 干川 隆
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は3つある。 1.健常者がズボンを着衣する時の生理的負担を評価する 2.運動機能障害者の着脱動作を分析し、障害別に動作特徴を把握する 3.障害に応じてズボンを修正し、修正効果を確認する。その結果、ズボンの着衣動作は自律神経の働きに影響することが示唆された。さらに、脳性マヒ、二分脊椎、脊椎損傷の3患者について、ズボンの着脱動作を分析し、脳性マヒの症例についてはズボンの修正を行った。
著者
齋藤 直樹
出版者
盛岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究から得られた第一の成果は、「根源的な身体衝動」をめぐるニーチェの一連の思想に「言語論」的な観点からアプローチすることを通じて、ニーチェの哲学を「情動的言語使用の哲学」として新たな視点から体系的に再構成したことである。また第二の成果として、合理的な言語使用を前提とした「他者の了解」から身体的共感に根ざした「他者の承認」へと問題の中心をシフトさせつつある現代の「コミュニケーション理論」の展開、とりわけその「承認論的転回」をめぐる議論との比較検討を通じて、「情動的言語使用の哲学」が持つ現代的な意義を明らかにしたことが挙げられる。
著者
岡 夏央
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

核酸の生合成中間体であるカルボニル基がリン酸化されたヌクレオチドや、そのリン酸部位を修飾した化学修飾体の合成法の開発に取り組み、独自に開発した酸性活性化剤CMMTを応用することで、スピンラベルや蛍光色素を始めとする種々の官能基を持つリン酸基をイノシンのカルボニル基に導入する手法を確立した。更に、これらのリン酸エステルの生体内酵素に対する安定性について評価し、速やかに加水分解されることが分かったため、酵素耐性に優れたチオリン酸基をイノシンのカルボニル基に導入する手法の開発を試み、これを確立した。これらの化合物は、核酸の生合成経路を標的とする分子プローブや分子標的薬としての応用が期待される。
著者
片岡 啓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

インド仏教論理学における語の意味の理論については,近年,資料状況が変わりつつあり,それに伴い従来の研究を見直すべき時期に来ている.報告者は,仏教の伝統の外側から仏教の意味論を見直すために,報告者自身がサンスクリット語写本に基づき批判校訂した『論理の花房』(紀元後9世紀後半頃)というバラモン教文献に基づきながら,そこにおける仏教説批判を詳細に検討することを研究課題とした.研究成果の中心となるのは,『論理の花房』における語意論,特に,仏教説批判の箇所である.三篇の訳注研究を発表するとともに,関連する研究論文五篇,および,批判校訂一篇を学会誌・紀要に掲載した.
著者
村瀬 晃平
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カメラ画角や位置をコンピュータ制御し工場内での協調的な重労働動作を捕捉できる,三次元動作計測システムを開発した.下肢の屈曲動作計測をX線透過装置診断と比較したところ,本システムは作業着着衣時でも良い追従性を有することが証明された.加えて,膝関節の有限要素モデルを作成し非線形構造解析シミュレーションを行なった.靭帯の有無や少しの屈曲角度が荷重支持機能や周辺の最大応力値の増加に強く関与することを明らかにし,協調作業による微妙な姿勢変化が生体内の負担に大きく影響を与えていることが示唆された.
著者
中山 幹康
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

国際河川や国際湖沼の流域国が,「エスポー条約」に準拠する越境環境影響評価の枠組み策定に合意する要件は,カスピ海のように流域国への悪影響が非対称的ではなく全ての流域国が影響を受ける場合,カナダと米国間の国際河川のように幾つかの河川では一方の国が上流国であるが他の河川ではその国が下流に位置するという地政学的な関係にある場合,メコン川のように地域内での経済的な統合が進み流域国間には相互依存関係が存在する場合,であることが判明した。
著者
木戸 雅子 鈴木 杜幾子 大原 まゆみ
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

従来日本のみならず、西欧でもほとんど研究対象とされてこなかった独立戦争以後のギリシャの近代絵画を、ヨーロッパとギリシャ側からの視点で検証した。ギリシャ近代絵画の創生期には、主としてドイツ(バイエルン)の画家(P.フォン・ヘス等)の描いた独立戦争をテーマにした絵画が、ギリシャ人画家の手本となり主題や表現様式などにおいて、その後の近代ギリシャ絵画の方向づけに影響を与えたというその過程を追うことができた。
著者
小山 恵美 仲 隆介 松本 裕司
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

執務空間の光環境を非定常的に時間変化させるようにデザインすることで、知的「ひらめき」につながる覚醒度、自律神経活動、心理状態などを含む生理的・心理的活性度が向上する傾向がみとめられた。また、心拍変動をモニターし、ワーカー個人の生理的・心理的活性度変動を反映した光環境の制御タイミングを盛り込むことで、光環境の非定常的時間変化が知的「ひらめき」につながる活性度に及ぼす影響が増大する可能性がみとめられた。
著者
三島 一晃 小川 月彦 北岡 隆 藤川 亜月茶 今村 直樹 三島 一晃
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

(1)光刺激による網膜色素上皮の変性ラット網膜に光刺激を与えることで感覚網膜や網膜色素上皮が変性するか検討した。Wister Kyotoラットに強度の緑色光を24時間照射し、電子顕微鏡にて網膜を観察した。網膜の他の層に著変は無かったが、視細胞外節の蓄積と網膜色素上皮細胞の変形を認めた。光毒性による酸化ストレスや視細胞外節の蓄積で生じる酸化ストレスの影響で網膜色素上皮が変性し、加齢黄斑変性が誘導されると推測した。次に酸化ストレスが循環ホルモンであるレプチンによって誘導されることを検討したかったが、生体では困難であり、培養細胞で研究した。(2)レプチンによる酸化ストレス培養網膜色素上皮細胞と血管内皮細胞にレプチンが酸化ストレスを与えるか検討した。具体的には、網膜色素上皮細胞ARPE-19および血管内皮細胞EA hy926に活性酸素マーカーであるH_2DCFDAを導入した。その後様々な濃度のレプチンに曝露し、活性酸素を測定した。その結果、EA hy926においてレプチン1000ng/mlの曝露で活性酸素が有意に増加した。ARPE-19では活性酸素の増加はみられなかった。今回の研究では高濃度のレプチンが網膜色素上皮細胞ではなく、血管内皮細胞において酸化ストレスを生じることが示された。(3)色素上皮由来因子(PEDF)によるレプチン酸化ストレスの抑制レプチンの酸化ストレスを抑えるため、PEDFが有効か検討した。レプチンの溶液にPEDFを加え血管内皮細胞EA hy926の活性酸素を測定した。100nMのPEDFを加えると活性酸素の増加はみられなかった。PEDFは血管内皮細胞においてレプチンによる酸化ストレスを減少させる事がわかった。以上の研究により、色素上皮由来因子はレプチンによる酸化ストレスを減少し加齢黄斑変性を抑制する可能性がある事が示唆された。
著者
中村 敦雄
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では,これまで教科書に印刷された文字教材が学習における中心を成してきた国語科にあって,映像や図表等もテクストとして位置づけ,メディアの技術革新に対応させた「よむ」学習活動を支える理論的基板を解明することを目ざした。そのアプローチとして,戦前から現代にいたる広範な期間における「よむこと」の実態を解明するとともに,周辺関連分野の先行研究を渉猟し,理論的な枠組みを解明した。また,試行的な教育実践等を対象とした参与観察研究として,群馬大学の附属学校において実証実験を行い,国語科としての新しい学習指導のあり方の概容を解明した。
著者
玉村 公二彦
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

該の研究期間内に障害者権利条約を批准した国はおおよそ100ヵ国となった。障害者権利条約の第24条は、教育の条項であり、障害のある子どもを含めたすべての子どものためのインクルーシブ教育を発展させることを求めている。本研究では、権利条約の批准を念頭において、アメリカ、イギリスやオーストラリアにおける教育システム検討した。当アメリカは、障害者権利条約を批准してはいないが、障害のあるアメリカ人法の下で、インクルージョンの多様な形態を教育条件の整備をともなって実施しており、また、高等教育等においては「合理的配慮」と同時に、「自己権利擁護」への支援が特徴として捉えられた。イギリスは、障害者差別禁止法のもとで特別ニーズ教育を進展させてきたが、2009年に障害者権利条約を批准したが、一般教育システムに特別教育を含むと解釈し、特別学校の位置づけをおこなっている点が特徴であった。オーストラリアも、イギリス同様障害者差別禁止法を制定していたが、障害者権利条約の批准にあたって、障害者差別禁止法を改定するとともに、2005年に「教育に関する障害基準」を制定し、「合理的調整(reasonable adjustment)」をインクルーシブ教育の中で具体化していた。日本での権利条約批准の視点として、差別の禁止の観点から学校教育における「合理的配慮」の具体化、特別ニーズ教育の実践などが重要視されよう。また、障害者権利条約の「非差別」の理解との関係で、特別学校や特別教育のシステムをどのように位置づけるのかという課題が残された。
著者
佐野 隆弥
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

大学才人の劇作家たちが1580年代から1590年代にかけて生成・発展させた演劇文化および散文文化の状況を、歴史的・政治的・宗教的コンテクストにおいて調査分析し、エリザベス朝後期における演劇文化ならびに散文文化と英国国教会との関係を、取り分け動態的諸相に注目しながら実証的に記述した。今回のプロジェクトでは特に、大学才人の中でも英国国教会体制との繋がりが緊密だと考えられる3人の劇作家──ロバート・グリーン、クリストファー・マーロウ、ジョン・リリー──に焦点を絞り、彼等の劇作の有りように影響を与えた政治・宗教的側面の特質とその限界を具体的に明らかにした。
著者
萩原 守
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、崇徳3(1638)年のモンゴル文法規、康煕6(1667)年のモンゴル文法典、康煕35(1696)年のモンゴル文法典を比較研究し、清朝前半期における蒙古例の起源を問うという目的を持っていた。このうちまず、崇徳3年軍律と同年の漢文版軍律との対応関係を解明した。次にこの軍律は、康煕6年法典には含まれず、康煕35年に初めて蒙古例法典へ入ったことがわかった。さらに康煕35年版や後の乾隆年間の法典中の条文の改変状態より、八旗の法から蒙古例への編入という蒙古例形成課程の一類型を抽出できた。
著者
松本 啓子
出版者
公益財団法人大阪市博物館協会
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

鎖国期、17世紀後半の輸入陶器のマジョリカ・アルバレルロは、寸胴形の壺で、foglie文の葉を縦に描く。ヨーロッパには部分的に一致するものはあるが、同一型式の壺はない。foglie文も16世紀後半に限られる。アルバレルロは同一規格の薬壺で薬局や病院の棚に並ぶ。これらを運営するカトリック修道院からの注文品である。マジョリカ窯調査例では、アルバレルロの窯の占有割合は高く、カトリックの意匠も見られることから、マジョリカ工房にとってカトリックは最上の顧客とみられる。宗教改革によるカトリック衰退に伴い、旧来のマジョリカ工房も17世紀に入ると廃れ、代わってカトリック色の薄い工房がオランダ語圏北部で台頭する。大坂出土品は後出の窯で注文焼成された可能性が高いことがわかった。
著者
宮脇 秀貴
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、従来のエンパワーメント研究では解明されてこなかった「経営理念・組織文化」と「組織成員」のインターラクションプロセスの解明に重点を置いたものである。理論的なフレームワーク作りを、新しい脳科学の分野等の文献(例えば、共感覚、社会脳、錯覚の科学、異彩を放つ障害児の感覚、乳児・幼児の心理やコミュニケーションの発達過程、組織の免疫力等)を用いて考えると共に、3年間、地元Jリーグクラブのイベントを私の研究室の学生を中心に行ってもらい、香川県庁や高松市、他大学の学生や高校生と協働していく過程で、文献研究等で得たエッセンスを学生に適用しながら彼らの成長を観察することでケースを蓄積してきた。
著者
前川 功一 TEE Kian Heng PINTO Dos Santos 小滝 光博 倉田 博史 久松 博之 福地 純一郎 北岡 孝義
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、非定常・非線型時系列回帰モデルの統計理論的及び応用的研究に関するものである。これまでの成果は(1)非定常性と非線形性を同時に扱う研究、(2)非定常性のみを扱う研究、(3)その他この二つの基礎となる回帰分析の基礎理論研究を並行して行ってきた。(1)に関しては前川とティー・キャン・ヘンが担当し、わが国のGDPのようなトレンドをもち単位根を持つ可能性のある経済時系列に対して単位根検定及び未知の構造変化時点の推定を研究した。その結果は2000年の日本統計学会でと題して報告された。それによると我々の提案した構造変化時点の推定方法は先行研究(畠中・山田(1999))で示された方法よりも優れていることがモンテカルロ実験で示された。(2)に関しては、前川・久松が非定常な説明変数を持つSURモデルにおける代表的な推定方法の優劣の比較を理論的及びモンテカルロ実験を通して行った。その結果、定常時系列回帰の場合と同様に単純な最小2乗法より一般化最小2乗法のほうが推定効率が良いことが示された。また前川・何は単位根がある複数の無関係な時系列の間には見せかけ上のGranger因果性が検出される確率が高いことを理論的計算およびモンテカルロ実験で示した。そしてアメリカの生産統計とマネーサプライ統計の間の因果性はこの見せかけの因果性である可能性があることを示した。小滝は共和分関係が存在する場合のGranger因果性検定の方法を提案しその理論的性質を研究した。(3)に関しては、倉田がSURモデルにおける推定法の理論的比較を、また福地は時系列回帰に対するSubsampling法の有効性を研究し、共に(1)及び(2)に対する基礎的研究を行った。なお、本研究の応用面で不可欠な株価日次データ収集のためにピント・ドス・サントスは、NHK文字放送から株価日次データを採取・分析するシステムを導入した。また、シンガポール国立大学金融工学センターで非定常時系列モデルの金融データの応用に関する研究成果発表を行うとともに、同センターの副所長Yuk Tse教授らと金融時系列の非線形・非定常モデルについて意見交換を行った。
著者
白坂 成功 神武 直彦 保井 俊之
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

世の中に存在する多くの問題が、技術あるいは社会科学など、個別の学術分野だけでは解決ができない。本研究では、システムズエンジニアリングとデザイン思考とを統合した学問分野横断的なシステムデザイン方法論の基本的な体系を構築した。この方法論は、対象を俯瞰的かつ系統的にみるシステムズエンジニアリングと、対象を人間中心でみるデザイン思考とを組み合わせたものとなっており、より幅広い対象に有効であるようにするために、1つの決まったプロセスを決めるのではなく、対象に応じて自由にプロセスをデザインできるとした。また、この方法論を実社会の問題に適用してみることで、その有効性の検証をおこなった。
著者
塚原 康友 本田 茂
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では未熟児網膜症(ROP)の発生におけるアドレナリンα1受容体の働きを解明するために、α1受容体ノックアウトマウスを用いたROPモデル(酸素誘発網膜症)を作成する計画を立てた。当初α1A、α1B、α1D各受容体のダブルノックアウトおよびトリプルノックアウトマウスの作成を試みたが、遺伝子欠損による生殖機能あるいは仔マウスの保育機能不全のため上記ノックアウトマウスの作成は極めて困難であった。そのため研究計画を修正してシングルノックアウトマウスの作成を行う事とし、α1A、α1B、α1D各シングルノックアウトマウスの作成には成功した。本研究期間後もさらに研究を継続する予定である。
著者
住田 育法 田所 清克 山崎 圭一 萩原 八郎
出版者
京都外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成15年6月の日本ラテンアメリカ学会定期大会で、同年1月の労働者党(PT)ルーラ大統領誕生という政治変動を基底に住田がコーディネーターとなって「現代ブラジルにおける政治と都市問題」について研究会を立ちあげ、翌平成16年度より2年間に亘って約15名の研究報告者が、通算10回の研究会を実施した。この成果は報告書として論集に纏めて出版した。具体的に、現代の問題を中心に歴史研究をもおこない、研究代表者住田は、ブラジルの都市空間発達の典型にリオを選び、当初ポルトガルのリスボンを都市計画のモデルとして、20世紀にはフランスの影響が強まり、その結果ファヴェーラを産んだと指摘した。研究協力者のカヴァルカンティ氏は、ブラジルの中核都市形成の歴史を都市工学の立場から解説した。現代ブラジルにおける最大の都市問題は、ファヴェーラの存在であろう。この点について、複数の研究協力者からの情報提供があった。まず奥田が、フィールドワークに基づいてブラジリアの衛星都市の貧困住民を扱い、谷口が、現地調査を踏まえて、リオとブラジリアの特に住宅政策について分析した。近田氏は貧富の格差に対する都市行政について独自のモデルをサンパウロに応用して解説した。また、農村地域における農民らのいわゆる土地無し農民運動(MST)について、近藤エジソン氏が現地調査の成果を紹介、根川氏はサンパウロの東洋街でのエスニック行事を扱い、カイゾー・ベルトラン氏とスガハラ氏はリオの電気・上下水道・ごみ収集などの生活インフラ整備問題を取りあげた。研究分担者の田所は、リオの貧民街住人の日常を観察し、飢餓という究極の都市問題を論じ、同じく山崎が、都市行政に一般住民が関わる「参加型予算」にアプローチした。さらに萩原は、リオやブラジリアとライバル関係にある大都市サンパウロの問題を、州と市という2つの行政単位から論じた。